日常?の風景。
今日も幸せの中、目が覚める。もっさりとニャン娘たちが来てくれたようだ。
この子達も直ぐに嫁に行ってしまうんだよなぁ~。はっ!誰も残ってくれなかったら…って、まぁ、この年になるといろいろ思うところもある。
おいらの父ちゃん母ちゃんもそうだったのだろう…ああ…親不孝だなぁ。おいら…はぁ。孝行したいときに親は無しとはよくいったものだわ…こっち来ちゃったから墓参りもできんわ。ま、おかげでおいら自身、勇者パワーで体の調子はすこぶる良いがね。
「お父ちゃん!おはよ!」「おはよ?」
「ん?どうしたの?」
「あ!私たちがお嫁に行っちゃうから寂しい?くすくす」
「…大丈夫。ラグが父ちゃんの嫁になる!」「…ハルも!」
「う~ん。お嫁に行っちゃうのも寂しいけど、行かないのも寂しいなぁ。どっちなんだろう?う~む。ラグもハルも良い人見つけろよ~ふふふ。孫の顔も見たいな。これだけ居ると孫も山盛りだな!ふふふ。さてと鍛錬でも行こうか!」
おお、痛ぇ…尻をなでながら今日は鍛錬場をぐるり回ってみる。
基礎はヒューイ氏、ロット氏人族の冒険者達が見てくれている。あ、ちなみにスルガ氏はいない。昨日は大いに飲んだのだろう。後で”回復”でもかけてやるか。
基礎と並行して、獣人族や人族の武芸者…ザックさんやゴルド殿が手合わせや技の指導、さらに力のある者にはカイエンたち魔族の連中が指導を行っている。
あれ?ヴァンがいないな…飲み過ぎか?…あらら。ララたちと手を繋いで魔力回しをしている?こっちじゃ生徒だな。ははは。
ハルちゃんは…うん起きてるな…”収納”広げるのに頑張ってるようだ。大量の食糧を確保するのだと。リスなんかの頬袋みたいなもんだな。
ミミちゃんは…マジでアサシンかよ?ぶんぶんナイフを振っている。やたら速いな…身体強化?ぼぼぼぼぼ!ってな感じで突きを繰りだす!アサシンっていうより、特殊部隊の軍人さんか?う~ん…護身程度で良いのだが…。
ファムはすっかり騎士を目指してるようだが…おお?ルシア殿たちも出てきてるようだ。
「おはようございます。神官長殿も?そうそう、昨日はお疲れ様。」
「これは”使徒”様。お早うございます。ええ。少し体を鍛えようかと。あれだけ神々が鍛えることを推奨されていますからね。」
「ふぅ…ルシア殿は元々冒険者だったから良いですよ…我我なんか…ふぅ」
「ええ…ひぃふぅ…どちらかというと苦手な分野で…」
「健全な魂は健全な肉体に…”使徒”様の教えを…うぷぅ」
おいおい…こちらの方々はいかにも…ぽっちゃりだもんなぁ。
「これも積み重ねが大事ですから。無理せずにね。あんなゴリゴリになるのには年月とたゆまぬ努力がいる…無理すんな」
{…はい}
こちらに一目もくれず大岩を背負いスクワット中の老人…ドルトン老だ。本当に元気な爺さんだ。
ブラウン師も負けじと…あんた…服屋だろう?って…個人的嗜好、趣味に文句言っちゃだめだな。反省。
そういえばもう一人いるとか?ザルバック村の方にいて外に出てる方が多いとか?今度呼んでみるか。
良く見ると周りにムキっとした若者も同様に肉体造り…なんでもドルトン老の門下生だそうだ。拳法…空手に近い動きだが…おいらにゃよくわからん。めざせ!少林寺という感じだな。
おお!鹿角さん達の槍小隊にはびっくりだ。”縮地”…スキルじゃない、本物の。あの勢いで突かれたらひとたまりもあるまい。彼らが温厚な人たちで良かったよ。
ん?ケットシー族…長…ここでも癒しを提供してくれるのか?何人かの槍の部族…パグ人も見られる。組手相手探しに来ているようだ。
そういや、うちの頭領見ないな…二日酔いはないだろうから、単に寝坊かな。
おお!綱登り用のロープが増えている…大人気だ…。あら…ハセルもやってるのね…なんだその広背筋は…もうゴリゴリではないか…腕の力だけでするすると登っていく…はぁ…。
うん?ハスハか?なんか妙にホッとするのはなぜなんだろう…ははは。
「おはようぅ~眠い…」
「おはよう。昨日は遅くまで?」
「ああ。一応、付き合ったよ。ソケイのオッサンがワンワン泣いて大変だったんだぞ。」
「そいつは大変だったなぁ。まぁ、わからんでもない。娘皆、嫁に出ちゃうからねぇ。」
「まぁな。おっさんもすぐだなぁ。」
「まぁねぇ。」
「お!進歩したか!以前なら”やらん!”って。」
「そりゃ、子供たちの幸せが最優先だわ。孫の顔も見たいしな!」
「父ちゃんごはん!」「腹減った!」
「まだ、色恋より食欲のようだがね。じゃ、いただきます!」
食後、居間のソファーで居眠りしているトワ君に毛布を掛けてと。お務めご苦労!…さてと…おそらく祝日中のこの三日間は出かけることはないだろう…ソケイ殿の見送りくらいまではいるか。
マールちゃんのお迎えも行かねばならんしなぁ。チョイと足を延ばしてビルックの様子…まだ早いな…アツミ君も3日はお休みだろう。精々、爛れた生活を送ってもらいたい。くそぅ!おっと、呪詛になりそうだ。自重せねば。
足は自然と役場に向かう。沢山の空樽に紛れて樽人間…もとい小さいおじさんも転がっている。おお…すげぇな…あのドワーフ族が酔いつぶれてるぞ…どれだけ飲んだんだよ…よもや死んじゃいないだろうな…。
ドワーフ族が急性アルコール中毒で死亡なんて洒落にならんぞ。…鼾かいとるから平気だろう…が。
ところどころに人族も混ざる。獣人族はこういうところはしかっりしてるよなぁ。弱みや隙を見せないってことだろうか。
「”使徒”様!おはようございます。どうです一杯。」
「いや、さすがになぁ。お天道様が出てるとなぁ。てか…まだ朝だぞ…酒たりるのか?後二日あるぞ?」
「へぇ、何とか。ドワーフの旦那達も満足いくまで飲んだからもうそんなに浴びるほどは飲まないだろうと。」
「本当かよ…俄かには信じられんが…でも、うちの町でも作りたいなぁ。酒。そうしたら気兼ねなく振舞えるんだがなぁ。麹も仕入れてこないといけないか…味噌醤油のじゃダメだろうか…前にネットで見た気がするな…麦だから…焼酎か?芋も良いな…蕎麦は何処だったか…産地あったな…」
「し、”使徒”様?」
「お、すまんすまん。酒…主に蒸留酒に思いを馳せていてなぁ。」
「ミッツのオヤジ…久しぶりです。リッキです。その話、俺も聞いて良いかい?」
「ん?」
…ミッツのオヤジ…か。そう呼ぶのは例の傭兵団の…たしか、団長の甥っ子だったか?まとめ役の…
「おお。久しぶりだな。学校はどうした?」
「?昨日から明日まで休みですよ?」
「へ?そうなの?うちの連中、普通に出ていったが…」
「農作業なんかの手伝いかな?粉ひきも休みなく動いてるようだし…俺もここでコップや皿洗いの手伝いをしてます。」
「そか…ご苦労さん。で、リッキ、やりたいこと…見つけたかい?ソニー坊は初心貫徹の勢いだ。会う度に店くれ、窯くれってせがまれるわ。それと、ロイ…ありゃ政治家だな。門番には惜しいわ。」
「ははは。羨ましいですよ。あいつ等は。特にロイ…転んで頭でも打ったんでしょうか?{ははははは}で、今の…ミッツのオヤジの話を聞いて…それだけの種類の酒があれば…酒場のオヤジも良いかなぁって。勿論作るところから関わりたいな…俺が作った酒を飲んで楽しく…昨日みたいにね。ドワーフのオッサンに”旨い!”と言わせるくらい。」
「ほう。面白いなぁ。獣人達は蒸留酒あまり得意じゃないんだよね。アルコール…酒精が高いから。ドワーフの連中は作業は喜んでするだろうが…味の管理まではなぁ…やらんだろうなぁ。よし。やってみるか?」
「はい!」
「しかし…成人前に酒飲むわけにはいくまい…なぁ。」
「大丈夫ですよ?ガキの時分から飲んでますし。」
おいおい…傭兵の常識?
「まぁなんだ…良し…じゃ、蒸留所行ってみるか…」
リッキとコソコソ。途中リンテ達も混ざったが、悪戯はコソコソやるから楽しい。あっという間に祝日が終わってしまった…酒関係はセラミス殿も準備してくれていたので始まれば早いだろう。リッキとリンテ…大工か?サンテも関心があるようだから…彼等においらの知識を仕込んで後々の、わが国の酒文化の祖になってもらいたいものだ。
リッキも学校出たら本格的にやるみたいだしな。楽しみが増えたわ。できればおいらの寿命が尽きるまでになんとかモノにしてもらいたいところだなぁ。熟成期間込めて…無理いうな!




