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送還の儀 「南門の楔」 Ⅱ

いらっしゃいませ~

 歩き出すと同時に”勇者”トワの歌声が流れ出す。ゆっくりと離れの方に向かって歩を進める。

  「♪~~~~~~~~~~~~♪~~~~~~♪」

 続いてミッツ殿も…

  「♪~~~~~~~~~♪~~~~」

 道すがら、影が立ち上がる…

 周りをゆらゆらしながら彼らを囲むように、先導するように…多くの子を引き連れ、離れに到着した。

 ぐぅううう…。この圧力、怒り?無念?勇者たちの歌も止まる…威圧される…

  

 「下手したら…ここもリッチになってたなぁ~~今ならわかるだろ…この怨嗟の渦が…」

 ああ、我が一族、いや、この国自体にむいているのか?…ミッツ殿が笑いながら、お供えを出していく…

  「お!坊主、このジュースがすきかぁ。飲んでいいんだよ。こっちにお菓子出すな。あのおじさんが買ってくれたんだぞ~」

 こちらを指さし語り掛けている…私も用意していたお供えをガルペン、ディシィ達と運び込み、並べていく。きょとんとした顔の子、興味津々で臭いを嗅いでいる子。お菓子をほおばる子、ジュースを飲む子。…普通のどこにでもいる子供だ…ん?この子の服は…教会に寄付した子供用の服?

 「ディシィ、孤児院の様子を調べろ…」

  「…はっ」

 …勇者トワ、ミッツ殿は、子供たちと談笑をしながらジュースを飲んでる。姫様たちは圧倒されたのか、少し離れて様子をうかがっている…飲み物をもってアヴェルが

 「これほどとはねぇ。勇者様たちの慈悲が得られ良かったなぁ。さっきの怒り…感じたか?」

 「ああ。わが身に向けられた怒り、一生忘れまい。どうしてこのようなことができたのだろうなぁ。私は今ほど後悔したことはない…なぜ!服毒なんぞに!せめて肉親だから苦しまぬように?違う!己のためだ!親殺しと呼ばれようと、足先から一寸刻みにすれば良かったわ!」

 「それは地獄にでも行ってることを願うさぁ。しかし、怨恨…”リッチィ”や、”祟るもの”になるのも頷けるなぁ」

 まったくだ。

 そこに再び朗々と勇者様の聖なる歌が流れる。

  「「♪~~~~~♪~~~~♪~~~~」

 ”ぶぉおおごぉおおお!”

 建屋の屋根が消し飛ぶ!

 「!」

 真っ黒な水?いや、多くの闇が噴き出し、勇者たちを飲み込む…

 「勇者様!」

 「ミッツ殿ぉ!」

 何もできず…恐怖で足が動かない…ここにいるもの…皆。その時、黒い渦の中から勇者の歌が聞こえてくる…

  「♪~~~~♪~~~~♪」

 「う、歌っておられる?」

 暫くすると

  「「♪~~~~♪~~~~~♪」

  「こんなところに…縛られなくてもいいんだよ…」

 ミッツ殿の言葉と共に渦が止まり、周りには多くの…それは多くの子供たちに囲まれていた…

 これが背負わねばならぬ罪。暫く子供たちに話しかける勇者たち。おもむろに勇者トワは立ち上がり、

  「おっさん魔力!」

 慈しむ顔で…

  「ああ!ゆっくりやすむんだよぉ~~~~はいぱわ~~~!」

 ミッツ殿と勇者トワが光り輝く!

  「♪~~~~♪~~~♪~~~~~~~♪」

 先と同様に子供たちが昇っていく~歌いながら、踊りながら…手を振る子もいる…

 あの子たちが一体何をしたというのだ。我が一族に仇なしたとでも?快楽のために…これだけの無垢なる命を…人族?なんであろう?我も…直接口にはせなんだが…代々続く血脈…この身は…

 ミッツ殿の言う通りだな。許されるのだろうか?この世界に?

 全員が昇り切るのを見送った時!

 「!!!!」

 ズンと頭を押さえられるような圧!ミッツ殿からあり得ないほどの怒りを孕んだ魔力が放たれる!この場にいる、権力を持つ者への怒り!これか、対魔法障壁も耐えられまいな…

  「ミッツさん…ここにはおチビ達がいるよ。親分だって…だから」

  「…ああ、きついな、きつい…」

 勇者トワの言葉に、すうっと魔力と圧が消える…

 ミッツ殿を見ると両の目から血の涙を流している…何と罪深きことだろうか…

 再び

 ”どずうぅん”

 と圧が!ミッツ様のとは桁の違う…空が、天が落ちるような…

  「うぐあああああああ…」

 突然上がる、ミッツ様の悲鳴。

  「おっさ!ミツルさん!!!」

  「大丈夫!魔力取られてるだけ!ぐぅううううう…キツイけど、不快感はないよぉぐっおおおう」

 苦しむミッツ殿その時だった…

 静かに語るように…

 しかし、根幹から”恐ろしい”と直感…魂が訴える声が響く 

  

  <良い働きだったよ君たち、前回に続きよくこんなに多くの魂を俺の元に還してくれた…グッジョブ!褒美にペナルティ取ってあげるよ…ミツル、チョイと浄化に使う魔力もらったよ。あまり世界には干渉できないからね。なので魔力は現地調達ってやつさ。でなにか望みはある?>

 

 「力を…この世界を浄化する力を…無念を払う力を…理不尽に対する力を…」わ、我々を消し去る力…

  

  <君は直に大きな力を得る…命の危機の後にね。おおっとネタバレだ!あぶね。あぶね…駄神ゼフィラスが作った世界だ。何しても構わないよ…好きに生きるといいよ。>


 な!だ、駄神だと…

  「で、でしたら、今、送った者たちに慈悲を。安らぎを…」

  

  <…ああ、了解した。トワも頑張ったな、ご苦労様。なにか褒美を上げよう。何がいい…>

  

 「…差別のない世界…人族なんて…」

  

  <それは無理だよ…やったらほとんどの人族いなくなるよ?…ふむ。それもいいかな?俺よりミツルに頼んだ方がいいぞ。それにしても欲が無いなぁ君たち。不老不死とか、金銀財宝とか?…そうだね…神金でどう?君に神剣を授けよう。君の友に打ってもらうがいい。では!しーゆー>

 

 ”ぷぅはぁ、あ”やっと人心地着いた…しかし、神金だと…このこと漏らさぬようにせねば…

 「お!お待ちください!私は…」

  

  <…あまり、彼らを利用するな。人間。特にお前だ。手痛いしっぺ返しにあうぞ。お前たちがどうなろうと知らんし、興味もないわ!>


 すうっと神気が消える…

 「あ、あう…あう…あ…」

 姫様はモロに神気を向けられたようだな…

 「姫…」

 その時天に再び神気が満ちる…”かっ!”さらに光に満ちる。目の前には、光の柱ができていた。

 ”ずぅぐおおおおおおおごぉ”地響きと共に、神の怒りが落ちる…

 

 恐る恐る目を開けるとそこには…何もなかった。建物もレンガ一つすら。ただ、磨かれたような白い砂があるだけだった。姫様は!

 「ああ…あう…あ、あああぅ」

 まだ正気を取り戻してない…どうすればいい?そこに…

  「姫様…ご無礼します。」

 「ミッツ様何を…」

 姫様の頬をミッツ殿が張る!”ぱん!”近習共も、びっくりして文句もでない

 「…み、ミッツ殿?わ、わ、たしは…私は…」

  「気が付かれましたか?少々手荒でしたが…大丈夫で?」

 「あ、ああ、すまない…と、とり乱した。少々下がる…後程…」

 近習に抱えられるように去っていった…。暫くは戻らぬだろう。どうしても聞きたい。判かっているが直接…

 「ミッツ殿、先ほどの声の主は…いや、判かっている、判かっているのだが…」

 彼は一つうなずき、

  「ええ、神と呼ばれる存在でしょう…この場所を御覧なさい…我々でもできませんよ…奇跡でしょう…。」

 判かっている!が、理解できないのだ!しかも、

 「ええ…しかも彼の存在は、私たちの存在を許していない…」

 ぼそりと口を突く…

  「そのように感じましたね…あなた方の言う神、ゼフィラス神?でしたか?おそらくゼクス神は、もうこの世界には存在してないのでしょう…彼の神が管理…いや、放置と言ってもいいかもしれません…」

 嗚呼…なるほど…私たちを庇護し、知る神はもういない…

 「私たちは…神敵なのでしょうか…」

  「解りません…が、加護はないのは確かでしょうね。前の世界も魂の循環がなされてるという考えがありました。もちろん、私の世界では”みえない””感じない”ので半信半疑でしたが…こちらの世界は確かに存在する。先ほどの子供たちのように…その循環を妨げるもの。理不尽に命を奪いその魂を穢すもの…許されるものではないとおもいますよ。」

 循環?確か他教義にあったな…死したものの魂は…すべての魂は、一度天に還り、浄化され再び生を受け地に降り立つと…

 「ああ…、」

 その時に穢れが払われると。

  「たぶん、場外にも目撃されたでしょう…教会の連中、聖国?が”奇跡の場所”とか”聖地”とか騒ぐと思いますが、関われさせないことが良いとおもいます。」

 ”あの”教会を?ここに?この神に浄化されし場所に?無いな。

 「…心得た…」

  「さて、一休みして帰るとするかぁ、トワ君!」

  「ああ。」

 「姫が会いたいと思 「彼の神の言葉…お忘れなきよう…私たちには”過保護”のようですが…これ以上関わらない方がお互いによいと思います。」 …。」

 そうであったな。何かしらの接点があるやもしれぬ。近づけない方がよいな…

  「どうでした?美味しそうにほおばる子供たち…少しは心の救いになったのでは?」救い…私の心よりも

 「…いや…だが、少しでも、少しでもあの子たちの心に安らぎを与えることができたのなら…できたのなら…」

 なんでだろう涙が先よりとまらぬ…これが贖罪の涙なのか…

 

 …。 


 「未だ信じられませぬ…今日の出来事が…私は夢を見てるのでしょうか…?」

 とガルペン。激情の士だ、涙も枯れていよう。

 「全てが夢ならどれだけ良かった事か…なあ、ディシィ」

  「ええ、テクス様…特に御神託についての扱いは…我々にとっての決別でありましたが…」

 「ふむ、私からはどこにも口外しない。できればその方達にも願いたい。」

  「ですが…」

 「願いといった、その方の信念、信仰心で教会に報告しても咎めぬ。ただしこの場には、我が血族がいる限り、”あの”教会関係者は入れぬ。」

  「姫様には?」

 「王族としての義務もあろう…あちらはあちらの責任でよかろう。アヴェルはいかがする?」

 「そうだなぁ~大分裏が見えてきたさぁ。こちらはこちらで調べてみるよぉ。おジジには話を通すことになるわなぁ。それと…いや、何でもない。もう少し考えてみるわぁ」

 気づいたか?

 「ああ。それで構わぬ。我らも場所を移し体を休めようではないか。」…

本日もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。

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