特級採掘ポイント!
いらっしゃい!
(7日目 14階層 坑道エリア)
「本当じゃ…奇麗さっぱり消えてしもうた…」
「だのう…どういった仕掛けだ…」
「おはようございます。ふぁあはふぅ、失礼。でしょう?予想じゃ、20階にあると思ったのですが…」
ちと、飲み過ぎたか…
「しかし…驚いたのぉ。」
「だが、アークデーモンを倒せるものなどそうそういないぞ…」
「だなぁ」
ん?”勇者”…同郷を呼んでる?…まさかな。会いたきゃ、向こうから来るのが筋だろう。こちらには用などない。
「平面で見ても小部屋位ならわかりやすいけど、この地図を重ねると…ほらこの辺りや、ここ。意味なく凹んでたりする。その前には偽の壁が…ってわけ。」
「なるほどのぉ…今回はどこまで潜るんじゃ?」
「そうだね…あと5日くらいじゃないかな…引き返す時間もあるし…」
「そんなに早く出ちまうのかい?」「物資…わしらが食っちまったか?」
「いや、最初からの予定なんだよ。この子を修業先に送るのが目的。ついでに寄ったってわけさ。次、いつ来るかは不明だね。ほかの仲間が来るかもしれないけど。」
「ふむぅ。そいつは残念じゃのぉう」
「じゃ、飯食っていきましょうか。今日は15階からですよ。」
予測とおり、旧コアルームを見学してから外へ。ここの権利は、協会に移譲する。上のと同様、研究機関により封鎖となるだろうと。一応、歴史遺産の括りになるらしい…ポイントゲットだぜぇ!…要らないけど…
「ガローヴィンさん。あの…機械の部品みたいのは何処から出るんですか?」
「ん?あの謎の部品?か?ありゃ、外れの採掘ポイントからわんさか出てくるぞ。その時は不運。ゴミ捨て場につながったと思ってあきらめるか、ごくたまに、アーティファクト…用途不明なものも混ざることがある。一攫千金目指して掘るかじゃな。」
「なるほど…それを上まで運ぶのも…」
「ああ。手間じゃが、地上に運ぶまでが仕事…義務になっちょるでの。坑道が埋まってしまうわい。」
「なるほどね…」
「お宅の大将みたく、好事家が買ってくれるから、一応店先に置いてるようだな。」
有名だな…うちの会頭…
「この辺りでも?」
「おお。運が悪けりゃ、ごみの山だ。ミッツ殿なら、”収納”に入れられるから、いいのぉ。」
!ひらめいた!
「じゃぁ、ここらで掘ってるクランのとこに、処理するっていえば処理代稼げたりは?」
「どうじゃろうか…大手は、マジックバッグの一つや二つ持ってるじゃろうからな。」
でした。でした。うちだけじゃ無いわな。バッグ持ってるの。それに、鉱石、宝石出てるんだ。実入りは大きかろう。バッグ位必要経費だよな。
「お!ここから魔物も出るんだろう?気、引き締めていくぞ~」
{応!}
(7日目 15階層 坑道エリア)
”がいぃいいいいい~ん、がん!がいん!がきぃん!”
「きゅ!」「きゅうう」
「だいじょうぶか?ビルック!」
「う、うん。ひゃぁ~連続はきつい~」
只今、角うさのパーティに遭遇。全ての突進を巨大フライパンでしのいだビルック君。脇からちょいちょいとおいらとトワ君でとどめを刺していく。
「ビルック、ご苦労さん。ドロップは…角かぁ…」
”びゅるるん”
「せめて肉なら…まぁいいか…進もう。」
「おう。ここ見てみろ。こいつが、”採掘ポイント”だ。ほれ。この、鉱石と鉱石の間に鶴嘴を入れるんじゃ。ほれ。やってみろ。」
「じゃ、俺から行くな!そりゃ!」
奇麗なエフェクトとともに、宝石がコロコロ。
「ん。当たりじゃのぉ!良い石じゃ。うむうむ。」
「僕も!ここに当てればいいの?」
「うむ。やってむるがええ。」
”かーん”コロコロ。
「うむうむ。筋がええのぉ。」
「もっとやっていい?」
「うむ。コレが消えるまでの」
”かーん。こーーん!かーん!こーん!こーん…”
「よぉ~でたのぉ。うむうむ。上出来じゃ。上出来じゃ。」
「ほれ持っていくがええ。良い石じゃて。」
「いいの?父さん?」
「うん。持っていなさい。困ったときにお金に換えるんだよ。よし!おいらも娘たち一丁がんばるか!」
「うん?ここは終いじゃ、新しいところを探さんとの。」
がっくし。
「おお!ここは良さげだな!よし!”充填!”とやぁ!」
”がす!ばきぃ!がん!””ぼすぅ!”「はぅうう!う!?」
思い切り振り下ろした鶴嘴は、目測を誤り、採掘ポイントを右に外し不壊のダンジョン壁を思い切り叩く。手に伝わるあまりの衝撃に驚愕、と同時に鶴嘴粉砕!大き目の鉄の破片が硬直し動けぬおいらの股間を捉える!”魔纏”してなかったら、危うくドロップするところだった…い…痛い!
「…なかなか、剛毅な股間じゃのぉ。」
「…うむうむ。羨ましい限りじゃわい。」
股間を押さえて蹲り、もがき苦しむおいら。息が出来ん!
「おっさん!危うく金玉ドロップするところだったなぁ!はははははは!スラミの餌だな!」
「トワ兄ぃ。」
「ほ、ふぅぅう…うっさいわ!ふぅふぅ…あーーー痛てぇ!」
「しかし、おっさんは鶴嘴禁止な。在庫も危ういからな。良し、ニャン娘たちのは俺が掘ろう!ほれ、鶴嘴出せ!」
くそぉ!
「そ、それにしても…人いないですね…おー痛てぇ。」
「そりゃそうじゃ、採掘に集中できんじゃろう?」
「うむ。角ウサギ、奴は厄介じゃからのぉ。普通は、鉄板で撃ち落としなんて無理じゃからのぉ…」
調理道具です…
「!ビルック!競争だ!」
「うん!トワ兄ぃ!」””かーん、かーんかーーーん””
「普通は一人じゃ掘れんのだぞい。自殺行為じゃ。」
「のぉ。」
「お!ウサギだ!やるぞ!」
「応!」
…元気で何より…
「ふぅ。堪能した。堪能した。結構掘ったぞ。ほれ、カラーストーンがザックザクだ。」
「とうさん!こんなにとれた!」
「良かったねぇ。じゃぁ飯にすっか。」
「元気出せ!おっさん!オッサンだってもう少しでゴールデンボール採れた…取れるか?くぷぷぷぷ」
「しつこいわ!」
「さてと、最初のチェックポイント…ここか?ここも未踏破だな。では早速。」
”ぐごごごぉぉ…”
「ん?人骨?なんで残ってんだ?」
宝箱に座る人骨。
「トワ君!注意!おそらく魔物だ!”鑑定”スケルトン?普通のとは思えんが…」
その時、重力を無視したように。うかぶように立ち上がる髑髏…その手には、刀が握られている。
「ぬぅ。武器持ちか…」
「しかし…」
「まぁ、悪魔、不死系は好物だ。よっと。」
”ばきゃ”
頭蓋から胸部までが粉砕。まぁこんなモノだ…ああ?
「トワ君まだだ!」
「ん?ぬぉおお!まだ動くんだ!」
”ぶん”と振られた刀をかわし、再び正眼に構える。肩甲骨にぶら下がった腕にしては中々の威力だ。ん?”きらり”…糸?…天井に”鑑定”をかける。…操死魔蜘蛛…?姿が見えないが…あの辺りか…
「ふぁいあーらんす!×5」
”しゅどどどど…”
「ぎゅくぅーーーーー!」
炎に包まれる、50cmはある蜘蛛がもんどりうって落ちてきた
「ぎちぎちちちぎ…」”じゅーじゅー”
徐々に消え、ドロップ…またもや、器官・内臓系か…”びゅるん”…あ…。
「なんとまぁ。蜘蛛が操っていたのか…こんな小さい…蜘蛛にしちゃでかいがな。サンキューおっさん」
「どうも、魔力の糸…そういったスキルもあるんだねぇ。おいらも試してみようかな。」
「悪いことに使うなよ。捕まるぞ?」
しないよ。
「…まぁいい。”鑑定”…罠なしだな。いいよ。開けて。」
「僕が開ける!いい?」
また調理具か?
「いいよ。開けてみ?また調理具だったり?」
だよねぇ~
「宝箱、お~ぷん!おおおおおおお!」
な、なんぞ!
「どうした、ビルック?ミミックか?」
「ちょ、ちょ、ちょ…」
「ちょ?なんだ?ビルック?」うん?
「ちょ、調理道具詰め合わせ!ダンジョン産!」
おふぅ…
…ボールやら、まな板?肉たたき…マッシャーまであるわ…ビルックテンション爆上がりなのも理解ができる…引きの良さか、はたまた呪いか…
「おっさん…神様が何かしてるのか?」
「さぁなぁ。料理馬鹿の怨念か、ダンジョンマスターがコックだったのか…まぁ、喜んでるから良いんじゃね?」
「…ビルックだから良いようなものを…冒険者だったらがっかりだな。」
「いや、そいつは、ミスリルやら、聖銀で出来とるぞ…」
「うむ…売れば相当な額になろう…」
マジですか…
「ダンジョン産の料理道具すげぇな…」
「…父さん?」
「うん?ああ。もってなさい。使う機会があるかわからんが…」
「はい!」
「み、ミッツ殿?」「なんとまぁ…」
「今の階のメインのチェックポイント。さぁどうでっしゃろ!プレート無し!”鑑定”…罠なし!」
「よし!開けるぞ!隠し部屋、オープン!」
”ぐご、ごごごごぉぉぉぉ…”
「”ライト×2”気を付けてな。」
「応!行くぞ、カイエン。」
「はっ!」…
トワ君、カイエンのあとに続き、細い通路を行く。角を曲がると…
{おおお!}…
S級採掘ポイントだっけ?そいつが2カ所。小さい採掘ポイントが5カ所。そして…大きな…特大の採掘場所が1カ所…。で宝箱が、3個うち一つが金の宝箱…。
「記録にもないぞい。」
「このようなものが…」
「”鑑定”罠なし。開けていいぞ。しかし…大きいですね…」
「宝箱オープン!…金の鶴嘴ゲット!」
「宝箱お~ぷん…ヘルメットだっけ?」
「ふ、ふははははは!メインイベントぉ~金の宝箱!おーーーーぷん!……”銀の鶴嘴”?ガックシ。」
「どれ”鑑定”…”聖なる鶴嘴”?一回こっきり?そこのでかい採掘ポイント用だな。」
「な、なんと…一回のみ…?」
「そんなことが…」
「丁度よかった!ドワーフの方がいてくれて。お願いしますよ。」
「おう!おっちゃん!頼む!」
「む、むむむ…責任重大じゃのぉ…」
「う、うむ…そうじゃ、ここは、15階…ゴレツカの奴をを呼んでくるか…クソ度胸はピカ一じゃ。」
「うむ。それが良いかもしれんの。採掘技術もここいらじゃ一番だしの。」
さしものドワーフ族もビビる、一回こっきりの特大ポイントかぁ
「…信用は?」
「ん?信用してくれとしか言えんの。」
「わしらの同胞じゃ。鍛冶仕事はせんで、採掘一本の変わりもんじゃがの。任せてほしい…の。」
「うん!信じるよ。んじゃ、呼んでくっか!おっちゃんたちと行ってくるよ。おっさん、カイエン、ビルックは茶でもしていてくれ!」
「大丈夫か?カイエンも…」
「ダメだ。おっさんには一人付く。大丈夫だ。おっちゃんたちだって強いぞ。」
「うむ。ここいらならまだまだ余裕じゃ。」「安心しとれ。」…
「うちのダンジョンでもできるのかねぇ」
「可能…なのでは?」
「今までは”素材”の生成はしてこなかったからねぇ。いや…家やら町やらやってっか…今更か?鉱山の一つも作るか…」
「どうでしょうか…案外ドワーフの方々は反対されるかもしれませんな…言っておられたでしょう?精製技術…そういったものに関心があるのでしょうな。」
「なるほどなぁ~そういう考え方もあるな…昨日もドワーフ見ないものな…」
「本当にドワーフの方、付いて来るやもしれませんな。」
「一回話してみるか…茶でも飲もうか。」
「おまたせ~この方が、ゴレツカのおっちゃんだ!」
…なんか酒臭いぞ…
「初めましてミッツです。よろしく…お主等、酒臭いぞ…大丈夫?」
「ゴレツカだ。よろしく頼むぞい。」
「うむ。少々な。」「なぁに、水じゃ。水!」
…おい!
「ふむ…なるほどのぉ。記録の通りじゃな。”金の鶴嘴”か…で。こいつが問題の…ふむ。」
「んじゃ、ゴレツカのおっちゃん、景気よく頼む!」
「うむ。どうせ、調査はできんしの。変にいじって消えちまったら、敵わんからな。どれ。」
ヘルメットをかぶり、白銀に輝く、聖なる鶴嘴を担ぎ、一点を見つめるゴレツカ氏。おもむろに振りかぶり…
「ふん!」
おびただしい数の光の粒が周囲に散り、”ごろり”1塊の鉱石が転がり落ちる。と同時に、採掘ポイントと、聖なる鶴嘴が消えた…
「ふむ。上手くいったかのぉ?」
「どうじゃ?何が出た?」
「どれ…」
「どれどれ、”鑑定”濡羽色金? 緋緋色金の親戚か?」
「なんとまぁ…」
「見たことも無い金だな…」
「おい…まったく熱を持たんぞ…」
「どれ…吸われておるのか?加工はできるのだろうか?どれどれ」”…”
「お、音すら吸われるのか…」
ハンマーでたたいても音がしない…
「…ミッツ殿の”鑑定”が通るのであれば…既存の金属なのだろう…」
「あ、おっさんの”鑑定”は特殊だ、”神眼鑑定”神の目だからなぁ。伝わってないかもしれん。」
「な、なんと…神の目…」
「あり得るのか…いや、”勇者”様だ…不思議はあるまいな。」
「やはり…しかし…。」
「まぁ、帰ってから考えよう。老師たちの知恵も拝借して。うちの炉なら、溶かせるかもしれないし。」
「そうだな。これ貰って行っていいんだろう?」
「むぅ。勿論じゃ、だが…」
「よせ、ゴレツカ。主の仕事はここまでじゃ。」「むぅ。」
「ほれ、金の鶴嘴の試掘もやってしまおう。」「…うむ。」…。
「今回も聖翠銀がでたのぉ。宝石の類も特級品じゃて。」
「うむ。上と同様、ここも”国”に任せた方が良いの。」
「いやはや、この国は、ヴァートリーに対価を出せるのか?」
「どうじゃろうのぉ。政治の話にも成ろうが?」
「人族同士で話せば良いて。どうせわし等にゃ、関係ないわい。」
「んじゃ、ちょいと早いが、今日はここで休むか。安全地帯っぽいしね。」
「そうだね。ゆっくり休むとしようか。」
昨日もゆっくり休んだけどね。
(8日目 15階層 坑道エリア)
「おは…よう…」
「父さん!おはよう!」
”ずん”
…おふぅ…頭に響くぜェ…昨日はちと、飲み過ぎたか…”回復”!
「さてと…今日から、16階の攻略となるが…もう、帰らん?」
「却下だ!おっさん。帰りは早いだろう?もうちょい潜るぞ!それよか、ドワーフおっちゃんたち、詰め所まで送るか?」
「ん?心配無用じゃ。わし等なら問題ないぞ。」
「まぁ、ついでだ。送りながらいくさ。」
「それじゃ、飯にしようか。頂きます…」
少し戻る形となったが、ドワーフのおっちゃんを送り届け、16階層を目指す。おっちゃんらは、兵を配した後、地上に戻るそうだ。大忙しだな。おいら達のせいだけど。
この階層、角ウサギばかりと思っていたが、狼も交じる。狼がウサギの指揮を執っているのか…自然界ではまず見られない光景だろう。
しかも、この狼…不利と見るや、ウサギを置いて逃げる…貴族のような奴だ(偏見)。まぁ、そういったやつは等しく処分だがな!トワ君もムキになるほどムカつく所業だわな。ドロップ品も牙、毛皮と微妙…本当に一攫千金目指せるのか?このダンジョン…。




