通信機。
いらっしゃいませ。
何とか塩の航路は確保できそうだな。ソルトロード?ザック殿なら適任だろう。
「父さん、食事は?」
「おお!ビルック。悪い食べてきた。そういえばパンの修業してるんだってな。」
「ええ。まだまだですよ。奥が深いですね。それに毎回同じように…温度変化の調整も…楽しいですよ。少し、食べて見てくれませんか?」
「ああ、いただこう。どれ…」
皮はサクリと仕上がってるな…キメの細かい良いパンだ。弾力が違う。
「旨い…な。」
「でしょう?ここの小麦は一級品だし。普通の小麦でも近い味が出せないかも試してるんだ。」
「そうだな…修業先じゃ使えないものな…いっそのこと売り込んでみるか?」
「使えるようになるといいよね。でも、遠いからね。量だって要るでしょう?」
「さぁ。どうかねぇ。特殊なお宿だし…出発が遅れたけど…一週間後には出発しようと思っている…」
「うん…ありがとう。父さん。」
「…店、潰れてたりして」
「父さん!」
うふふ。
いい加減に送り出さないとね。案外すぐ慣れるさ…雹達の顔だって見てないしな…どこ行ってるんだ…まったく。
朝の鍛錬、尻をなでながら魔術師組へ。お!ザック一家も付いてきた。ほう…そこそこ回せている?そういや、ビルックの気配を感じられていたな…豚耳族の青年を”怖い”と。
「ザックさん、瞑想を?」
「ええ。うちの槍術に、魔力を乗せるもの、身体強化も多くありますので。鍛錬の一部となって伝わっています。」
「なら、大丈夫だね。あの輪に入るといいよ。ほら、君たちも。」
ビルック教祖の輪に加わる。そう、魔力の循環鍛錬だ。
おいらは、ラグとハルの”収納拡張”の鍛錬?だ。まぁ、魔力回しだがね。ハルはまだ量が足りない感じだ。まだ小さいものなぁ。
「ふぅ…結構きつい…な。」
ザック殿も限界か?まぁ、キレイに回ってる方だろう
「父ちゃん疲れた…」
「ほんと、豚耳族の兄ちゃん、すげぇな…」
「ああ、俺らじゃ勝てないな…」
「私も頑張ろう。」
「お疲れ。魔力の鍛錬になるだろう?」
「ええ。それにしても…彼は…」
「料理のためならどんなことも厭わない…変態だ…」
「変態…て…」
ザック殿も呆れ顔だ。
「ひどいよぉ!父さん!」
「ふむ。仕上げだ、おいらと回すか。」
「はい!お願いします!」
座禅を組み向かい合う。トラン〇ム!…おうおう、付いてこれるのか!もはや、魔術師としてこの世界に敵うもの無しではないのか?それにしても気持ちの良い気だ。
「ふぅ。良くも修めたなぁ。修業先でも続けるんだぞ。」
「はい。父さん!」
「怪物だな…まさに。」
「あそこまで。行けるのか?お、おれも…」
「ああ!ローゼがんばろうぜ!」
「ラディも!」
お?ザックさんとこの子にも火が付いたか?頑張れよぉ!
ザック一家を朝食に誘う。これからも付き合っていく”家”だろう。良い関係でいたいしね。それと、
「これからザックさんに輸送隊を率いてもらうことになった。留守の時はうちに食いに来るといい。」
という事。
「すまないミツル殿。しかし、御迷惑では?」
「みんなで食べたほうが美味しいでしょう?お気になさらずに。さて、食事にしようか。頂きます!」
{いただきます!}
「うま!」
「うまい!」
ふふふ。そうであろう!分厚いベーコンが出たら歓声が上がったよ。
「あれ、セツナっちは?」
「ザルバック村だよ?なんか用ある?」
「ルー殿にな。」
「ああ、そうか!俺が迎えに行ってくるよ。」
「ああ、頼むな。」
さてお次は、”通信機”か。
「おはよう会頭殿。すまないねぇ。」
「いやいや、上手くいったらと思うとね。ここから動かなくてもいいだろう?」
「…そうか?いいのかそれで…で、会頭には悪いが…ここまで。」
「んな!」
「そりや、コアルームはマスターじゃないと入れんて。」
「ぬくくく。」
「安心してくれ。”解析”だ。壊したりしないって。」
「え、ええ。あわよくば…とも思いましたが…」
「悪いな、会頭」
<ふむ。頭の中身をいじっても良ければ通してやっても良いぞ。>
ルー殿ぉ…ダメだって…
「…遠慮します」
<うむ。それが良かろう。我らを信じよ>
「良かったら、ザルバック村、行ってみます?鍛冶師の村になりつつあるようですが。」
「例の、セツナ様の村!”ゲート”!ぜ、是非に!」
「アルス、案内してやってくれるか。」
「はっ!お任せを!」
「じゃ、預かるね。では。」
「お玉さん、おはよう。」
《…おはようございます。ミツル爺さん。…それは?》
さすがお玉さん。目聡いな!
「この世界の通信機?おいらたちも欲しいなぁ。って。」
《…欲ばりですねぇ。まぁ、生活の向上にはなりますね。携帯?スマホ?》
…何で知ってるんだ…?
「でだ、”解析”。できれば作成したいと。これは返すから壊さないでね。」
《…流しましたね。まぁ、良いでしょう。さぁ、こちらへ。》
指摘された台の上に置く。ああ、外見は昔の大きな無線機のような形状だ。
ミカン箱くらいの本体から、しゃべる部分が出ている。声は本体から聞こえるのであろう。本体にはこぶし大の魔石がはまっている。常に魔力で満たしているそうだ。緊急用だしな。
《…ではさっそく…解析中…解析中…解析中…》
「ルー殿、悪いねぇ。付き合わさせて。」
<なぁに、力になれるのだ。今後も頼ってくれ。>
「すまないね。」
「じゃ、飲むか!」
…おいおい。
<いただこう。>
《…解析中…良いご身分ですね…解析中…良いご身分ですね…解析中…羨ましくなんか…解析中…》…。
「おいらは飲まないから…見逃してあげて。お玉さん…」
《…簡単な転移陣ですね。ルー様、術式展開します。自動翻訳は機能するでしょうか?》
<どれどれ…。稚拙な…大量にこさえたモノなのか?こりゃ、量産品だな…自動翻訳は問題なかろう。頭の中で変換されているようだ。>
そうなんだ。
《…核の部分、魔力電池は”水晶”で補填できそうですね》
<ふむ…術式展開用に小粒の魔石はいるな…振動を使うのも面白いな…術式は…>
何やら、プログラミング?が始まった。
<この大陸中なら、これで十分だろう…>
《…設計…一枚に術式を刻み、もう一枚を電池。ミツル爺さん以外は、電池の交換を推奨します》
「大分小型化になるな。これって指定した相手に話ができるのか?」
《…このタイプのモノは、一斉通知もしくは親機への通信のみですね。》
<個別指定は必要か?指定通話だと…移動式は無理だな。ここに大きな切り替え場がいるな。>
《…お爺さんの考える”携帯電話”のようにはできませんよ。無線機…いえ、インターホンに毛が生えた程度でしょうか。簡略化、運用を見据えれば、一対の通信機、片方をここへ。というのが楽ですね。勿論私が介在すれば携帯に近いものもできますが…この先…次世代の方の使用を考えるなら、先の一対の通信機の運用が楽でしょうね。》
「なるほど。人が仲介するわけだな。昔の交換手方式…か?」
「ねぇねぇ、お玉さん。カメラみたいのは作れないの?記憶媒体で保存できるの。出来たら作って!」
《…ガメラですか?火炎放射は吐きませんが、似たようなのはいますよ。》
「いるのか…じゃなくて、カメラ、こう、姿を紙に写し込むような?」
ないすツッコミだ!
《…魂、吸われそうですね…》
お玉さんも昭和か!
「それはさておき、その機械に接続できるもの一つと、とりあえず、お玉さんの運用…3…いや、5対作っていただけます?試験運用したいので。魔石?預けておくわ」
《…わかりました…完成まで24時間…元の機械の機能のものは一時間後。》
「しかし、上手くいかんな…ガメラかぁ。うんうん…」
よもや狩りに行こうなどと…
「じゃないって!カメラは?」
≪…そうですね。もう少し、データと、私の演算機能が上がれば…≫
「データかぁ。かといってスマホ生贄に…もう出しても良いかな…」
「使い勝手見てからで、良いんじゃね。」
「そうだね。今は、カメラ機能…魔力で充電できればいいな…」
《…分解…解析しましょうか?改造も。異世界の技術…関心がありますね…さぁ…さぁ!…提出願います!》
おふぅ…食いつきいいなぁ。
「これで勘弁してください。」
そう言いながら、大判の電卓を差し出す。ソーラーパワーと電池のごついヤツだ。
《…今回は譲歩しましょう。ふむふむ…》
…なぜに上から?
「じゃ、行くか…お玉さん、コレ返していい?」
《…是…》
聞いちゃいねぇな。
「良いみたいよ。トワ君。返却任せていい?」
「ああ…任せてくれ。まったく。いいおもちゃだな…ルー行こう!」
<ふむ。一杯やろう!>
まだ午前中だぞ…まぁ、ルー殿と、トワ君にアルコールは効かないからな。ジュースみたいなもんか。二人がコアルームから出て行く。さてと。
「なぁ、お玉さん。畑予定地、湿地…水田にしたいのだけど…」
《…是…》
「聞いてる?」
《…是…》
「お前の母ぁ~ちゃん、で~べぇ~そ!」
《…何を馬鹿な。私の母は…まぁいいでしょう。》
「聞いてたんだ…母ちゃんって?」
《…内緒ですよ。人類永遠の謎です。で、水田ですね。エルフ国にあるようなものでよろしいですか?》
「畔で10反単位で区切ったりは?」
《…反?…991.736平方メートル…300坪、1町分。了解しました。農具倉庫なども作っておきますね》
「ああ。お願い。牛にひかせる田起こし…犂やら、平らにするやつ…なんだっけか…畔塗、田鍬もいるな…某男性アイドルグループが田畑をやるTVで見た、型?カタも欲しいな…奇麗に並んでた方が気持ち良いものな。脱穀機とかは…小麦どうしてんだ?聞いてからでいいか…育苗どうすっかなぁ。おいら、育苗センターの苗箱育苗しか知らねぇもんな…まぁ、何とかなるべ。
《…米ですか。上手く育つといいですね。心の味ですものね…》
「意地でも成功させる!そして品種改良!目指せ!コシヒカリ!だな!餅米もほしいな…」
《…夢が広がりますね。ミツルお爺さん。》
「そりゃそうだ!主食だし!これで、おいらは無敵になれる!じゃ、上行くわ。よろしくね!」
《…是…》…。




