盗賊と難民と。
いらっしゃい!
「盗賊連中か…次から次へと…減らねぇな。人口激減してんじゃね?」
「ははははは。ティネルにしろ結構人口居るからなぁ。30万人くらいいるんじゃない?」
「はぁ?そんなにいるかぁ?」
「意外に居ると思うぞ。衛星村も農地だってあるだろう?うちも殖やさないとなぁ。目指せ!江戸!100万人都市!」
「…まずは1万人だな…」
まぁね…
前方に荷車を曳いた一団が…
「ん?流民?」
「おそらく、村が襲われたりしたのだろう。」
「どうする?」
「放っておきなさいよ。面倒だし。特に人族は。」
「…姉貴ぃ。」
「どうするも何も…まぁ、声くらいかけてみるか?」
「お~い。どうしたんだ?」
「ん?…獣人?ふん。獣人に相談することなぞ無い…」
「そうか。悪かったな。」
これが現実と言うモノ…だな。
…。
「だそうだ。」
「特に年配の連中に多いな。老害としか言えんがな。」
「それは、僕たち獣人だって一緒…ほら、北門のだって。」
「ああ、そうだな、兎耳族もそうだったよなぁ。それだけ根が深いのだろうさ。」
「あの子…ケガしてる…可哀そう。」
ミミルの頭をなでる。
「うん。でもなぁ。勝手に手を出すわけにもいかないしね。残念だけどね。」
”どどどっつどっつど”ん?
「まぁ~てぇ!逃がさねぇぞぉ~」「ひゃひゃひゃぁ!」
「ひぃ!」「お、追って来たぞ!」
ったく…本当に…盗賊という人種は…いや、もはや人じゃねぇな。騎馬、10人か…
「ん?ヴァートリィ?」
「ちょうどいい!持ち物全部置いてけぇ!」
「おい!やめろ!ヴァートリーに手ぇだすな!」
「構うことねぇ!”紅”じゃねぇんだ!ガキだ!バラしちまえば”ぶひゅ”…」
「げぇ!」
アイスランスで奇襲一発!
「あいすらんす!トワ君!セツナっち、頼む!皆は父ちゃんのところに。”充填!」
「応!」
「了解~!」
戦闘狂?の勇者様姉弟は放たれた弾丸のように敵に突っ込んでいく。
「ま、魔術師がいるぞ!先に ”ばっしゅ!”…」
「ま。まずい!手練れ ”びしゅ” だほぉ…」
血しぶきと首が…ぽん!ぽん!
「このぉおお!」
「お?」
斥候職?いつの間にかに。どれ…燃えよぉ!炎の ”ばいぃいいいいいい~ん” …は?ばいん?
ビルックの身体強化?ジャンプ!そこからのフライパン一閃!ありゃ、死んだな…。
「ナイス…ビルック…だが無理すんなよ…」
「お見事でございます。ビルック様。」
「家族を守るためなら…容赦しない!」
紫色の気を纏うミニ鬼神降臨!
おふぅ…普段おとなしいの怒らすと怖いわ…。
カイエンも気が付いていたようだな…恐らく、修業に出すことを念頭に”こういった”ことにも慣れさせているのだろう。おいらにゃできない事だわな。
あっという間に殲滅。懐を漁り、首を掻き切る。一応、賞金首かもだしな。
「おい。アジトに案内してもらおうか。」
「へ、へへへ…誰が…」
”ひゅひゅん”ぽろぽろり。両の耳が落ちる…
「痛!いてぇ!」
「私が聞くわ。次は左手の指…いいわね。」
「何!このガキ!…いで、いでぇよぉ」
5本の指がポロリ。
「あら、さっきの威勢は?次は…そうね。鼻をそぎ落とす…」
「あ、あんな、案内します!案内します…」
「最初からそう言えばいいのよ…馬鹿ねぇ」
じゃぁ行きますか!
と、言う段で、逃げていた難民の一団が戻って来た。
何しに来たんだ?サッサと逃げればいいものを。仲間が来たらどうすんだ?
うん?さっきのジジィが家族?息子?と前に出てくる。
「お、お前たち、そいつらはうちの村を襲った族だ。」
「…」だから?何が言いたいんだ?
「き、聞いてるのか!」
「…で?なんでしょう?」
「そ、そいつらの財産は我々のだ。じょ、譲渡を要求する!」
「拒否します。さっきは手助け無用と言ったでしょう?それに我らがいなければあなた達は、”今”皆殺しだったでしょう?困窮してるのはわかるが、無理を言ってはいけない。手を出せば、”犯罪者”になりますよ。そして…殲滅するが?」
「う、うぐ…これから村に行くのか?」
「…気が変わりました。そいつは要らん。」
「だね。ほんと、面倒だな。」
「だから言ったでしょう?人族なんて…まぁ、こんなモノよ。ふぅ」
セツナっち…。
「ま、まって!”ぶしゅ”…」
盗賊の残りの首を掻いて麻袋へ。
「先を急ぎます。では。」
「か、解放を!」
「私たちの村を…」
「いい加減にしてくれ。そんな義理はないよ。では。いくぞ!」
「ま、待て!」
「おい、ジジィ!いい加減にしねぇと斬るぞ。出るとこ出てもいいんだぞ?いや、斬り捨てるか…盗賊の類だな。」
「あなたたち…こんなジジィについていっても、どこも受け入れてくれないわよ。いい加減見切ったら?このおじさま優しいからアレだけどぉ。普通、皆殺しよ。アンタ達。」
アレって…なんぞよ?セツナっちぃ!
「…」
「な、なにを!」
「…。」
「…ああ…その子の言う通りだ…俺は自由にさせてもらうよ…もう村は捨てる。」
「お、おい!」
「昨日だってティネルに断られただろうが!あんたの高圧的な態度でな!」
未だに”村長”の肩書きにしがみついている老人。村から出れば、そんな肩書きなんかね。
それに付き合わされてる村人も難儀だわなぁ。
「そうね…今だって…もう死んでいたわ…私も村を捨てるわ…」
「もう散々だ…村長…あんた等は勝手にしてくれ。」
「おい!村に帰れたら…」
「もう、帰らないよ…」
「ああ…」
「流民として扱われても…ね」
「き、貴様らのせいだ!」
「ちがう。もうついて行けないってことだ、村長。」
「こ、この…小麦は分けぬぞ!」
「おいおい!そいつは村の…いいよ。あんた、今ので皆の気持ちが決まったよ…」
男たちが棒や農具に手をかける。
「わ、わし等を殺すかぁ!ああ!盗賊めがぁ!」
”ぱんぱん”
こりゃ、血を見そうだわ。手を打ち、皆を注目させる。
「はいはい。そこまで。こんな業突くジジィでも殺せば殺人。そんなわずかな麦でも奪えば盗賊よ。もう、盗賊に堕ちるしかないぞ?
それに、入町を断られたのは、そのジジィ一族のせいだな。”強姦魔”の称号も生えてるしな。”判定石”?でバレたんだろう。よくもまぁ捕まらなかったこと。賄賂でも渡したのか?村人の金で。」
「はぁ?最低…屑ね。消毒が必要かしら?」
「な!」
「オイ!」「村長!」
「そこの…親族?息子たちか?そいつらもな。」
「で、出鱈目を…」
「おいらにゃ、”鑑定”がある。何なら、教会の”鑑定書式”つかってみるか?」
「…」
「村長?」「…噂は本当だったか…」
「おいおい、まじか…それじゃ、どこ行ったって無理だな。犯歴に”魔”がつくっちゃ、相当なもんだぞ?いっそ、斬るか?おっさん。」
「「「…」」や、やめてくれぇ」
「ほっとけ。で、どうする?あんたたち。援助の準備はあるが?」
「多くの無礼…すまない…お願いできるだろうか…」
「ああ。受け入れよう…ただし、”鑑定”は受け入れてもらう。」
「ああ。わかった。」
「お、おい!お前ら!まて!」
村長一家を残し、村民たちが自分たちの荷車を押しだす。
「おいー!」
まだ騒いでやがる。うん?村長の荷物もあるのか?
「次の休憩場まで我慢してくれ」
「ああ。すまない…」
「で、盗賊の規模は?」
「30人くらいの規模でした…何とか持ちこたえてはいたのですが…敵が引いた隙を見て逃げてきました。」
「わ、私ら、小作なので…」
「ぶ、武器は持ったことが…」
「門衛とかは?」
「盗賊の仲間だったんだ…引き入れたんだ…」
「ああ、すぐに気づいたから…人が、居ないんで…」
「違うだろう!村長が値切ったからだろうが!」
なるほどなぁ。今は需要多いからなぁ。大方、今までの護衛の依頼料が上がり、値切ろうと思って解約。新しく雇った門衛が、賊だったか。”鑑定”…スキルだもんなぁ。判定の魔道具も小さい村にはないだろう。あの村長だ。人災だな。
野営地につき、炊き出しを行う。魔道コンロに大きな寸胴を乗せ麦粥を作っていく。ビルックに任せる。奥さん連中が進んで手を貸してくれているようだ。
うちの麦を使ってるので驚愕の声が上がる。じゃぁ、おいらは治療でもするか。小さい子から順に診ていく。重篤な傷の者はいない…そういったものは放置されたか。
「さて、頭領殿、どうすっかね?」
「どうって、放置だろう?ここまでやってやったんだ。姉貴の言う通りだったな…面倒…。あとは村の方針だろう。そうだ、孤児くらいは引き取ってやってもいいがな。あとで邪魔と捨てられても救った甲斐がないだろう。」
「そうだな。もともと獣人排斥派っぽいしな。孤児…いるな。」…
「さて、我らはここまで。先を急がせてもらう。麦も少しだが提供しよう。皆で分けてくれ」」
「は、はい…ありがとうございました…」
「なんなら、孤児がいればうちで引き取ってもいい…足手まといと疎まれては可哀そうだからな。安心してくれ。知り合いの孤児院に入れるつもりだ。」
「い、いえ、その点は」
「私たちが…」
「そうか。なら…うん?」
すると一人のボロを着た少年が…10歳くらいか?走りこんできた。切羽詰まった表情で…
「お!おじさん!連れて行ってくれ!奴隷のようにこき使われるのはもう沢山だ。俺一人なら我慢もできる!でも…妹や弟まで…俺一人じゃ…俺だけじゃ…足りないんだ!」
涙を流しながらの直訴…心の叫びという奴だろう…響くわ…頑張ったな…坊主。
「ほう…同郷の…忘れ形見だろうに…」
「どうしようもねぇなぁ、ここ迄、子供追い込むなんて…斬っちまうか?」
「…い、今は、緊急時、そ、村長の判断で…」
「まぁいい。トワ君、退いてくれ。よし、坊主、他の孤児も連れてきてくれ。親族に慣れてる子などは、その親族も。」
「わかった!まってて!」
「だ、旦那!」「勝手に」
「言われてみれば、着てる物にも差があるな…あんまり舐めた事すんなよ…斬り捨てるぞ。」
「…だな。」
親を亡くしたんだ…気を使ってやるのが筋だろうに
「…」「…。」
「ひ…」
「おじ様、落ち着いて。トワも。こんなもんだって。人族なんか。希望見過ぎ。じゃ、そういう訳だから、余計なことは言わないで…自主的に協力してくれると助かるわ。…解った?」
「…」
「…は、はい」
セツナっちの迫力ある”脅し”が一番効いたようだ。さすが。
子供の約半数…20人弱が孤児だという。
一人は乳飲み子を背負っている…まだ小さいのに…。どうにか乳は分けてもらえていたようだ。その乳を分けてくれていたというご婦人も襤褸をまとって…子供と旦那を亡くしていた…。
話をし、彼女も連れていくことにした。
「君たち、うちの村の孤児院に入れようと思うが、どうだろうか?」
「お、おれたち、年上は働きます!どんなことでも!ですから、弟、妹は…小さい子は孤児院に…」
「心配するな。皆、一緒だ。ご婦人、良かったら、孤児院の手伝いをしてもらいたい…その子にお乳も願いたい。」
「…はい…い、生きる場所を…」
「ええ。大いに期待してますよ。」
トワ君が早速馬車を出す。驚く孤児たち…そして大人達…
「え!」「そ、そういえば…竈…」
「食べ物も」
「…そうだった、どこから?」
…ちろりとトワ君をみる。
「恥ずかしいから一回しか言わんぞ。俺は”勇者”だ。安心して付いてこい!」
「ええ!」
「”勇者”さま…」
「しゅうしゃしゃま。」
「よし!馬を。都合よく手に入ったな。御者を習いたい子は交代で教えてやる。皆、行くぞ。」
{はい!}
もう一台出し、盗賊の乗ってきた馬を馬車につなぎ準備完了。
小さい子と、御婦人は中へ。御者を習いたい子、大きな子は荷台や御者台に…。遊びで屋根にも張り付いているのだが…。頼むから落ちてくれるなよ…。
驚き、硬直してる村人たちをよそに馬車は走り出す。宝を乗せて…




