生きるためにも先ずは情報だな!
いらっしゃいませ~本日もよろしくお願いします!
ふう。異世界にきての初めての朝。何とか生き延びることが出来てるね。
スライムに襲われる夢を見てちょっと気分はサゲ気味。
メイドさんに洗顔セット用意してもらって顔を洗う。このメイドさんは普通……。
昨日のムチブリメイドさんは、特務のようだな。おっと、歯ブラシは……なんだこれ? 枝か? 江戸時代か! ん? 良い香りがする……黒文字に近いか?
楽しみな朝食……普通だな。パンと薄味のスープ。具材はぁと……野菜と肉の屑? まぁこんなもんだろう。
あと、肉をただ焼いて塩振ったやつ。ベーコンみたいに燻製だったらなぁ。それにしても質素だ……。ま、使用人の食事だろうからね。
目玉焼きが食いたい。
おいらの朝食は毎日目玉と、トースト、甘いカフェオレだったからなぁ。高いのかもなぁ……卵。養鶏なんかしてないだろうし。あったとしても卵生む周期なんて知れているだろう。
そうそう、白パン? ハイ〇のアニメに出てくるような見た目だ。発酵が甘いのか、そういった物がないのか、ふっくらというより、みっしりパンだな。薄っすら酸味があって、これはこれで美味い。
朝から肉だとおっさんの胃袋には重い……のだが、こちらの世界に来てから調子良いんだよなぁ。身体性能が上がったのかもしれない。要検証だな。
「ふぅトワ君おはよう」
「おはよう。おじさん。今日も生きるぞ」
「ああ。頑張ろう」
生きる……か。
食後、もりもりっとスライム君に世話になる。もう愛着が……おいらのあんなとこやこんなとこ見てるんだろうか……袋の裏の筋までも……恥ずかしいぃ!
……アホ言ってないで打ち合わせをしよう。死んじまうって。
……しかし、待てど暮らせどクソジジィからの接触がない……放置プレイか?
「こないな……」
トワ君とお茶を馳走になってる。結構飲んだな……。けふ。
トワ君は手持ちぶたさでくるくると指先でカップを回している。
「よくわからん国だな……。呼んどいて放置って。お~い、メイドの姉ちゃん、俺ら、何すればいいんだ?」
「え? えっと……」
……メイドのおねえちゃんだって知らんわなぁ。
「聞いてきて。身体動かしたいし。剣の訓練したいし、ザックさん……だっけ? こっちから行くから話付けてよ」
「は、はい……聞いてきますぅ」
……ぱたぱたと出ていくメイドさん。
「普通の子だな……昨日のはトワ君篭絡用の特務メイド部隊だったのか?」
「……なんか、かっこいいなそれ」
「めちゃ、フェロモン出てたもんな。ボンキュボーンだったし」
「おっさん、……おじさん興味津々?」
うん? おっさんでいいぞ……トワ君
「まぁね、でも、この国のお偉いさんと義兄弟になるのはごめんだわ」
「ははは、確かに。そうそう、ミツルおじさん。……おっさん……でいい?」
「ああ、構わんよ。おっさんだもの!」
「だよねぇ!」
……メイドさんが戻り、部屋を出てもよいと許可をもらってきてくれた。
早速、予定通り、ザック第二騎士団長へ武器の使い方を教えてもらうべく訓練場に向かう。
クソジジィも文句は言わんだろう。練習も無しに魔王退治もないだろうからな。
しかし……ちぐはぐな城だなぁ。王の居住スペース? 王の目のつく所、足を踏み入れる所は煌びやかなのだが……裏側はボロボロだわ。
試しに、クソジジィに図書館の使用申請をだす。さて、あのクソジジィどこまで開示するか楽しみだ。使用不可もありえる。嘆願書を作成し後でメイドさんに持って行ってもらう。
メイドさんの後に付いて進む。
無骨なブロックの道……外、中庭にある”訓練場”を目指しているようだ。
第二ということは、第一騎士団はある。そのあといくつあるかわからんけど。近衛騎士団もあるだろう。大国なのかもなぁ、ここ。
……で、今はザック隊長の対面に座っている。
目前には土のむき出しになった校庭のような訓練場が広がる。
「早速だが、剣の使い方を教えてほしい。刀ってあるのか?」
刀かぁ。憧れるね
「王からも話が来ています。剣の使い方も知らないで魔王退治もありませんからね」
「ん? 言葉使い、気にしなくていいぞ。敬語は面倒だし」
今日もmy勇者は絶好調だな。爪の垢を煎じて飲んでみるかな。
「たすかる。で、刀? だったな。どんなものだ?」
「簡単にいうと斬るための剣だな。過去にも召喚してるんだろう? そいつらも言ったと思うわ。刀、刀ぁ~ってw」
……まぁなぁ……浪漫だわな。
「あ、そういえばあったな。片刃で反ってるの。鍛造とかどうとか?」
「そう! それそれ! やっぱあるんだな!」
「ん? ここにはないぞ」
「はい?」
「アレはすぐに折れるし。ほら、俺達の装備、鉄ヨロイだ。鎧で防げるからなぁ。ここでは切れ味よりも叩き切る剣が主流だな」
そりゃ、折れるわな。
「鍛えればそこそこ……」
「トワ君、鋳物しかないのかもよ? ここ。それに鍛造やら素人考えで上手くいくはずないって」
「はぁ? ドワーフとかいないの? ファンタジーなのに。謎金属とか」
「ファンタジーがなにやらしらんが、ドワーフはいるぞ。鍛冶が得意で酒好きのずんぐりむっくりだ」
「そう、それそれ。で鍛造の剣ってないの?」
「あんな高価なもの、城勤め全員に支給できるか! お貴族様や、高給取りの冒険者くらいだ」
ふむ。鍛造自体はあるらしい。
「身を守るためでもあるだろうに……」
「だから、甲冑は厚くて重い。くくく」
「はぁ。どっちが先やら」
「まぁ、ここのお偉いかたはおケチでいらっしゃるゆえ、支給品の安物がイヤなら、自分で持ち込むんだ。誰も死にたくないしな」
「ふ~~~ん。てか、良いのもってたら上役なんかに取り上げられそうだね」
「一応、王国法で禁じられているが、家宝やら、身を守るものだしね。でも中には”献上”ってとりあげる輩もいるにはいる。なまじ高爵位だから手に余る……」
「世知辛いね」
「てか、ザックさん、騎士の剣て統一、国の紋章とかついてるんじゃないの? ばらばら個人でいいわけ?」
なるほど。一理あるなぁ。騎士といえばその国の顔のようなものだ。それがバラバラの装備というのも考え辛い
「そりゃ、公式行事なんかは支給品だよ。でも戦場じゃそうもいってられん。死にたくないからな」
「びっくり騎士剣だな……笑える」
「いや、ほら。ピンハネしてんだよ。発注関係のお貴族様が」
「確かにそのような話もあるが……って、剣の稽古だったな。大脱線だ」
”わはははは~”
「その前に刀だよ。魔王退治に必要ってことで取り寄せられないの? もち、鍛造の良いヤツ」
「その前に ……騎士団長、ほんとに魔王っているのでしょうか? で、侵略されてる?」
「……なぜかね?」
何か、ちぐはぐなんだよね。ここ。
「いや、だって、騎士団長様がおいらたちの相手してるし。訓練の声、音が昨日からしないし。訓練所、そんなに遠くじゃないと思うんだよね。いざって時に間に合わないし。遠征中?それに装備もお粗末だし?」
騎士団長の顔がゆがむ…
「防音結界! 良かったら聞かせてくれる?」
直ぐに結界を張る。さすがトワ君。
「結界……だと。ふぅ。もちろん訓練はしてるさ。実際、魔王もいるさ。魔族種族の王ってことだからな。北の大陸で繁栄しているよ。人も、魔族も、獣人も、エルフなんかも差別なく暮らしていると聞く。ある者は”楽園”なんていってるな。確認はされてないし、願望が独り歩きしてるのかもしれん。しかし、我が国が侵略されてる事実はない」
やっぱりね~
「はぁ?」
「ってことは……」
「……察しがいいな。君たちの仕上がり具合で近隣にちょっかい出そうって腹だ。召喚勇者を魔王にぶつける。そための資金を、協賛金をだせ! とか、協力しないと魔王の手下とか因縁つけて、の……侵略だ」
そんな事だろうと思ったよ。最低だなオイ。
「そんなわがまま通るはずないじゃん。ちがうの?」
「いや、召喚陣・儀式を継承してるのはこの国だけなんだよ。魔力の充填期間、魔石やら希少品のために莫大な金銭がかかるから100~200年に一回か。その時に領土拡大を図るわけさ。資金回収もついでにね。特に小国群を恫喝している。帝国とかには歯が立たないしね……それに帝国が魔族に対する実質的な防波堤だからね。手出しできんさ」
「むなくそ悪い。盾に隠れて、誘拐してこそこそやってるというのか? まじで?」
「で、トワ君はその駒、本命ってわけだ」
「一応おっさんもだぞ」
「個人的には君たちには同情してるし悪いことをしたとも思っている、いや、していると思っている。すまんな」
「まぁ、騎士のおっさんのせいじゃないって」
おっさんて。
「で、騎士のおっさん、充填期間中に周辺国で連合軍つくって戦争! ……って、ならないの?」
「それな。万が一、ホント万が一、魔王や魔の森、新たな敵勢力が出てきたら……その対抗手段として取っておきたいってところだろうな。周辺国としても、大陸としても。まぁ、実際、勇者様も長命なんで充填期間中安泰ってのもあるがな。それがこの国の歴史さ」
「でも、そんなにぶっちゃけていいんですか?」
「君たちが生きていくには情報は必要だろ。ほんのちょっとの罪滅ぼしさ。現状、王族や、上級貴族以外、良いとは思ってないさ。何時小国連合に攻められるか戦々恐々さ。恨みも深い」
だよなぁ。人災か?
「ありがと、騎士のおっさん」
「ありがとうございます」
「さぁ、剣の鍛錬といくか。そうそう、俺ら第二騎士団は幾分庶民に近いが、第一騎士団や、近衛、魔術師団には気をつけろよ。プライドやら、貴族やら面倒ごとの塊だかあなぁ。第三騎士団は国境警備が主体なので関わることもそうないだろう。なかなかの精兵だぞ」
……出奔する我が身……一番関わりそうだなぁ。第三騎士団……
しかし……この騎士隊長殿。良い人だな。
この会談の後、みっちり剣を振ったよ。
箸より重いもの持ったことないのに!素振りってマジキツイなぁ。手はマメ、ズルむけだよ。腰も痛い……腹が重い……
しか~し! そこはファンタジー! 騎士団専属の衛生兵の回復魔法で一発回復だ! で、無限ループ……休憩……いや、もう終わりにしようよぉ~。
隣で武器を確かめながら真剣な顔で振るトワ君。剣道有段者なんだって。……クソ~まじ勇者じゃん。
ようやく訓練終了! 結局ずっと振ってた。まぁ、基本だ毎日の日課にしよう。
軽くサンドウィッチをつまんで昼食。普通に美味かったな。筋肉痛はまだないな。おいらくらいになると明後日あたりか?
……
そして、午後。予想外に図書室の入室が認められた。書士が居れば自由に入ってよいとのことだ。埃っぽい臭いというか皮の臭いも混ざる。嫌いじゃないな……皮で装本しているドでかい本? がずらりと並ぶ。
「いやぁ~トワ君壮観だね~どこから手をつけたやら……」
「同感。俺、寝てていい?」
おいおい。
「……がんばんべ」
「生き残るために~」
「「おう!!」」
……案外すすむ。この時代の紙は分厚い。皮(羊皮紙)もあり、一冊当たりの情報量はしれてるのでサクサクだ。
歴史、地理、風俗 (ちゃんとしたほうよ)、伝承、代々の召喚者、魔物情報を重点的に読破していこうとおもう。
トワ君は既に船を漕いでるけど、まぁ、おいらの生存の要! 良しとしてあとで情報共有しておこうか。さて! がんばんべ! 生きるために!
読んでくださりありがとうございました。またのご来店お待ちしております。




