セツナ帰還す 3
いらっしゃいませ.
「…おじさま…村があるわね…」
「いえ…お姉様…町といっても過言では…しかも…美しい街並み…ですね…」
「セツナお姉様。無事ご帰還嬉しく思います。」
「あら、ルカちゃん。お迎えご苦労様。素敵なドレスねぇ」
「ありがとうございます。後程、素晴らしい銭湯がございますので案内させてください。」
「ええ。楽しみにしているわ。」
「お!ルカちゃん、楽しんでるかい?」
「ええ。おじ様、お姉様もいらしたし、今夜は宴会ね。」
「あ、悪い。二、三日後な。ちと用事が詰まってるんだわ。」
「解りました。その時はお誘いくださいませ」
「もちろん。」
「ふぉ~~~~!人の生活があると…全く違うものね…机上の模型に一気に血が通った感じだわ。後で見回って問題点の洗い出しをせねば!」
「お玉さんが、大分その辺の補正もしてくれてるから、大丈夫と思うよ。」
「お玉さん…ってコア?…相変わらずね…センス…」
「あ、仮称よ仮称。名前欲しいって言ってたから、ほら、おいら、センスないし。変なの付けたらセツナっちに粛清されるなぁと…」
「粛清しないわよ…もう」
「でも、良いんじゃね。俺もお玉さんって呼んでるし。ミツル爺さんとお玉ばあさんの掛け合い好きだなぁ。」
「…何やってるのよ…おじさま…」
「てへ♡」
「あ、役所に着いたぞ。お~~~い!」
「”使徒様、”トワ様、ご苦労様です。」
「マーレン町長。アルス村長。すまないね。今日、トワ君の姉、”勇者”セツナさんが帰還した。ゴルディアやらナーナを半壊させてのご帰還…だ。」
「もっと良い事…無いわね…仕方なしね。紹介にあった、セツナよ。貴方たちへの挨拶はこっちの方が良いわね!」”どん!”
「な!」「くぅ!」
「ぐぅぐぅううう!」
いきなり、波動ぶちかますなよ…おい!
「は、はい。ご帰還喜ばしく存じます…”勇者”セツナ様。」
その場に居た獣人族、遠巻に見ていた者も皆、跪き、首を垂れる。
「これから、顔を合わす機会も増えると思うの。よろしくお願いします。で、この子が、ドラゴンのルージュね。よろしく」
<うむ。よろしく頼む>
「はい。竜様。」
「龍様だ…」「初めて見た…」
「こ、これはどういう…」
ぽかんと見守る人族…文官軍団たち。
「ああ、あれは”勇者の波動”を当てたのですよ。獣人族にはわかりやすいのでしょう。力に依存することが多い種族ですから。」
「な、なるほど…」
「納得です…」
「で、アツミ君ね。今日は休んでもらって、明日からかな?」
「と!とんでもない!若輩の私が…諸先輩方が」
「アツミ殿、ゆっくり休むのも仕事ですぞ」
「脳と、思考がくたびれていたら、良い案も浮かびますまい。」
「ロラン様、お久しぶりです。も、もしやマゼラン様で?」
「はい、私がマゼランです。アヌヴィアトの”麒麟児”アツミ殿、お会いするのを楽しみにしておりましたぞ。」
「こ、こちらこそ!”名宰相”マゼラン様、ご指導のほどを…」
「…あっちは放置で良いな…」
「ええ。謎のフィールドが見えるわ…アツミ~今日は休むのよぉ~」
「お、お姉様?私はどうしたら?」
「アイリは私達と居れば良いわよ。あとでお風呂もあるし。」
「はい。」
「で、マーレン、この護衛の方々の住居を。」
「はーい!私はお姉様の処でいいですかぁ!」
「仕方ないわね…良いわよ、セーラ。変なことしたら叩き出すからね。」
「はーい!」
「…という訳で。」
「解りました。」
「あ、あの…す、すいません、ミッツ様…アルス様と、リオン様って…”獣王”の…?」
「ん、坊主?ああそうみたいだな。」
「す!すげぇーーー!セ、セツナ姉!ザルバック様とで、”三獣王”そろってますよ!すげーーーー!」
「そう?ああ、そんなのがあったわね。」
「…おねぇ…」
「ぬぅ?小僧…今ザルバックと…」
「あ奴、生きているのか?」
「は!はい!”英雄”ザルバック様、ご子息様、け、健在です!ただいま、セツナ様の…”ザルバック村”の村長をされています…」
「ぶはははははは!生きていたかぁ!あいつはしぶといからなぁ!」
「しかも、”ザルバック村”だと!…ぷぷぷふはははは」
「ふん!笑っていろ!次は貴様の名を冠する村が出来よう。」
「ははは…は、はっ!…し、”使徒”様?」
「ええ「ああ、決定事項」ね。ちょうどいいわ。どこに作ろうかしら。」だな。仲間外れはつらいべ。」
「…思考もそっくりだな…姉貴のセンスも 「なによ!」 …なんでもねぇ…」
「ああ!そうだ!ラックこっちにおいでなさい。おじさま、この子獣人なの。冒険者見習いになった時に斬られたと…」
「なにぃ!クソが…おいで。どれ診せてみろ。ふむふむ…ふん。運が良かったな…変に化膿もしなかったようだし…”鑑定”…オッケー。」
「ミッツ様?」
「ちょい待ってな」
…っと。これでいいか…外套を頭から”バサリ”と被せる。加齢臭は勘弁だ。
「”再生”…ちょいと痛いが、我慢だぞ!」
「は、い…痛てぇ…くっ」
全身と外套に”洗浄”をかけての…
「ほい。出来上がり…猫人…いや、カラカル…かな?そのお耳…新しい種族確認!」
「あらあら。しっくりくるわねぇ~」
「へ?し尻尾…!ミッツ様ぁ!ありがとうございます!」
「おう!大事にしろよ!なにも恥じることが無い。」
「はい!」
「父さん、セツナ姉帰ってきたって?」
「おお!私のビルッ…ク?貴方…めちゃくちゃ強くなったわね…。おじさま、何したのよ…魔改造?」
せんがな…
「そう?お昼どうする?食べる?」
「ええ。いただこうかなぁ。で、何があったのよ…それ?」
「魔力?父さんの真似?憧れだったんだぁ。”料理”魔法。」
「そ、そう。それにしても…」
「ああ。ビックリだ…もともと資質はあったのだろうが…ちょっと鍛練しただけでアレだ。制御が凄い…あの料理バカの集中力のなせる技だろう…その後は自由自在に扱うからか…魔力量も増えてきてる。”魔纏”開眼一号だろうね。」
「ミミルの厨房に用意してあるよ。行こう。」…。
そこにはミミルとラグ、鹿娘がスタンバイ。
「んなぁ!こ、この子達もおじさまの?」
「鹿娘たちは、弟子だな。孤児ではあるが、一族で育てている。」
「そう…大変だったのね…」
「この子達の種族は特殊でなぁ…ほら、前の世界でも、”精力剤”とか”美術品”とかって、あったろ。角。それと、”魔族”と間違えられたりな。」
「ったく…同じ”人”でしょうに…」
「そうだぞ。姉貴。ケットシー族も人だ。 「うぐぅ!」 そろそろくんじゃねぇ?フラグ回収に…」
「あり得るな…長だしな…」
”がんらかんら”
「みみるニャ!パンくれニャ!」
「「…」本当にきたな…長…」”げらげら!”
「ん?どうしたのニャ?とわニャン?」
フルフルと震えてるセツナっちとアイリ嬢。
”がたり!”
席を立ち、こぶしを振り上げるセツナっち!
「いくぞぉーーー!アイ○ーーー!」
「にゃぁあああ!」
「セツナっち、ステイ!」
「び、びくりしたニャ!なんにゃ?大丈夫かニャ?鼻血…でてるニャ?」
「大丈夫、いつものことだよ。で、長、パンか?」
「うニャ!」
「ビルック~頼む。長、ちゃんと大人しくしてるのかい?」
「そりゃ、狩行っちゃダメ言ったのみっつニャンニャ!」
「あ…だって…次Tレックスだもん…死んじゃうぞ?」
「れっくすぅ?大丈夫ニャ!仕留めて見せるニャ!」
「肉食の怪獣だぞ…マジで。」
「大丈夫ニャ、ケットシー族は不味いって有名ニャ!」
「あ、ここにいたニャ!」
「長発見ニャ!」
「ニャ!今日は、パン貰いに来ただけニャ!は、放すニャ!」
「ちょっとタンマ、今パン持たせるから。皆で食ってくれ」
「「「ニャ!」」」
「う、うわぁ…ほ、本当に本当に…いた…」
アイリ嬢…普通じゃ目にする機会無いのか?まぁ、ケットシー族も王都にゃ行かないだろうしなぁ。
「…鼻血…ふく?」
ラグが”収納”からハンカチを出してセツナっちに差し出す…が、
「あら、かわい子ちゃんありがとう…」
セツナっちの伸ばされた手を擦り抜けて…あからさまに捕縛だなありゃ…
「危ない…捕まるところだった…」
すっぽりとおいらの腕の中に納まる。
「ラグ…ふぷぷぷ…トワ兄のお姉さんだよ?」
「…本当?…怪しい…」
「…あぅ。」
「ん?なんかあったの?さぁ!食事にしよう!」
「また、腕を上げたわね…ビルック…」
<相棒も彼に教えを乞うといい…そうすれば、我らの生もより良きものとなろう。>
「…ルーは作れないの?」
<我が料理などするか。>
「えらっそうに!」
<我は偉いのだ!ふん。メシマズが!>
「なによ!」
「…ドラゴンさん…腸詰美味しい。食べるといい。」
<うむ小さいの。すまないな。>
「…うむ!」
「で、アイリどう?」
「お、美味しいです…な、なんなのです…此処の料理は…」
「あら、言ってたでしょう、凄腕のコックが居るって…。」
「そ、想像以上ですよ…王都でもこれほどの…」
「生まれてから一番です!”もぐもぐ”パ、パン美味しぃ~よぉ~!」
「セーラ、落ち着いて…しょうがないわね…」
<腸詰も良いが、この魚の干物も美味いな…良い塩加減だ。>
「でしょう。湖の魚なんですが変な癖もなく、泥臭くもない。塩の産地が近くにあって、美味い干物が作られてるのですよ。」
<さすが”使徒”殿…慧眼ですな。うむ。美味い。>
「夜には大型の物を焼きましょう。干物ではなく、生の物を。」
<それはありがたい!…なるほど…”無限収納”か…>
「ええ。そいつで、”輸送業”を商っていますよ。良いバッグが手に入ったんで、定期的に購入できるようになるでしょう。」
<なるほど…な。我の生活の質も上がろうというもの”使徒”殿。良い魔石があれば、マジックバッグの作成、協力しましょうぞ。>
「へ?」
「ああ、ルーって、結界特化のドラゴンみたいなのよ。彼の持ってる小さい肩掛け…かなりの容量のある、時間停止のマジックバッグなのよ…自作だわ。」
<”側”は腕の良い職人の仕事がいるがな。>
「マジ?」
「あら、おじ様良かったじゃない。ルージュ様、”ドラゴンシェル”も?」
<ああ。作れる。我であればな!>
「本物…ね…さぞかし高名な名をお持ちであったのでしょう…」
「ルカちゃん?」
「本物の、角も4本だし…”次元を越えしモノ”の一体…神に次ぐ力をお持ちの竜様よ。生身で”好きなとこに”存在される。場所、時間、空間関係なく…ね。」
「へぇ~ルーすごいのね」
<ふははははは!称えよ!まぁ、最も記憶の大半が忘却の彼方に行ってしまったがなぁ!ふははははは!>
「ルー、ダメじゃん。」
<仕方なかろうが!もう笑うしかあるまい?楽しいイベント多く準備してくれるのであろう?相棒殿。>
「…そうね。楽しみにしてて。」
「しかしそのような竜を…」
「時の勇者に…ってね。あ、でも、安心して、マニュアルに日本語で解放の方法が書いてあったわ。彼?彼女も当時の国に逆らえなかったのでしょう…」
「本当にこの国は胸糞だよな…人族消し飛ばして…って、そういう訳も行かんな。」
「まぁ、アホは遺伝されるか知らないけど、そういう機会はこれからもあると思わ。隣の芝生は青いってね。」
「徹底抗戦だな…っと、そんなことより食事を楽しもう」
食後、まったりとティータイム。アイリ嬢、セーラ嬢ともに満足してくれたようだ。しかし、セーラ嬢…喰う割には…おっと気づかれる。
「さてと。セツナっち、ルー殿良いかな。」
「ええ」
<うむ。>
「あとは…適当に頼まぁ、”頭領”殿。」
「ああ。そっちは任せた。そうだ、姉貴。人族増えたから、街灯も頼むな。」
「おっけ~」
おいらたち人族は夜目利かないからなぁ。街灯は欲しいところだ。
本日もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。




