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道具屋って燃えるよね!

いらっしゃい!今日も来店ありがとうございます!

 「シペラかぁ~ディフェンの先…だっけか?」

 確か農業国だったよな…あ!カイエンの…豚王弟…の国か!

 「カイエン、何か知ってるかもしれんな。後で聞いてみるか。」

 「頭領にお任せだす。」

 「…この後は?」

 「町ブラしたいんだけど、良い?」

 「構わないよ。付き合うよ。で?何買うの?」

 「泡だて器…若しくは、針金…生クリームには必須だろう?」

 「…おっさん、今度はパティシエか?」

 「ああ…ルカちゃんと約束した。」

 「相変わらずだな…おっさん。」

 呆れ顔のトワ君を引き連れ職人街の方にむかう。ま、それだけじゃないのだけれどもね。

 「それと鹿娘たちに良いと思ってなぁ。ほれ、喫茶店なんかに。」

 「ふむ。無理に肉類の料理は…ってことか?」

 そういう事。

 「ベジタリアン食堂も良いけど…喫茶店のが良いかなぁ、って。」

 「…てか、そもそもおっさん、ケーキ…作れるの?」

 「当たり前だろう?クッキー、ケーキ、プリン、カスタードなら、アイスもいけるな。」

 「…当たり前…なのか?おっさん?」

 「家にオーブンがあったんだ。ガスの。コンロの下に付いてるデカいの。で、あれば一度は試すだろう?」

 「試さないよ…。どおりで、ビルックのクッキー美味いわけだわ…」

 「一子相伝にするか?ははは。」

 「てか、プリン…焼きプリンだよね?大好物!」

 「うむ、焼きでも、蒸しでも…バニラビーンズ無いな…まぁ、正統な?カスタードプリンだわな。」

 「バニラかぁ。」

 「あれもある意味、発酵食品だからなぁ。作るとなると…手間だな。自生してるかもわからんし。王都や帝都に行ってお菓子事情の調査も必要だね。意外にあるかもしれんぞ?類似品も。」

 「スイーツか…いいなぁ。」

 「いちごのショートケーキをせがまれた」

 「俺も食いたい!」

 「ホイップの口金とスポンジ型をドワーフのおっちゃんに頼んで…お!スパイス運搬用の胃袋。ビニル袋みたいだから絞り袋にいいな!」

 「胃袋かよ…」

 「お、雑貨屋発見。覗いてくか。」…


 ねぇなぁ。針金も鉄じゃぁなぁ…匂いが移りそうだわ…錆びるのも嫌だし…

 「ミスリルの針金…ねぇかなぁ。」

 「泡だて器、ミスリルで作るのか?」

 「なんか、良くない?」

 「知らんて。ギルドならあるんじゃね?…やってかなぁ?」

 「さぁ…」…


 「いらっしゃいませぇ」

 「…営業してます?」

  「はい。大丈夫ですよ?」

 「そなの?ギルマス達いないけど…」

  「ええ。どうせギルドの依頼、受けてくれませんし?あの方たちは、”まとめ役”というのが大きいですから。」

 「あ!そういえばそうですね…気に入った仕事しかしないって公言してたわ。」

 「困った爺ちゃん達だな。」

  「そうですよ!言ってやってください!なんでも帰る途中、鉱床見つけたから、帰らん!応援よこせ!ですもの…一回帰ってきてくださいな!…あ、失礼しました。」

 苦労してんな…この受付嬢さんは。

 「いえ、お気持ちはわかりますよ。」

 「うん。困った爺ちゃんだ」

  「です!です!ところで、本日のご用は?」

 「ギルド員でなくとも?」

  「ギルマス、セツナ理事から聞いております。大丈夫ですよ。」

 「それでは…ミスリルの針金ってあります?」

  「ミスリル…ですか?」

 「2~3mmの。」

  「2mmくらいのでしたら…確か、在庫が…」

 「あるんだ…。」

  「チェインメイルなどの高級鎧のフレームに使ったりします。」

 「なるほど。2~3mもらえます?」

  「確認してきます。」

 「おいくら万円?」

  「m当たり、金貨一枚ですね。」

 「高っか!」

 10万/mかぁ。

  「それでも会員価格ですよ?」

 「くすくす…高級泡立て器だな!おっさん!」

 「…そうだ、食器や、料理道具専門に作ってる職人さん、お店ってあります?」

  「ええ。ありますよ。この建物の裏路地を北に少し行ったところにあります…泡立て器?」

 「行ってみよう…あ、針金下さい。」

 「買うのかよ。」

 「ミスリルの泡だて器はあるまい?」

  「そんなのどこにもないですよ…。」


 ミスリルの針金、ピアノ線に近い…か?硬い…泡だて器には良いな。あった、ここか。”料理道具製造販売”大量注文歓迎…と。店名…無いな。まぁいいだろう。小奇麗だし。

 「お?ふるいもあるぞ。ボウルもあるな。」

  「いらっしゃい!」

 ごつい人族のオヤジがでてきた。

 「見せてもらうよ。これらの素材って何?」

  「鉄に数種類の金属を混ぜた合金だな。うちは、”加工屋”なんで詳しい割合は分らねぇが、毒性は無し、錆に対して抵抗がある。海水にも強いそうだ。王宮でも同じ材質のモノが使われてるよ。」

 「ふ~ん」

 ”こんこん”質量…持った感じからいって、

 「光沢は少ないが、ステンレスの仲間なんだろうなぁ。謎金属か?」

 「良いじゃん、それで。あ、泡立て器もあるじゃん。ほら!」

 「あ、ほんとだ。オヤジが作ったのか?」

  「ああ。混ぜる道具だ。勇者様由来の変わった道具だな。」

 「ふ~ん、何に使うの?」

  「ドレッシングや、ソース作るのにつかわれるね。」

 「そうなんだ。この総金属の良いね…これで作れる?」

  「素材持ち込み…って、ミスリル…旦那ぁ?」

 「極上の一品ってね。加工代は払うぞ。ミスリルなら、どんな素材にも干渉しないだろう?」

  「あ、ああ、その点でいえば”最高”だな。ふぅむ…泡だて器なら、加工も難しくは無いな。」

 「作ってよ。」

  「そりゃ、注文とあれば…。が、足りないぞ?これ一本でも持ち手込みで5~6m要るぞ?」

 そういって、少々小さめの泡だて器を手に取るオヤジ。おいら的にはその隣の大きいのが良いのだが…

 「…う~む。」

 材料費だけで偉い金額になるな…

 「良いんじゃね?既製品で。」

  「そうだぜ、旦那。無茶な”調合”には使えねぇが、料理には全く問題ないぞ?」

 「ああ。篩、ボウル、それも買っていくが…」

 「悪い虫が疼いてきたか?おっさん?」

 ああ…疼いておりますとも!欲ぅしぃい~。

 「…ビルックに持たせてやろうかと…」

 「それこそ余計だよ。」

 「…そうか…そうだな。じゃ、おいら用で…」

 「…しつこいなぁ」

 「…いいじゃん!欲しいよぉ~!トワくん~」

 「ガキか!」

  「旦那ぁ…」

 「んじゃ、針金買いに行くぞ!トワ君!」

 「ったく…オヤジ、ちょっと待っててくれ。」

  「本気か?旦那?俺もついていっても?」

 「?」

  「太さの種類があれば…見たい」

 「じゃ、いくか。」…


 「あら、カッパーさん、どうされました?」

 再びの鍛冶師ギルド。

  「いや、こちらの旦那に注文いただいてね。ミスリルの針金…見せてもらえるかい?」

  「…はい。ミッツ様…本気でしたの?」…

  

 「これが良いな…この固さなら、この細さでいい…」

 「攪拌能力をあげたいのだが。」

  「本数ふやすか。」

 「金額も増えるな。ぷぷ。」

 「じゃ、こいつを…何m?」

  「本気か?旦那ぁ。」

 「本気だ!」

  「じゃ、こいつを6mと…2~3cm角の端材あるか?」

  「はい。金貨6枚になります…が?」

 もちろん購入だ!よし!

 「よし、これで。オヤジ任せた!」

  「あ、ああ。」

 「じゃ、店に戻ろう。」…


 「じゃ、オヤジ、普通の泡だて器を10個。ふるいを荒いの10個、細かいの10個。ボウル、大、中10個ずつ小、20個くれ。その寸胴鍋もいいな!あるだけくれ。」

  「お、おいおい旦那ぁ、待ってくれ!」

 「おっさん買いすぎ。」

 「取り急ぎ半数あればたりるな。在庫は?」

  「旦那が言う撹拌器が、6、篩が6個ずつある。ボウルはそこにあるだけだ。」

 「叩き出しだから数が作れないんだな。”焼き型”の作成も頼んでいいか?」

  「そりゃ、どんな注文もこなしてみせらぁ」

 「よっしゃ!」

  

 …かれこれ2時間後…

 

 「おっさ~~~~ん、まぁ~~~だぁ~~~~~?」

 すでに飽きているトワ君。10分おきにこのセリフ。美味いものが食えるぞと、なだめすかしてきたが…ここらで限界か。

 「お?おお!待たせたね。んじゃ、オヤジ頼んだ!」

  「あ、ああ…ふた月位見てもらってもいいか?」

 「ああ。頼むよ。できたらギルドに連絡してくれ…ちょくちょく来るから良いか?」

  「ミスリルのは明日できるが…」

 「明日は用事あるから…まぁ適当に来るわ。」

  「わかった。まいどあり~」

 …食パンの型、スポンジの型、豆腐の型…後何かあるか?スパイス入れなんかも頼んでも良いな。

 久々の爆買いだ!これでわが家のキッチンも夢のレストランのように!楽しみだな!


夜の投稿もあります。そちらもよろしく!

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