や、やっちまった…
いらしゃいませ~
ちょっと早いが、子供達もいる。初日だし、もう、今日は家に籠ろう!そうしよう!
「?ここが家…ですか?ミッツさ…と、父さん?」
何もない…そう、だだっ広い敷地に門。新しい生活、安住の家を期待してたであろうビルック君。茫然だろう。
「うん?ああ、ビルック。そうだよ。驚くぞぉ。」
「パパ。何にもないよぉ。」
ルルも目を覚ましたようだ。このまま抱っこしてても良いが、是非とも庭を歩かせたい。おいらが感じた感動を…
「開門…」
そう、静かに呟く。
おいらの命に応え、”きぃ!”僅かな金属の軋みと共に門が開いていく。
「「…おかえりなさいませ、マスター」」
門柱のわきに’ちょこ’’ここあ’のお出迎え。
「ただいま。この子たちを”住人”登録しておいて。家族だ。さて、入ろうか。」
「是…」ん?
「うん?君たちも家族だぞ。」
「「…是…!」」
にっこり。と笑う家妖精。正解だな。これから彼女たちとの付き合いも始まる。それも、長く。そう。おいらが死ぬまで…そして、その後も…。
「さ、行くぞ!」
{うわぁ~~~~~!}
ふふふ。どうだ。凄いだろう。
さて、帰ってからのぉ、ひとっ風呂!といきたところだが、只今、絶賛建築中だ…残念!…なにげに凹む。早く入りたいものだ。代わりに寝る前に”洗浄”を掛ければいいな。
「あ、子供たちの寝巻買ってくればよかった」
一応、預かった包みに寝巻兼、部屋着も入っていたが…
「…作りますよ…」
服を脱がすのを手伝っていた、’ここあ’。
「頼むね。明日材料買ってくる。」
「…有用モンスターの飼育を提案します。糸を出すカイコ蛾がお勧めです。」
「地下拡張できるようなら、試してみようか。」
「…楽しみですね」
イモ虫だろう…楽しくないな…
「「「おいしーね」」」
賑々しく食事がすすむ。おチビが3人いると大変だ。
「ゆっくり食べなさい。っと、メメ、野菜。キキ、ほらお口拭いてあげる…ララ骨は?食べた?大丈夫?」
「おっさん…」
呆れ顔のトワ君…だって!しょうがないじゃない
「父さん大丈夫だよ。小さくても獣人だし。」
「父さんも食べて。」
…新米父ちゃんは子育ての経験がないからわからないのよ…
「…そうだな、ビルックも料理手伝ったんだって?ありがとうな。」…。
…食後、子猫ちゃんは船を漕いでるのでベッドへ。纏まってねるようだ…写真撮りたいほどかわいいな!スマホ、スマホ!と…久し振りの文明の利器の手触り…。パシャリと一枚。直ぐに電源オフ。
「おっさん…」
はっうう!見られた…
「スマホ預かろうか?俺の”収納”時間停止だし。電池の消耗なくなるよ。」
「オフにして…そうか、待機電源…それと劣化か…お願いします。」
「ああ、魔力で動けばいいけどなぁ。そしたら気兼ねなく使えるんだけど。」
「そうだね。でも、カメラ機能くらいしか使えんぞ?ネットないし。」
「そう思えば…大した事ねぇなぁ!スマホ!」
「ははは。文明の中の利器さ。しょうがないって。」
「でも、ここに来るまでは年中触ってたけど…無くても良いな」
「そりゃ、使えないし?こっちの世界の生活の方が刺激的だろう?」
「…まぁなぁ。あっちじゃ、学生…学校行って…勉強して…ダチとだべって、受験の準備…毎日同じバスに乗って、電車に乗って。」
「ふふふ。ここじゃ、命懸けだけどなぁ」
「だなぁ。おっさん、益々、死ねなくなったな!」
「…もともと死ぬ予定はないのだが?」
「生き残ろうぜ!おっさん!」
「ああ。ボインの可愛い嫁さん貰うまでは!」
「…いいよ、おっさんはそれで。んじゃ、寝るか」
子猫ちゃんとこにはビルックが一緒に。今日はトワ君と雹が一緒に寝るようだ。おう…。マジ、家庭内孤立?してる?おいら…
「…マスター先の件ですが…」
「う、うん、コアのとこいこうか…」
「…是」
’ちょこ’さんに促され地下室へ。
「そうそう、’ちょこ’や、ちっこい妖精たちって食事どうなってるの?」
「「…魔力」」
「食べられないんだ?」
「…否、食事したい…」
「…うん。一緒に…」
「なんですと!じゃあ、一緒にたべよう!気が付かなくてごめんね。」
「…否…必ずしも必要では…ただ、皆さんが楽しそうで、美味しそうで。」
「じゃ、決定!」
「「是!」」
《…お待ちしていました。賑やかですね。》
「悪いな。一気に人数増えて。」
《…否…問題ありません。》
「それで拡張の件なのだが…」
《…はいこの敷地内でしたら大丈夫です。外部からの掘削対策として岩盤に見えるようにします。壁はダンジョンの壁なので破壊不能。》
「じゃ、地下二階に草原、三階に森林とかって可能?」
《是…作成と維持に魔力が必要です。》
「試算は?」
《…今の維持魔力の五割り増し程かと。》それならいいかな?
「階層の移動は?」
《…転移門で行います》
「ダミーコアとか作れる?」
《…是、大きな魔石があれば。》
「コアを5層くらいに安置。万が一のためにここにはダミーを…いや、暖炉の上のほうがいいか…ダミーと本体間の情報共有は?」
《…ダミーはある程度魔力を内包し、本体の出先みたいなものです。問題ないです。》
「あとで、持ってくるので作成後、ダミーを暖炉上に設置」
《…是》
「では充填しますか。」
《…少しずつ拡張開始します…充填は三日後にお願いします。》
「了解。ではよろしく!そうそう、カイコの魔物?安全性は?」
《…問題ありません。共生関係になり得ます。》
「他になんかある?」
《…》
「じゃ、おやすみ」
《…おやすみなさい、マスター》
いやぁーお子ちゃまがいると疲れるわ。…
「そうだ!’ちょこ’、’ここあ’って執事みたいなのできる?」
「「…否どちらかと言えば、メイド」園丁」
「そうか、執事のできそうな魔物っている?できれば、女性型?おいら達がいないときに面倒見てもらいたいし、できれば字や魔法の勉強も見てもらいたい。」
《…是…こちらへ…手を乗せてください…願望を込めて召喚を。》
願望かぁ…もち、美人さんが良いわなぁ。頭良い、巨乳、執事風、羊?ぷぷぷ。あ、邪念が!
勉強を見てもらう、保母さん的な?、女性型、もち巨乳、剣も、ガードマン的な?、巨乳だなやっぱ!爆乳さんでも…うん?…!…あれ、召喚?!今、”召喚”言ったか?あれ?召喚って?駄目じゃん!!!
「すとぉ~~~っぷ!コア!中止!中止ぃ!」
床と、天井にはすでに輝く魔法陣が…
「中止ぃ!召喚は駄目ぇ絶対ぃー」
《…?》
「おいら達も違う世界から拉致られたんだ…おんなじ思いはさせられん。中止ぃ!」
その時、天井の魔法陣に亀裂が…
”ガンガン!ビキビキィェ~ガンドン!”
もしかしなくても向こうから攻撃してる?かすかな…女の子の声が…
『…呼んどいてなによぉ!この! ”ガンガン” ぶっころ!』
…だいぶアクティブな女の子だな…。
って、やってしまった…ああ…あの豚王と同じことを…。
取りあえず許しを請おう。死ねと言われれば死のう…それだけの”罪”だ。
『ったく、硬いわね!勇者の私を舐めてんのか!うなれ!わが愛剣、ファイティング・スピリッツ!!1!2!!3!!!だぁあああああああーーーー!』
”ゲキィゲリイイイイリィ”
『ぬぅうりゃあああ!』
未だに次元の向こう?見えない場所で格闘中のようだ…送還は叶わないのか?
空間が歪む?見えないはずの空気の壁、その上に描かれた魔法陣と共に歪む!
”きしり…ぴきん!”
甲高い音と共に魔法陣が切り裂かれる…
”バキイィヤァーーン”
粉々に散る魔法陣。
ぽっかり空いた次元の空間?その中心から飛び出したのは小学生くらいの女の子。と、同時にその穴は役目を終えたがごとく閉じ、消える。
”がしゃり…”
「ふぅぅ。しんど。」
その少女、鎧を着て、剣を持つ。が…黒目、黒髪。あかん…日本人だ…やってもうた…”召喚”…拉致…
周りをきょろきょろと見まわし、状況把握を行っているであろう少女。
あ…目が合ってしまった…
「おじさまが私を呼んだの?ん?日本人みたいだけど…。ここって日本じゃないわね?」
もちろん正座して、両手を地につけ額を地面につける…ぴっかー
「すんませんでしたー!」
「お?おじさま?…土下座が光ってるよ?この場合、土下座したおじさまが光ってる?」
混乱してるようだ。
《…お嬢様…お話よろしいでしょうか?》
「ん?これって…ダンジョンコア?かしら?ひょっとして呼んだのはあなた?私、守護者として召喚されたの?」
《…否…ダンジョンの守護ではなく…マスターたちの生活を支えていただきたくお呼びしました。》
「ふ~ん、問答無用で…殺したら?」
《…そのような短絡的行動はないと予測しました》
「そう」
《…マスターも召喚されし者。召喚を嫌うことを考慮できなかった私の愚行です。》
…いや…たぶんおいらの願望と邪念が招いた…うん?巨乳じゃない… 「なに?おじさま?」 ひぃ!
「そう、それで”召喚”が途中で止まったのね。あれはあれで、正直困ったわ。とりま、そこの光ってるおじさま。話がしたいんだけどいい?」
「はい、すいませんでした!コア、すぐに元居た世界…地球にでも送還できないか?」
《…マスターの世界は高次元のため無理ですが、そちらのお嬢様の来た世界なら同次元軸上のため可能です。マスターの魔力と私の演算力をもってすれば…》
「ちょ、ちょっと待ってよ!勝手に話し進めないでよ!あんな世界、絶対に戻りたくないしぃ!くそロリジジィが!ここに呼ばれるの解ってたなら、ぶった斬って、城、破壊できたのに!…一回戻ってってのもアリね…」
幼く見えるのに…かなり、賢いな。その恰好…だよなぁ。地球の格好じゃないわなぁ。どこぞの異世界で禄でもない目にあわされていたのだろうか…ロリジジィって。
「で、話せるの?お、じ、さ、ま?」
「もちろんです。コア、充填は明日で良いか?」
《…是》
「ではこちらへ。」
「うん」
…はぁ…やってしもうた…。
お嬢さんをリビングに案内をする。今後の補償、対応の協議だ…
…つくづく、とんでもないことをしてしまった…
本日もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。




