避けては通れない?能力診断。まぁ余裕?
毎度~いらっしゃい!
ただいま、改行作業を実施してます。19/5/21
「では、勇者様方……ワシがオウンじゃ。この国の魔術師長を務めておる。後は、この者が案内する」
と、先を歩く高価そうなローブ? 貫頭衣? ゲームに出てきそうな服を着た爺の後に続く。
例の石のベッドの間から階段を上がり、豪奢な廊下を歩いているところだ。
その魔法使い? のジジィに紹介されたのは、真面目そうな、いかにも軍人といった感じの筋骨隆々の男性だ。
「……私は第二騎士団を預かるザックです。では早速”能力査定”をしたいと存じます。”判定の間”前室にお茶を用意させますので、落ちつかれてはいかがか……。突然の事、訳も分からないと思います。お許しを。さぁこちらの部屋へ」
「余計なことを言うでない……」
振り向きもせず、ザックさんに釘を刺すオウン。
くそ爺確定だな。で、こっちの第二騎士団団長の兄ちゃん。存外、話が解るのでは……肩をすくめてみせてる。
ん? 近衛とはいわんが、第一騎士団は?
しかし、オウンやらオワリやら知らんが……おいら達のこと見下してんな。ゴミでも見るような目だ。うん? おいらだけ……か?
案内された”判定の間”その前室といわれる部屋に入ると、お茶と菓子が用意されていた。誰もいない……。自分で淹れろってか? 綺麗なメイドの登場に期待していたが……
まぁ、いい。紅茶にはちょいと思い入れがある。勇者君と自分の分を入れるか。
ん? なかなかにいい茶葉ではないか? どら、多めに入れたれ。紅茶ってより質の良いウーロン茶か? まぁ不味くはない。次は上手に淹れられる!
茶菓子を頂きながらお茶をすすっていると、
「おじさん、俺は、諸星 永遠っていうんだ。一応高校生だ」
そうでした、そうでした。懐から分厚い革製の名刺入れを出し、名刺を一枚。
ちなみにこの名刺入れ一箱分。100枚入るんだよ。定期的にお役所に配るのよ。頻繁にきてますよ~って。実際まとめてシュレッダー行きろうが……。でも几帳面に数えてるところもあるので手が抜けない。この業界人の必須アイテムだ。
「あ、私は御池と申します。普通のサラリーマン。何処まで覚えてる? どうも私のごたごたに、巻き込んじゃったみたいでさ。……ごめんね」
「御池さんだね。うん、押されたな……。横見たら御池さんが必死の形相で手ぇ伸ばしてたからビビったよ。避けたら笑えるかなっておもった。……やっぱ、死んだのかな? 俺達?」
……避けないでよぉ。傷つくなぁ、おじさん。
「その辺は何とも。おじさんからは……『ごめんね』しか……。しかし、えらいことになっちゃったね。おじさんにはキツイや。ハハハ……」
「御池さんてホント一般人? 普通、殺されそうになる人って、いないぞ?」
「逆恨みだよ。どうもこっちらの推測以上に追い詰めちゃったみたい。全く笑えないよ……」
は、ははは……
「そうかぁ。ああ、そうだ、偉そうだけどお互い敬語は無しでいい? 俺たち戦友みたいなもんだろ。知らない世界に二人、協力して生き抜かないとね。ほんと参ったな」
おおぅ。”戦友”か! 響きがいいな! ちと生意気だけど勇者様っぽいし。
「ああ、かまわないよ。永遠君でいい? よろしく。おいら異世界? 初心者なもので」
にぃっと笑う
「こちらこそ、俺だって初めてだよ。はぁ、こんなことなら結城にまじめに聞いておけばよかった。あ、結城ってダチのオタクなんだ。ああ、便所、水洗かなぁ。風呂毎日入れるかなぁ。飯マズだったらどうしよう?」
「お! そこ大事なとこだよね~。おじさん腹出てるから、和式風便所はきついぞ。飯マズダイエットもやだなぁ~」
「腹引っ込めば和式もいけるじゃんw。ってか、魔術師のおっさん、そこんとこどうよ? あと、元の世界に戻れるん?」
「……ああ。戻れるとも。魔王を討伐せしめればなぁ。その方らなら簡単であろうよ……」
くそ爺ぃ、顔見てしゃべれや!
「はぁ、聞いてねえし?」
「今、戻れないんですか?」
「はぁ? 仕事もせんで帰るとかの。その方らを呼ぶのにどれだけの金がかかってると?」
知るかよ! 誘拐魔。
「じじい! 誘拐なんだよ! これ。はよ帰せ! 今帰せ! 帰るとき拉致ってやろうか? 御池さん! いいこと思いついた。帰るときこのじじぃと王様? 連れて行っちゃおうぜ? で、放り出す! 召喚……違うか、”招待”だから文句ないだろ!」
……え? ええぇ……このジジィの面倒見るのイヤだよ……
「くっ……送還の魔法は魔王城の最奥に封印されておる! 討伐してそこに行かぬと無理じゃな!」
はぁ? 良く仰るわ……
「誰が確認したんですか? 魔法陣の所在や効果を」
「……古文書じゃ。」
あらら……黒か。適当言いやがって。いいように使われるのが落ちだな。こりゃ。ん、トワ君も思うところがあるようだ。はぁ、まいったな。
そこに騎士さん登場。
「用意ととのいました。こちらへ」
……とのこと。
ザック隊長に導かれてさらに奥へ。
”判定の間”そこはチャペル風の装飾の部屋で、壁や燭台に多くの蝋燭に火が灯る。
結婚式場のようだな……おいおい。おいら、トワ君と式挙げちゃうぞ?
うん? ガラス? とも思ったが……光が透過する?
そこには壁から生えたように七色に光る超巨大水晶があった。一部……なのだろう。天井も抜けてるのだろうなぁ。こんな大きな水晶……
おお! 水晶といえば! クリスタルが引き合わせた運命! 〇ァイナル・Fを思い出すなぁ。あれはバッテリーバックアップがうまくいかず良く飛んだものだ……と、ファミコン第一世代であるおいらはしみじみと……違うか。
「よろしいでしょうか。こちらの水晶にお一人方ずつ触れていただきます。すると水晶を透過して背後の壁に貴殿の能力が表れます」
スキル? ……異世界転移の鉄板だ! よし!
「よっし! 俺からいくぜ! いいだろ?」
おおぅ。my勇者よ。先人は譲ろう! 征けぃ!
トワ君が水晶に触れると、水晶が七色の光を発する。だんだんと光量が増し、部屋に光が乱舞する。綺麗や……暫くすると水晶の後ろの壁に、記号? が映し出される。意味は分かる……これも言語と一緒で不思議な感覚だ。
・諸星 永遠 class 勇者(あらゆる剣術を効率よく習得可能)
skill 聖・魔剣使い。(聖剣・魔剣の類が装備可能)
唯我独尊(自己中、自分の道を突き進むときSTアップ)
{剣道 光魔法 封印・結界魔法}
{召喚skill 言語理解 鑑定 無限収納}
おおう! さすが勇者様! 名前もかっこいいな、きらきらネームってのか? マジで。
学級委員長とかやってるんだろうなぁ。
ダン君で変身もありかも。異世界だけに。
トワ君、容姿は細マッチョ。幼さが残るイケメンだ。かわいい見た目とワイルドな感じが違和感なく備わってる。こりゃ、もてるなぁ。羨ましい!
それにしてもあの魔法使いのジジィのしたり顔、壁に映ったトワ君の情報を見ていやらしく嗤う。
満足な結果か? おい!
くっそ! ぶん殴りたいわ! てか唯我独尊……って、暴走? この国ごときにおさえられるんか? 魔王誕生! だったり?
「さすがは、”勇者様”……光魔法まで……。次、貴殿、よろしいか?」
「は、はいぃ!」
くっ! 緊張で声が裏返ってしまったわ!
よし! ……気合い入れ直して、次はおいらだ。
ふっ。真打登場! 勇者はトワ君だから……勇者は無しか? まぁいい。
剣士、いや、魔法職も捨てがたい!
ふふふ……大魔導士ミツルとか。
フン、現世でも”魔導士”でしたけどなにか? ”賢者”だっけ? まぁどちらでもいい。
よし! 小心魔導士! 御池 充! 49歳! 独身! いきまぁ~~~~~~す!
ポチっとな!
……うん?……クリスタルに手を着いたが……。永遠君みたいに光らない……なんか、おいらの光……しょぼくない? 自爆?
・御池 充 class 召喚に便乗したおっさん(召喚に巻き込まれ九死に一生を得る)
skill (魔力譲渡・充魔…隠ぺい中)
自家発電(意味深)
{独身 土下座EX 営業(複合上位スキル。顔色うかがい 笑顔、書類整理 見積・計算 鉄面皮など)}
{召喚skill 言語理解 鑑定 無限収納(押しかけペナルティとして時間停止機能封印)}
…………ん? なぜ? 見間違い? 『おっさん』 って職業……なのか?
必殺技が土下座かよ! EXだぜ! やったー! なるか!
なに自家発電って? しかも意味深って……なんぞ?
そりゃぁ、清い”魔導士様”だし? ほっとけぇ!
独身ってこの世界じゃスキル……”技”なんだぁ~。ふぅ~~ん。なんで永遠君にはないのだ? もう結婚してるのか?
納得できるか! ボケぇ! そりゃ、仕事先や談合相手に土下座もしたさ。めんどくさいヤツは土下座一つでダウンさぁ~! もう”技”になるくらい。
そ、そうか! 自家発電で魔力を貯めてムフフな譲渡(R18)! ふふふ! いいなぁオイ! ……はぁ。
そんなことよりも第三者、所謂”神様? の介入らしき痕跡が。ペナルティって……死ねいうんかい。神様!
てか、おいらが巻き込まれた感じ? まぁ、あのままじゃお陀仏だが。スキルやら、まきこまれやら、俯瞰してるヤツ――いや、お方がいらっしゃることは事実のようだな。
神様いるんでしょ? いるんですよね? 見てますよね? ……今から心を入れ替えて精進しますのでチートを! 我にチートを! せめて、ペナルティ外してください! せめて、普通の無限収納なら生きていけますぅ~! 頼んます!
”ぽんぽん”
ん? トワ君に肩をたたかれて現実復帰……。サラリーマンの肩は”ポンポン”しちゃだめよ。トワ君……戦力外通知だよ……それ。
「御池のおじさん……元気出してください……」
ぅん! なぜに敬語! 小心ハートはとっても脆いのぉ。もっと優しくしてぇ~。
『ちっ!』
ってか! ジジィ! 今、舌打ちしたろ! おい! ぶっ殺してやる!
……いつか……きっと!
今日もありがとうございます。またのご来店を。




