この世界の仕組み?
いらっしゃい!
「思った以上のダメージだなぁ」
憔悴しきったマシュー嬢の横顔をみる。ルカちゃんの爆弾に精神を守る壁を吹き飛ばされちゃったかな
「だな。普段強気だから大丈夫かとも思ったが…案外繊細?」
「失礼だって。で、ライ達は?」
「ん?狩りに行ってるぞ。そろそろ戻ってくんだろう。ほら、噂をすれば…」
デカい猪をえっほ!えっほ!と引きずってくる。
「「「獲ったぞーーー」」」
「良くやった!キノコ探しに行くから、おっさんのそばに居ろ。こいつは収納しとくな。」
「「「応!」」トワ兄!俺も行く!」
「よし!カイ、こい!」
トワ君の後をじゃれるように走っていくカイ。…元気だのぉ…
「キノコ勇者ね。」
「だな。」
「う…ん…。っ!」
気が付いた、マシューさん。テーブルでお茶を嗜むルカちゃんを見て、身を竦ませる。
「大丈夫だよ。マシューさん。具合は?」
身体を起こす手伝いをし、背を撫でてやる。
「あまり…」
「どうする?今ならまだ引き返せる。…それとも”進む”かい?」
「…進むわ。もちろん。”すべて”教えてくれるのでしょう?」
「知ってる限りは。ね。で。何が知りたい?」
「先ずはさっきの話の続き。ルカ…さんは味方?」
「私はおじ様の味方よ。」
「…それでいいわ。”悪魔召喚”って教会が主導してるの?」
「さぁ?」
「それはルカちゃんは知らないよ。が、過去二件の現場には必ずいるね。今までの憶測と重複するかもだけど聞いとって。聖十字王国?だっけ?その当時からあるようだね。人心掌握の手段にしていたのではないかな。悪魔発生!退魔!教会凄い!って。これほどの楽な仮想敵はないでしょう。」
「うん…そうね。」
「で、それを引き継いだ聖王国。都合の悪い領主や王国が出れば悪魔を使って混乱させる。で、教会が退治して、教会派の者を据える。以前。アツミ君曰く。昨今の事例がすべて予想ができるくらい当てはまるんだと。」
「ああ、アツミ…あの”神童麒麟児”君ね」
「ああ、場所は忘れたけど、ノリナの王都の北の町?」
「確かハイグロだったかしら?」
「そんな感じ。かな?」
「…関心ないのね…」
「だね。ないね。」
「…ルカさん、生皮の…出荷先、届け先の商会って…”悪魔”が関係してる?」
「経営者は十中八九悪魔じゃないかしら?それか”契約”ってのもあるわ。望みを叶えよう!その代わり…まぁ、地位や、名誉、殺人代行なんかを餌に、忠誠を誓わせるのよ。
魂を縛る”契約”ね。そういった”人族”を手足のように使ってるのよね。昔から根深く…続けられてきたのだから。古くから続く王家や、老舗大店なんかはそうじゃないかしら。
例えばこんな奴、何代も結婚もせずに養子をもらって世襲…とか?見かけは変わったけどクセが同じとか?」
「…あ。」
「心当たりがあるのかい?まぁ。今回のアドヴァ商会然り、アスター商会然り。」
「なぜ?」
「私の世界に伝わる、魔王級の大悪魔ですから。アバドン、アスタロッテ。」
「え!だ、だって、ミッツさんの世界は…」
「ええ。当時は実在するかは知りませんでしたが、聖典や伝承にあります。神に敵対する存在として。何故確信があるかというと、この世界…私の世界、すべての世界に”悪魔の世界”すなわち、”魔界”は繋がっていると。」
「え?」
「人の魂で魔界にはいけませんが、もし、行く事が出来れば…おいらは魔界を経由して元の世界へ帰れる…」
「そんな…こと」
「そうよ。私達は全ての世界に行くことができる。おじ様の世界にでも。呼ばれればね。」
「で、ややこしいのは、その悪魔、神の違いも曖昧…大いなる意志と力を持つもの…という点では変わりませんし。むしろ、この世界の宗教は悪魔寄りにも思えます。ゼクス…6…666は獣の…悪魔の数字だっけか?」
「知らないわよ。おじ様の世界の新約聖書?に載ってるだけでしょ?映画の見過ぎよ」
「う~ん6番目って…なんだっけ?アモン…ウァレフォルだっけか?」
「ソロモンなんたら?ウァレフォル?サルガタナスの配下ね。…あら。大魔王アスタロトの配下よ…良くできてるわね~ネビロスも居たのかしら。そうそう、おじ様の目…監察官のネビロスの眼だったり?悪魔はこういうところが抜けてるのよねぇ」
「それが本当なら、アスタロトが治める世界?いや、マイゴッドが制圧してるのか?」
「さぁ?どうなのかしら?」
「あ、悪魔が神?」
「何驚いてるのよ?良くある話よ?」
「魔王…が?」
「こちらで言う”魔王”は魔族の王でしょう?私の言う”魔王”は悪魔の王よ。神とケンカするのよ。それ相応の力持ってるわよ。あのアホ蛇だって、”正義”を司る”悪魔”だし。」
「こ、混乱してきたわ…それが…”常識”なのね。」
「そう…そして心配しても仕方のないこと…貴女が何をしても届かない…その世界に生まれ、暮らしてるのだから。」
「そうね…創造神が、誰であれ…そこで生き、その教えを擦りこまれ、死んでいく…」
「そう。その通り。そして、大店が悪魔の支配下にあり今まで続いてきたのも事実…ある時は助け、ある時は戦をもたらし、この世界を維持するのに尽力した。多くの者もそれに取り込まれている…」
「世界の一部…肯定すべきことと言うのね?」
「それを決めるのは貴女。今のままじゃ、指先一つ動かす前に消されるでしょうけど。」
「ふぅ…それで、例のエキドレアの件だけど…」
「続きは明日にでも。先に進みたいのですが…」
「そうね…」…。
「おっさんスゲェぞ!トリュフだトリュフ!カイが見つけたんだ!」
自由人のキノコ勇者が飛び込んできた。おいおい。カイを犬のように使うな!
「そう。良かったね。」
「トリュフだぞ?おっさん!トリュフ!」
「そうは言ってもさぁ。おいら、イマイチ分らんのだよ…そのトリュフって…美味いか?なんか、木くず食ってるようでさぁ。」
「木くずって…まぁいいや。今度食わせてやるよ。」
「おおお!トワ君の料理か!楽しみだな。」
「トリュフ?って?」
と、興味津々のマシューさん。
うん。多少は復活したかな?商人さんにはこういった話の方が良かろうな。
「これだよ。これ。いい匂いだろ?」
「あら、良い匂いね…どうやって食べるの?」
「薄くスライスして。野菜サラダにしても美味いぞ。香りと歯触りが楽しめる。」
「さすが、お貴族様。おいらはさっぱりだわ。蠱惑的な香りっていうけど…まぁ、日本人にとっての松茸みたいなものか?」
「ミッツさんの国にも貴族はいたの?」
「大昔はね。今は居ないがトワ君の家系は国を動かしてきた…此方で言う、宰相、大臣の家系って感じか?」
「大げさ。」
「実際、そうだろうに…君は優秀。高高度教育を受け、未来の日本、約一億三千万人の指導者になってたであろうに。」
「い、一億人…そういった人材を召喚ぶのね。」
「何処に出しても恥ずかしくない人物ってことでしょうかねぇ~まぁ、出発しようか」
「ここで高速移動の妙技が体験できるのね。」
「そうですね。最初はゆっくり。徐々に慣らしていきましょう。にっかどぅぱうわ!」
…スイスイと先を行くお尻♡
…じゃなかった…マシューさん。もう慣れたもんだ。
「事故るなよ~くくく」
そう言って並走するトワ君。相変わらず双子はあっち行ったり、こっち行ったりと忙しい。
「うん?ハセル、元気ないな。どうした?」
「腹減った…」
「ああ。昼食ってないもんな。ほれ。燻製。夜は豚小屋だぞ!がんばれ!」
「ありがとう。父ちゃん!そか!…てか、城だよ!やったぁ!」
燻製を銜えながら、吠える!
「なんだ?城?って」「お城いくのか!」
「ご飯屋さんだよ!肉食い放題だ!」
「「うおおおーーーー!」」
すでに子供達のリミッターは解除されたようだ。
「お金足りるだろうか…」
「俺も持ってるから大丈夫だろう。」
「【豚の城亭】って最近話題の…”焼肉”でしたっけ?大繁盛店て聞くわ。」
「おいら達の行きつけなんですよ。子供達も楽しみにしてます。」
「私も!おじ様、ビア冷やしといてね。」
いつの間にやら現れたルカちゃん。すすぅ~と平行移動?飛んでるんかいな?すげぇな。
「おっけー任せろ!」
「っと!ストップ!ストップ!」
トワ君が手を上げて停止の合図をする。まさか…
「ったく、お客さんだわ…」
「魔物?…じゃないね。臭い系?」
「ああ。ご一行だな。」
「面倒な…無視して突っ切るか…」
「いや、おっさん!奴らには今夜の食事代になってもらおう。」
「…そうだな…財布もちと寂しいし…」
「えぐいわね…あなたたち。」
「それでトワ君、何名様…?」
「木の上に斥候一人、弓一人。林の中に…5人。先に10人くらい?いつものパターンの挟撃作戦だな。距離もあるし…手前から撃破で良くね?おっさんは?」
「ああ。配置はそんなんだな…トワ君、ハセルは林の背後に回れる?ライ、カイはマシューさんの護衛な。無理すんなよ。」
{応!}
「わ、私も…」
「お客さんは待機ね。護衛任務なので。」
「…わかったわ。」
「”充填”魔法合図に行く」
{応!}
「凄いわね…」
「これでも、国をまたぐ「運送屋」ですので。さて。まだこちらに気づいてないな…まぁ、確定だろうけど…一応確認するか…ちょいと行ってくらぁ」
さてと、害虫駆除だな。殲滅あるのみ!
本日もお付き合いありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。




