悪魔あれこれ
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「いいのか?おっさん。あれで。」
「良いんじゃない?別に。たぶんだけど。今に始まったことじゃないと思うよ。ねぇルカちゃん。」
そう言葉にし、横を見るととことこと歩く少女。
「ええ。おじ様の予想で合ってるわ。手下の悪魔…異形のね。人化もできない下等な兵隊に与えてると思うわ。」
「げ、やっぱ、着るの?あれ…」
「そうよ~おじ様の世界でも結構いたわよ。ぽん!と出て、ハチャメチャやって、謎の死…ってのが鉄板?」
「…信長公とか?」
まさかねぇ。
「あれ?ああ、あのアホね。自分で”悪魔”って公言してたじゃん。ほんとアホなのよ。下等の分際で”魔王”名乗ってたでしょ?あれ。」
マジかよ…てかあれは、天魔の王?じゃなかったっけ?
「死んだの?ちゃんと。」
「あの世界のはね。上司が連れ帰りにいったわ。明智光秀って。」
「「え???」」
「”魔界の秘密”べらべらしゃべるんですもの。めっちゃ折檻されていたわよ。当分は出られないわね。魔界から。」
「そ、それじゃぁ、その二人は皮着た悪魔?マジ…?」
「違うわよ?アホの方。異形の下等。光秀公の方は…大黒様。めちゃめちゃ上級よ。」
「大黒様?アホ抜かせ。…って。そう聞くと字面悪いな…」
「トワ君、大黒天、大暗黒天とも言うんだよ。シヴァ神の化身の一つとか。ん?マイゴッドの化身の一つってことかいな???”悪魔?”」
「そこは知らないわよ?多くの悪魔やら、神が混在してるし?どだい、その時々で勝手に”神””悪魔”にされるのよ。まぁ、私だって、妖精やら、精霊って言われたり?”天使”だって、物語の都合で”堕天”とか?忙しいわよねぇ。まったく。」
「…その時の都合…混然一体。差は無いと…天界、魔界。天使、悪魔。神、魔王…」
「それすら、出会った人なんてそうそう居ないわよ。なんで分類できるのよ。私すら知らないわよそんなこと。多くの連続した世界…その意思がフィードバックでもされてるのかしらね。共通のアカシックレコードみたいなものがあって情報の共有がされてる…ってのはどう?」
「なるほど…一番しっくりくるかもね。この世界じゃ神、こっちじゃ悪魔、この世界は会えるが…おいらの世界じゃ会えない…記憶だけ…行き来してる?面白いね。」
「え?でも、”悪魔”って勇者の力が効くんだろう?」
「正確には、”上位者の波動”よ。身がすくむもの。星や世界を統べる力、神格と言っても良いわね。そう言った者の加護って訳よ。力の一片が与えられてるって思って。」
「なるほど…でも、良いのか?秘匿事項だろうに。」
「あら、おじ様。もう半分、踏み込んでますのよ?」
「…そうなの?」
<そうなの。>
「そうですか…」
「っ…ちょこちょこと…節操なしに!」
「…今日も退屈されてるんか?おっさん!笑いを提供せねば!」
「…そうそうネタないよ…鶏舎馬車取りに行こう…ルカちゃんなんか甘い物でも食べよう」
「…ええ。」
ポムポムと頭を撫でてやる…ふぅ。
飴玉をなめつつ…ケーキとかって無いのな。女性勇者が少ないのか…召喚されるのは男勝りの…っ!背筋に冷たいものが!ニュータイプ覚醒か!
お!この辺りは孤児院のあった場所の近くだな…そういえば…
「孤児院どうなったっかな?」
「あ!教会もな。」
「覗いてみるか。」
「いってら~街ブラしてるわねぇ」
ルカちゃん離脱宣告。
「やっぱ聖なる場所が苦手か?クソ悪魔?」
「はぁ、聖なる場所?アホじゃない?雑音がおおいだけでうざったいだけよ?何時ぞやの”聖域”はダメだけど…あと、おじ様の”居心地の良い神殿”もね。」
「ふん、何、負け惜しみを 「アホねぇ。その聖なる場所に、邪悪の塊の人間が寛げるわけないでしょうに。どうして願い事と称した”欲望”を垂れ流され、思念が渦巻いてるようなところが聖なる場所なのよ?是非に説明願いたいわね。特にそこの教会…屑しかいないのよ?聖なる場所?程遠いわ。むしろ”魔界”ね。」 …説得力あるな…反論できねぇ…」
「そういう訳。じゃね。」
ちっこい背を見送る。直ぐに雑踏の中へ消える…
「一本取られたね。トワ君。」
「ああ。そう言われればそうだわな。邪念渦巻くとこだわ。あの屑司祭達が毎日拝んでるだけで穢れるわな。」
「だねぇ」…
「酷いな…」
「こんなことしか出来ないんだから…どうしようもない…」
孤児院は焼き討ちされ、燃え残りの木材が残るのみ。立札には『邪なるものは去った。教会に感謝を』だとさ。バカかこいつ等。本当に。自分たちが放火しました!って言ってるようなものだぞ。
下手すりゃ、拉致、監禁…殺人だって疑われる…バカしかいないんだな。
「教会吹き飛ばせば良かったな…」”収納”だったか?
「おっさん?」
「いやこっちの話」
「あら!旦那!久しぶりね!」
そこには井戸端の主の姿が…
「これは、主殿」ぷくす
「ぬし?まぁあ、いいわね。ここの事、旦那知ってるかい?」
「それはどう言う?」
「なんでも皆、聖王国に送られたとか?殺されちゃったとか…忽然と姿を消したんでねぇ…皆心配してるんだ。」
「さぁ…私も。今日着いてびっくりしてるとこですよ。」
「…まぁ、いいさね。あすこの教会にも賊が入ったとかで相当騒がれたわ。何が起きてるんだか…」
「物騒ですね…あの教会、加護も無いようですねぇ。」
「だねぇ。前から良い噂聞かないんだ。孤児院の件もあるから、今じゃだぁれも行かないさね。まぁ、元々、この辺りは貧しいし。信仰心自体薄いがね。信仰で肥えるのは教会だけさね。」
「違いないです。」
「そうそう…北門のわきに、獣人の移民が小さな集落を作っているって…噂になってるねぇ。」
「そうなんですか?」
一応、アルスに報告しとくか。
「これからも増えるのかねぇ…」
「どうでしょうか…」
主に別れを告げ、北門方向へ。彼女なりの助言…なんだろうな。恐らく内情もかなり掴んでいる…
「どうすんだ?」
「チラリとみて、アルスに報告…だな?」
「?」
「ほら、勧誘を断った連中かも知れないだろう?」
「なるほど…蟠りがあると…」
「父ちゃん、あの屋台行こう!」
「ああ。ちゃんと計算するんだぞぉ!」
「おー!」
幾分逞しくなった背を追う。こういうのも良いものだ。
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