鹿「「さん。
いらっしゃいませ!
檻馬車に近づくと…
「ひぃ!」「ひ!」
”びく!”と、身体をこわばらせる子供達。
「た、叩かないで!」
”え~んえ~ん”
「まま!まま!」
恐怖に泣く子供…
「静かに!静かに…させますから!酷いことしないで!」
…あ、ああ…
可哀そうに…くっそ。
出来るだけ…怒りが漏れないように…優しく言葉にしなければ…
「皆んな、聞いて。叩かないし、いじめないよ。ね、聞いてほしい。おじさんは、アカシ長老に頼まれて皆を助けに来たんだ。怪我をしている子。病気の子はいるかい?ここで一番大きい子は?」
「わ、私です…ディアです…本当に長老様に?」
「今は信じて大人しくしてほしい…ここにいた悪人は退治したが、街の中にまだ残ってる。そいつらを退治してくるから、ここで待っていてほしい。」
「は、はい…」
「怪我や、病気の子は?」
「病気の子は居ません…怪我の子が…」
「おっさん、あく、ルカが帰ってきたら、俺らで行ってくるよ。」
「そうか…」
「名前呼ばれるなんて…気持ち悪いわねぇ。」
「クソ!」
「ほら、煽らない。で、首尾は?」
「なぜか、門番二人、急死しちゃったそうよ。北と南で。大変ねぇ~」
「…そうなの?」
「そうなのよ。今回は雹君と私でいくわ。貴方はおじ様の御守をしっかりね。」
「はぁ?おまえ…」
「貴方じゃ獲れないでしょう?」
そういうと指で輪を作る…金じゃなく魂なんだろう…
「それに、私だって”収納”使えるわよ。馬車ごと持ってくればいいのよね?」
「大丈夫?」
「隠密性、戦闘力考えれば妥当よ。」
「あ、ああ。”充填”ハイパワー!任せた。」
「いくわよ、雹君。」
「はい」
…新コンビ結成か?
「いっちゃった…さて、傷の手当てをしよう。その後、ごはんだね。トワ君警戒頼む。」
「ああ。」…
擦り傷、打ち身…棒でぶたれたんだろうな…
一人ずつ治していく。涙が零れ落ちる…と同時にこの理不尽に対する怒りが…って漏れたら大変だ。
怯えさせてしまう!ひっひっふ~!ひっひっふぅぅ~~!
「よ、よし。これでいい。ほかに痛いところある子はいるかい?」
「ありがとう!おじさん!」
「ありがとうございます!」
「なら、ご飯にしよう。料理ができる子は手伝って。」
コンロをどんと出す。リンゴを出し、
「先ずはリンゴを剥いて食べよう。」
しゅるり、しゅるりと剥いていく。どうよ!
「剥いた皮は?」
「これ…どうするの?」「…」
「?捨てるだろ?」
「ええー一番おいしいとこだよ!」
「変なの!」
そういや、昔のリンゴって皮が旨かったよなぁ。酸味もあって…。
ははは…ちょっとは元気出たか?
前世界じゃ農薬云々って剥いたものだ。でも昨今の農薬、ネオニコチノイド系だっけか、実の芯の方に溜まるって聞く。根から吸わせるタイプだから当然ちゃ当然だな。皮しか食べられなくなる日が来るのだろうか?
「じゃぁ、一人一個ずつあげよう。」
こっちは無農薬だろう。剥く必要なんてないな。最初から。
{わーい}
リンゴを渡し、鍋に水を入れ火にかける。野菜をどっさり出して切っていく。手の空いた子も洗ったり、切ったっり、つまみ食いしたり?と手伝ってくれた。
皆鍋にぶち込み、煮る。味付けは塩のみ。具沢山野菜スープだ。器、器っと、一応”洗浄”を掛ける。
「おじさん、いい匂いだね。」
「お腹減った~」
「もうちょい煮た方がいいぞ。少し我慢だ。」
仕上げに、香草少々、薬草も足す。
「はい出来上がり。味見、味見。うん…まぁまぁ?どう?」
「…うん、美味しいよ!」
「おれも!」
「私も!」
「まてまて。よそって食べよう。並んで、並んで」
{はーい}
スープを入れた器と、トウモロコシ・ナンもどきを渡す。
「まだあるからゆっくり食べるんだぞ。」
{はーい}…
「美味しい!」
「美味しい、このパン!」
ワイワイと食事が始まった。たんと食べるんだぞ。
「お、食事できたんだ。間に合わんかったかぁ~」
その手には…大量のキノコの入った籠…
「トワ氏…マジ、キノコマスターに俺はなる!ってか?」
「いいな、それ。仕方なし。こいつは今晩のおかずにすっか。キノコマスターか…」
まじか?…
皆、久しぶりの満腹だろう…船をこぎだしたので、お昼寝タイムにする。今は緊張してるが…親姉弟をなくしたり…思い出してくるんだろうなぁ…はぁ。
「ん?もどったか。」
「ただいまぁ~馬車、だすわね。」
「ここじゃなくても…」
「関係ないもの入れたくないのよ。」
「はいはい。了解」
”どごん!”
「じゃ、私も休憩ね。ちゃお~」
自由人…いや自由悪魔か…いいなぁ。
さて、積み荷の確認でもすっか。
”ごそごそ”…売り物の日用品。皿やコップの木箱の下の方に…角が…こうして密輸してんだな。生ものは無いな…日用品は有効利用させていただこう。
こっちの箱はハーブ…いや、大麻じゃん…こっちにもあるんだな…種…七味でもつくるか。うどんブームだし?
で、こっちは、頭蓋骨?何に使うんだこんなもの。魔石も…
手に取った瞬間!
「ん?あああ!がぁあああああぁぁぁ!!!」
「どうした!おっさん!おっさん!」
「はぁ、はぁ…こんなことが?」
映像、ヴィジョンが!多くの情報と共においらの脳みそに刻み込まれる?!それは、一人の”女戦士”の一生?その傍らには…カイエン?
「おっさん!」
「だ、大丈夫だ…トワ君…この頭蓋骨と魔石から、思念が…カイエンの奥方だ…」
「なに!本当か!」
「ああ…思念が…想いが流れてきた…くそ。魔族の討伐の証のつもりか!」
「おっさん…」
「教会はいらんな…すでに害悪でしかない。いずれ…」
「おっさん!そこまで。闇落ちすんぞ?」
「おお?ダークサイドもいいかもな。フフフ…って似合わんな。」
「ああ。おっさんは女の胸や尻、視姦してる方がらしいわ。」
「ただの変態じゃん…それ。」
「違ったか?」
「…ふっ、当たりだ。」ははははは
「…おっさん、カイエンに届けてやろう…」
「ああ…奇麗な布あったかな…」
白い布で丁寧に包み、奇麗な布を風呂敷代わりに使った。これで良いだろう…
「にしても、ろくな商会じゃないな…エルザさんに相談だ。」
「悪魔のことも?」
「ああ。俺らのせいで商会に迷惑はかけられんからな。全面協力してくれているんだ。こっちも全面協力だ!」
「そうだな!遠慮なしにな!姉貴にも手伝わせよう!」
「…セツナっちは放置で良いぞ…大陸が消える…」
「…だな。もう、街の一つ二つ消してたり…」
「おい!変な旗たてんな!」
「わり!」全く…
「父さん、戻ったよ」
「おー!マイサン!どうだった?辛い仕事を…」
「相手の用心棒?ヴォルトより使えなかったよ。後ろに立っても気が付かなかった。ナイフでスッパリだったよ。」
そう言って、ナイフを抜き、愛し気に見つめる…
「真の暗殺者だ…」
「おいら、育て方間違えたか?」
まだ、舐めないだけましか…
「ん?」
キョトン顔の雹…
「…殺人が快感にならんように、自分を戒めるんだぞ。溺れれば…死ぬ。」
「うん。解ってるよ。」
「ならいい。で、ほかの連中は?」
「皆、斬ってきたよ。証拠はなにも無いはずです。壁を乗り越えたので入街の記録もないです。」
「完璧だな。」
「あ、ルカさんの感知で、二人、標的が増えました。取引先のようです。仔細はルカさんに。聞く前に抜かれましたので…」
「おっけ。ご苦労だったね。雹、トワ君のおかげで、今回の襲撃にはケリが付いたよ。ありがとうな。」
「ああ」
「うん」
雹に抱き着く。
「と、父さん?」
「スキンシップだ!」
ははは…は?一人の鹿角族の少年と目があう。羨ましそうだ…
「君もおいで」
「うん」
何人か起きてきて混ざる…わちゃわちゃだ。体温高し!あ、熱いわ。
…命の熱ってな。
子供たちを起こし、走ること、方法を告げる。
「最初はゆっくり行くから。練習しながら行こう。」
「大丈夫だ。皆、足速いだろう?おっさんは足が遅いから付いて行けば大丈夫だ!」
「おいおい…トワ君…凹むんですけど。」
「事実だし。無理すんなよ、こけないように注意な。」
{はい!}
良いんだ良いんだ…
「ほら、イジケてないで」
「くそぉ!”充填””充填”!」
「さぁ、行こう。雹!小男居たら森の方に弾き飛ばせ!子供たちが見られないようにな!」
「応!」
「よしいくぞ!ほらいくぞ?ペースメーカーさん。プクス」
「うわ~~~ん!」
「トワ兄…言いすぎだよ」くそー。
トワ君の憶測通り、子供たちはすぐに”魔纏”に慣れ、ビュンビュン周りで走っている…おじさんさぁ、そろそろ…休憩したいんだけどぉ…。
「よし!ここらで休憩しよう。ちゃんと水分とるんだぞ。」
{はーい}
子供たちの方からは「楽しいね」「もっと速く走れるよ!」「もっともっと」等々…おじさんのハートがクラッシャーだよ…
「ほら、ジュース。元気出せよ。ペースメ 「トワ兄!」 …はいはい。まぁ、頑張ろう?」
「うっさいわ!頑張っとるわ!…コケろ。」
「父さん…」…
本日もお付き合いいただきありがとうございました。また明日!




