鹿角さん。
いらっしゃいませ!
「この辺も、木々が多いな…何か食えるものないかなぁ。」
イモガイの脅威を脱し、街道から外れて、浅い森を散策中。
「どれ、観てきましょう。俺、本業が木こりですから。」
「シアも一緒に行ってくれ。単独行動は控えてくれ。なんかあったら叫ぶんだぞ。」
「「はい」」
おいらはハセルとライオットと共に散策。
雪たちはカイエンにお任せだ。どうやらここらの林?森には人も入っているようだ。薬草や、果実の採集された形跡も見受けられる。近くに村でもあるのかな?
「ミッツ様ぁ!」
「どうしたー!」
「こちらへ!」
シア達の声のする方、倒木のうしろ…
「うっ」
そこには村の残骸…襲撃を受け、火を放たれたのであろう惨状が目に入った。
「ひどいな…」
「大体一週間前でしょうか…遺体も獣たちでしょう…すでに、散乱しております。」
「ここに到着時だれも気が付かなかったが…」
「風向きの関係でしょうな。」
「だな…獣人が気づかないわけないか…。距離もあるしな。生存者は皆無だろうな…」
「ええ。残念ながら。」
「ここは獣人の村か?」
「ええ。たぶん…尻尾が見られます。鹿角族でしょうか…この種族は魔族に分類されたり、角を装飾品として取られたり…力も持たず…獣人の中でも悲惨な種族なのです…どの頭にも角がありません。おそらく人族の襲撃でしょう。」
「はぁ、同じ人だろう!よくもそんなことを!」
「旦那…」
「ミッツ様…ありがとうございます…」”ザッ!”
「おっさん、これは…」
「ああ、見ての通りだ…また人狩りが戻ってくるかもわからん。丁度いい、ハセル!カイエンの処へ。雪たちを守ってくれ。」
「応!」
「トワ君悪いが…」
「ああ。やろう…」
…土魔法で大穴を掘り、散乱した遺骸を収める。ふぅうう…
「…おっさん。無念は解かるよ。でも、落ち着いてくれ。」
「…ああ。すまない。早く埋葬してあげ 「ミッツ様ぁ!!!!こちらにぃ!」 どうした!」
フウガの叫ぶ声!
「せ!生存者です!」
「な!今行く!」
半壊した家の地下への入り口…そこからフウガと、シアが頭に小さい角を生やした子供…6人、成人間近だろう…女性3人、夫婦であろうか?壮年の男女一組。いずれも衰弱し、危険な状態だ…
「ここに並べて!治癒魔法をかける!シア!トワ君と麦粥を作ってくれ!材料機材はトワ君が持ってる!」
「はっ!」
「おっさん、まかせろ!水、ここに置いとくぞ!」
「応!頼む。フウガはおいらの補佐を!雹!雹!いるか!」
「はい!父さん。周辺警戒しています!」
「ああ。頼む!ライオット!このことをカイエンに伝達!」
「はい!」
その時、ご婦人に腕を掴まれる。そして、か細声で
「…子…子供たちを…先に…私たちは…あ、あとで…」
「そうかい…では、奥さんと年長の子からいこう。人手が欲しい。”充填”…癒しを…”回復””回復”」
まずは、奥さんから、次に成人間近であろう、女の子三人にかけていく。
「う、っつ…」
「うう…じ、人族!」
「う…」
「今、皆を治療している。動けるようなら手を貸してくれ!」
「皆、この方は違います…」
「お、おばさん!じ、人族なんか!」
フウガが、優しく、鹿族の女の子に語り掛ける。
「お嬢さん方…この旦那は普通の人族と違う…本気で助けようとしている。ほら、ほかにも獣人が居るだろう。離れたところに、子供もいる…旦那が信じられないなら、俺を信じちゃくれねぇか?」
「く、熊族のおじさん?」
「辛いかもしれねぇが。力かしてくれ。この旦那の指示に従ってくれ。」
「わ、分かりました…何をすれば…」
「旦那。指示をお願いします。」
「ありがとう、フウガ。この子たちを順に回復していく。そのケアを。水はそこにある。少しずつ少しずつ飲んでくれ。一気に飲むと体調を崩す。解ったかい?」
「…はい」
「じゃぁ、いくぞ…この子に癒しを…”回復”!」
「う…ん…」
「頼む!」
「は、はい!」…
最後の一人…やばい…な。
「せっかくの人生…もっと生きようよ…帰っておいで…”治癒””回復”」
「うっ…」
「ふぅーーー何とかなったか?」
「み、ミッツ様…」
「す、すごい…」
「この子も頼む。水を奇麗な布に吸わせて口元に。容態が悪くなったら知らせてね。布、布…これ使ってくれ。」
…今の子はちょいと魔力を持っていかれたなぁ…ふぅ。
「は、はい!」
「さて…待たせたね…旦那さん…”治癒”…”回復”…っと。子供たちの様子は?」
「ミッツ様、少し休憩されては…顔色が…」
暗転しそうだ…ぐらり。
「ミッツ様!」
「「おじさん!」」…
「大丈夫…ちと、休憩。ふぅ…」
足を組み…座禅…集中…体の中心部が熱を持つ…うなれ!俺のコ〇モよ!…まだ余裕がありそうだわ…ははは。どれくらいたっただろうか…肩を叩かれる。サラリーマンにやっちゃいけんぞ、それ!
「おっさん、大丈夫か?」
「んあ?トワ君。何時間たった?」
「大体、2時間くらいかな。埋葬も終わって、子供達はカイエンの処に合流。野営の準備もしているよ。」
「ミッツ様…この度は、我々を、お救い下さりありがとうございます…。」
「いえ…たまたま通り掛かったまで…それにしても…この惨状…お悔み申し上げます。」
「いえ…我らの種族の歴史…いたしかた無いので…ただ…子供たちに害が及ばぬようにしていたのですが…」
「悲しいことを…。行くところはありますか?ないようでしたら…うちに来ませんか?保護できる準備は調っています。何処よりも安全と自負していますよ。」
「よろしいのでしょうか…もう、かなりの者が殺され…連れ去られました…お世話になりたいと思います…」
「ええ。歓迎しますよ…えと…」
「あ、失礼しました。私はエイルクと申します。そっちは妻のミュールです。」
「よろしく。それじゃ、皆の処に合流しようか。」…
「鹿角族の子供達…聞いてくれ…親、兄弟と突然の別れ…悔しいだろうが、今は生きろ。その場所はおいら達が用意する。…ここは、残念だけど、もう住めない…。新しい土地へ行こう。」
皆目に涙を貯めている…
「あとはエイルクさんと話してくれ。おいらの力の及ぶ範囲で協力する。」
「…つ、ついていきます!ここにいても…ここにいても…」
「うっうっ…」
「泣いていいよ。我慢することはない。」
そう言ってテントを出る。テントからすすり泣く声が漏れ聞こえる。ほんとうに…やるせないな。
今日も2本いってみよう!びば秋分の日!




