出発!
いらっしゃいませ~
早朝、旅装に身を包み、早めに用意してくれた朝食を食べる。朝からヘビーだわ。
確かに日本でも、ベーコンエッグくらいは食べてたよ。が、こっちのは、ベーコンステーキだわな。
「ほら、雪…もうちょい食べとけ。」
「ふぁ~いぃ。」
半分寝てる…白目剥いてベーコンを齧ってるのが妙に可愛い。トワ君も気づいたようで、笑ってるわ。
「雪、白目剥いてんな。ははは。」
そう言って、トワ君、半分口から出てるベーコンを引っ張る…雪も逃さじと踏ん張る…
「はははは、トワ君、やめ。」
「ふふふ。寝てんのに離さないな。ははは。」
ビヨンビヨンしない!
「足りてるかしらぁ。ああら。まだお眠なのねぇ~」
「おはよう。ミッツ殿」
「おはようございます。あらあら。」
公爵夫妻も降りてきた。奥方はトワ君のいたずらを微笑ましくみている。
「んあ!トワ兄ぃ」
あ、起きた。
「ごめん、ごめん。ちゃんと食えよぉ~」
もむもむ齧りだした雪を見守る。マジ可愛いわ。
「公爵様、御世話になりました。」
「いや、こちらの言葉だ。貴殿と縁を結ぶことができてこれ以上の成果は無いな。おっと、どうしても国益にいってしまうな。すまぬの。友人として接してくれると嬉しい。」
「はい。これからも友人としてお願いします。なぁ。ハセル。」
何となく…一緒に風呂に入った仲だし。振ってみた。
「おう!公爵じいちゃんとは、ちんち〇比べた仲間だもんな!公爵じいちゃんが困ってたら助けにくるぞ!」
”ぶふぁ”思わず、お茶を吹いてしまったわ!
おいおい。何時の間に…みんなびっくりだわ。
ご婦人は楽し気に笑っておられる。
「おう、おう。期待しておるぞ。ハセル坊とワシはち〇ちん兄弟じゃ。強くなるのだぞ。」
「うん。もっともっと強くなるよ!」
何だよ…〇んちん兄弟って…。
朝食後。小休止を経て出発となった。公爵、伯爵が玄関まで見送りに来てくれた。門までくるといったが丁重にお断りした。護衛やらなんだで大事になるからな。この時に書類ももらい。
礼と再会を約束し宿をでた。
さて。なんだかんだで濃い時間を過ごした海洋国家ポリシアヌ。ここでも多くの縁を結ぶことができたわ。頼りがいのある執事も得たし、子も増えた。
…奥さんいないのに子供ばかり増える…字面だけ見ればとんでもおっさんだが、まぁ。養子だし。今更、一人二人増えたところで、どうということは無かろう。
ただ、赤ちゃん育児未経験、手がかかる時をすっぱ抜いてるので子育て云々は語れんなぁ。なんて、フラグになったらまずいから忘れよう。門をでて、しばらく街道を歩く。
「あ、フウガ、シア。とりあえず、剣渡しておくわ。」
「お預かりします」
「それで、ミッツ様、街道を東進するので?」
「いったん海岸線にでて、一泊の予定。マッド・クラブとか食材を獲る。と、”様”じゃなくていいよ?気楽にいくべ。」
「…マッド・クラブ?」
「まぁ、何とかなるでしょ。じゃ、そろそろ走ろうか。急に体が軽くなると思う。慌てずに。最初はゆっくり慣らすように。”充填”!」
パーティ全体を淡い光が包む…
「さぁ!出発だ!」…
…。
「驚きました…我々獣人族は無意識に身体強化を行っているといわれてます。今日、実感できました。自分の地力、それに上乗せされた無意識の強化。さらにミッツ殿の魔力の上乗せ…同じ系統の魔法だからでしょう。上乗せ分を直接感じることができました…上手く説明できませんが…」
「まぁ、身体強化がさらに上乗せされる。で良いんじゃない?馴染みがいいのだろう?なぁ、おっさん。」
「そうだね。獣人の皆がすぐに慣れるのは、優れた感覚もそうだけど、上乗せだから御しやすいってことも言えるのかもしれないね。」
「…父ちゃん…よくわかんないよ?」
「まぁ、魔力を多く取り入れれば強くなるってこった。本来なら全身筋肉痛なんだが…今まで無いから、治癒力も上がってるんだろうさ。」
「父さん、この魔法って、俺でも使えるの?」
「難しいんじゃないかな?魔力のごり押し…有り余る魔力で強引にやってるから。でも修行…魔力鍛錬も有効だろうな。魔法職の人に、魔石…いや、クリスタルを持たせて、普段からクリスタルに魔力をためて、いざって時にその魔力を使うってのはありかな。あとは人数集めるかだな。」
「メメ達なら…」
「修練次第だろうな。魔法使い目指しているようだが、いかに魔力を制御できるかだろうな。”獣人は魔力が低い、魔法職に向かない。”などと言われているが、身体強化自体が魔法。普段から、しかも無意識で使ってんだ。多分総量も人族より多いだろうさ。その魔力を更に増やし、無意識に使ってる魔力を自分の意志で使えるようになる…そうすれば可能性もあるね。」
「なるほど…俺たちは”魔法使い”といってもいいのか…」
「ある意味そうだね。ただ、人族は放出魔法じゃないと認めない、なんて言いそうだけどな。まぁ、なんとでも言わせておけばいいさ。獣人族の身体強化、素晴らしいじゃないか。」
「じゃぁあ、父さん、身体の鍛錬と魔法の…瞑想だっけ?あれやった方がいいの?」
「う~ん。どうだろう?ただ、瞑想は心身に良いというし。修行に取り入れるのはいいと思うよ?」
「俺もやる!」
「ハセは迷走だな…」
うまい事いうな。
「おいおい。ちゃんと教えてやってくれよ。」
「…そういうと、魔人とか、魔物、魔族って魔石あるんだよね。父さん、彼らが強いのは魔石に魔力を貯めていて、必要な時に使える…ってこと?」
「かもしれないね。魔石の大きさが強さに比例するようだし…魔族って魔石あるのか?」
「そう聞いたことあるけど…?」
「さぁ。でもそうすると分類が…魔物が知能もって、魔人…魔人が種族として増えたものが魔族?ってことになるよな…まぁ、魔族…あ、カイエンそこんとこどうよ?」
忘れてた。魔族だったわ。
「…ミッツ様、お忘れでしたな。なかなか面白い話でしたね。私どもの身体強化も獣人族と同様と思われます。先の話の通り、魔石を持ってますのでさらに身体の強化、放出系魔法の行使に回すことができます。」
「ほう。」
「魔人から…という説も支持されています。種族ごとの特徴が顕著で、似た特徴を持つ魔人が確認される場合も多くあります。我らは魔人のさらに進化した形と思っています。」
「そう思えばしっくり収まるな。友好的で知的な魔物だっているかもしれんし。そういったのが進化…知識の蓄積で魔族や獣人の一種族になったりするんじゃないかな?まぁ、想像の範囲ですが。」
「動物も魔石生えるっていうし、獣人も鍛錬で生えるかもしれんよ?そういったのが魔族ってのもアリじゃね?」
「そうだね。他種族間の混血なんかも要因としちゃありだな。」
「じゃあ、魔力沢山の父ちゃんにも魔石ある?」
「…どうだろう…尿管結石ならあるが…」
「…おっさん…あれ、めっちゃ痛いって…」
「ああ、男しかわからん…ていうか…おいらのほんのちっこいんでスルッと出ちゃうけどね」
「なら、いいけど…」
「父ちゃん結石ってなんだ?」
「ふっ…父ちゃんの魔の石だ!」
「…違うだろ…病気だ。」
「死んじゃうの?」
「大丈夫だよ。問題なし!最悪、激痛と血の小便がでるくらいだ」
「ひぃ!」
「おっさん…悪化すっと悶絶して死ぬぞ。たぶん。」
「まじ?」
「だって、病院ないぞ?どうやって砕くんだ?」
「…魔法に期待だな…」
そうであったわ!ははは…病気は気を付けよう。夜もか…
「おっさん、性病もだぞ?」
「…だよねぇ~休憩もういいかな?走るか?」
「あ!父さん、雪たち寝てるわ…」
「どうりで静かだとおもったわ…疲れてんだろ。ここで昼飯にすっか…」
どうせ夜に海岸線に着けば良いのだからと、ゆっくりやすむこととした。魔法コンロを出して、ソーセージを焼いていく。パンに切れ目をいれて挟めばホットドックの出来上がりだ。ケチャップ抜きだが…でもシンケンさんとこのソーセージは肉汁凄いから十分に旨い。帰りも寄らないとな。
料理が始まると、雪たちが起き始める…さすがの嗅覚だわ…ミミルは興味がるのか、パン切りを申し出た。雪はハセルと共に味見要員を決め込むようだ。
カイエンがテーブルにテーブルクロスを広げ、皿などを並べる。今までに無い光景だわ…
「カイエン、いつの間に?」
「ええ。野営といえど、これくらいはと。」
「ついでだ、雪とミミル…ハセルも雹も、マナー練習だ。カイエンも協力頼むわ」
{ええええぇぇぇーー}
「承ります。」
にいぃぃと笑顔…か?なんか背筋が…雹なんか顔面蒼白だわ。
今回は、軽食だったので然う然う問題は無い…
「ハセル様。誰も取りませぬぞ。一つずつお取りください。」
「雪様。ちゃんとパンも一緒に…」
「雹様。逃がしませぬぞ…。」
…前途多難だわ。
食休みついでに、野草などを採取する。フキに似た植物が多くあり、根ごと採集した。
「おっさん、これ、アスパラじゃん?」
「お!ナイストワ君!ビンゴだわ!根ごとごっそり採取だ!ちゃんと育てれば大きいのがとれるかもしれん」
新芽はなかったが、レースのような葉と、赤い実…当たりだろう。
「父さんこれは?」
「ハマエンドウ?食えるのか?”鑑定”…毒ありだそうだ。下剤になるみたいだな…」
「…一応、種、採るね。」
「父ちゃん!これ食えるか!」
ハセルとライオットが抱えてきたのは直径60センチの球体…
「…たぶん、臭くて食えんぞ…にしてもでかいダンゴムシだな…逃がしてあげなさい。」
「うん。」
地面に降ろすやいなや、”変形”!キモ!いや…ある意味…格好いい?
「おお!リアル〇蟲だな!飼うか!」
「トワ君…断固反対したいのだが?」
「でも、うちの森とかに放すのもアリじゃね?吸収させるのもいいけど、自然分解があっても。こいつ、大人しそうだし。」
バシバシ叩くトワ君。あ、丸まった。
「…今回はパスで。帰ったらコアと相談してみよう。必要なら取りに行けばいいさ。森に行けばたぶんわんさかいるぞ?」
「了解。かっこいいぞ、これ。」
…そうか?
食後の採集を終え、走り始める。ようやく海が見えてきた。そのまま海岸線までいこう。
本日もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。




