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ゴリゴリ精霊?が集うお宿。

いらっしゃい!

 「ここか?【精霊の遊び場亭】は…」

 可愛い。ちょいメルヘンが入っているお宿だ。一階がレストランか?清掃も行き届いてるようだし、入口から入れば”おかえりなさい♡ご主人様ぁ♡”ってな感じなのだが…。

 入り口に主と思われるグレートマッチョが掃き掃除している…ゴリゴリだ…ハセルもいずれ…

 渋い顔をしているとゴリゴリが話しかけてきた。

  「あら、お客様かしら?」

 ひぐぅ!テンプレ…こんなことあるのか…おかまが強いのは昭和だぞ?いや…こっち来るときもある意味ブームだったか?おかま、ニューハーフ?

 「クク…流石おっさん!」

  「あら、かわいい子。ふふふ。」

 ざまぁ!トワ君!熱い瞳が君にロックオンだ!

 「よし!ここにするぞ!」

 「んな!お、おっさん!」

 焦ってらぁ。ざまぁ!!!

  「あら、部屋ならあるわよ。いらっしゃいませぇ。」

 …いつの間にか現れた悪魔っ子もいれてチェックイン。


 店の主?受付はアレだが、部屋は広く清潔で落ち着いた…うん。いい宿だ。

 「おっさん、恨むぞ。」

 「ははははは。良い宿じゃないか。めっちゃ清潔だぞ。」

 「…確かに…身の危険を感じるのはなぜだ?」

 「坊やだからさ…」

 「…」

 イケメンだからだよ!くそ!

 「冗談、冗談。さぁ、風呂呼ばれるか。行くぞ。」

 

 風呂もこれまた大きく、湯も満ちたいい風呂だ。雪も悪魔っ子について入ってくる。雹も渋々…順番にわしゃわしゃ洗って湯船へ。

 「ふぃいいいぃぃぃーーーー。」

  「父ちゃんいつもそれな。」

 ぷかりと浮いてるハセル君…君はいつもそれな。

 …ん?あの”密度”で良く浮くな。お主は。

 「ハセルも大人になれば自然にでるようになるさね。」

 「爺くせぇ。」

 「トワ君も直だよ。ふぅうううーーー。」

  「お子様には解らないわよ。おじ様。ふぅ。気持ち良いわねぇ~」

 「はぁ?ババぁだろうが、何年生きてんだよ。おまえは!」

  「ふぅ。デリカシーの欠片も無いのね。もっとも不良だし。頭の中身も”不良”かしら?こまった勇者様だわぁ」

 「やめやめ。折角の風呂だ、楽しく入るぞ。」

 まったく。直ぐに、いがみ合うんだから…

 風呂上がりの一杯は食堂にて取ることにして先を急ぐ。


 「「いらっしゃいませぇ~」」

 …メイド服姿の…ゴリマッチョが二人…

 「これが精霊さんかぁ…」

 思わず口に…

  「あら嬉しいわ。盛り多くしておくわねぇ」

 「あ、ありがとう…」

 飲み物を注文し、定食とおすすめ料理を注文する。

 

 「皆、ご苦労様。今日中に着いたのは上出来だな。ここには2泊予定している。明日は商会とギルド。それ以外は予定なしだ。何かあったら提案してくれ。取り敢えず食うぞ。折角の料理だ。乾杯!」

 見るからに旨そうな料理を前に長話は酷だよな。

  「乾~杯」

  「いただきまーす!」…

 

 う、美味い…悔しいくらいに…豚肩ロースの焼き物。肩ってのがいい。上質の甘味のある脂身、これ以上ない塩加減。塩のみでここまで食わすとは。ハセルはもうギトギトだわ。

 スープも素晴らしい。今浮いてる野菜はあとから入れたのだろう。出汁の野菜の影はない。香草の用量…やるな!舌の感覚…ビルックに並ぶものがあるな。現状では経験値の差でここのコックの勝ちだな。

 この魚の蒸し物…後からかけた餡がいい。ピリ辛でさらに食欲を煽る。パン一つとっても言うこと無しだな。

 「お、おっさん。う、美味いな…ここの料理…」

 「ああ、美味すぎだな。ほぼ完ぺきだ。塩味、香草の妙。これ以上の料理の作り手はそういないだろう。」

  「あら?そこまで誉めてくれて”ほぼ”なのね?」

 コック服の…ゴリゴリが厨房から出てきた。いやはや…慣れたぞ!もう!

 「いや、完璧だとそれ以上が無い…貴女の腕は日々進化してるのだろう?それとも今が完璧…終着かな?」

 キザっぽかったかな…しかもゴリオカマ相手に…

  「…あ、ありがとう!最高の賛辞だわ!おじ様!…お酒持ってきて!私のおごりよ。」

 「ありがとう。ですが、この料理に合う酒ではないでしょう。この料理には」”ドン”

 「これくらいでないとね。開けていいかな?」

 特級ワインの半樽をだす。

  「こ、これは、の、ノリナ産の特級…お、おじ様!私、ホレちゃうわ!」

 ぎゅうぅっと抱き着いてくる。ゴリゴリパワーで背骨が悲鳴を上げる!

 「ギブ!ギブ!し、死んじゃう!死んじゃう!」

  「あ、あら、ごめんなさい…」

 「ふぅ。みんなで飲みましょう。」

 トワ君の呆れ顔…まだまだ若いの~。

 店番ゴリゴリも合流。奥から出てきた新ゴリゴリも加え、総勢5人のゴリゴリが目前に。壮観やー。その日、泊まっていた客にも振る舞う。

 騒ぎながら飲む酒じゃないので1~2杯で十分だ。ちゃっかり悪魔っ子も楽しんでいたよ。

 

 最高の料理に最高の酒。幸せなひと時だった。大分残ってる樽をそのまま寄贈し部屋へ。代金を払うと言ってきたが、コックへの賛辞ってことで押し切り、”では明日無料で宿泊”ってことで収まった。

 

 ゴリゴリが店員で変わった宿だが、それさえ気にしなければ、この世界で一番の宿と言えるだろう。部屋よし。飯よし。風呂よし。清潔も文句なし。料金もそこそこ。文句は…ゴリゴリに慣れたから…無しだな!

 

 …。 


 早朝、いつものごとく井戸端を借りて素振りの鍛錬。ん?庭の片隅に大量の石材。

  「父ちゃん。これ何?」

 「お店の人の訓練道具じゃない?」

  「どう使うんだ?」

  「あら、坊ちゃん。興味あるの?」

 ウェイトレス?さんの片方が現れた。

  「うん。俺も筋肉ムキムキになりたい」

  「フフフこうよ…」

 おもむろに、転がっていた石材の端を握り…

  「ふんふんふんふんふんふんふんふんふーーーん!」

 鉄アレイのように上下に、次に、肩に担いでスクワット…筋肉の収縮…いや爆発!凄いな…

  「ふぅーーー。どう?」

  「す、すげぇ…かっけぇー。父ちゃん!帰ったら作ろう!」

 「ええぇ…マジ?帰ったらね…」…

  

 「父ちゃん、もっと重い剣ない?」

 「剣ならあるだろう?」

  「ううん、素振り用に重いのが欲しいんだ。」

 「分かった。型がおかしくならないようにトワ君に見てもらうんだぞ。」

 収納から二回りデカいバスターソードを渡す。

  「ありがとう!」

 「長いな…間合いの関係もあるべ。先っぽ折り斬ったほうが良い?」

 「ハセルなら大丈夫だろうさ。」

 ごぅごぅと素振りをするハセル…殺人扇風機だわ。あれ。

 「ほら!おっさんも素振り!ビシバシいくぞ!」

 「へ~~~~い。」

 …何度か尻をシバかれ朝練を終える。

 今日はライオットも雪も参加だった。ちょろちょろと動く雪をみてほんわり。油断して尻が退けて一発!てのが数発あったな。可愛いから仕方無いだろう。

 

 身を清め食堂にいく。

  「「おはようございまぁ~す♡」」

 朝っぱらから重いわ!朝食もヘヴィーだ。何やら判らん…ラムっぽい風味だな…新鮮だから臭みは一切ない。ホント香草の扱いは秀逸だな…

 「これも美味いな…」

 「ああ。おいら達には香草は馴染みがないからな。レストランで食う程度。でもここほどの扱いの店にゃお目にかかれなかったな。」

 「ああ。どこぞの星のレストランでもここまで美味くなかったよ」

 あ…トワ君家はブルジョワーだったわ…

 「トワ君が言うんだ。ここのコックの腕と舌、食材のおかげだろうさ。」

 「魚村も良いが、越すならここもいいな…」

 「トワ君が口説けば来てくれるかもよ?」

 「おっさんみたいな歯の浮くセリフは良く言えないなぁ~」

 「「…」」

 にらみ合う…

  「父ちゃんもう食わないのか?」

 「ん?、ああ。食うか?」

  「食う。」

  「あらあら。坊ちゃんは良く食べるのね。少し残ってるけど食べる?」

  「食う!」

 「あ、すいません。」

  「良いのよ~こんなに美味しく食べてくれて私も嬉しいわぁ~」

 「いやぁ。本当に美味い。食材持ち込みとかっていけます?」

  「あら、どんなの?」

 「実は、シーサーペントを持っていまして。ああ、マジックバッグにですが…」

  「…シーサーペント…」

 「ええ。半身は今晩。残りは手数料として献上しますよ。」

  「そ、そんなに貰えるわけないでしょ!」

 「いえ、貴方の香草の妙技、試していただきたいんですよ。魚村では”漬け焼”に仕込んでもらいました。」

  「…試してみたいわねぇ…そうそうお目にかかれない素材…」

 「あ、魔石があったらバックしてください。」

  「骨などの素材は…?」

 「思い切ってスープの出汁にしましょうか。」

  「ふ、ふふふ、お、面白いわ、とっても!高級素材を出汁って!おじ様最高だわ!」

 「では、贅沢に食べちゃいましょうか?」

  「ええ、ええ。鮮度によっては内臓もいけるかもしれませんね!」

 「そうそう、その調子ですよ。じゃぁ、何処に出しましょう?」

  「こちらへ!」

 

 厨房の更に先。解体ブースのような部屋に到着。台の上にシーサーペント出す。ハセルが仕留めたやつだ。

  

 「久しぶりに見たわ…料理にしても数切れしただけ…先に味見しても…」

 「当たり前でしょう。どうぞ。全てお預けしますよ。魔石以外すべて”食材”とみて構いませんよ。いじりようの無い頭とかは売っちゃっても構いません。」

  「た、確かにお預かりしますわ…ああ。腕が鳴るぅ。いきそうよ!」

 ゴリゴリがくねくねすると破壊力あるな…。あ。

 「もう一品。シャコもいけます?」

  「シャコ?普通の…じゃないわね?」

 「ええ。」”どさ”

  「…ふ、ふふふ…いけるわ。普通は水っぽいけど…これは良いわね…もちろん”食材”ね。卵もありそうね…」

 「そうそう…次は商売の話。このスパイスも見ます?」

 小袋に分けられたスパイスを出す。

  「こ、これは!最近出回り始めた…とっても高価な…なんで…」

 「あ、私どもヴァートリーのものですから。」

  「な、なるほどぉ~販売元ね!それなら納得だわ!使わせていただいても?」

 「ええ。試してみてください。一応、今回、入荷したもの全ての種類です。」

  「す、すごいわ…おじ様、どれだけ私の腕を買ってくれているのよ!」

 「ええ。大いに買っていますよその腕と舌に。私の子にも素晴らしい舌と鼻を持った子が居まして。料理人志望のその子も是非連れてきて食べさせてあげたいと思っています。」

  「おじ様が認めてる子…」

 「ええ。豚耳族の子なんですが素晴らしい感覚を持っているんですよ。料理の腕もね。ですが経験はまだまだ。いろいろ食べさせて彼の思いを、夢を叶えてあげたい。」

  「是非。私の料理でなんか感じてくれれば…ああ、素晴らしいことだわ!」

 素晴らしい。人格者だな。ゴリゴリだけど…ワクワク顔のゴリゴリを残し食堂へ戻る。

 「おっさん。いいのか?」

 「サーペント?美味いの食いたいじゃん。」

 「まぁ…切り身も沢山あるから…いいか。」

 「それだけじゃぁないんだ。どう感じるかは分からんが、ビルックを弟子入りさせたい。獣人だからダメ…って言われたら、一月位食べるために滞在させたい。」

 「…そっか。ビルックの…」

 「ああ。ここのシェフは絶対ビルックの刺激になる。ここほどの店はないさ。」

 「ああ。ゴリクネだけどな。」

 「違いない。ビルックもああなったら…まぁいいか。」

  「父さん!良くない!」

 「ははは。大丈夫だろう…たぶん?」

  「父さん…」

 まぁ、それも…いいさ。

本日もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。

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