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入ってすぐ?


 ……


 ハム村に到着。せっかく来たのだし楽しまんとなぁ。

 ホットドッグを使った村の経営戦略について、意見を出し合う若者たち。うんうん。こんな彼らが次代、そして時代を担うんだ。楽しみ以外にないね。

 

 なんて、感激していると、

 「……あまり難しいこと考えていると、腸詰め楽しめないぞ」

 と、ラグさん。ま、まぁ、そうね……

 「だな! お前ら、理屈っぽいからな。せっかく来たんだ! 思う存分、腸詰めやハムを楽しまないとな! 腸詰め天国! ハム天国! 食うぞぉーーーー!」

 「……おう!」

 と、拳を天に突き出すハセル君……。どこの覇王だ? ハム村を目の前に、今死んじゃったら、我が生涯に悔いしか残らんぞ。なんてな。ラグも続くが、程々になぁ。

 「まぁ、ハセ兄だかんな~~」

 「が、しかし、どれだけ食うのか見ものだな……」

 「じゃぁ、アルが奢ったれば? ハセ兄、遠慮なく食うぞ?」

 「冗談はよしてくれたまえ……。借金奴隷になってしまうではないか……」

 だな。ははは。

 

 「「で、父ちゃん! ここに何日泊まるんだ?」」

 と、ハセル、ニコの声が揃う。まぁ、滞在内容、目的は随分と違うのだろうがなぁ。

 「さてなぁ。後でトワ君に聞いてみ? ニコたちも”見たいところ”があるだろう? 会頭殿と打ち合わせてなぁ」

 村の政策やら物流。いろいろと勉強になることも多いだろう。

 

 入村――と同時に、さっそくと屋台に駆け込む。いくつか並んだ屋台があるが、子供たち皆、迷いなく一つの屋台を目指す! 高性能の鼻で”美味い屋台”を嗅ぎ分けられるんだなぁ……

 

 「おっちゃん! ちょうだい!」

 「へぇい! いくつご用意しましょ?」

 「そうだなぁ……とりあえず?」

 「待て! ハセ兄ぃ! とりあえず、ホットドッグは一個にしておけよ。町の中にたくさんあるだろ」

 と、突撃するはセルの服を引っ張り注文を遮るニコ。

 「ん? ここのは美味いってわかってるんだ。5個くらい食っても大丈夫だろ?」

 何いってんだ、ニコ? って顔をするハセル……。

 「5個ぉ? 普通、5個も食ったら腹いっぱいだろう……」

 うむ……。父ちゃんは2個もあれば十分よ。が、アルくんが言うようにハセルがどれだけ食うのかも見てみたいがな。

 「……ニコ兄もたくさん食えばよかろう」

 「おいらは色々なところで食べたいの。ラグも程々にしておけよ……。夜、食えなくなるぞ」

 「……問題なぁし! ハセ兄が行く店は当たりだしな。……それに私の胃袋には”収納”あるからな!」

 「いいな! それ! 俺も欲しいな!」

 「ほんとかよ。ハセ兄もあれだけ食うんだ。ついてんだろ、”収納”くらい」

 「ついてないぞ。すぐ腹減るしな!」

 「……うむ! すぐ腹は減る!」

 「だめだろ、それ……」

 そうなぁ。”収納”付いてる割に、ラグはいっつも腹減りちゃんだもんなぁ。ふふふ

 ニコの進言が受け入れられたらしい。一人、一個ずつ注文するようだね。


 おそらくパンは外注だろう。腸詰めをこさえてパンまでは無理だろうね。いや、こういった屋台は腸詰めすら外注かもしれないなぁ。だが、”料理人”という職業があるんだ。工夫と調理方法で味見用から、屋台の料理へと完成度を引き上げるのも可能だ。

 

 この屋台は見たところ何の変哲もない標準的なものだな。コッペパンとトマトソース、そして、腸詰め。好みで粒マスタードと、練りマスタード。

 ほぅ、注文を受けてから茹でるのか? 屋台の強み、ファストフード感が損なわれるが……。店主の 『すこしお時間いただきますが?』 は、このためだな。

 まぁ子供たちは最前列、作る様子をガブって見てるからいいけどね。茹でからの焼きに移行、ジュゥという音にお耳がピクピク。しばらくして、プツン! と皮が少し破れ、香ばしい匂いが倍増! お鼻ヒクヒク。よだれがたらりたらり。ふふふ。

 

 どれ、おいらもお一つ。

 ほぅ。肉肉感があり、とても食いでのある腸詰めだ。確かに美味いが、特段? クセもないしな。が、子供たちの顔を見るにお気に入りのようね。臭いだけじゃ、この肉肉感の歯ごたえはわからんだろう? 何か他の要因があるのか? それとも、脂分と肉の比率まで焼ける匂いでわかるのか? スパイス類が控えなのもいいのかもしれんな。

 

 「で、お味の方はどうよ?」

 と、隣で二個目を頬張るラグに聞いてみる。

 「……うまし!」

 ハセル? ガフガフっと口いっぱいに頬張ってる。聞くまでもなかろう。

 ニコたちは4人で2つ。半分ずつ食べるようね。他の工房の腸詰めを楽しむつもりなのだろう。おいらも半分でいいな。まぁ、”収納”に突っ込んでおけばいいのだがね。ちと、寂しい……

 

 「で、この屋台を選んだ決定打は?」

 「……ん? 美味しそうだったから」

 ふぅん? 

 「ここの腸詰めはいい匂いだからな。向こうの屋台はすこし脂臭い。あっちのは多分、古いとおもう。そこのはお客さんいないし? 焼いてないとわかんない。香草のキツイところも要らないな」

 と、”爆食王”のご意見。真っ当な製法で作られた腸詰めだからこの屋台が選ばれたってことかな。

 「匂いだけで、そこまでわかるものなんだなぁ?」

 さすが獣人族の鼻。いや、”爆食王”の超感覚か?

 ちょっと古いくらいなら焼いちゃえば香ばしくなってそんなに変わらんと思うがなぁ。ある意味、熟成? 腐ってりゃ別よ。

 「脂臭いところは、質の悪い屑肉やら脂身をたくさん使ってると思う」

 「うん。精肉屑に内臓肉も入ってるかもね。臭いし?」

 と、ニコ、リンカ君。

 「そもそも、ハム成形時の端っこを使うのだから文句はないが、もう少し気を使ってほしいですね。大方、解体場から出る屑肉ものを使っているのでしょう」

 と、アル君。

 「さすが獣人族の鼻ねぇ。そこまでわかるものなの? すごいわねぇ」

 「そうだな。脱帽だわ」

 セツナっちもおいらもびっくりさ。おまけで、屋台のオヤジも。オヤジの顔を見るに、おおよそ、そんな感じなのだろうね~~。初見の立ち寄った旅人をカモる屋台なのだろう……か? 名物”ホットドッグ”の弊害だわなぁ。

 だが、内臓肉だって使いようだ。有名なハラミなんか赤身肉にみえるが、内臓肉の横隔膜の筋肉の一部だ。副生物ふくせいぶつともいわれ、レバー、タンやら豚足も含まれるとか。

 ま、おいら的には内臓肉も問題なし。ズルしなければね。その情熱と知恵をもっと真っ当な方に使ってもらいたいもんだ。

 

 「じゃぁ、次、シンケンさんとこいこうよ!」

 「その前に宿押さえないとな」

  <ふむ。では、宿は相棒に任せた>

 「アンタ、そういって、レバーパテ、ガメるつもりでしょ! そうはいかないわよ!」

  <知らん>

 フン! とそっぽを向くルージュ殿

 そこ! 子供たちを差し置いて喧嘩しないように! 食べ物のことだし醜いぞぉ! 半々でよかろうに? 

 駆けていくセツナっち。方角はシンケンさんの工房の方向だ。が、いくら速く走ろうとも、頭の上にルージュ殿乗っけているんだ、走っても意味なかろうに? くれぐれも街中で暴れないようになぁ~~。

 「で、トワ君は行かないのかい?」

 「は? おっさんのお守りが必要だろうが」

 と、澄まし顔の美少年。

 「そうでした! お世話おかけします」

 「うむ!」

 

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