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シーサーペントの仔


 ……


 街をぶらぶら。

 すると、会頭一家に遭遇。朝食の屋台巡りを敢行中とのこと。

 ”紅隊”を引き連れ、奥方とお嬢様は綺麗な服着ているから、目立つこと、目立つこと。

 カタリーンお嬢様の傍らに立つ、凛々しいカミュの姿をみると目頭が熱くなる。

 

 マリアさん情報によると、

 「ミッツ様、倉庫街で販売している『たこやき』も大人気ですよ。あの黒い『ソース』はなんとも複雑で美味しいですね」

 と。もうたこ焼き屋の営業開始したらしい。


 「もう、たこ焼き屋オープンしてるんだ」

 「……町から小麦粉、油、ソースも運び込まれている。ノーム印の”ソース”と”激辛ソース”もやってきている。……お店にはもう少し時が必要かと思ったが」

 「そうね……。料理としてうけいれられ、お店も出すとは思ったが……早いな。そりゃ、激辛ソースも一緒にやってくるわね。よくもまぁ、門での検問パスできたなぁ」

 ありゃ、兵器だ。なんて

 「あら、その”激辛ソース”も人気なのよ。ウチにも多くの問い合わせがきているわ。単品で入手できないかって。小魚の素揚げにちょっとつけると最高に美味しいですよ」

 「へぇ~~。海洋国は暖かいからかなぁ。所変われば、だなぁ。死人が出なけりゃいいが……。てか、マリアさんも愛用者?」

 「……あれは武器だ!」

 だよね~~

 「そうですか? 激辛ソース、本当に人気ありますよ?」

 ほんとうかいな……

 

 「ね、ねぇ、ノーム族ってあの方たちのこと?」

 と、ちょうどいいタイミングで前から10人くらいのノーム族集団が歩いてきた。野菜やら何某かの穀物の入った麻袋を背負子に乗せて。街の風景に完全に溶け込んでるね。

 先頭で手ぶらで肩で風切るのは女性だろう。普段、女性は住宅に引きこもっているのだが、主導権はしっかりと持った『かかぁ天下制』だかんなぁ。普通に出歩くし、引きこもっているのは家や子を守るためなんだろうね。

 

 「……うむ。そうだ。あの方々がノーム族だ。……やぁ! いい天気だね!」

 {やぁ!}

 「元気か!」

 「いい天気だな!」

 ラグが右手をあげ声を掛けると、ノーム族の連中も同じように応えて、普通にすれ違っていく

 「す、すごい! すごい!」

 「……は? 挨拶をしただけだ。大げさ。……ノーム族だって”人”だ。ウチの町に行けば、もっとたくさんの人たちに会えるぞ」

 「へぇ、ノーム族の方がたくさんいらっしゃるのね!」

 ノーム族の方もたくさんいらっしゃるが、それだけじゃなし。他にも多くの種族の方がいらっしゃるからな。是非とも楽しみにしていただきたいね。

 

 「たこ焼き屋もだけど、新しくできた”勇者様式大風呂・銭湯”。あんなに大きいのはお目にかかれませんね。私も通ってますよ。湯沸かしの魔道具やら魔力はどうされてるのでしょう?」

 と、マリアさん

 「その辺りの技術はまぁ? ウチの技術者がいろいろとやってるね」

 マリアさんなら内情を話しても構わないがこの辺りは秘匿技術になるから口を濁しておく。戸外じゃね。

 「そうでございますね」

 さすが、察しの良いマリアさん。後で会頭殿に聞いてもらえばいいだろう。

 

 ヴァートリー商会の面々としばらく歩きながら軒先を楽しむ。この前のようにカツオの群れがきていることを期待したが、そう上手くはいかないわな。カツオは売ってないなぁ。やはり、海流や季節もあるのだろう。目新しい魚もちらほら。おぅん?

 台の上にタチウオに似た魚? が並んでいる……のだが……色がブルーメタリック! そして、シイラみたいにデコがつるん、それにトビウオの羽のような大きな胸鰭むなびれがついている。 

 「おお!? なんか格好いい魚だな。てか、本当に食えるのか? これ? シイラだったら刺し身は避けねばなぁ」

 困ったときこそ”鑑定”だ!

 「ではでは”鑑定”と……。? おん? シーサーペント? こいつってば、シーサーペントの稚魚かぁ?」

 「ほう? シーサーペントの?」 (会頭)

 「……シーサーペント?」 (ラグ)

 「な!? こ、これは、大きな事実ね! ミッツ様の”鑑定”であれば」 (マリア)

 おっと! 爆弾ぶっこんじゃったかな? なにせ、シーサーペントは海の魔物として有名だものなぁ。

 

 「だ、旦那ぁ! そりゃぁ、本当の話かい!」

 と、おいらの接客に出ていた店主のオヤジが大きな声を上げる

 「い、いや、オヤジさん、そりゃ、おいらのセリフだが?」

 「ん? まぁ、そうだわな。わっはっはっはっは!」

 「笑い事ではなかろうよ! オヤジぃ!」

 おっと、思わずツッコんじまったわ!

 「で、蒼の旦那ぁ、そりゃぁ本当のことかい?」

 「まぁ、おいらの”鑑定”によるとだなぁ。てか、漁師町だろう? ”鑑定”くらいしてる人だっているだろう?」

 「さてなぁ。俺達の間じゃラルドネルって呼んでいてなぁ。この時期に網にちょいちょい入るんだわ」

 「ラルドネル? どういう意味だ? どの辺りが、らんどねる? デコ? ……まぁ、地域の呼び名なのかもしれんな」

 「蒼の旦那がそうおっしゃるんだ、きっとそうなんだろうな! シーサーペントの仔かぁ。このこと、町の皆に広めてもいいかい?」

 「別に構わんが」

 「そうかそうか。ラルドネルはシーサーペントかぁ。そう言われりゃ、ちょこと顔も似てるな……?」

 「は? どこが?」

 いや、ぜんぜん似ていなかろう……。シーサーペントの顔はシュッとした美男魚? だ。こんな、もっこりおデコがついたファンキーな魚じゃないぞい?

 「そうなぁ、この牙の辺り? 目?」

 おちゃめなオヤジだな!

 「……なら、そこのタチウオでよかろうに。よりそっくりだろう? ここらの小魚でも?」

 ペーシュ・カショーロ(アマゾン川にいる鋭い牙を持つ魚。熱帯魚の括りで日本でもお目にかかれる)に似た小魚を指差す。なんとも凶暴な顔をした魚が並んでいること

 「ま! 細かい所はいいじゃないか! はっはっは! なぁ! 旦那ぁ!」

 「そうだわなぁ。はっはっは!」

 港町だもの、こういうノリもいいもんだ。

 「で、オヤジこいつはどうやって食うんだ?」

 「ちと小骨が多いが、塩焼きかな。油でカラリ素揚げもいい。値段もお手頃だからなぁ。ん? シーサーペントの仔って宣伝すりゃぁ、ちと高く売れるか?」

 「さてなぁ、少しの間は注目もされようが……。よっぽど美味しかったら別だがな~~」

 このお値段だ。下魚の仲間だろうね。それじゃ、ブームも早かろうね

 「味は脂もたいしてのってないし、あっさり、淡白だなぁ。デカいシーサーペントくらい、身が厚く脂がのってるといいんだがなぁ。まぁ、仔じゃしかたねぇか」

 「てか、デカいのじゃ、命がけだろうに?」

 「違いねぇや! まったくの別物で。で、旦那ぁ、これもっていくかい?」

 「そうさなぁ。少し貰っていこいこうか」

 「へぃ! まいどぉ! 頭、落としやす?」

 「いや、そのままで」

 色々と観察してみたいじゃん。なにせ、異世界食材だしなぁ。さて、どんなお味でしょうねぇ

 ……

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