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閑話 ザックの冒険 25

いらっしゃいませ!

 ”がらららん”

 「オヤジ!整備あがったか?}

  「ああ。問題ない。仕上がってるぞ。」

 「…散らかってるな…」

 商品らしいものも皆かたずけられ、仕事場も受注していたものを熟すだけのようだ。

  「ああ、引っ越しの準備中だ。」

 「本気かよ…宛はあるのかい?」

  「ああ。ノリナの鍛冶師ギルドに行こうと思ってな。わしは人族だが、ドワーフ族とも仲良くしてきたからな。」

 「そうか…寂しくなるな。」

  「でだ。ノリナ国境…まででいい。護衛しちゃくれねぇか?」

 「国境?半端だな?大丈夫か?」

  「あっちは治安が良いとも聞くし。どのみち、ノリナの冒険者と引継ぎになるだろう?」

 「そういうものか?」

  「大抵な。この国の人間は出たがらねぇからなぁ。一歩出ればそれだけで財産が一割減る。」

 「ああ。あったな…そんなの…」

  「おじさん?なんで?」

 「この国の金貨は、金の量が少ないんだ。ほかの国のよりなぁ」

  「…ほんと、見せかけだけの国だなぁ。」

 「違いない。国も大きく強い力を持ってればそれでもよかったんだがな。」

  「でも、一割は大きいね。新造する金貨はさらに?」

 「可能性あるね。国内で使う分には…ってな。」

  「おじさん。俺たちも行こうよ。」

 「う~ん…」

  「なんだ、旦那も出る予定なのか?」

 「まぁな。こんな国これっぽっちも未練はない。ただ、この子らにBランクをと思っていたんだが…」

  「ノリナでも取れるだろう?」

 「そうなんだがな…獣人差別…ノリナもここもそう変わらん。この国なら少しは、俺の知名度も使えるだろう?」

  「まぁな。”疾風”様だ。よそでも大丈夫だと思うがなぁ。言わんとすることはわかる。」

 「で、いつでるんだ?引っ越し…ってわけにもいくまい?」

  「以前は出られんかったが、今はそうでもない。結構自由に出られるぞ。皆、金がないしな…」

 「そんなもんか?人は資産だろう?」

  「その資産を管理、維持できんのだろうさ。ただ、家は売れんがのぉ。買い手がおらん。」

 「それで、向こうに行ってどうすんだ?大丈夫か?おい。」

  「まぁ、何とかなるだろうさ。ここじゃ、仕事もできんし、すぐに、徴収も始まるじゃろうよ。したら、出ていく金も無くなっちまうわ。」

 「そうか…了解した。直で受けるよ。少しは安く上がるだろう?」

  「助かるよ。」

 

 準備にさらに、3日。嫁さんのご両親とともにこの町を出た。今まで視点が違ったようだ。よくよく街道を見てみると、商人じゃないものが大きな荷物を持って移動している…伝手を頼っての移動か、新天地を求めてか…


 野営の中でも武術の鍛錬を行う。子供たちも身体強化技”疾風”を使いこなすまでになった。我ら人族より、親和性が高いのだろう。

 劇的に効果がみられる。魔力にかかわる技については敵うまい。特筆するのはディア。もはや弓は要らない…と。今は兄と同様、ショートソードの修練を行っている。

 その投てき術…もはや脅威だ。つぶてを小さくし、”疾風”を乗せた投てき。飛距離、貫通力ともに上昇。百歩先くらいなら頭蓋を打ち抜く。

 ほかの子供たちもまねしているが、精度の点ではまだまだだな。ディアの精度がすごすぎる。俺でも知らねば、盾を構える前に額に穴が空くだろう。オヤジが何やら鉄製?の鋲を造り、ディアに持たせている…さらに恐ろしい仕上がりに…。

 アルマは”年長者の自分がみなを守る”という重い義務が俺に移ったせいか、しおらしくなった。もともとが優しい子だからな。この子は戦場から離したほうがいいだろうな。勿論、身を守る術は仕込むがな。あとは…

 ラディのチョロチョロ具合がさらに上がった。かわいさもアップだな。虎人だからそのうち…ああ…筋肉の塊になっても俺の癒しだよ…


 約一週間で到着。馬も交代で回して荷車を引かせたからか、パキュラに早めに到着した。途中魔物、盗賊との会敵はない。パキュラ、言わずと知れた、ノリナと国境を接する、交易都市。以前ほど人の流れはなさそうだが…ほかの都市よりは活気がある。

  

 「ご苦労様、旦那。ここで2、3日休んだら立とうと思う。世話になったなぁ。」

 「ああ。気を付けていけよ。いずれ追いつくと思う。」

  「ははは。くたばらんように頑張るさ。じゃあな!」

 オヤジたちと別れ、周辺の状況を聞くために冒険者ギルドに足を運ぶ。

  「父ちゃん。腹減った…」

 「ああ。ギルドの食堂で飯を食おう。ガッツリ食っていいぞ。」

  {応!}


 「いらっしゃいませ…」

 子供らで目が留まる…

 「何か問題でも?」

  「い、いえ、すいませんでした。最近あまり目にしませんでしたから。」

 「ならいい。見習いだ。で、周辺の状況、特に国境付近の状況、”商業ギルド商会”の情報もあれば聞きたい。」

  「は、はい。ギルド証お願いします。」…

 

 さくっとまとめると、商業ギルド商会の問題はかなり表面化しており、取り締まりもきつくなったそうだ。なんといっても玄関口だものな。

 周辺の状況…これが問題だ…でかい鎧熊が出没しているようだ。村も一つ消えたそうだ。なんでも魔の森に侵攻したバカがいて。入っていった兵が帰ってこず、代わりに鎧熊が二頭、つがいか親子か…

 「鎧熊か…」

 肉の塊に食らいつきながら、思案…

  「鎧熊って?名前はよく聞くけど…」

  「見たことないな…」

  「見たら食われるわよ!」

 「うん食われるな。ははは。う~んそうだなぁ。手の甲やら、背、胸なんかに”骨”肉を破って張り出してんだ。それが鎧のように固い…実際普通の武器じゃはじかれちまう。あとは色…だな。長く生きてきた強い個体は、その鎧が赤黒くなり体もでかい。白いうちに仕留めないときついな。」

  「ふ~ん。おっかないね。むぐむぐ。うま!」

  「ラディも!ラディも!」

  「ほら、ラディ。取ってあげる。」

  「アルマ姉ありがと!」

 「慌てずになぁ。この町の城壁くらいなら破壊して入ってくるぞ。」

  「まじ!熊パンチ?」

  「ラナ兄それ食いすぎ!」

  「ほらほら。ラディ、食べたらね。」

  「兄貴も大人げないぞ!」

 「ああ。以前、魔の森に砦を作った時にな…何とか倒したが…二度とやり合いたくない相手だな。ん?おかわりはいいのか?」

  「食う!さっきの!」

  「ラディ、うっさい。あっち行け。ラナ!お前も聞いとけ。」

  「ローゼ兄、これ美味いよ!」

  「…うま!」

 ふふふ。にぎやかだな。

 「くしくも、原因は違えど、ローゼの予想通りになっちまったな…国はどう動くか…」

  「猪が、アホな兵になっただけでしょう?変わらないって。いや、人の味と狩り易さ知っちゃったから…大変だわ。」

  「ノリナに追い払っちゃったり。」

  「国境警備の力の入れ方次第だろうね。熊には国境無いものなぁ。」

  「ノリナでもそんなの擦り付けられりゃいい迷惑だよなぁ~」

 「しかし。鎧熊かぁ。オヤジの護衛…国境まで延長すっか。熊に食われちまったら寝覚めがわるいな。」

  「良いと思うよ。」

  「賛成!」

 「飯食ったら行ってみようか。」

 

 「ちょっといいかね?」

 上等な服を着た老紳士がやってきた。背筋も伸びてるし、体捌きもいい。武術の心得があるのだろうな。頷き、先を促す。

  「私はここのギルド長ガトウという。」

 ほぅ。できるな。

 「で?なんの用だ?」

  「ザック殿…元騎士団長…のでよいのか?」

 「昔のことだ。で?」

  「北…で魔獣が出てる。指名依頼を受けてはくれぬか?」

 「ん?…指名なら…なるほど…既定のランク以上の…ってわけか?」

  「…ああ。その通りだ。A~S以上…単騎だとSSクラスの…大型の鎧熊だ。」

 「…また、面倒な…」

  「…本当だよ。”軍”がどうやら、”魔の森”に火を放ちおった。しかも、多くのものが森の奥に行き帰ってこぬという…」

 「なら、そいつは軍にでもやらせろ。一般人の手に余る。」

  「それがな…一切取り合ってくれんのだ。挙句の果てに屯所も引き払ってしまった。」

 「はぁ?撤退…だと?第三騎士団はどうした?」

  「どうやら廃団されたらしい。主だったものは南領に。こちらに槍を向け警備しているとか…」

 「…本当か?その情報の確度は?」

  「冒険者ギルド共通レベルだ。」

 「そうか…で、”魔の森”にちょっかい出したのは?」

  「第一騎士団副団長、アスファラ侯爵家のマコワニ殿だ。」

 「はぁ?あの豚かぁ。よくもまぁ…」

  「で、受けてはくれぬか?」

 「断る。相手は悪すぎる。番いだろう?」

  「知っていたか…」

 「ここにきて真っ先に聞いている。貴殿の態度、人にものを頼むものではないな。信用できん。食事中だ外してくれ。」

  「ま、待ってくれ。す、すべて話す!貴殿の望むものを…用意できる範囲でだが、付ける!聞いてくれ!」

 「ふん。他を当たれ。」

  「”赤”なんだ!そいつを狩れるのは”疾風”の貴殿しかいない!」

 「やはり…赤か…街の一つでも消えれば、あの業突く公爵も動くだろうさ。」

  「う、動いたとしても死者が増えるだけだ。そ、そこを何とか…」

 「たしか、ワイバーン用のバリスタが装備されてるはずだが?」

  「無い…」

 「なぜ?」

  「領主が売っちまった…」

 そいつは国の装備品なのだが…な。

 「…そうか。で、今回、その領主殿は?」

  「屋敷から一歩も出てこられない。」

 「なら、一緒に滅べばよかろう。本望だろうさ。」

  「…わかった…邪魔したな。」

 「小国群金貨で3000枚。一頭1500だ。この子らに正規Bランクをもらえるか。作戦は我々だけ。ほかのモノの干渉は許さない。必要な資材。回復薬の良いもの。鉄槍20本くらい、投槍、滞在費は良い宿でそちらの負担。素材の所有権はすべてこちらに。今の内容を公文書でギルドと領主の連名でくれ。契約を破った時。特に交戦中は殺す。貴族らに徹底してくれ。功績の横取りはしょっちゅうだからな。二日以内に結論を。了承いただけるなら、書記官交えて契約の発効。なければ二日後、我らはロリエスに帰る…以上だ。」

  「…わかった。領主と相談しよう…」

 …信用できん相手だが…一発Bというのも魅力だな…さて…。 

本日もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。

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