閑話 ザックの冒険 ⅩⅨ
いらっしゃいませ!
戦闘開始。護衛ミッションだ。被害を最小限に抑えるのは当たり前だが、こんなところで子供たちを失うわけにはいかない!
先頭を馬で駆けてくる盗賊の頭か?
「まぁ~て~!待てぇ!もう、ガキしかいねぇことは知ってるぞ~諦めて荷物おいてけぇー!ついでに命もなぁぁ!ひゃはははは!んん?」”ひゅ”
ディア!早い!
ディアの放った矢をオカシラが大鉈で切り落とす。
「ふん!貴様から踏みつぶしてやるわぁ!」
「はぁあああ!”地嵐”!くたばれ!」
槍を地に刺し、盾を添え構える!渾身のシールドバッシュ!馬が衝突する瞬間、衝突する全ての力をカウンターとして解放!”ずどん!”馬の上半身とカシラが消える…
「あれ、?カシラぁ?」
「どこへ?}
「あれ、どこいったぁ?」
ふん!粉微塵になってくたばったさ!
「くっ!ディア!」
「は、はい!」”ひゅひゅ!”
「おぐぅ!」
「い、痛でぇえ!」
お頭を探していた騎乗の賊にディアの放った矢が刺さる
「くっ、久々だったから、ダメージ受けちまった。ラナ、ローゼ!矢に注意!動揺してる奴から、斬れ!」
「「応!」」
消えた頭を探す盗賊の群れに、ラナ、ローゼが飛び込み、斬る!突く!
「ひィ!なんだこのガキ”ざん”がはあ!」
「あぐぅ!」
「お!おい!糞!」
「弓隊は!あぐぅうう!」
「くそ、まだ腕がしびれてるな…ヒビでも入ったか…おっと!死ね!」
鉄槍を繰り出し、盗賊の胸を突き抜く!
「よ、良し!戻れ!」
「「応!」」
「怪我は?」
「かすり傷位!」
「大丈夫!」
「一気に弓持ちのところまで走るぞ!」
「「おう!」」
「”風巻”いくぞ!」
盾を前面に押し出し全てをなぎ倒す進撃!といっても人程度だけどな…飛来する矢を弾き、弓持ちの中に突入、近接武器を構える前に、なぎ倒し、刺し貫き、斬り伏せる。
「ひぃ!ばけものだぁ!」
「に、逃げろぉ!」
一角が崩れれば、賊などもはや、烏合の衆。
「ひるんだぞ!斬れ!」
「「応!」」
馬の踵を返し、逃げようとした盗賊達の頭に…
”ごがん!””がぽん!”
頭がザクロのように爆ぜる…おいおい。ディア?
「こっちの方が当たるわね…それ!それ!」
”ごがぁ~ん””がん”バタバタと盗賊が倒れる。弓以上の殺傷力だ…
「一人残してくれ!」
「はーい!ほい!」
”ばきぃ!”
背に石を当てられて顔面から地面へと…痛そうだわ…アバラくらいは砕けてるだろうな…
大方片付いたようだ。
「ふぅ…生きている者を確認。フリもある。離れたところからとどめを。油断するな!」
「「応!」」
生き残りをロープで縛りあげながら指示を出す。その後とどめ側に移行。確実に刺していく。
「ざ、ザック殿…やはり、”疾風”の…」
「ジャック、本当か!第二騎士団長の…」
「そんなことより今からヒッターの処へ行ってきます…生きてるかはわかりませんが…アルマ、ラディおいで。」
「は、はい!」
「うん」
「ラナ、ディア、ローゼ悪い。もうひと踏ん張りだ。」
{応!}
「見張りが…二人か…やれるか?」
そうディアに聞く。
「手前のは行けるわ」
石をポンポンと弄んでる、必殺の投てき手。
「頼む!」
「すーはぁ!ほい!」”ぶん”
「ん?”ごがん”…」
崩れ落ちる賊も飛び越え、
「な! 「ふん!」 ”どこぉ”うげぇ」
くし刺しってやつだ。”ぶん”槍の血を払い飛ばす。
「なんだぁ~生きていたんだ。ヒッターのおっさん!」
「だ、だまれ!は、早く縄を解け!早くしろ!」
…人質ってやつか。だが…。
「貴殿には悪いが、みすみす冒険者、手代の者たちを殺した罪によりこのまま連行させてもらう。」
「何ぃ、ふざけるな!」
「このまま。殺しても良いのだぞ?」
「う…」
「拘束確認!猿轡!」
「俺がやるよ!」
ローゼ…ルンルンだな…何やら奇声が…
「任せた…」
「ロッパよ…死んじまっちゃ詰まらんだろうに…ムカつくやつだったが、哀れだな…」
首になったロッパに囁く…ん?緑の珠…あ…回収に来てるのだな…ロッパのパーティの証を集める。ヒッターを連れて、セルゲイさんのもとへ。
「さて、どうします?このまま進みますか?それとも戻って報告を?」
「戻りましょう。ヒッター…生きてたのですね…彼らは?」
首を振る…
「そうですか…罪に問われるだろうな。」
「うぐぅ!ううぐぐうぅう!」
「ヒッターの荷物どうします?」
「そうだな…回収しようか先に…」
「できれば、使用人たちは葬ってやりたいな。」
「了解した。案内しよう。」
盗賊が戻ってきてもまずいので、周辺を警戒する。
「馬もかわいそうだが…」
「馬車…はダメだな…積み荷も…荒らされている…」
「この布なんかも?」
もったいない。
「ええ。売り物になりませんね…」
「じゃぁ頂いても?」
「どうぞ…というか、ザック殿に所有権があるのですよ?」
「ええ。金子で補填と思ったのですが…これでは…」
反物やら陶器類は泥まみれ割れてるものもほとんど。香辛料?何かの汁?調味料が混ざり、異臭が漂う…
適当に加工すれば…何かの役に立つだろう。反物を少し。食器、木製の皿を少々。お!塩か!ちょうどいい。岩塩だから大丈夫…だろう。泥に半分埋まってるが…どうせ削るんだ。
セルゲイさんも反物など、売れなくとも物々交換。村などにタダで上げるように確保している。道端に穴を掘り…時間的に深くは掘れぬが…使用人の亡骸を埋める。
破壊された馬車を道端に押し倒し街道上の障害物をどけ、終了。
「あ!もどって剥ぎ取りすっか。」
{おお!}
逞しいのぉ。
「おじさん。カシラの首は?」
「うげ!吹き飛んでんぞ…馬も…」
「かわいそう…」
「さ、さて…そこらに転がっていないか?下手すりゃ粉みじんかも?」
派手にやりすぎたわ…
「ええ!賞金首かもしれないのにぃ?」
「おじさん!」
「あ~あ」
「め、面目ない。」
結構お金にガメツいんだよなぁ…って、しょうがないか…
「あ!あったよぉ~おじさん!…しかし…どうすんだこれ?」
ローゼが髭を持ってぶら下げる…ああ。確かにこいつだわ。
「麻袋にでも入れとこう。」
「なんか…直ぐに腐りそうだな…」
「盗賊だからなぁ。脳みそはもう、腐ってんだろ?」
「じゃ、捨ててくか?」
「ダメお金にするの!」
ぴしゃりとアルマに制される…幼くとも…ってか。
これだけ時間がかかっては…アジトはダメかな…村まで送らねばならぬし。おそらく内通者も…
盗賊の馬、15頭。よさそうな馬を貰うことにした。本当なら一人一頭としたいが、維持費もかかるので、4頭とした。二人で一頭と。アルマは乗馬経験があり、一頭所有を所望…仕方なしか。後は、売ることにした。
「うわあ!馬可愛い。」
「うげぇ!た、高い!」
「はやいはやい!」
「おじさん乗り方教えて!」
「俺も!」「私も!」
「ラディも!」
「はいはい。」
一人ずつ前に乗せての感想だ。アルマと二人での指導となるな。こいつらは呑み込みが早いからすぐに乗りこなすだろう。馬を引き村へと戻る。もちろん大騒ぎだ。村長の命令で早馬が出て、役人を呼びに行った。明日の朝には来るだろうとのこと。
村でも馬を引き取りたいとの話があり、依頼主たちも欲しいとのこと。分け前として無償でセルゲイ殿とジャック殿に2頭ずつ。
多少だが、危険にさらしてしまったからな。あと2頭ずつお買い上げ。残りの3頭は村が買い取ってくれた。明日、村総出で、後始末が行われるとのこと。ご苦労様です。
その夜は…村長や大半の村人は盗賊との繋がりはないと思うが…一応、セルゲイさんたちを集めなるべくバラバラにならないようにしてもらい、夜警を立てて寝た。
本日もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。




