閑話 ザックの冒険 ⅩⅦ
いらっしゃいませ!
ギルド長から紹介された3商店合同のキャラバンの護衛依頼を受けた。5台の馬車の護衛任務だそうだ。もうひとチーム合同でつく。なんでも商会所属のチームだそうだ。
契約後、食料を中心に買い込み。依頼主に挨拶に行く。
「明日からの護衛依頼を受けたザックという。見習いとともに護衛につく。よろしく頼む。」
「ご丁寧に。懐かしいですね。前もってあいさつに来られる方は減りましたよ。セルゲイです。」
「それだけ、信用のおける方なのでしょう。ジャックです。…ざっく…殿…どこかで…」
「このキャラバンの長、ヒッターと言いますがあいにく…今不在でして…」
「いえ、挨拶だけですので。では。明日からお願いします。」
「「こちらこそ!」」
翌早朝、待ち合わせの北門に行く。勿論時間前だ。さすがに5台のキャラバン人員も多い。本来なら、もう2チームくらい必要なのだろうが、何せ、それ相応の冒険者がいない…
「おはようございます。目的地までよろしく頼む」
{お願いします}
「ええ。こちらこそ。お願いしますね。では出発しましょう!」
「なんだぁ~獣人のガキかぁ?」
「こんなのと一緒かぁ?」
ゴロツキと変わらん…これが”仲間”となるパーティだ。先が思いやられる。
「問題でもあるか?」
「一緒の馬車か…臭ぇんだよ!」
「はぁ、ガキのお守りかぁ?」
雇い主が別に護衛用として、二頭牽きの馬車を用意してくれた…が…
「そこまで言うのなら、うちは使わぬ。馬の世話やら、馬車の養生も勝手にするんだな。」
「ふん。後で使わせろと言っても知らんぞ!」
「忘れるなよ!」
「ふん!」
”がらがらがらがら…”
「本当に馬車、使わないのかい?」
「ええ。良い鍛練ですよ。御心配なく。あ、この小さい子。たまにで良いから乗せてください。」
「そりゃ、構わんが…他のもまだ子供だろう?」
「大丈夫ですよ。俺たちは。」
「修行修行!」
「いくぞ~」
荷車を牽いた馬は遅い。付いていくのは余裕だ。最も荷を捨てるときはその限りじゃないがな。
「あ!父ちゃん!猪!獲る?」
「依頼中だから無しだ。寝る前だったらいいけどな。鳥くらいは良いぞ」
「そうかぁ~残念!」
「ここで野営となります。配給のパンを配ります。」
「そのちいさいのもかぁ?」
「そうですが?」
「ち、せこいな…」
「ほっときなよ。ラナ。」
「何ぃ!ガキがぁ!」
「痛い目に合わせるぞ!」
「ふん。この子の分は要らない…。手ぇ、出すなよ。殺すぞ…しかし、どこの所属かしれんが…せこいチームだな…飼葉や、馬の世話はしたのか?我らは知らんぞ?」
「ふ、ふん。」
「ええ。貸与品です。ちゃんと世話してくださいね。」
「わかってるわ!」
「やれやれ。ヒッターの処の専属なんですよ…こっちから頼んだ手前…すまんね。今、冒険者も少なくて。」
「いえ。ただ、有事の時は…連携が取れませんねアレじゃ。」
「ああ。仕方ないな…」
商人たちも大変だ。冒険者も減り、物資も滞る…貧しいものも増え、盗賊も…悪循環だな…
「さて飯にしようか。ほら食え。」
「…うん。」
「気にすんな。あんなもの。バッグに食料もある。ラディは今はたくさん食うんだぞ。もりもり体になる。」
「うん!」
「ふふふ!鳥捕ってきたぜ!」
「お!早速捌くか。」
「丸焼き!」
「やるな。ああ。焼いて食おう」
支給されたパン、スープ。自前のパン、鳥、と。なかなかに豪勢だ。食後、子供たちは、ヒッター以外の商会の馬の世話の手伝いをしてる。
「可愛いね~おじさん!いつかうちも飼いたいね!」
「馬かぁ~維持費も大変だぞ。でもお世話の仕方を覚えるのも良い事だよ。お手伝いしよう」
夜番は各チームで二人出す。交代は各チームでというとことに。今日は何も起こらなかったが…こっちには娘もいる…気は抜けんな…
翌日、衛星村の一つに到着。ここで二日の滞在になるという。この間は、フリーとなる。が、契約に含まれているので有事の時は駆けつけることとなる。
ここでも猪に困ってるとのことなので、夜、狩に出る。かなりの密度、一日で7匹仕留めた。一匹はその場で解体。焼いて食う。力になるな。美味い。
残りの六頭は肉屋が買い取ってくれた。
憎き猪!御祝儀ももらえた。
翌日もと頼まれたが…流石に二日続きは体に障る。護衛任務があるとお断りを入れた。この依頼が終わったら来るから指名依頼をいれてくれと頼んでおいた。
マジックバッグにも焼いた猪が入っている。時間関係は無くとも一週間は持つだろう。
翌日。出発前に食料物資の購入。主にパンだが背負い袋に一杯。これで、嫌みにも対抗できるだろう。
「おい、ガキども、乗せてやろうか?」
「楽だぞ~」
「結構です。修行修行!」
…知っているさ。馬の世話が出来なくて、雇い主に文句を言われているのを。
「生意気な!黙って乗ればいいんだ!」
「手伝え!ガキ!」
「やめてもらおう…最初の約定通りだろう?」
「…くっつ!抜くのか!」
アホの鼻先に槍の穂先をつける。
「抜くも何も約束ぐらい守れ。我らに関わるな。貴様らが言い出したことだろう?迷惑だ。」
「くっ!」
「ロッパ殿いい加減にしてください。元々の不和の原因は貴方達でしょう?」
「ふん。盗賊なんかが出れば我らが守るのだぞ。」
「それが仕事でしょうに。何を言ってるんです?」
「…そ、そいつらじゃ、」
「あなたは知らないのでしょうか?定期的に斥候…先を見に行ってくれてるんですよ?貴方達も助かるでしょう?」
そう。早駆けと称して、先方の様子を見に行く。斥候も兼ねてね。
「くっ!」
しばらく進むと。
「盗賊発見!おじさん!賊だ!賊ぅ!」
ローゼが駆け込んできた。なぜにうれしそうなのだ?己は…
「でかした!後どれくらいだ!」
「この足で40分くらいかな?ほら!あそこの林!人数30くらいかなぁ。道に木を切り倒して待ち伏せしてる。」
「セルゲイさんどうします?ここからですと…先の村に避難、伝令で軍を呼びます?」
「そうですね…ひき返しましょうか…」
「何を言っている!こういう時の冒険者だろう?」
こいつはヒッター。ヒッター商会の会頭。このキャラバン、2台の荷車の主。頭だ。
「無茶な…前もって30人いると判ってるのに行くわけないでしょう!」
「怖気づいたか!セルゲイ!」
「30だぞ!無理に決まってるだろう!おい!ジャック!お前の処はどうする?」
「ああ、無理に決まってる!自殺行為だぞ!冒険者にも無理は言えんぞ!契約外だ。危険回避ができたんだ。助かったよ」
「おい!ロッパぁ!行けるか!」
「へ?冗談でしょう。旦那ぁ。」
「無理に決まってるわ」
「30対5だぜぇ!死んじまうよ。」
「其処の獣人も使え!」
「お断りします。行くのならどうぞ勝手に。」
「貴様!」
やれやれ…こういう人種は…
「まったく、恫喝しかできぬ愚かな奴だな。自分の手駒と自力で切り抜けるがいい。これ以上無理を言うと。二度と護衛依頼は出せなくなるぞ?ではセルゲイさん、ジャックさん戻りましょうか。」
「ああ。」
「つきあってられん。」
「そ、そいつらが嘘をついてるかもしれんぞ!」
「なら、ロッパ殿に偵察に行かせればいいだろう?さぁ、ひき返えすぞ。」
{応!}
「おい!くそぉ!嘘だと判ったらただではすまんぞ!ロッパ!ロッパ!様子を見に行ってこい!」
「い、イヤでさぁ、冗談じゃねぇ。」
「今後仕事は回さんぞ!契約はここまででいいんだな…借金も山ほどあるが…な。」
「ちっ、解りやした…ザル、ブリーム行くぞ!」
「へ、へい」
「リーダー…」
待ち伏せの中、ノコノコ行くのか?ちっ、こっちの優位、早期発見が無になっちまう!
「奴らが盗賊を引っ張ってきてもつまりません。早急に立ちましょう!」
「し、しかし。ヒッターは」
「我らは引きますよ?」
「そ、そうだな、危険と知っての自由意志…行こう!」
「ああ!出立!」
しばらくすると後方で金属を打ち鳴らす音、叫び声!ちぃ!引っ張ってきたか!
「ど、どうしたら…」
「どうやら、引っ張ってきたようですね。このまま逃げ切るのは難しいでしょう…荷車を盾に…迎撃しましょう!」
「え…しかし。」
「緊急事態です。この子をお願いします。アルマも待機で良いぞ。」
「父ちゃん!」
「あ、私もいけるよ!」
「なら、セルゲイさん達の護衛を。ディア!合図のち、荷台の上からでも矢を放て!ありったけ使え!セルゲイさん!矢があれば…後、手代の方も動員してこぶし大の石を彼女の処に集めてください!」
「は、はい!ジャック!」
「おう!」
マジックバッグから、盾を出す…
「ラナ!ローゼ!俺の左手側に、盾の陰からだ。交代で。最初俺が一発噛ます!それからだ!」
「「おう!」」
さて。多勢に無勢…どうなることやら。
本日もお付き合いいただきありがとうございました。本日もお付き合いいただきありがとうございました。




