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閑話 ザックの冒険 ⅩⅣ

いらっしゃいませ~

 「しからば、噂通り、聖王国主体の”悪魔召喚”の儀式が行われる予定だった。集められた者達はそのための”生贄”だった。」

 「なんと…噂は本当か…聖王国…か…まったく余計なことをしてくれる…本当に忌々しい国じゃ。」

  「勇者亡き後、王も必死であろうが…求心力を失い、”協力金”というあぶく銭も入らん。教会も然り…か。で、召喚は成されたのか?」

 コリウス殿は真剣に聞いてくる。が…幾分他領の事だろうという感じだな。

 「ええ。召喚は成功…しかし、制御は不能…オウン殿をはじめ、教会関係者も多数死亡…」

 「なに!」

  「誠か!」

 「はい。丁度、補給に近くの街におりました。儀式の警護に当たっていた護衛隊諸共。死体の確認もしました。」

  「そうか…」

 「し、して、その”悪魔”は?どうなったのじゃ?」

  「王都の様子は?…悪魔なんぞより、王が先であろう?」

 「私は王都を離れていた為、遭遇しておりません。王都の様子は私個人が証言を集めたものになりますが…」

 「構わん」

 「では。その後、王都に悪魔が現れ、王妃以下、王女、宰相殿、ほぼすべての大臣、宮使いの貴族…法則は分りかねますが…メイドやら、門番も。併せて170人余りが死亡。」

 「なに…」

  「お、王は!王はどうしておられる?」

 ふ、ふふふ…全ての元凶だよ。

 「王は生かされたようです。それ以降、自室にこもられ、出てこられぬとか。私自身謁見は叶いませんでした。」 

 「そ、そんなことが…しかし、全ての元凶ともいえる王が生きてるとはのぉ。」

 元凶…共通認識だな。

  「言葉を慎め…しかし…命令書は…はて?…今は誰が…宰相も大臣たちが死亡…国も回ってはおるまい…」

 「私が帰還したところ、王妹のカミーラ様の婿、マクラータ公爵が、”代王”を僭称していました。アモエナ侯爵もついていましたな。」

 「なに?あの愚物がか?現行の王以上じゃぞ?」

  「言葉を慎めというのに…しかし…マクラータ公爵か、腰巾着のアモエナ侯爵…困ったな…」

 「おまえも変わらんじゃろうが。じゃぁ、王都は散々な状態じゃな?」

 「私が王都より出てきたのは事変が起きてから一週間後。その時点ですが、商店は締め、閑散とした様子…暴動こそ起きてはいませんでしたが…それからここまで約2週間…といったところでしょうか。」

  「先日の命令文も”王”の名で来ていたな…これは…何かしでかすな…急ぎ、この件を回せ。うわさでも構わん。ギルドの連絡方法があろう?」

 「それはできんな。他のギルド長も取り込まれてるやもしれん。お前の名前で告示するのならええがの…」 

  「そ、それは…」

 「わしや、ザック殿に表にでろとは言わぬよな。」

  「…」

 「じゃぁ、その件は無しじゃ。ええの?」

  「…しかし…」

 この国のこと。即、刺客が放たれるな。子爵…穏健派と言えど、貴族は貴族か…

 「己の誇りと命を掛けろ。それができんのなら口をつぐんでろ。わしらにお鉢を回すのは筋違いじゃ。」

  「…」もっともだ。

  「軍は…あ…」

 「構いませんよ。我が第二騎士団は、王都到着後、すぐに治安へと。無休無賃金で行えと。交代勤務も認められず…せめて、金と抗議したところ…これですわ。」

 ”トン”と首に手を当てる。

  「しかし緊急時…王都の治安も乱れていたであろう?」

 「ええ。それは分りますが…長期遠征、強行軍での帰還…しかも勝手に王位を…玉座にふんぞり返る、マクラータ公爵を見てしまってはな。王妹のカミーラ様もまるで王妃のふるまい。今思うと、国宝のティアラもつけてたな…いさめる側であろうに…まぁ、そんな不条理、部下には命じられぬよ。」

  「それでも…」

 「価値観の違いですね。これ以上は。子爵、名誉じゃ何もなりませんよ。特にこの国では。飯も食えない。しかも主たる、王ではなく、僭称…簒奪者一歩手前の者に忠誠など…尤も、俺は”国に”忠誠を誓っていたのですがね。遅かれ早かれ、軍はやめていたでしょう。」

 「簒奪者か…自分の名でなく、王の名を使い、命令書を発布しまくる…まさに簒奪者一歩手前であるな…南方貴族も黙ってはおるまいて…このまま国が割れる?」

  「そ、そんなばかな…」

 「いえ、これ位の情報であれば、南方貴族の雄、ゼルクゥヴァ辺境伯も把握してるでしょう。それを理由に、挙兵するやも知れませぬな。我が隊に居た多くの者も王都を去り、南領へと向かったと聞いてます。それに獣王国も今の王族にはほとほと困ってるであろうから、協力もあり得る…まぁ、予想の範囲ですが。マクラータ公爵がどれだけ無茶するか…」

 「そういえば、ザック殿の第二騎士団は平民出の精兵が多かったと記憶している…」

 「ええ。野良犬部隊などと揶揄されてましたが、この国最強を自負してましたよ。もっとも解体され、無くなってしまいましたが。」

 「平民故、自由か…オウン殿もいない、魔法師団…近衛や、第一騎士団など、貴族子弟のお遊び軍…第三騎士団は…国境警備であったな…辺境伯との関係も深かろうな…さて、王族はどう動くのか…いや、聖王国が出張ってくるか…」

 …悪魔に刈り取られるだけと思うがな…最悪は内戦…しかし、そこまで行くであろうか…聖王国もいる。…穢れた魂の養殖場にされかねんな…

  「ん?ザック殿?何か考えが?」

 「いえ、もう、この国とは関係ありませんし。何とも思いませんよ。ただ、ギルド長の言うとおり、聖王国が干渉してくるでしょうから、この体制が続くのでは…と。」

  「ザック殿…」

 「…子爵に人集め中止の命令が出たということは、これ以上の”悪魔召喚”は無いとみて良いな…しかし、獣人の冒険者たちも戻っては来ぬだろうな…」

 「ええ。村を守って多く死んだとも聞きますし…噂は遠く広がっております。外国からの流入もないでしょう。逃げた小作人たちも、もう懲り懲りでしょう。」

  「南方貴族連合の対応は知らぬが…案外保護してるかもしれんな。小作なくして穀倉地帯を維持できまい。」

 「話としては以上ですな。」

 と締めくくる。

  「とりあえず、早馬を出してみる…か。」

 「で、じゃ、ザック殿はこの後は?」

 「武器屋に行って装備を調え、依頼を熟そうかと思ってますが?」…狸が。

 「で、その後は?いつ国を出るんじゃ?」

  「…な」

 「直球ですね。そうですね…この子達の修練を暫くしてから…でしょうか。」

  「この子達…」

 「そうか…うちの稼ぎ頭になると思ったんじゃがのぉ」

 「このご時世、そんなに依頼も無かろう?」

 「まぁなぁ。大店は自分のところに輸送隊持っておるし、中小商会は逃げちまったしな…」

  「はっ!そ、それでは…」

 「お主には酷じゃが、税収は昨年度に比べ、良くて30%くらいかのぉ…」

  「…」

 ん?予想の範囲だろうが…お気楽貴族様だな。

 「仕方あるまい。商業ギルドの方はもっとひどいぞ。人員が半分以下になっておったわ。しかも、”商会”になっちまったんだろう?どうなってるか全く見えんぞ。お主のほうはどう対応してるんじゃ?国へ幾ら納めるか知らぬが…きついぞ…今年は。のう?」

  「…何?ギルドが無くなった?だと?しかし…おい!誰かある!」

 真っ青通り越して白くなったな。

 「しかしも何も、知らなんだのか?”商業ギルド商会”などという。いかがわしい商会になってるわ。商人とのいざこざも多いぞ。取り締まった方が良いぞ?よそから人が来なくなるわ。」

  「なんということだ…すまぬ、中座する!」

 …はてさて。

 その後、狸殿と当たり障りのない話をしてギルドを後にする。領主殿も大変だなぁ。

本日もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。

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