閑話 ザックの冒険 Ⅰ
サイドストーリーザックさんのその後…「第二騎士団長 Ⅴ」の後の話です。キレた中間管理職の実力を!という訳で投稿していきます。
散々国に扱き使われ、挙句の果てにポイを喰らった中年…よりは若いな。お節介悪魔のルカちゃんと取引。”制約の呪い”を解く代わりに、生贄候補だった獣人の子供ををミッツの元へ送ることに。だんだん父性が頭を上げてくる…独身元騎士団長の無事に旅を終えられるのか!ミッツ同様、独身なのに子だくさんか!というおはなし。
役所に駆け込み、貯蓄のことごとくを下ろす。なんてこった…退職金はおろか、今回の遠征手当も入っていない…どうなっているのだ…。
しかも…意味不明な”税金”が引かれている…特別徴収…だと。
ギルドを含め、国民の”預貯金”に強引に掛けられたそうだ…今は落ち着いたが、施行当初はすさまじい混乱だっただろう。
誰も預けなくなるな。次は各家に無理な徴収が行われるのだろうな…そして、肥え太り、化粧にまみれた奴らの遊興費に消えるのだ。
しかし、金貨にして50枚…俺の忠誠はこれっぽっちのモノだったか…
部屋の隅に放っておいた親父の形見のバスターソード、着替えの入った小さな鞄…それらが、今の俺の全財産…か。
悪魔の言葉じゃないが、ほんと、騎士崩れのゴロツキ…だな。ふっ。泣けてくるぜ…。
知り合いの馬屋に拝み倒して格安で馬を借り、街道を開拓村に向け疾駆する。野営をしても明朝には着くだろう。
街道筋の大きな木の下で野営を行う。夜走るよりはいい。一睡もせず、明るくなったと同時に馬を走らせる。昼前であろうか…件の開拓村に到着。馬屋に馬を返し、村長の家に行く。
「すまぬ。誰かおらぬか?」
「こ、これは、ザック騎士団長殿。お久しぶりでございます。何か緊急の御用でも?」
「ここに…獣人の子が…何人かいると聞いてね」
「ええ。軍からは”もういらぬ”と言われ…困っていた次第です…このままですと…。」
「俺が引き取る。案内せよ!」
「は、はい?こちらですが…ご案内します。」
村長の敷地内、厩のわきに子供たちはいた…一番大きい子は豹人族の女の子、成人はしていまい。12才位の犬人族の男女。少し小さい、10歳くらいの豹人族の男の子…弟か?。一番小さいのは5歳くらいの猫人族の女の子…いや、男の子か?鎖で繋がれて…皆、ガリガリに痩せている…。
何とか間に合ったようだ。
「村長、外してくれ」
「はい…」
村長が母屋に消え…子供たちを見回す…強烈な憎悪だ。こんなに小さいのに。
「なによ!?殺すのならさっさとどうぞ!生かしておいてもしょうがないでしょ!」
小さい子らを背に隠し、豹人の女の子が凄む。
「話を聞いてほしい。私の名はザック。元騎士だ。」
「で、その元騎士のザック様が獣人に何の用よ!」
「話を聞いてほしい。このままだと君たちは殺される…少し遠いが、安全な村があると聞く。そこまで送ろうと思うのだが。」
「はぁ?親兄弟殺しておいて、勝手に連れてきて、送り返す?何がしたいのよぉ!お母さんを返せ!外道!」
「お、俺たちが何をしたって言うんだよ!」
「殺せよ!父さん達みたいに!」…
「すまぬとは言わぬ…謝ってすむのならいくらでも頭を下げよう。だが、問題なのはこれから…この先の事だ。俺と共に…行くか?出来得ることはしよう。」
「で、飽きたらポイね。人族らしいわ」
「…その辺は信用してくれとしか言えない。頼ってはくれぬか?」
{…}
「…わかったわ。ここにいても近いうち”処分”されるだけ…付いて行くわ」
「有難い…頼ってほしい。先も言ったが、俺はザック。名を教えてくれないか。」
「…私はアルマ。弟のローゼ。この子はラナ、ラナの妹のディア。この小さいのはラディよ。」
「よろしく頼む。今、鎖を外す。村長!鍵を持ってこい!」…
「はい…これを。ザック様本当に?」
「ああ、死なすことも無かろう。心当たりのある場所へ連れて行く。」
「そうですか…お気をつけて」
そういう村長はホッとした表情だ。ここは、己の手を汚さずに済んだ安堵の顔としておこう。厄介払いではなくな。
「さぁ、これで自由だ。君たちの生まれた町や親族は?」
「はぁ?何処かすらわからないわよ。開拓村のどこかでしょう?親族?そんなのはあなた達に皆、殺されていないわ。」
「俺たち、村から出たことない。」
「村の名前も…開拓村?」
「そ、そうだな。普通、町の外には出ないな。」
人族、獣人問わずに…行商や、冒険者、軍人位だな。
「で、そのザック様がなんで私達を?」
「…俺は、この国の騎士だった。お偉いさんのな。だが…色々なものを見た…」
そう…直接”悪魔”に関わるなんてな…
「もうたくさんだ!」
”ビクっ”
子供たちが怯える。
「あ、すまない。大きい声を出して…俺の知ってる場所は此処から結構な距離がある。二つの国を越える。そこに獣人に優しい村があるという…そこまで送って行こうと思う。」
「任せるわ。私達、さっぱりですもの。」
村長にいくばくかの金を渡し、古着、布地などを譲ってもらう。パンを購入し、村をでる。さて…どうなることやら。
本編は夜に。短編の方が時間軸あまり考えなくていいから楽です。




