とりあえず日用品を買いに行こうか!歯ブラシが欲しい!
いらっしゃいませ!
低能の冒険者、『鬼の鉄槌』?だったか?連中に逆恨みで絡まれたが、衛兵の方々のおかげで無事にかわすことができた。
冒険者ギルドの腐敗も最たるものだな。ある意味、初日に騒ぎになってよかったな。ギルドに加盟してたら何をやらされてたか…。
ついでに気のいい、衛兵のスルガ隊長とも知り合えた。彼の本業でお世話にならないようにしないとな。
で、只今、商業ギルドで教えてもらった雑貨屋に向かっている。
ここか?ふ~ん。可愛い系?という店?童話の世界から引っ越してきたような、焼きレンガの外装。って、この世界自体、童話、ファンタジーだわな。
窓に見立てたショーウィンドゥ。カフェのようでお洒落である…
街の雑貨屋というよりセレクトショップという感じだな。…おっさんには少々入りずらい。
”からら~ん”
店内に入る。外見以上に広い。奥の建物と中で繋がっているようだ。見た目のこじんまりとした店からは想像できない広さだ。
「こんにちは~…ところでトワ君、こんにちはの”は”、”わ”どっち派?」
「?何よ突然。”は”だろうが。」
「なんとなく。若い子って”わ”って書くって聞いたからさ。」
「…今日は、が語源なんだろ、たしか?なら、”は”だろ」
「おお!その通り!博学~。」
「…はぁ?」
「いらっしゃいませ?」
あら、美人!特に目を引くのは…髪だな。薄っすら金色の、まさに絹糸のようだ。…だれだ?乳って思ったのは!…まぁ…大変たわわにお実りになってございますよ?
「…あ、すいません、他愛のないことですよ。」
自動翻訳働いているんだよな。今の会話、このお嬢さんにはどう聞こえてるんだろうね?
「日用品、一揃えお願いしたいんですが。」
「はい、うちで揃いますよ。ご案内しますね。」
「なに、ニヤってるんだよおっさん。美人さんだからか?全く…」
「いや、さっきの会話、店員さんにどう聞こえてたのかなって思ってね。まぁ美人は否定せんぞ。」
「うん?」
「ほら、おいら達、何語しゃべってる?」
「ああ、そうか翻訳…」
「は、わの違いなんて伝わらなかったら、意味不明だよ。しかも日本語の違いだし。」
「なるほど!」
「たぶん、こっちサイドで完結してると思うけどね」
本当にどうでもいいことだね。ははは…
「こちらになります。コップがこちら。タオルが…」
なかなかの品ぞろえだ。木製とピューター製?ちょい高いが絵付きのものもある。ガラスは…ないな。一般には高嶺の花か?歯ブラシ…は城にあったような…木の繊維をほぐした江戸時代式か…まぁ、あるだけいいか。一通り購入する。
「あ、そうだ。これって買い取れる?」
パクってきた絵付きの花瓶を出す。
「…”収納”?」
やべぇ。油断した!商売やってりゃ、敏感だよなぁ
「え、ええ。小さいけどね。財布代わりにちょうどいいんですよ」
「いいですね~小さくても羨ましいです。”収納”マジックバッグは商人の夢ですから…拝見させていただきますね。…この花瓶は…絵付きは派手ですが…作りも雑で…そうですね…これくらいでいかがでしょう。」
エルザさん、もっとこう…壺をひっくり返したりして見ると思ったが…一瞥で査定は終わったようだ。
…提示金額は小金貨1枚。ふっ…豚!貴様!見栄だけか!そこ爆笑しない!
…実は…トワ君と賭けをしてた…おいらの一押しの花瓶に、『ええぇ~見る目ないな!こんなの安物だよ。金貨一枚でもいらん!』『ふん!若造が!』…と思ったこともありました。トワ君!ビンゴ!
「ハイ…オネガイシマス。」
爆笑すな!そこ!
「ほかにもあるのですが…持ち込んでも?」
「ええ。お待ちしてます。」
金色の陶器やら、小物をトワ君と2~3個出す。…全部で金貨1枚だった…あの国は全てが見栄なんだな…
「魔物の素材は…冒険者ギルドですよね…ギルド員じゃないからどうしよう?」
「いえ、いえ、うちでも流せますよ。ぜひ、お持ちくださいませ。ギルド独占で手数料も高く…その分色も付けられますよ?」
伝票を書きつつ応えるエルザさん。うん。可愛いぞ!
「それでは、そちらにご迷惑が…」
「私の父が大手総合商社を営んでおります。そちらで素材も扱ってますので全く問題ありません。私もそこそこ目利きができます。判断がつかないものは父に問い合わせますのでお客様の不利益にならないと思います。」
…ふむ、美人だし良いか♡
「おっさん、鼻の下。」
うっさいわ!
「私はミッツと申します。その生意気そうなのはトワ。これからよろしくお願いします」
「エリザベートです。エルザとお呼びください。私のいないときでも買い取れるように話は通しておきますね。」
とりあえず、レッドボアの牙を一本出す。あ!やっちまった!
「おっさん…」
「結構な大きさの”収納”ですね。うちに就職しません?」
「…”収納”ではなく、こっちの牙見てほしいのですが…」
「あら。本気ですよぉ~。誘惑しちゃおうかしらぁ~?」
くすくす笑うエルザさん…あ、かわええ…
「ええ。ええ。されちゃいますよ♡。いつでもおっけ!かもん!え 「おっさん!おっさん!!」 ……失礼。危な。」
「あら残念。こちらの牙は…レッド・ボアでしょうか?こんなに大きいのは見たことありません。」
花瓶の時とは比べ物にならない食いつきだな…。断面をルーペで覗いたりして…
「売れますか?」
「それはもう…父に高価で売り付け…買い取らせていただきますわ。ほほほ…」
怖えぇ…
「査定金額をお知らせします?それとも… 「ああ、信用します。買取で。」 …たぶんオークションになりますね。これ。
これだけ見事な牙…一本そのまま、彫刻の素材で引手数多でしょう。暫く預かることになりますが…」
「ええ。お願いします。」
「おっさん、いいのか?」
「別に?騙されたら騙されたでいい勉強だ。見る目がなかったってこと。大丈夫、エルザさんは信用できるよ。こんなチッポケな取引で信用無くすような人じゃぁない。」
「ホント?まぁ、おっさんにまかすわ。」
「そうでしょ?ご実家、かなりの大店なんでしょうね。」
「ふふふ…なぜそう思われて?」
「いや、目利きもですが…全く動じません。”収納”然り、”牙”もね。それに身に着けてる装飾品も質素に見えますが…ねぇ?」
それにどう見ても町娘には見えんて。豚王の処の姫よか、エルザさんの方がお姫様に見えるわ。
「…本当に家で働きません?すぐに幹部になれますわよ?ミッツさん。」
「あははは。お勤めは暫く…。当分はふらふらしたいと思いまして。この国にも来たばかりですし。」
「今後、ご一緒に仕事ができるといいですね。」
にっこり。エルザさん。不味いな…多分バレてんな。長居は禁物だわ。
「何か売れそうなものがあったら持ってきますね。あ、皮の加工とかもできます?毛皮にしたいんです…」
「はい、大丈夫ですよ。加工も承ります。お待ちしてます。」
エルザさんに見送られ、店を出る。
店自体はいいのだが…外見に騙された。想像の上を行く大店のようだわ。美人に騙されないようにせんと。思った以上に切れる。
だが、嫌いじゃない。マシュー女史然り。…美人を抜きにしてもね。
しかし、この世界の男はみな脳筋か?アホか?知的な人に…話の通じる御仁に会いたいものだわ。ホント。次に服屋も行きたいが…トワ君がパクってきた軍服?がまだあるからいいか。
「そうそう、あと何が必要?トワ君、なんかある?」
「お金」
わっかってるよ!
「それ以外で…」
「う~ん。とくにはパクり在庫、結構あるしな。あ!武器屋だよ!武器屋!手入れしないと!」
「そうだった!ないす!命に直結だもんな!行こう!」
「何処へ?」
「…エルザさんに聞いてくるか。おすすめの店」
…再びの来店。
「あら。就職ですか?」
微笑みながら、さらっと。このままでは尻尾掴まれてしまうな。獣人族じゃないけど…
「残念ながら。エルザさん、良い武器屋紹介いただけないでしょうか?場所だけでも構いません。整備に出したいので。」
「武器屋…整備ですと…そうですねぇ…」
「ねぇ!エルザさん!ドワーフっている?ドワーフのとこがいい!」
「おいおい。トワ氏、どうしたんだい?」
「ドワーフの処…ですか…気短で気に入った仕事しかしませんよ?」
「おお!イメージどおり!そこがいい。」
「トワ君?」
「あ…まぁ。その。ね。」
ドワーフ好き?何とも…
「まぁ、いいわ。で、エルザさん該当するところあります?」
「ええ。うちの商会が昔からお世話になってる工房が…今は後進の指導に重きを置いている方ですが腕は凄いですよ。」
「ではそこを。よろしく!」シレっと…
「って、トワ君…整備出すだけだぞ?」
「ダメでもともと。」
「意味判からんのだが?」
「一応、紹介状書きますね。整備だけでしたら…それぞれの門のそばに専門の店がありますよ。冒険者さんとか、帰ってきてすぐに出せるようにと。」
「なるほど。着眼点がいいですね。」…
エルザさんから封蝋をした手紙をもらい、店を出る。なにやら、しっかりした紹介状がいただけた。ありがたや~。今日はここまでかな。時間的に。街ブラでもすっかな。
「じゃ、この後どうすっか。」
「ドワーフじゃないの?」
…ドワーフじゃないし鍛冶屋だし。
「う~ん片道30分?1時間?くらいかかるようだし。今からじゃ迷惑じゃないかって。」
「…そっか。じゃ、街ブラすっか。テンプレ回収しないとね。」
なにやらがっかりトワ君だ。
「ドワーフ好きか!って、テンプレほかにある?」
「さぁ?孤児に掏摸られるとか?獣人の奴隷の女の子に惚れて身請けするとか?おっさんの場合はサキュバスに引っかかって絞り尽くされて死んじゃうとか?。」
「…ほっとけ…でも死ぬのはやだな…」
「まじかよ…。」
やべぇ拒否するのを心が拒否してる…。さて、街ブラに繰り出そうか。
屋台飯を食べながらぶらぶら。
飴?砂糖は安いのか?ラノベなんかじゃ高嶺の花だ。よく見ると水飴。麦芽糖ってやつだな。懐かしいから購入。うま…優しい甘さがいいねぇ。
「おっさん、俺にもくれ。」
「どうぞ。小さい壺で買ったけど…量あるな…」
謎肉の串焼きの串を突っ込むトワ君…おいおい…
「棒無いんかい!」
「わり、あ!マジで美味いな。これ。普通の砂糖って思った以上に刺激があるんだなぁ。」
「こっちの飴玉もいいぞ。」
「次の時は俺も買おう。甘いもの久々だな。」
こんな感じでぶらぶら。特に何もなく終了…宿屋に…?
本日もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。




