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ハム屋さんに突撃!

いらっしゃいませ~

 朝風呂は流石になかった…ある意味良かったな。…入ったら怠くなって、「もう一泊!」ってなったに違いない。井戸端を借りて剣を振る。今日は皆、型だけで切り上げる。

 身を清め、隣に移動して、ガッツリ朝食を頂き、旅装に着替える。いい宿だったな。

 「おっさん、帰りもここだな!」

  「俺も!」

 「ああ、空いてたらな。最悪風呂と飯は頂こう。」

 旅装を纏っていると

 ”とんとん”

 「はい?」

  「お客様に、お使いが。」

 女将さんだ。

 「はい、ちょっと待ってくださいね。だれだろう?」

 「例の貴族?」

  「追い付かれた?」”ぎい”

 「はい。用意できました。で?」

  「下でお待ちです。ヴァートリー商店の方です。」

 「ありがとうございます。何の用だろ?聞いてみますね。」

 そこにはびしっと礼をした年の頃、20台後半の女性が居た。

 「はい。何の御用でしょう?面識は無いと思いますが…」

  「私は、この街のヴァートリーの仮店舗店長、スティルと申します。」

 紋章をこちらに示しながら自己紹介をするスティルさん。ん?結構美人ではないか。

 「それは失礼しました。輸送隊のミッツです。お見知りおきを。それで、御用とは?」

  「商会のマジックバッグをもっての移動との事。酒類の予備在庫があればと声を掛けさせていただきました。」

 エルザさんにも言われてた。こういう場合もあるよ!って。でもそんなに入らないから1~2樽だって。

 「今回の依頼は”特級”以上ですが…1~2樽は融通できますが?」

  「…そうですか…”黄色”でしたらと…」がっかり。

 「…私個人の物でしたら…”黄色”10樽まででしたら融通しますよ。決済も伝票で構いません。」

  「え!いいのですか?でしたら10樽引き取りたいのですが!」

 「ええ。行きましょう。」


 仮店舗の倉庫に行き、バッグから出すように10樽出す。

 「黄色ですが、運搬に気を付けています、品質もまずまずだと思います。検品願います。」

  「はい。…”黄色”と言ってもノリナ産?あら。これでは、6樽がやっとですわ。」

 「あ、ノリナのは高価でしたね…今回は全てノリナ産なんですよ。」”ごくり”…ん?

  「と、”特級”も?」

 眼の色が変わりましたね…

 「ええ。」

  「無理して一樽頂こうかしら…」

 結局”特級”1樽”黄色”5樽におさまった。

 「王都にかなりの量卸すことになっていますけど?」

  「ええ。聞いています。ですが状態の良いものは”今”ですよね。あそこから馬車でガタゴト来るんですもの。澱も上がってしまうわ。」

 おおきなガラス管でそれぞれの樽から少量抜き取り、色、香り、味をみる。

  「素晴らしい…これが”特級”なんですね…」

 うっとりスティルさん。いろっぺ~

 「この村でさばけるの?」

  「瓶に詰めなおして、小売りにします。この村、結構裕福なんですよ。領主様も喜んで購入されるでしょう。黄色も上質で…酒処もにぎわうかと。」

 「そのような場所あるんですね。」

  「ええ。この村は村人向け、宿泊者向けと結構にぎわっているんですよ。王都への中間点ですし。」

 「これから、王都に行くのですが…お預かりするものあります?」

  「だいじょうぶです。お気になさらず。そうそう。お小遣い稼ぎ程度ですが、この村特産のハムを持っていけば良い値で売れますよ。」

 「やっぱり、養豚あるんですね。おすすめのハム屋さんは?」

  「高級でしたらブオノ。加工品の組合もありますよ。」

 受領書にサインをもらい、

 「それでは行ってみますね。販売はともかく、個人用に欲しいので。」

  「お気をつけて。神のご加護を」

 

 「高級ハムだって。行ってみるか?」

  「俺たち…大丈夫かな?」

 う…ん。こういう時に一歩引いてしまうんだよな。雹は。

  「ダメなら駄目でいいじゃん。そんな店。いこう父ちゃん。」

 アグレッシブだなハセル…食い物絡みの時は。

 「ああ、ハセルの言う通りだ。この村の雰囲気からすると問題ないと思うよ?」

 …地図を頼りにブオノなる店を探す。ぼ~のぉ~!イタリア人?の職人さんだったり…

 

 「ここいらのはずだが…」

 「ぷぷっ。絶好調だな!」うっさいわ!

  「父ちゃん、こっちだ。ハムの匂いがする!」

 ハセルについて道を行く。おいおい。嗅覚だけでスイスイと。一切迷いが無いな…てか、逆方向…凹むわ…路地を抜け大通りにでた。ずらりと並ぶ精肉加工所…

 「ハム街道?圧巻だな…」

 正にそんな感じだ。加工場と直売場がある。よく見ると直売場の無い加工場もあり、数十の店舗が軒を連ねる。

 「ここまでとは…加工の際に出る血脂等どうしてるんだ?川の汚れも相当だろうし。だが、悪臭もないな。多くの水も使うだろうに…」

  「よくお気づきで。さすがヴァートリー様と言ったところでしょうか。普通の商人は買うだけ。その背景や個性を見ようともしない…あ、失礼、私はシンケン。ハムの加工販売を営んでおります」

 細身のいかにも職人て感じの40代位の金髪の男がそこにいた。

 「私はミッツです。よろしく。して、シンケンさん、大量の血肉…排水はどのように…一か所にまとめて、スライム?」

  「ええ、お察しのとおり。多段スライム浄化槽で一括処理しています。数種類のスライム別に飼育し、段階をかけて浄化しています。飲めるくらいきれいな水ですが、下流に流さず、農地、養豚の飼育水などに流用しています。」

 ロマンや…シャンパンタワーのスライム版みたいな?

 「なるほど…繊細な処理ですね。臭いなどは?」

  「これも極力漏れないよう、各加工場も注意しています。結界石を使い、排気もスライムを通しています。最新の設備がここにあるといった感じですね。」

 にしてもスライム万能説!!種類も多いようだ。

 「ハムの新天地ですね」

  「ええ。養豚のできる村が作られたので、皆で越してきたんですよ。各地方から。どうせなら最初に設備投資に重点をおいて。悪臭漂う中でハムは売れませんからね。今後ここがハムの一大産地いや、聖地になっていくでしょう。」

 「ごもっとも。大抵、加工場は村の外れか、村外ですものね。燻す香りも相まって、一切不快な臭いはしませんね。」

  「養豚場も近くにあるんですよ。ですが放牧地を広大に取っているので臭いとかありませんね。たまに豚に惹かれて猪がノコノコやってきますよ。」

 「それは…イノブタの加工物も?」

  「!良くご存じで…」

 あ、これは率先して交配もしているな?上質な油で美味いんだよなぁ。

 「詳しい話は結構ですよ。猪自体は加工しないので?」

  「いえいえ。腸詰なんかは猪の方が適してると思います。ただ数が揃えられないのですよ。小さいヤツでも獲るのに一苦労ですよ。ははははは。」

  「父ちゃん、ハム食いたい。」

 「そうだったな…折角だし、シンケンさんの店、小売り…いや、卸しています?でしたら案内願いたいのですが?」

  「もちろん。お安い御用…いらっしゃいませ!」

本日もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。

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