ハセル君、運命の出会い!
いらっしゃいませ~
日もちょうどいい感じに傾き、町が紅に染まる。…
「ご苦労様です。確かに受け取りました。」
「蒸留酒の積み込みはどこで?余裕があれば別途購入したいのですが…」
「こちらです。販売用のうち…」
荷下ろしと積み込みを行う。そうここは、ヴァ―トリーの店舗。
「ここら辺の名産ってなんですか?」
「ソバくらいでしょうか…通商拠点くらいでしか。あまり土地が良くないみたいですね。」
「ソバ!在庫あります?あれば欲しいのですが…」
「ええ、用意します。ところでミッツ様、ワインの在庫ございますか?」
「黄色ラベルなら50だせます。今回の降ろすリストに無いように思いましたが…」
「お恥ずかしながら…乗り遅れまして。はははは。むしろ黄色でかまいません。それでもかなり上物と聞いております。」
「数量は50で?」
「お願いします。お支払いは現金でも行けますが?」
「いえ、エルザさんに回しておいてください。」
「ではこちらの倉庫へ」
ワインを下ろし、ソバを買う。双方とも伝票にサインし、エルザさんに回してもらう。おいらが死んだらどうなるんだ?未回収金の行くえは?…今度聞いてみよう。死なないようにがんばんべ!支店長との商談?を終え、街ブラする。
「!父ちゃん!あの店!」
「串焼き屋か?」
「…違うよ…あの店に何か…感じるんだ。」
「雹?」「?」
「トワ君は?」
「特に、おっさんの魔眼は?」
…ハセル自信をもて!
「無いな。でもハセルが何か感じたんだろ。いってみよう。」
…ふむ?道具屋さん?大きいな。
「いらっしゃい。なにに…」
「?獣人はだめか?」
「いえいえ、ヴァ―トリーの方が来店されたので。」
「そうなの?おいら達、臨時社員みたいなものだから。」
「なるほど、総合商社の大店ですので自前で揃うんですよ。なのであまり小売り店での購入はみませんから。」
「そうですね。考えてみれば…ご迷惑で?」
「いえいえ。お客様には変わりませんよ。見て行ってください。」
「それにしても、なかなかの品揃えですね。本までも。」
「ありがとうございます。子供向けの本を多く集めました。安い紙の物ですが、丈夫にできてます。でも、なかなか売れなくて。ははは。」
「いいですね。2冊ずついただきます。」
「ええ!50冊になりますが!…あ、ありがとうございます。金貨10になりますが…」
まだまだ高価だなぁ…
「はい。10枚。確かめてください。」
「確かに。包みますね」
「このままで。このバッグに入れますので。」
「羨ましい。さすがヴァトリーのバッグですね。」
…”収納”だけどん。
「どう?ハセル?」
「父さんこれなんだけど…」
「手甲?どれどれ。ちょっと大きくない?」
「なんか、呼ばれたような気がしたんだけど…」
「まぁ買ってみよう。コレいくら?」
「そちらの物は獣王国から流れてきたと言われてますが…小5枚でいかがです?」
「では、5枚…っと、ハセルにやらせるの忘れた…お金ある?」
「うん。小遣いで買ってくる。」
「装備は夜な。調べてからな。」
「うん。」
「ありがとうございました。」
…屋台飯を”収納”しながら宿へ。
早速食堂へ行き、食事にする…えげつない…なんだこの盛り付けは!うちだけ…じゃないな…超大盛りだ。女将の自信の結晶か!
「すげぇ…父ちゃん食っていいか?」
「まぁ、まて。飲み物を。すいません~」
「はい。どうです?うちの自慢なんですよ。多かったら次から言って頂ければ減らせますよ」
「ええ。驚きましたよ。店構えとのギャップが。そうそう、エール2つと果汁2つお願いします」
「はい。少々お待ちください。」
「さて、食べようか。頂きます」
{いただきます}
美味い…大味かと思ったが…洋食系のおふくろの味だ…なぜそう感じるのかがわからんが…ハセル、雹の箸も止まらない…あ、家の子はMy箸標準装備だ。もちろん木製だ…失敗は繰り返さない…今度水晶で作って…割れるな…
「ほれ。」
肉塊を二つに割り、子供たちの皿に転がす。
「「ありがと」」
「おっさんには多いわな。」
「ああ。流石にね。トワ君行けそう?」
「美味いからな。びっくりだよ。当たりだわここ。」
「ふいぃいい…食った、食った。けふ。」
「お腹いっぱい」
「幸せ…」
「ホントに美味かったな。ここ。」
「さぁ、”洗浄”寝るか。」
「父ちゃん、コレ!また忘れた!」
またって…前にもあったか?…それすら忘れているのか…おいらは…
「あ、ああ、そうか…”鑑定”」
・鉄の小手 普通の小手。隠蔽
「ん?魔眼発動!”鑑定”」
・鬼神の小手 ミスリルが変化した聖晶銀製の小手。腕力が上がる効果があるが、使用者を選ぶクソ生意気な小手。ハセル君なら行けるんじゃね。いいの見つけたな!
…片膝を突き祈りをささげる…今日もありがとうございます。
「あ、ハセ、当たりだ。良かったな!」
「そうなのトワ兄?」
「ああ、おっさんが祈ってるだろ。神様に良いこと教えてもらってるんだ」
「ふ~ん」
後ろでごちゃごちゃ煩いわ!
「ハセル、それは良いものだ。『鬼神の小手』だそうだ。着けてみ?」
「うん…おお!ピッタリだ!」
「自動調整機能?アーティファクトってのか?」
「良い買い物だな。大事にしなさい。」
「うん!父ちゃん。」
お互いに惹かれたのか?ハセルの直感で思わず良いものを入手できた。子供たちの安全性が上がるのは大歓迎だ。
朝、恒例行事の鍛錬を中庭を借りて行う。雹は許しが出たのか、トワ君と組手をしている。そのわきでフル装備のハセルが黙々と上段からの斬り落としの型をなぞる。
…お主も一撃必殺か?おいら?おいらはへっぴり腰の竹槍部隊だ。気分が乗ってくると腰振っちゃうんだよなぁ…トワ君の爆笑が何気にクリティカルなんだよ…おいらの繊細なハートには。汗をぬぐい、たんまりと朝食を食って宿をでる。
「いい宿だったな。ここ。」
「うん。父ちゃん帰りもここにしよう!」
「うん。ご飯が美味しい。」
「いいね~」
ぶらぶらと門に向かって歩く。
「お!美味そうな果物発見。ちょい、買ってくるわ。」
「良いね…ってルカちゃん。今までどこに?」
「おじ様ったら酷いわ。全然呼んでくれないんだもの。」
「消えちゃったからどこぞにいったのかと。ご飯は?」
「そうね。リンゴもらおうかな。」
「おっちゃん、リンゴ10個ちょうだい」
「ほい。ルカちゃん。」
「ありがとう。」
「で、これからどうするの?消えてついてくる?」
「そうねぇ。身分証もないし。寝るとき…宿とる時?呼んでくれればいいわ。」
シャクシャクとリンゴを齧る悪魔っ子。
「消えてる間なにやってんの?」ニヤリ
「人形集めに決まってるでしょう?」
…聞かにゃ良かった…
「そういえば、この前、ディフェン行ったときに仕入れた人形があなた達に文句があるんだって。」
「へ?」
「ほら。」
派手なドレスをきた不細工な人形が2体…あ…
「おっさん…」
「ああ…」
間違いない…白塗りお化けだ…それとよく似た人形…娘か…?
<アンタたちのぉせいでぇええ>
<恩知らずがぁ…パパぁ恨む…うら>
「はぁ、お前らの撒いた種だろうが…にしても哀れだな…いや、お似合いか。」
「ルカちゃん…ポンポン抜いちゃダメって。…王都いったの?」
暫く姿見せなかった時か?
「王様に挨拶にいってきたのよ。召喚してくれてありがとうって。そしたら、契約も何も無しに”言うことを聞け!下郎!”だって。失礼しちゃうわ。」
頭を撫でり。
「御挨拶してきたのね。えらい。えらい。」
「おっさん…」
「仕方ないだろ…もう。」
「おじ様に言われてたけど、頭きたから殺しちゃおうと、一寸おどしたら、この女を捧げてきたのよ。物凄く汚い魂だったから頂いてきたの。」
人形を前後にぶんぶん振る…ヘッドバンキング?
「はぁ、あの豚、自分助かりたいからって、嫁と娘差し出したの?」
ったく、相変わらずの屑だな…あ、首が…
「王様が助けて、助けてって。おしっこ漏らしながら。その代わりにくれたのよ。あの国、屑ばかりだから。いっぱい獲れたわ。大漁、ムフフ。」…おい。
「いっぱい?」
「ええ、偉そうな大臣?将軍?生意気なメイドもいたわね。門番も。」
「抜いちゃダメだって…」
妻に、娘に、大臣に、将軍?オウンも居たな…国回るのか?
「あれだけ汚いのは生かしててもしょうがないわよ?約束通り、王様は見逃したわよ?」
こらこら足を引っ張らないの。
「っ了解…今度からいっぱい獲るときは…言っても無駄か。できればひと言頂戴。」
「分かったわよ~。」
頭もって振らないの…変な音してるぞ…哀れな人形?を見てると…
「おじ様欲しい?」
ぶんぶん…いらんがな…
「要らないよ…ただ、変な音したから」
「大丈夫、大丈夫。すぐ直るわ。ほら。」
アメリカのゾンビ映画のようにクキコキ復元していく…おぇ。
「…仕舞っておきなさい…」
悪魔っ子告白事件?のち、門を抜け国境を目指す。
脱力。悪魔の残忍さ…幼女の姿が妙にマッチする。
…子供は残忍だもんな。ある意味本質か?おいらもカエルストローとかセミ爆弾とかしたもんなぁ。それにしても王妃と王女…あの白塗りと再会しようとは…姿かたちが大分変ってはいたが、魂の波動というか、ああ、本人だ…と分かった。ああなると、オウンにしろ、憐れなものだ。ポンと首を落とされた方が何倍もマシだわ…。
本日もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。




