ラッキーな奴はいねぇがぁ~~~!
いらっしゃいませ!
トワ君、おいら、アルス氏に魔纏を掛けて、疾走!ふっ、ここでも足手まといは…そう!おいらだ!ふん!
「おっさん、考え事してると事故るぞ!」
「必死だよ!そんな余裕はな~い!にしても、アルスさんすげーな」
「ああ。」
2m超えの巨体がビュンビュン走っている…小回りも利いているようだ…あんなのに追いかけまわされたら…考えただけでもゾッとする。
「?普通だぞ?コレなら、もっと速く動けるな!」
「…事故れ!」
邪念も送るも…効かないわな。
「僻むな!おっさん!アルスさんも足生えたばっかりだから無理すんなよぉ~!」
笑うな!トワ!…くそ。歳かぁ!歳には勝てんのかぁ!と、数ヶ月前までぶよぶよ。運動嫌いのアラヒフの心の叫び!
…まぁ、そんなもんだろ。良くやってるよ。おいら。自分で言うのも何だけど。
さぁて。アルスさんの願いは通じるか!ラッキー野郎はいるのか!
到着後、街道わきの林に待機。復路も考えて、滞在は3~4時間とした。お茶をしながら待つ。アルスさん。まだ20代だったのには大層驚いた。
しかも独身…逆においらが直50って言ったら驚いてたよ。しかも独身。大いに驚かれた…オマケの勇者野郎は大爆笑してたがな!もげろ!ハゲろぉ!
「そうだ。家に、獅子の子がいるんだ。戦闘スタイルもアルスさんに似てると思う。教えてやってくれない?」
「獅子族?そりゃ、珍しいな…獣王国から出ないと思ったが…」
「そうなの?アヌヴィアトで事故で両親失くしたから、おいらの養子にしたんだ。」
「…養子って、旦那…人族だろ?」
「問題ある?」
「…無いけどよぉ~」
「おっさん獣人の養子、10人以上いるぞ。多分これからも増えるぞ。」
「ほんとか!同胞が世話になってる…」
「おいらの子供だ別に苦じゃないさ。」
まったり談笑をしていると…
「んん?」
「トワ君?」
「ああ、アルスさんの祈りが通じたかな?」
「なぁ、呼び捨てにしてくんねぇ~か。恩人にさん付けされちゃぁ尻尾がムズムズすらぁ」
尻じゃないのね。ぷぷ。
「わかったよ、アルス。よろしくな。」
「応」
”がらがらがら”
と、荷台が檻になった牢馬車が二台近づいてくる。その後ろに物資を積んでると思われる馬車一台。本街道を進むので護衛は少ない。あれが隊長か?
「でどうする?」
「一応声掛けしてみっか…」
「はぁ?どうやって止めるよ…?ここは突貫!気絶優先で。」
「「応」」
トワ君のライダーキックが隊長の顔面にヒット!先頭の馬から落ちる…いや、吹き飛ばされる…死んでんじゃん?あれ。
アルスも大暴れ、おいらも少しは…参戦する前に終わってしまった…。
茂みに馬車と伸びた兵士を移動させ、武装解除および、輸送物資も鹵獲する。
早速、檻のカギを開ける。ちょこちょこっと。
「…おっさんって。前科もち?」
「あほぬかせ!まえに、遊びではまったんだ。今じゃ犯罪っぽいけどなっと”カチリ”」
「おみごと。」
前の馬車には男性12人、後ろの馬車には女性10人。馬車から解放し、最初の説明は、アルス氏に任せる。
檻に兵士を入れカギをかける。もちマッパの猿轡だ。ぷぷ。
その後、紹介され、凡その説明、まぁ、ホストだしな。皆行動を共にするとのこと。悪感情もないし、了承した。手持ちの食事もほぼほぼ尽きていたので、鹵獲した干し肉を配る。
「もう”収納”からっぽだ。」
「おらのも。軍の備蓄の干し肉はまだまだあるから言ってくれ。」
「トワ氏、なぜにそんなにあるのだ?」
「は?これだけ敵地回ったんだぞ?かっぱらうに決まってんじゃん。敵の軍事拠点の物資は俺のものだよ?」
…違うだろ…それ。かっぱらうって…この不良勇者が!」
「また、心の声が漏れてんぞ!失礼な。」
「ぷぷぷ。おじ様もそう思うでしょう?ほら不良勇者!」
「このクソ 「ストップ。内緒よ内緒」 …クソ…ガキ?」
まぁ、悪魔はまだ内緒ね。アルス辺りなら気づくだろうが…
「ルカちゃん話はあと。さっきのとこで待っててよ。お願い。」
「ぶ~。おじ様のお願いだし。ばいばい。」
…ふう。アルスたちに見られてないよな…まったく。
「旦那、いいかい。」
「なに?悪いけど、もう干し肉位しかないぞ?」
「それは感謝してる。返すものが無いのが心苦しいが…」
「気にすんな。で?」
「ありがとう。おかげで22人助けられた…心残りが無い…とは言えないが…キリがないからな。」
「まぁなぁ。獣王国からも抗議が来てるようだから無茶はしないと思うよ。それに、悪魔召喚自体は潰したし、キーマンの魔術師長オウンや、教会関係者は斬った。暫くは国境付近まで定期的に見に来るのもありかもなぁ。」
「そうですね…もっと力があれば…」
「獣王国に行くかい?」
「いや…一部の者には良いかもしれんが…ほとんどが奴隷扱いさ」
「そこが解んないんだよなぁ~。団結力、結束力ありそうなんだけど…」
「確かに…ただ、”強さ”が重要なんだよ。どうしても…人族がいうところの”草系”の獣人は下に見られてしまうんだよ。簡単に言うと、この集団のトップはミッツ殿なのだろうが、俺らから見るとトワ様なんだよ。”頭”の”強い”ミッツ殿も直、認められると思うけどね。」
「なるへそ。強いリーダを無意識にでも求めているんだろうなぁ。てか、うちもトワ君だぞ?”勇者”トワなしに、おいらとっくに、お星さまだし。さてと…」馬車の方に向かう。
「あのすいません。貴方が隊長で?」
「…」
「黙っててもいいけど…痛いよ?」
「…なんだ…」
「うん、大いに結構。捕虜はあと何人?」
「私は運送担当なので解りません。」
「では、どちらから来ました?」
「となり…この街道沿いの農村です。馬車で一日ほどです。」
「ありがとう。」檻に行ってもらう。
「さて、行ってみますか。」
「旦那?」
「だだっと走っていきましょ。アルスさんはここヨロシク。行こうトワ君。」
「すまない…旦那」
「しゅた!服部○○只今参上!」
「何ごっこ?」
「…いくでござるよ!獅子〇」
「…なにそれ?獅子〇ってなんぞよ?」
「うむ。あれでござるかな?獅子○?」
「もう、いいわ。どこよ?」
「獅子〇知らんの?最近の若者は…嘆かわしい…」
「おっさん?」
「…あの建屋の裏の…」
大き目なテントがある。
「しゅた!ニンニン!潜入成功!」
「おっさん…まだやるのか?」
「にんにん!にん?」「…」
「にん?…冗談だよ」
…そこに20人の獣人が囚われていた。
「助けに来た。服部と申す!にんにん!」
「おっさん。真面目にやれよ!…アホがいるけど、助けに来たのは本当だ。」
獣人の皆さんの目が…脅えてる?
「コホン。ちょっと舞い上がっていました。失礼。助けに来ました。ここから逃がそうと思うのですが、皆さんはどうしますか?」
「助けてくれるのか?」
「出して!お願い」
「ただし、黙ってついてきてください。まとめてる獣人がいるところまで。」
「獣人?」
「同胞が?」
「救出を…」
「ええ。虎人族の方に頼まれて来ました。」
「…解りました…お願いします。助けてください。」
「ったく、おっさんのおかげで…余計な手間を…」
「すみません。洗浄!洗浄!と、此処に取り出したる、金属棒と針金で…っと…と、”カチリ”っと。」”ぎぃ”
「さぁ、出てください。この村に捕まってる人は全部?」
「たぶん…」
「おっさん、ちょいと覗いてくるわ。先行ってくれ。…大丈夫か?」
「大丈夫。不審な奴はいないよ。」
…20人の獣人を先導し、街道から離れる。
「流石ですねぇ皆さん。」
壁際の施設だったとは言え、気づかれずに脱走できた。農村の3m位の壁なら、楽に超える身体能力。
「みなさんも農民?」
「農民というより、開拓民だね。柵造ったり、小屋造ったり、魔物狩ったり。勿論畑も。なんでもしますよ?」
「何でそんな皆さんを…ますます解らん…」
開拓の要だろうに…この国は…。街道と並行して茂みの中を駆ける。
「トワ君、またかっぱらい?」
「接収といってほしいね。」
遅れて駆けてきたトワ君。心なしかホクホクだ。
「人質や、囚われてる人、子供は?お金は溜まった?」
「人質無し。う~ん。少ないねぇ。前のが景気良かったな。ワインとかの酒類もなかったよ。穀物もトウモロコシが多いな。」
「それだけ切羽詰まってんのか?この国…突きてぇー。ぱん!って弾けさえてー破綻させちゃる!」
「おっさん、心の声、隠す気ないだろ!」
「え?でてた?」
「経済破綻させたいって。」
「まぁ、その話は忘れて…そろそろ見えてくるか?」ん?
「おっさん、アレ!」
獣人の皆さんが馬車を襲っていた…おいおい。何やってんだ?襲撃はいかんだろう…
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