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第二騎士団長 Ⅴ

いらっしゃいませ~

 それから数日。王都に留まり、昔の伝手と多少の小金を使い、情報を集めた。

 要約すると、ふらりと”悪魔”が現れ、王妃、王女、宰相の命を奪ったと…だれも止められず、誰も遮ることもできずに。

 その後も何の法則があるかは不明だが、大臣の多く、メイド長、メイド、門衛、等々、つまみ食いでもするように命を奪っていったそうだ。

 外傷はなくともその顔は苦悶に満ちたものだったと。その数176人。国の重鎮たちも多く含まれた数だ。

 まさに、野戦のみならず攻城戦でも負け、国が終わったような状態だ。その姿は…ああ。知っているさ…幼く、羊のような角と、ドラゴンの翼、槍のような尾を持っていたと…

 

 さて、情報も得られた。王都から離れよう…そう思い西門に向かい歩を進める。当分天気は良さそうだ。ん?あれは?あれは!路地に消えた小さい影を追う。そこには…

 

 「あら。お久しぶりねぇ。元気してた?」

 そう…角も、尾も、羽も無いが、あの”悪魔”だ。

 「今日は何しに王都へ?まだ殺し足りないのか?」

 「貴方には関係なくてよ?力づくで聞いてみる?死んじゃうわよぉ?」

 「ふっ、やめておこう。騎士団も首になったしな。」

 「あら。」

 …それだけかよ…まぁ、関係ないわな。

 「だが、二三聞きたい。なぜ、この国の王女を?宰相を?」

 「しょうがないわねぇ。王に挨拶に来ただけよ。なのに王命に従えやら、拘束しろ、奴隷にしろ等々。頭きたからチョット脅したのよ。」

 「脅す?」

 「そう。寄生虫のように侍っていた貴族を数匹、その場で八つ裂きにして魂を戴いたわ。そうしたら…涙流して、自分以外…なんでもやるから助けろだって。勝手よねぇ~。王女って奥さんでしょ?ただの盾よ、盾。あれじゃ。まぁ、程よく穢れてたし?おじさまも大嫌いって言ったから。ついでよついで。」

 ついで…ついでと…

 「そ、それだけで…それだけで170もの…」 

 「勘違いしてるようだから言うけど…対象はこの国民よ?いや、この世界に生きているものと言い直していいわ。あなたちが何を希望して私達を呼んでいるかおわかり?」

 「そ、それは…いや、しかし!」

 知っているさ…雰囲気が変わり真紅の瞳を向けられる…怖い。…怖い?この俺が!

 

 「隣国への侵略…おじ様たちと同じよ…

 ”生贄”を調達するだけで何人殺したの…貴方たちは?

 ”生贄”に何人捧げるつもりだったの…貴方たちは?

 ”悪魔の力”で何人殺す気だったの…貴方たちは?」

 

 …心を…生を縛るような呪詛が我が心体を縛る。

 「…い、いや…」

 …多くの開拓村が消えたとも聞く…獣人なしに開拓など…家族を守るために多くの者が死んだという。生きているものはこの地を捨てるだろう…さらに、人族の子供にも手を出したとか…

 

 「それに比べれば少ない、少ない。それにあなた達は、”無垢なる””勇敢なる”魂を…神のもとに還れる魂たちを。私は”穢れた””卑怯で自己中心な”魂。どのみち地獄に落ちる魂どもを。どっちが罪が重いかしらぁ。

 どこぞの聖職者よろしく”魂”は平等なぞと戯言やめてよ?と、まぁそういうことよ…

 まぁ、この国の人間には死後、安らかな眠りは望めないわね。私の”呪い”いや、”加護”ね。ふふふ。まぁ、おじ様との”約束”だから皆殺しはしないけどぉ。この国と聖王国については”穢れたもの”なら自由にして良いって言われてるの。だから邪魔しないでねぇ~」

 「じゃあ、な、なぜ!王の命をとらぬ!元凶そのものであろうが!」

 「それこそ私の勝手でしょ?余計なお世話。生かしておけば穢れた魂が多く収穫できるってものよ。腐った果実は伝播する…くくく」

 「くっ…」

 「冗談…ではないけれど…おじ様の望み。あの命は奪わないと約束してるのよ。もちろん、自害とかしたときは貰うけどぉ。まぁ、そんな玉じゃないわねぇ。死ぬまで不幸をまき散らすでしょう…ほんと、私以上の”厄災”ではなくて?」

 「な、なぜ?」

 「さぁ?おじ様に聞いてみれば?殺すなんて生ぬるい!追い込んでやる!…ってくらい?それほどの事をしたんでしょ?こちらに来た時は毎日、毎日、生きた心地しなかったって漏らしていたわよ。」

 「…ぐぅっ」

 …その通りだ…な。王、オウン殿…隙あらばと…

 「心当たりアリね。まぁ。そういうことだから。ここまで話したのは、おじ様、本当にあなたに感謝してたから。この国で不良勇者と貴方がいなかったらとっくに”殺されて”いただろうってね。さぁ、もう良いわね。約束やぶりが何人か居るから…”回収”に行かないと。」

 「ま、待て…待ってくれ…ニアは見逃して欲しい…彼女だけは…頼む。」

 「貴方の女?…ふふ冗談よ。そんな怖い顔しないでよ。そうね…代価は?」

 「代価…そ、それなら…」

 「貴方の命はダメよ~おじ様に怒られるわぁ」

 「く、クソ…」

 「襲い掛かってくる?それなら頂けるけど?でもその時は貴方の魂を引き抜く前に、ニアちゃんを目の前で八つ裂きにしてあげるわよ…ふふふ」

 「”悪魔”め…」

 「そうですけど?なにか?…そうねぇ?私と取引…”約束”しない?」

 「誰が!き、貴様となぞ…」

 「今、失業してるんでしょ?どうせ盗賊崩れになって首はねられるより、良いことに力を使いなさいな。隣の村に…獣人の子供、5人いるわ。生贄に連れてこられたが、今は手に余る状態。数日後にはおそらくだけど”処分”されるわ。その子たちをおじ様の処に連れて行く。…というのはどうかしら?そうすれば、あの子との”契約”無しにしてあげる。貴方の罪の償いにもなるわよぉ。」

 「…」

 「愚図愚図してると…子供たち殺されちゃうわよ?」

 「くっ。」

 「まぁ好きにすればいいわ。じゃぁね。」

 「お、おい!」

 消えてしまった…くそ!あんな話聞かされたら!くそぉ!

本日も、お付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。


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