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第二騎士団長 Ⅳ

いらっしゃいませ~

 …ニアが去り、3日が過ぎた…伝令に出した団員と第一騎士団の副官、10人余りの騎士が戻ってきた。

  

 「ザック騎士団長殿、任務、ご苦労様です。」

 「うむ。貴殿も。人員は少ないようだが…遅れてくるのか?」

 ん?どうしたのだ?

  「…いえ…王よりの命令文がこれです」

 「…拝見しよう」

 

 …内容は”手足の無いものは人にあらず。処分せよ”で、あった…たった一行のみの命令書…

 

 「…な、王命に従い、この者どもは、このような姿になったようなものだぞ?」

 予測の範囲であるが…

  「団長?」

 「ならば…我らも…国のために戦い、負傷し、手足を無くそうものならば、死を賜るというのか!本当に王の言か!」

  「落ち着いてください…流石に私もどうかと思うが…此度の件、機密保持の点もありましょう。また、この者たちを誰が養育するか…国は完全に放棄した。であれば…国元に返すのも、ある意味、酷であろう。足と手がないのだからな。」

 「し、しかし…だが、しかし…」

  「後はこちらで…ザック団長の隊は速やかに王都へご帰還ください…」

 「しかし…」

  「王に報告もありましょう…」

 「わかった…穴位は掘ろう…100人以上いるのだぞ?」

  「…助かります」

 

 …団員を集め、王命を伝える。皆、無言でスコップ、ツルハシを握り、穴を掘り始める。

 せめてもと、物資より、食料を供出する。勘のいいものは行く先を察し、中には泣きわめき、ふさぎ込み、気の触れる者…ふぅ…明日は我が身であろうな…

  

 「団長…」

 「ん?なんだ?」

  「俺…戻ったら…国をでます。」

 「そうか、だが、内密にな。反逆罪に問われかねん…慎重にな。」

  「…はい」

 

 …気を利かせたのか、”処分”は我らが出発した後に行うこととなった。

 団員皆、重い足を引きずるように王都へと向け発つ。重い鎖につながれているような…重鈍な行軍だ…

 「皆の気持ちは同じ…だが、急ごう!」

 

 

 王都に到着…何かがおかしい…王城、騎士団詰め所に向う。こ、これは…明らかに人が少ない。王への謁見を求めたが…要領を得ない…

 「宰相殿に報告があるのだが、どうなっているのだ?」

  「さ、宰相殿は…亡くなりました…あく、ンぐ…な、何でもありませぬ…では…」

 「まて!亡くなった…宰相府はどうなっている!王…王はどうなっている!」

  「お、王は…お引きこもりされて…部屋からお出になりませぬ…」

 「今、国事を仕切っているのは!」

  「い、今は、王妹のカミーラ様、マクラータ公爵、アモエナ侯爵が…」

 「案内せよ!」

  「で、ですが…」

 「急ぎだ!斬るぞ!」

  「は…はい」

 

 謁見の間に入る…な…玉座にはマクラータ公爵が座っていた…その横に妻である王妹のカミーラ様が侍る…

  「跪かぬか!」

 近衛が叫ぶ…

 「私は王国の騎士団長。王以外には膝を折らぬ。貴様等、近衛であろう?なぜここに?王を守っての”近衛騎士団”であろうが!騎士団の本分忘れたか!」

  「ぬぐぅ」

  「う…」

 「まぁよい。ザックよ。で報告とは?」

 いけしゃぁしゃぁと…そこは王のみが座することが許されている。

 「…公爵、そこは王のみが坐することができるもの…どういった次第でしょうか?報告も王にのみ。宰相も…大臣たちも見えませぬが。」

 「王はもう出て来はすまい。宰相も死んだ。大臣の多くもな。今選定している段階だ。」

 「いったい何があったのでしょうか?」

 「さぁな、誰も口を割らぬ。しゃべった者も要領を得ぬ。悪魔がどうのと…」

  「兄上のご執着していた”悪魔”だなんて、皆で夢でも見たのでしょう?」

  「カミーラ様、夢では死者は出ますまい。言動にご注意を。」

 アモエナ侯爵?か?普段は出てこぬ、古狸…

  「ふん、細かいわねぇ。」

 「で、ザックよ。報告事項は?ワシがとりあえずの王代行だ。今はな…」

 …そうか。

 「…承知しました…例の儀式を主導していた、オウン殿、教会の枢機卿以下3名、何者かに殺害されました。その際、召喚体のクリスタルも消失。また、生贄、鉱山使役予定の獣人が連れ去られました。」

  「…オウンの奴も死んだか…」

 「同時に、収容施設で職員の足切が切断される事件ありました。先に送った報告書の通りです。その場にシペラの王弟、モルン殿が遭遇。手足を切断されました。シペラからも抗議が来ましょう。」

 「面倒な…シペラと、聖王国か…奴ら散々我が国を混乱させおる」

 …元凶が我が国がだろうに。まだ解らんのか…

  「で、下手人は?」

 …ふん。この国が誘拐した”勇者”様だよ。因果応報…まさにな。

 「私どもも物資歩補給で寄ったまで。すでに…」

 「もうよい。下がれ」

 「はっ」…

  

 「…ん。待て!引き続き王都の治安にあたれ!」

 「ですが…規則により、3日間の休養が 「王命である!」 …では、手当は出るのでしょうな?確認ですが。」

 「なに?出るわけが無かろうが。」

 「…解りました。せめて、半数交代 「ならぬ」 …強行軍で帰還 「関係ない。貴様らの仕事であろうが!」 …代理とはいえ”王命”で出勤を命じ、王命にて保証されている手当てが無しとはいかがなものか!そのような”都合の良い”王命には従えぬ。ああ、王でもなかったな!代理殿、失礼する!」

 「ぶ、無礼な!き、貴様!更迭するぞ!」

 「ご随意に。では。」


 …こういうことだけは早い…3時間後には任を解かれた。雀の涙ほどの手当が支給された。騎士としての席はあったが…まぁ、未練はない。さっさと辞めて国をでようか。

 

 「団長!これはどういう…」

 「ははは。意見したら首だ。」

  「団長…」

 「手当も払わず、名誉で仕事をせよ…とは俺には言えんよ。そういうわけだ。長い間世話になったな。」

 このまま去っても良かったが…団員に挨拶ぐらいはと…皆に食堂に集まってもらい経緯の説明をおこなった。

 

 「…という訳で、先ほど解任の命令書が発布された。本日中にここを出ねばならん。皆に全てを任せる形になった。申し訳ない。まぁ、これ以上、話すと愚痴になってしまう。王国批判でお前たちの初任務が俺の捕縛になりかねん。」

  「団長…」

 「そんなわけで、行くわ。食事位とも思ったが…なにぶん退職手当もなくてなぁ。すまん。では、諸君!達者でな!」

 

 宿舎の荷物を整理し、授かった剣、徽章を返却し城をでる。

 ふぅ…王城を見上げ…うん、何も感じないな。今、身を引けることは幸運…いや、ちょっと遅かったかな。まぁ、明日からの生活を考えなければ。宿に泊まればあっという間に貯蓄など消え去るだろう。さて、冒険者登録にでも行くか。

 

 「ザック騎士団長殿!」

 「こ、これは、ラメリー子爵!ご令嬢の様子は…」

 そう、ニアの父君だ。さぞ心を痛めているであろう。目の下の隈が凄い。

 「その件についても聞きたい…少々時間はあるかな?」

 「子爵…私はもう騎士団長ではありませんよ。マクラータ代王に首にされました。それに、時間はあれど、多くは語れませぬ。私もご令嬢も”誓約”で縛られているが故。できましたら詮索せぬようお願い致します。命に係わる”誓約”なので…」

 「それじゃ、まるで、先日現れた悪魔の仕業のような…ま、まさか…」

 先日…?悪魔?本当に挨拶に来たのか。

 「これ以上は…では。」

 ガックリと肩を落とす子爵に別れを告げ雑踏の中へ。これ以上は語れぬ…お互いのために。

本日もお付き合いありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。

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