獣人族の大人達 (改1)
いらっしゃいませ~
「ど、どうだ、雹?」
「うん、右手奥の方だね。……臭うのは」
村の木の柵に必死にしがみつき村の中を観察する。おいらはしがみつくので必死でそれどころではないが……
トワ君と雹は、柵の縁に立っている……。なんかずっこいな。
「トワ君の方は? 媒体とかありそう?」
「……いや、無いな。兵も少ないな。獣人の捕虜が多いのに……。嫌な予感がする」
「”ごくり”い、行ってみよう」
……
何とか木の柵を越え、町の中に侵入。
雹が怪しいといった方向を目指し進む。農村であるから街灯等もなく真っ暗ではある。が、確かに、トワ君の言う通り兵の姿が見えない。
かなりの人数集められているのだろうが……。大きな牢獄、テントだもんなぁ。呪物等で縛ってるのかもしれないな。
「大きなテント……。確かに臭うな。ここか」
”ばさり”
……
……どおりで兵が少ないわけだ。
ここでも糞尿垂れ流しの中、ずらりと並ぶ手枷されて繋がれた獣人たち。しかも、膝から下が無い。
「ひどい……。」
「雹……」
「先に外をかたずけるか……。チッ! ただ殺すのは生ぬるいな、やった奴らには同じ目に合わせてやる! 雹顔隠せ、おっさんもな!」
そういうと、顔に布を巻いて、雹を連れて行ってしまった……。
ふぅ……。しかし、逃亡防止? それもあるが反抗防止という面もあるのだろう。だが、ここまでするか? どうせ殺す命とでも? 罪もなく……。よくもこんなことが
今は、考えずにおこう……どうせトワ君が責任者とやらを連れてきてくれるだろうさ……それまでは、おいらの仕事をきちんとやろう。まずは”信用”してくれるかどうか……
あと数歩近づけば、手枷があるとはいえ、おいらなんかひとひねりだろうなぁ。おいらを見る目がすべてを物語ってるわ。”憎!””憎!!””憎!!!”
「ちょっと待ってね、皆さん聞いてほしい。おこがましい、が、信じろ……とは言えないが……。少しだけで良いので、信じてください。私たちは皆さんを救出に来ました……どうか治療を受け入れていただきたい……」
静寂の中……自分の言葉だけがやたらと耳に残る。
「礼を言う。人族のあんたが……いいのか?」
真正面にいた一際大きい男が応える。
「ええ。どうか治療を受け入れてください。おいら達に救出されてください……」
「ふっ――。人族はもう信用ならん。が、貴殿は信用できる。なぁ、みんな!」
{おう!}{ええ!}
「ありがとう、ありがとう……」
「先の豹人の子も慣れてるしな。なにより……血の涙流されちゃなぁ。なぁ?」
{そうだ、そうだ!}
「こりゃぁ信用するしかあるめぇよ」
「だなぁ」
「というわけだ。助けてもらうよ旦那」
いつの間に? ……涙が出てるとは思ったが。余程、精神に来てたのだろうなぁ。この惨状だ。仕方なし。
「ありがとう。さっそく。”洗浄”! ”洗浄”! ”洗浄”!」
テント内がの糞尿、異臭が一気に消え、空気が清浄となる。
「すげぇ……」
「旦那は大魔導士か?」
ん……? なんか引っかかるが……そうですけど! 大魔導士ですとも!
「……どうした?旦那?」
「いえ、何も。早速貴方から……」
最初に応えてくれた大柄の虎人。恐らく彼がここのまとめ役だろう。
”キン!”
手枷と床を繋ぐ鎖を槍で断つ。
肩を貸し、何とか段差に腰掛けさせる。
「ここに座ってください。ちょいと痛みますよ。”解析”、”再生”!」
”ぶっぱぁ!”
おいらの言葉と同時に、不格好に焼き止められていた傷口から、かさぶたやら爛れた肉が吹き飛び、鮮血が飛ぶ!
何をするのかって? もちろん”再生”足を生やす! なにせ足がないことには逃げられん!
「だ、旦那?」
さっ、と布を足の切断面にかける。ショッキングだからな! おいらもあまり見たくないし!
「そのまま動かずに」
「だ、旦那……痛痒い、いたた? な、何が?」
ずんずんと盛り上がっていく布……
「動かないで我慢!」
「うっ、ふぐぅうう……」
……
「うぐぐ。収まったか? ふぅ。なんか変な感じだよ。旦那」
真っ赤にそまった布を取る。
「!!! だ、旦那ぁ! お、俺の、俺の足が! あぁぁ! 旦那ぁ! うぉおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉーーーーん!」
かぁ! デカい声! まぁ、嬉しいだろう。また自由に歩けるのだ
「ふう、まだ本調子じゃ無いだろうけど……。手伝ってくれ、まず、これを配ってくれ」
干し肉の袋を渡す。
「あ、ああ! ありがとう! ありがとう旦那! 奇跡の技……。神よ……」
「神? そんなんじゃないさ。さあ、次は貴方だ」
布に”洗浄”を掛け白に戻す。結構疲れるなぁ。が! いっちょう頑張ろうか!
……。
……。
6人目の治療に取り掛かったところでトワ君が5人の人族の首にロープを結び引き摺ってきた。おっと! 被り物をしないと!
「おっさぁ~ん。第一陣様ご案内~~」
「ごくろう! 貴様らに聞きたい。なぜこんなことを?」
と、足を失った獣人たちを指さす。
「に、逃がさないためだ!」
「は、放せぇ!」 「放せ!」
「じゃぁ、お前らも捕虜だ。逃げられないようにしないとな。……やれ!」
「おっさん?」
キョトンとしてるトワ君。おっさんが急に偉そうになったからビックリこいたのだろう。そっと耳打ちする。
「ここは、おいらが親分で、君は……そう、子分のエンって呼ぶわ」
「……まじ?」
「おいらにあわせて」
「……なんか面白そうだな! 応! 雹にも伝えておくわ」
理解が早くてよろしい。
「猿、やれ!」
「応!」
”ぴぴゆん”
トワ君の絶技で連れてこられた兵の膝から下が飛ぶ。
「ファイア、小!」
回復魔法なんか使わない。”火球”の魔法で焼きとめて終わり。これで失血死はないだろう。ショック死? しらん。好きにするといい。
「うぎゃぁぎい”じゅうう~”ぎぎぎぃいいい」
切断面を焼かれのたうち回る屑。
「はい止血、次!」
「ヒィ!助けて! たすけて ”びぃしゅ!” てぎぎぎ ”じゅうわ~” ぎききききぃぃ……」
「はい、ちょい待ててね。今度はこっち貴方の番ね。そこ座って……”解析!””再生”! ふぅ……次で休憩だ……」
獣人族が足を切られ、活けられてる空いてる場所に置かれる足無し兵たち。憎悪の視線に晒され、激痛に悶えながら……。
どんな気分だ? ううん?
……
座禅を組み集中。魔力と精神的回復を試みる。
……む! し、尻が熱い? 無意識で”大”を漏らしちゃった? ……なんてね。
この星が力を貸してくれてるような……。地面からも支援がある感じだ。自家発電の効果が増した気がする。尻から入ってくるような感覚で少々、かなり気持ちが悪いが……ここは素直に神様ありがとう。
……
第一陣の”接待”が終わったと思ったら、トワ君は第二陣のお迎えに出て行ってしまった。
入れ替わるように雹の第一陣10人がきた。その中にでっぷりとした裸の男がいた。恐怖でアソコは縮こまってるな……
「き、貴様! 放せ! 獣人風情がぁ! ワシは侯爵ぞ! この国の侯爵ぞぉ! おお、そこの! 貴様! 貴様だぁ! 人族だろう! 我を助けよ!」
五月蠅い……粗末なモノをぶら下げて。そんなに偉いのか? お前は……。
「だから? で、雹、何処から持ってきたのよ。これ?」
「屋敷で寝てたよ。女の人と……」
「おふぅ。悪かったな雹……。いや、こいつが悪い! おい! 貴様ぁ! ファイア! 強火!」
燃え尽きよぉ! そんなものがあるからいかんのだぁ!
「なにぃ! ”どじゅん!” ひぃ! あれ? あひぃいいい!」
股間にぶら下がっているものに火球をぶつけてやる。念が籠ってたお陰か、あっという間に焼失! 竿&玉フォーエバー! 消毒、滅菌じゃ!
「ふん。汚物は消毒だ!」
もっと気を付けるべきだったなぁ。雹には……。まだ早かったわ
「で、侯爵様。貴殿がここの責任者?」
「ひぃ、ぶ、ぶ無礼者……ぶひ……い、痛い……いたい……」
此処にいる連中に比べたら……いや、痛いか?
「無礼ついでに。こんな辺鄙なとこで何やってんだ?」
「話したところで貴様ら、下賤の者には理解できんわ!」
「ああ……。全く理解できんね”悪魔”なんぞ召いてどうするつもりだ?」
「な? な、なぜそれを……」
「ちなみに、オウン。斬ったぞ。ここに来る前に」
「お、おい! 貴様ぁ! 適当なことを言うな! オウン殿には神の加護がある! 親衛隊もついている!」
加護……だぁ? ああ、ついたな”悪魔”の。今後は安泰だな……。
「まぁ、信じなくともいいよ。加護? 怨念の間違いだろう? ついでに一緒にいた枢機卿もろとも地獄行きだ」
「な……そ、それでは……計画が……」
さっきまでの威勢は何処に?
「まぁ。貴様は手足斬って放置だ。この国に必要ならあの王様も何とかしてくれるだろう?」
「こ、殺される! お、王が、い、生かしておくわけが……」
「そりゃ残念。ふん! ”びききぃ” 「うぎゃぁーーー」 ……猿みたいに上手く切れないな……。ふん! ふん! ”ごき! びち! みき” 「ぎゃぁ――!」 動くな!」
戦斧? 大きな斧を振りかぶり、侯爵様の左の膝頭に叩きつける! これがなかなかに難しい。一撃で切れると思ったのだが……。そぎ切りみたいな……脛の肉がベロン……おぅ。
同じところを斬ろうと斧を落すも、こいつ動くし? ……動かずとも……オーノー! って? ふん! ふん!! ふん!!!
「ひっ! ひ! ひっつっっ! ぎゃぁぁーーーー!」
ほんとうに斧、使いづらいな。なかなか斬れんぞ。おおきく振りかぶって――!
そっと手が添えられ止められた?
「旦那……こっちでやろうか? そいつは俺たち仲間の仇。だが……あまりにもなぁ?」
{ああ……}
と、憐みのこもった視線を侯爵に向ける獣人たち……
うん? 確かに……。激痛でもう死にそうだな……。おいらの腕力じゃ骨は無理か……そっと斧を渡す……魔力込めればいけるだろうが、こいつごときに使うの勿体ないしなぁ。
「任せるよ。手首から先もいらないだろう。こいつは」
「た……たじけてく……死、死んじゃう……」
無理だな。
「そう言った奴を助けたか? あんたは?」
「……」
助けてりゃ、こんなに足切られた獣人が目の前に居ないわ!
「はい。斬っちゃって!」
「ひ、ひぃ……!」
”どん! どん! どおん!”
お見事! 死なないように”火球”!
「ひぐう ”じじじじゅいいうううう…” ひぐ、ひい」
”びくん、びくん、びくん……”
「はい。血止め。屑が! はい。次の方~~」
「ひぃいい~~! た、たすけて! 何でも! 何でもぉ! ……」
”どん! どん!”
……
……
……そんなこんなで日が昇る。
兵たちは皆、処理済だ。総勢70人。全員ひざ下ちょんぱだ。こんな状態の獣人らをいたぶっていた獄史の連中は手首もちょん! だ。
侯爵様も今は大人しく――生きてるだろうな? していらっしゃる。なんか紫色になっているが……ま、良かろう! 別に死んじゃっても。
ここには今、人族の医師? 二人、助手一人がおいらの補佐をしてくれている。
兵や同僚の医師に殴られ蔑まれながらも、手当や食事、汚物の処理までしてくれていたようだ。獣人達の嘆願でそのままでいられている。同僚の医師? もち生かしてあるよ? 足斬って。
実はもう一つ問題……。というか、もう一つ同様のテントがあって、そちらはまだ洗浄のみの50人。……こちらは70人いたが、終わったのは40人。……集中力が持たん。はぁ。
「父さん、無理しないで。それって奇跡の業だよ」
「そうだな。おっさん。休め。暫くは大丈夫だ。雹ここを頼む。お前も休んでおけ!」
「ト……エン兄さんは?」
「ぐるっと見回ってくる!」
「俺たちも見張りに!」
すくっと立ち上がる足を直した虎人たち。
「いや、あんたたちは、このおっさんの護衛を。ここの連中は信用しているが、万一もある。それと、力仕事もあるだろう? 食って力を貯めてくれ。この後に移動も控えているしな」
「ああ。わかった!」
「それじゃぁ、休ませてもらうわ。魔力はあるが、集中力が持たない」
「エン兄さんの魔法は?」
「それやっちゃうと父ちゃんとエン兄ちゃんが使い物にならなくなる。この先、何があるか分んないから危険だ」
「うん。わかった」
「エン~~。ルカに一報も入れといて。もう少しかかるって。充填!」
「おっけ」
すぅっと出ていくトワ君。エン……おサルのトワ君。怒るかな。と、くだらんことはいい。集中!
……
ふっと意識が戻る。どうにも瞑想中に寝てしまったようだ。
「ふぅ……。とりあえず此処から離れたい。人担いで動ける? できれば二人とか。治ったばかりでなんだけど?」
「だ、旦那ぁ。俺、自信ないからさ。……向こうのテントの力のありそうなやつ、重そうなやつ優先してくれよ……」
「俺も……」 「私も……」
「そ、それは助かる。早く治りたいだろうに……。ここの馬鹿王に爪の垢でも煎じて飲ませたいわ! ……人選、説明は任せていいか?」
「ああ! 任せてくれ」
「一応こっちでも見るよ。犯罪者は放置する予定だ」
「ん? ……鑑定か?」
「勝手に悪いとも思ったが……。途中、冒険者崩れの獣人がやりたい放題していてな。逃げてきた農民を守るとぬかして、盗賊をさせたり、女を手込めにしていたりな」
「獣人族の恥……め……」
「クソみたいなやつだな!」
「ああ。クソだ」
本当に。
「だから慎重に頼むよ」
「ああ!」
その後、大きな獣人を中心に8人選別されてきた。特に問題無さそうなので説明後、治療を開始する。
「なぁ、あんた等のガタイ。ここにいるほとんどの獣人、何で足斬ってんだ? 鉱山行きだったんだろう?」
「だからだよ旦那。ガタイが良いが鉱山は狭い。逃亡防止にもなって一石二鳥だ」
「おいおい、マジか?」
鉱山内に足切って……。据え置き? 死ぬまでって事じゃねぇか!
「ああ、旦那の思ってる通り死ぬまでな。死ぬまで垂れ流しで作業させられるのさ」
「……狂ってるな」
怒りがこみあげてくる……
「だ、旦那?」
「鉱山はこの近くに?」
「すまねぇ旦那。場所は判らねぇ。なにぶん”鉱山”だ。場所、採掘できる種類全てが秘匿されてるんだ」
「それもそうだな……。その国の生命線みたいなものだものな。当然か……クソ!」
「どうした? おっさ…親分。怖い顔して?」
3人目を治したところでトワもとい、猿が来た。豪奢なローブを着た老人を引き摺って
「いや、エン、鉱山の場所はどこかと思ってな。ん? なんだそのジジィは?」
「き、貴様! 獣人の肩をもつのかぁ! ”ぶっこぉ” びびゅうう…おぇ 「吐くな。」 うぐぶぐぶぶぶぎゅ」
”ぶしゅぅーーー!”
おぇ……
見惚れるような見事なトワ君のボディブロウ炸裂す!
たまらず、胃の内容物を放出しようとえずく老人!
その老人の顎を蹴り上げ、口を強引に閉じるトワ君……鬼畜じゃのぉ!
器官に逆流したか、鼻から偉い勢いで吐しゃ物が吹き出てきた。
……これが先ほどの一文の流れだ。
「きたねぇなぁ。で、何様なのこれ?」
「聞いて驚くぞ親分! 隣国シぺラの大臣様だそうだ。態々召喚の儀式を見学に来たんだと」
「あらあら。随分と運が悪いわなぁ。一人ということもあるまい? 従者の方々は?」
「馬車に閉じ込めてるわ」
「なら、こいつらの世話にちょうどいいなぁ」
獣人族と場所を替えた膝から下のない兵たちを見まわす。
「びぃ、ふぃい! げへぇ、ごほ? 何? 何じゃぁ!」
「うるさいな。貴殿も仲間入りだ。エン、斬れ!」
「はいよ!」
「げは、げはぁ、待て、待て! な、なぁ! 話せばわ ”ずばっ” ぎぃびィ!」
”じゅうぅううう”
ひざ下を斬り飛ばす。獣人族と同様にな。
「お前も同罪だ……」
「ひブヒぐぅ、あぶあぶあうぅーー!」
「こいつの従者共を是へ!」
「おう! ……ノリノリだなおっさん」
……。
「ひいいい! だ、大臣!」
「モ、モルン大臣! そ、そのお姿は!」
確かに違う意匠の服を着た文官、そして、衛兵。身の回りの世話をするメイド。総勢27人が集められた。隣国シペラかぁ。確か……農産国だったか?
「貴様らに命じる。ここの者どもの面倒をみてやれ。なぁ~~に放置しても一向に構わんよ。後で噂を流してやるよ。シぺラの兵はディフェンの兵を見捨てたってなぁ。とっとと大臣連れて尻に帆を立てて逃げかえったってなぁ。……レイル隊長殿?」
「!……鑑定か! 貴様!」
「さぁなぁ?」
「今ここで貴様を……」
と、身構える隊長。もちろん武装解除済み。が、こんなおっさん、どうとでもなるだろう。普段なら。
「どうぞ。どうぞ。そこから動いた瞬間、アンタと大臣が死ぬだけだ。周りみて見ろよ」
多くの獣人達が手ぐすねを引く。武器なんかなくともあっという間に、ここにいるものなんか引き裂いてしまうだろう。生贄にされる寸前、足も切られた。その目に宿る憎しみはすさまじい。
「ひうひう……やめよぉ、レイルぅ、やめ……わ、儂はし、死にとうないぃ……」
「ま、魔王が……」
「はぁ、貴様ら……自分達が何しようとしてるかわかってるの? この地で? ここの様子見て?」
「……」
歯を食いしばるも、視線を逸らすレイル。その表情を見ればわかる。彼は心良くは思っていなかったろう事も。だが、
「その顔は知ってんな……。ディフェンの悪行、悪魔召喚を使っての戦争はかなり知れている噂だ。どっちが”魔王”だか……。まぁ、その噂にシぺラも加わるか、ふふふ」
「そ、それは!」
「困るよなぁ……。まぁ自業自得だ。悪魔に与した悪魔国家。噂は貴殿の名とそこの大臣の名と共に、尾びれ、胸びれ、おまけに背びれも付けてやるよ。丁寧に拡散してやるから感謝しな」
「そんな事実……だ、だれが信じるか!」
「良いんだよ。噂話だ。真実なんてどうでもね。でも商業ギルドや大店は調べるだろうさ。”悪魔国家”だもんなぁ」
「き、 「貴様ぁ! かぁ? ほんとそれしか知らんの? ふっ――、お前が自害したとこで何ら変わらんよ。その大臣を消してもな。より信憑性が高まるってもんだ。楽しみにしとけ」 あ、ああ……」
「食料は残してある。ここの首脳陣と打ち合わせるなり勝手にしな。じゃぁな。連れて行け!」
……
……
「ふぅ。」
「旦那ぁ……まるっきり悪人だな」
「良いんだよ。てか、あんた等、ホントお人好しだな……呆れるくらいに」
「なに!」 「な、なに!」
「だって理不尽に足斬られたんだろ。その前に家族や仲間だって。しかもこのままだったら生贄や鉱山で死んでたんだぞ? アンタら。……恨めよ! 怒れよ!」
{……}
「……そうだ、村や、子供、くそーーーーーー!」
「こいつら! くそ!」
「そうだ! そうだ! おいらにドン引きする前に怒れ! 恨め!」
まぁ、そこが良いちゃ良いんだがな……。足治って飯食って気が抜けたのかもな。さぁ、治療の再開だ……。ふぅ。いつまで続くのよ、これ。
……
「ちと、街道もみてくるわ」
「ルカちゃんとこは?」
「食い物置いて説明してきた。子供たちもいい休憩になるだろうさ」
「こ、子供たち?」
「旦那?」
「ああ、先にセロぺギアで救出してきた。近くの森に隠してる」
「な! あ、ありがとう!」 「ほんとか!」
「うぉーーーーーぉおおん」
”わいわい” ”がやがや”……
「昨日の事だから。伝令は排除したが、伝わってる可能性もある。だからこそ、ここを早く立ちたい。って訳さ」
「よし! 飯食って力をためるぞ!」
{ぅ応!}
「お! 急に動きが良くなったな」
「ああ、旦那のおかげだ! これからどうやって子供を救出しようかと皆悩んでいたんだ。それが解消されたからな」
「そうか……じゃ、できるだけ治したいから次も頼む」
「わかった」
……ふぅ。
本日もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。




