表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

118/2127

孤児院引っ越し大作戦 Ⅵ

いらっしゃいませ~

 …教会の壁を飛び越え、壁裏の植え込みに神官を隠す。潜入作戦発動!

 襲われた報復という訳じゃないけど、襲撃失敗とみて、人質の子に余計なことをされてもつまらんと当初の予定通り、セツナっちと侵入した。

 スパイっ子改め、ナティちゃんとの約束もある。助ける…と。

 今は、中庭に居る。さてと…

 

 「大体地下だよね…こういう場合?」

 「あ!丁度いいのがいるわ…」

 セツナっちの目線の先には人族の女性。やけに肉感的なシスターだな。そそられる…

 「おじさま、好み?ああいうの。」

 「い、今はそんな 「はいはい。動揺しないの。大方お偉いさんの相手でもしてたんでしょう。お盛んなことで…」 …しょっく!」…

 

 「動くな…死にたいなら構わないが…」

 喉に短剣を当てる。コクコク。

 うう~ん…いい匂い。

 「おい…おっさん…。」

 セツナっちに尻を小突かれる…解かってまっさ。

 「ここに獣人の子供がいるだろ?案内しろ。言うことを聞かないと殺す。大声をあげても殺す。嘘をついても殺す。目的が果たされれば解放しよう。解ったか?」

 コクコク。

 「案内を頼む。」…


 …?こんなとこに?そこは偉い人物に与えられるような豪華な部屋だ。逆に探索対象になりにくい…が…

  『やめて下さ…い』

 …小さな声がドア越しに聞こえた。そういうことか…下種が。

 「セツナっち行く?」

 「ええ。行ってくるわ」

 ドアの隙間を抜けるように入っていく…”きぃ”

 ”どん!””どさ”

 …やっちまったか。部屋の中に肥え太った全裸の肉塊が…傍らに小さい猫娘を抱きしめるセツナっち。

 「こいつの役職は?」

  「こ、この教会の神父様です…」

 「ほうほう」

 「下種ね。こんなのばかりなの?」

 うん?セツナっち?トコトコと肉塊の傍らに膝を突く。タオルを手にし、おもむろに…

 「…あ」

 「まったく。こんなのがあるからよ。…”ぶっ” 「へぎぃ!」 よかったわね。粗末なのが長くなって。」

 こ、これが…竿抜き?もう起たなくなるという…ホントに収納されてんだな…倍以上長くなったぞ。

 「い。いだ、なんだ、いだい、 「あら、寝てればいいものの…ふん!」 ”ぶぶちゅ” ひ、ひくぅう」

 で去勢かね…ナム。泡をふいいて再び夢の中に。その夢は恐らく悪夢だろうな。

 

 「次行くわよ次!どしたの?」

 「玉ヒュンで…」

 先ほどから、こんなのばかり…ああ…腰が引ける…

 「まったく。そこの。次!」

 コクコク…こんどは孤児院?

 「ここが孤児院?人がいた気配がない…。」

 「ここ本当に孤児院?」

  「…はい。」

 「人族の孤児がいたと思ったけど…」

  「いえ…ここには…神父様達の…」

 「神父の部屋にいるってことね。貴女みたいに…」

  「…はい…」

 「…胸くそだな!」

 「まぁ、よくある話よ。聖職者に。」

 「そうなの?」

 「美少年少女集めて…って良く聞くでしょうに?まぁいいわ。で?」

  「…こっちです。」

 入ってすぐの階段をおりる…異臭?

 「生きてんだろうなァ?」

  「…ひぃ」

 暗い異臭の漂う地下道を進む…

 

 「ここか…」

 ここまでくる間、扉は無かった。”ぎいいぃぃ”むぁっと鼻を突く糞尿の悪臭。

 「ライト!」

 …部屋の中にはガリガリに痩せた獣人の子供が10人。そのうち2人は動かない…

 「何で…」

 「どうなってんのよ…本当に、ここは?この世界は…よくもこんなことが出来るわね…さっきの豚、殺して来ればよかったわ。おじさま?」

  {ひい}

 おびえる獣人の子供たち…あ、ああ…

 「何で…」

 こんな酷い…

 「大丈夫じゃないね…ごめんね、ごめんね。今、助けるから… 「…いや」 「ママ…」 ごめんね…”ずびぃ”」

 駄目だ…

 「ん…洗浄!洗浄!洗浄!せんじよぉーー!」

 「おじさま!もう良いよ…」

 「ふう、ふう。すまない…この子は?」

 鼓動が…胸が張り裂けそうだ…

 「まだ生きてるわ。二人とも…」

 「セツナっち!回復魔法は!」

 「…ごめん…使えないの…昔は使えたんだけど…」

 「ここに使える人は?」

  「…いません…」

 「はぁ?教会だろうに?」

  「此処は…売春宿と…変わりませ…ん。」

 んな!

 「…なんてこった。抱いていくか…」

  「おじちゃん、お姉ちゃん助かるの…」

 「ああ、みんな痛いところは無いかい?」

  「お、おじさん…この子…」

 手が明後日の方を向いて腫れあがっている…

  「おじさん…足…」

 その子の左足がひざ下が無い…

 「ど、どうしたんだい?こ…こんな大けが…」

  「ここの大人が…おじさんも仲間?」

 仲間…そう、一応は人族だ…異世界…詭弁だわなぁ…

 ”ぐち”!後ろから肩口に食いつかれる

  「がるう…妹をかえせ!」

 「あ…ああ。」

 目の前の集団からも唸り声が聞こえる…

 「ごめんなぁ~」

 「おじさま!しっかりして。みんな、私たちはナディ?だっけ?彼女に頼まれて来たの!少しの間で良いから…信じて。お願い。」

 「そうよ、私も助けてもらったの。悪い人族倒してくれたの。」

 先ほど助けた猫人族子も援護してくれる…が…ひどい…

  {…}

 後ろから襲い掛かった少年がおいらを解放してくれた…

  「おじさん…ごめん…」

 と…謝るのはこっちの方だろう…憎かろう…

 「ごめんよぉ~。ごめんよ~」

 その少年を抱きしめる。

 「ごめんよ。」

 …はぁ。

 おいら、本当に役に立たんなぁ。闘えないし、魔法も初級のみ…神よせめて癒せる力をください!傷ついた身体も、心も…。

 お願いです…

 そうだ!視力を捧げます。こんなものしか…ですので…。

 収納からナイフを出して左目に突き立てる

 ”ずじくぅ”

 何の躊躇もなく。眼球に侵入する切先。

 「な!何やってるの!おじさま!しっかりしてよ!」

 「はなして、セツナっち。いいんだ。」

 スゥっと離れるセツナっち

 「あ、あ…あれ?…力が…抜ける?な、なんで???」

 おいらの魔力操作で魔力が抜けたのか、いや、神の御力か。へたり込むセツナっち。

 「神よ!我が神よ!観ておられるのでしょう!我が願い…聞き届けたまえ…我が視力の代価に力を…」

 心が冷えている?全然痛くない…。

 次は右目に”すちぃ”ナイフを突き入れる…。

 ああ…これが…”見えない”ってことか…脳が記憶とすり合わせてるのか…セツナっちの声と顔が重なり…見える気がする。不思議な感覚だ。

 「な、なんて…ことを…ミツルさん!ミツルさん!!」

 彼女の叫びを聞きながら…膝を突き全身を投げ出し…すべてを込めて祈る…神の気が満ちてゆく…ああ…感じますぞ!

  

  <…まったく、無茶して…ご都合主義は無いんだよ…ここには。君がこの世界を生きていく様を覗くのが唯一の楽しみなのに…。

 目が見えないでどうすんのよ?予定に無いよ…まったく。引きこもり生活なんて見ててつまらんし。

 はぁ。もう面倒だし、この星…割っちゃおうかな…>

 

 はいぃ? 

 「そ、それは、困ります!困りますって!」

 力が入ったか、”ぶぴぴぃ”眼窩から血が噴き出るのが解る。痛くないのにわかるんだなぁ?

  

  <それだけの事なんだよ?神の娯楽を奪うって。君にもいずれ判るよ。>

 

 おいらは娯楽か!

  

  <そうだよ?何か問題でも?>

 

 「いえ…神のみぞ知る…ですね?」

  

  <…くす。まぁ、それでいいや。解ったよ。癒しの力あげよう。目玉は…”ごそごそ”これでいいかぁ。>

 

 …体が温かい…脳に直接作法…回復魔法のプロセス?が直に書き込まれていく…

 

 「あ、ありがとう”ぶちゅちゅ”ごひぐううういだだだ…痛い!痛い!いた!神様ぁ!い、痛い!痛いですってぇ!」

 

 眼窩にヌルリと何かが挿れられる…あ、熱い!痛い!熱い!痛い!繊維?が結びつく?いてぇ!!!

  

  <我慢しろ!それくらい。で、新たな目ん玉ね。ったく、ナイフさすより痛くないだろうに…これっきりだよ…次は…消しちゃうからね。いいね?じゃ~ね!>


 だんだんと周りが温かく、明るくなってくる…焦点が像を結び視力が戻る…

 「ありがとうございます…」

 再び五体投地を行う…なんだかんだ言って本当に優しい…ご都合主義万歳!神様ありがとうございます!

 

 「お、おじさま…」

 「心配かけたね…ありゃ?」

 視界が…?なんだあれ?みんなの頭の上にバーがRPGの体力バーみたいだな?黄色?赤?緑?良くわからん。この数字は…?

  

  <あ、色は友好度。数字はミッツ1に対しての強さね、セツナっちみてみ?>

 

 「290?」

  

  <ミツルおじさまの290倍強いってこと…ぷぷぷ。ぷくす、弱ぁあ…おっけ~?>

 

 「……おっけ」

 泣いていいですか!神よぉ!

  

  <ぷぷぷ…他にもマーキングや、照準…サーチライトの目なんかの機能もある!今は使えないけどねぇさぁ!バージョンアップを待て!で左目は鑑定がついてるよ!コメント楽しみに!補足終了!質問は?>

 

 「はい!魔眼ってやつですか?」

  

  <前任者の手下のだから…神眼?まぁ、なんでもいいや。おっけー?>


 …いいのか?

 「…おっけー」

  

  <じゃ!>


 …今度こそ行かれたようだ…神気が霧散する。

 

 「お、おじさま?」

 「なんでもないよ。さぁ治療をしようか…」

 先ずは練習を兼ねて…いきなり足の”再生”とか”頭”は…ねぇ。

 「君から診よう。う?うおお?」

 左目に魔力が集まる?オート?骨格標本、保健体育?くらいの知識しかないが…回復魔法が再構築されていく…

 「”修復”」

 骨折場所が…”ごっきゅごきばき”

 「…痛く…ない?」

 異音と共にびくんびくんしているのだが…

  「…う…ん全然…でも、気持ち悪い…」…げ

 「うん…キモイね…」

 ぐるんぐるん勝手に踊るように元の場所に収まっていく手…

 「き、君、だ、大丈夫?」

  「おじさんがやってるんだよね?これ」

 ぐいん”こきり”

 「…一応。終わったのか?動く?」

  「うん。もう痛くない。…ありがとう。おじさん。」

 …ふぅ。

 

 「次は君ね。おいで」

 比較的軽い…といっても骨折だが…そういった怪我から直していく。

 

 さて…本命…。足を切られた子だ。斬った奴には同じ目に…おっと、集中集中。

 「”再生”」

 ”ばしゅ!”傷口のかさぶたが飛び散り血が噴き出す。が直ぐ、止まり…うぁ…慌てて”収納”から布をだして子供たちの視線を遮る。

  「お、おじさん…な、何か…へん?くすぐったい?」

 「…このまま少し…動かないでね…」

 だってねぇ…布の隙間から覗く…おいらの魔法だしぃ…集中せんと…

 ”びゅるんびゅりん””びきぴきこきり”白い骨が伸びてきて…血管が蛇のように…筋繊維?ミミズみたいだ…おぅぇ…少々…かなり刺激が強めだわ…

  「お、おじさん。大丈夫?顔…白いよ?」

 「う、うん。痛くない?」

  「お腹減って痛い。…あ、…痛!…ちょ、っと痛い…」

 「終わったら何か出すねから…もうちょい。がんばって!」

  「うん」…

 

 「どう?歩ける?」

 少々細いけど、新しい足だ。直ぐに慣れるさ。

  「おじさん!すげ!すげぇ!生えた!俺の足!」

 「触るよ…ここ?感じる?」

  「うんわかるよ!」

 良かった…

 

 「みんな、ご飯出すから…ゆっくりね。」

 保存食、屋台飯をバンバン出していく。

  「た、たべていいの」「美味しそう…」”ぐぅうう…”

 「ゆっくりだよ。どうぞ。」

 …口に忙しく運ぶ子供たちを見守る。大丈夫そうだな。

 

 「さぁ、本番だ。魔力回復」

 !ざ…座禅を組めた!前は腹と尻の肉が邪魔で…感動…って、それどこじゃないな!

 「ふぅうう。”解析”…」

 寝込んだ熊耳の女の子の額に手を置く…ん…あれれ?

 「へ?…空腹?だけ?…大物だなこの子。…ご飯だよ~」

 耳元でささやいてやる…

 ”がばり”

  「この臭い夢じゃなかった!食べていいの?」

 「…ゆっくりだよ…」

 セツナっちも驚いてる。

 「と、冬眠?」

 「かもね?」

 熊耳っ子を撫でる。

 

 「気を取り直して…」

 もう一人の子、犬系?の子の額に手を置く

 「”解析”…”修復””回復”…何か…”再生”」…

 「ふぅ。どうかな…」

 「落ち着いたみたいね。凄い魔法ね…トワのより、的確な治療ね。」

 「トワ君のはある意味”力業”だからね。ひと段落したら帰ろうか。」

 「まさか…このまま?」

 「…腹に据えかねてはいるが…子供たち優先で行こうよ。そうだ、他にもいるかだけ確認しよう」

 「…了解…ねえ?無限収納ってこの教会はいるかしら?」

 「…まさか…」

 「ええ、天罰で消しちゃえ!ってね。」

 「どうかな?人は元気ならはじかれると思うけど…入ったら死んじゃうぞ?」

 「そうなの?」

 「実験した。Gで。セツナっちのは?」

 「一応生きてるのは入らないはずだけど…人族の孤児もいるし…諦めるか…」

 …あとで子供たちに聞いたところ、他にはいないとの事だった。

 「さぁ、此処から出るよ。ちゃんとついてくるんだよ。おじさんの家についたら一杯食べて、寝られるからね。」

 「怪しい人攫いね…まるで。」

 「…セツナっち…今言っていいことと、悪いことがある。」

 子供たちドン引きだぞ!おい!

 「あら、失礼しました。」

 

 そのまま孤児院側から脱出。誰にも会うことなく出られた。入り口に捕虜だった神職の男を放置して侵入は終了。あとはお家にお帰りだ。

 は、ははは…さっき食事出して失敗だったか…。うつらうつらしてる…そりゃ、腹膨らめば眠くなるわな。それに緊張してただろう。追手が出るかもわからんし、ここは急ぎ帰らないと…

 「もう少しだからがんばろう!」

 「おじさま一人にする訳には行かないか…慰謝料回収は今度ね…」

 弱くてすみません!

 「さぁ、大きい子は小さい子をみてあげて。悪い教会のおじさんが追いかけてくるかもしれない。急ごう!」

  {うん!}

 「…ところで…君はどうして?」

 解放したはずの人族の女性。敵対心は0だな。むしろ好意?信仰心?

  「神さま…」?

 「おいらが?とんでもない。」

  「ご自身の目を傷つけての御業の数々、奇跡を目の当たりにしました…神よ…」

 「おいらを拝んでも何にもならんぞ?解放したんだ何処にでもいくがいい。」

  「わ、私は教会の外に出たこと無いです…何でもします。お連れください…」

 「うちは、獣人が多い。それでも?」

  「?とくには?なにか?」

 「獣人は悪いものって教えられただろう?」

  「私たちもこの子たちと同じ扱いを受けていました…特に思うことはありません。」

 「…どうしよう?」

 「あなた、今の教義を捨てられる?家に来たら街には出られないわよ?」

  「教義ですか…特になにも。ここに神がおわすのに…どうして?。街はいままでも行ったこと無いです…」

 神じゃないって。

 「わかったわ。仕事をあげるわ。孤児院で働きなさい。違う宗派だけど、おじさまが贔屓にしてるようだから問題ないわね?裏切ったら追い出すから。」

  「解りました!お願いします!」

 「名は?」

  「ステラです。」

 「わかった。ステラよろしくな。」

  「はい!神様!」

 「…神様じゃなくてミッツだ。」

  「…はい…ミッツ様」

 …十人の孤児ぷらす。むちむちシスターが加わった。セツナっちのゴミを見るような目が…。乳ばかり見ていません!お尻も平等…ヒィ!

本日もお付き合いありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ