孤児院引っ越し大作戦 Ⅲ
いらっしゃいませ~本日2話目。よろしければ、そちらもお寄りください。
「さぁ、今日も沢山遊んだかい?いっぱい食べて、明日も元気に遊ぼう。勉強もね。」
さぁ。戦闘開始だな。子供達はずらりと並ぶ料理に釘付けだ。
「父ちゃん!鶏のとこに卵、転がってたけど…採るの?」
「おお。いっぱいあったか?」
「わかんない。みたのは2個」
「じゃ、明日拾って食おう!」
{おー!}
「じゃぁ、いただきます!」
{いただきます}
この場には子供達とは別のテーブルにゲスト。ロラン氏とスルガ氏。一緒だと食いっぱぐれるからな。
「さぁ、ロランさんも遠慮なく。肉系はすぐなくなるからお代わりはお早めに。こら、ファム。沢山あるから、そんなにがめるな。」
「父ちゃん美味しいよこれ」
撫でり。
「だね。ビルック兄ちゃんに感謝だな!」
「うん!」
「こ、これは…美味い…な。パン一つとっても…」
「だろう。貴族街の食堂でもこのレヴェルは無い…それにこのワイン。最高だ。」
「ああ…このパン…帰りに分けてもらえないだろうか…母に食べさせてあげたい…」
「それは光栄だね。ビルック。」
「なに、父さん。」
「パンはまだあるかい?」
「パンならまだまだありますよ。いつも必要以上に作ってるから。大丈夫だよ。」
「こ、この少年が?」
「獣人では駄目かな?」
「いやそんなことはどうでもいい…この素晴らしい食事を、こんな…少年が作ってるなんて…この味で、この量…信じられん…」
「将来、自分の店を持てるように練習してるんだよ。ありがとう。ビルック。袋にいれて準備しておいて。ああ、リンゴのジャムあったろあれも入れてあげて。自信作だろ?」
「うん。用意しておくよ。」
「…ありがとう。」
「これも、獣人排斥の悪い面なんだよ?」「?」
「豚耳人族は、人族の何倍も何十倍も、鼻や舌が良いんだ…体力だって、人族に比べればある。美味しいもの作るにこれほど適した人種はあるかな?」
「ああ。なるほど…」
「まぁ、うちのビルックは料理バカだからなぁー。スパイスが増えればまた進化するだろうさ」
おっと!おいらの肉を強奪しに来たファムの首根っこをを掴む…
「ばれたぁ~」
「ほら、こんなにちっこいのでもこの動き。人族は勝てないだろうね。人族は多い。増えるのも速い。恐れるのは解る。群れるのはいい。だが、抑圧するのはどうかな…」
お肉を半分あげて解放する。
「さぁ、食事を、こらファム父ちゃんのがなくなる!」
わいわい賑やかな食事だ。ロラン氏とは良い関係を築きたいものだ。王都ギルド職員なら情報も多いだろう。さぁ。引っ越し&救出だ!
食後にスルガさん達を案内がてら町区へ。
「…旦那…これは…」
「町区」
「いやそういう…」
「ここね。本当は居住区に入れたかったんだけど…一軒だけじゃ寂しいでしょ。」
「ここ、使っていいのか。」
「ええ。どうぞ。布団ここに置いておきますね。必要なものあったら言ってください。」
「本当に良いのですか?ミッツさん?」
「旦那はこの後?」
「孤児院予定地まで行くよ。リリーさんの様子みたいし。」
「ついていっても?」
「どぞ。アツミ君は?」「…」
「帰ってこい。アツミ。」
「あ!部屋…早い者勝ち!荷物も運びこまねば!」
そう言って家の中にダッシュ!…
「…ははは。年相応?スルガさん行かないで良いの?」
「ははは、好きにさせるさ。俺は寝床だけありゃ良いしな。それに…息子みたいなもんだ。」
そういえば、アツミ君も孤児院出だったな。
「そか。」…
「先生、どうです?」
「やぁ、順調だよ。あれまスルガ隊長?こんばんは。そうだねぇ後は荷物の整理ぐらいさね。」
「食料とかは足りています?葉物、果物置いてきますね~何かあったら言ってくださいね」
「いつもすまないねぇ。」
よっしゃ、次。
「ブラウンさんどう?」
「ああ、旦那!もう、素晴らしいの一言ですな!”ぎゅむ”」
ポージング…知らんよ…
「き、きれてるぅーで…」”ぎゅむむぅ”
「…おい、ブラウン?」
”ばこん!”
「あなた!ちゃんと聞いてくださいな!ミッツさん、すいません…問題ないです。」
「…葉物、果物置いていきますね。お裾分けです~」
「…旦那もマメだね…。」
「リリーさん、いかがですかぁ。」
「ああ!ミッツ様!ありがとうございます!素晴らしいです。まだ準備は調いませんが…みんなでしようと思います。家族ですからね。」
「そうですね。今晩遅くに到着する予定でいます。その時にお腹も減るでしょう。こちらで夜食準備してますので。寝るところはお願いしますね。あ!夕食…」
「なにから、なにまで。ありがとうございます。夕食は先生のところでご馳走になりました。」
「ごめんね。あ、こちらは元南門の隊長さん。」
「スルガです。よろしく。」
「リリーです。よろしくお願いします。」
「孤児の皆がくればここも賑やかになるね。」
「ええ!楽しみです!」
「旦那は町長さん?」
「まさか…集合住宅の大家さん?そんなんで。そうそう。住人で”決まり事”作ってよ。先生とスルガさんと、シスターとブラウンさんで。たたき台みたいな?あとでここの”法”にするように。」
「旦那たちで決めればいいのでは?」
「それは違うと思うんだよ…住んでる人の自治にも期待したいし。セツナっちに任せたら、罪人皆、首ちょんぱだよ。」
「…検討するわ。」
「一応、先生にも言ってあるから。この国の法を参考にしてもいいよ。アツミ君なら詳しそうだしね。それじゃぁ、行ってくるわ」
さぁ~て楽しいセツナっちとデートだ…↓
「なにかご不満でも、おじさま?」
「ん?どして?」
ジーーーっと。おいらの顔見ても…ぽっ♡
「気のせいならいいわ。」
「なんのこちゃ。」
二人並んで大通りを歩いてる。まさに親子だね。
「へっへっへ。こんな時間に子供連れて…子供に傷つけ”ぶぉきききぃ”へ?え?えええ!」
ぐるり、ゴキリと、人形の腕を回すかのように、”ずぼぉ”と肩から引っこ抜いてしまった…
「汚い手を近づけないでくださる。思わず、捥いでしまったわ。」
”ぶぶ!くぶぶゆぅうーーー”
右肩の辺りから血が噴き出す…
「早く治療しないと死んじゃうわよ?」
「い、いでぇえええーーてえーーー。」
「まったく。」
「全くだな…」
マジ勘弁だ。ほんとに”捥ぐ”のな!聞いてはいたけど…まぁ、ナイフ持ってたしいいか。
「あら?動揺してないのね…つまんない。」
「ああ、もう日常になりつつある。食料を得るのにも、金を得るのにも、命を守るのにも…命のやり取りが付きものだもんな。」
「良い心がけね。長生きしてね。おじさま」
「ありがと。善処するよ。この道は結構人いるな…」
「ええ。雹のほうの道で帰る方がいいかもね。護衛もいるし大丈夫でしょ。」
馬車用に馬2頭、雹とアツミ君で移動中。スルガさんが来ると思ったら、アツミ君だった。
なんでも、乗馬や御者の腕前が凄いのだそうだ。遠回りだが暗い道を行ってもらっていた。目立つし、現地で落ち合う約束だ。
夜道の操馬に慣れてない雹には良い指南役になってくれるだろう。
本日もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。




