表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/2127

木工もドワーフか!さ、さすがだ…(トワ氏談) そうか?

いらっしゃいませ~

 …食堂で飯を沢山食べて、大工組合に。

 「こんにちは。大人数でも大丈夫?」

  「いらっしゃいませ。ええ。こちらへ。」

 「鶏舎や厩が得意な人、貴族の”移動式家屋”の得意な人に、話を聞いて欲しいのですが…」

  「…う~ん…移動馬車と?鶏舎?…貴族?ギムリさん、いる~?」

 そりゃ、悩むよなぁ。相反するようなものだわ。良く考えると。

  『おう!なんだぁ!』

 奥の作業場らしきところから、ずんぐりむっくり…。

 まだ若い感じのトワ君の英雄が姿を見せる!

 「ど、ドワーフ?」

 発作が…君は…

  「…兄ちゃん、ドワーフじゃ駄目かい?」

 じろり。

 「いえいえ。まったく問題ありません。この子、特にドワーフ好きで…グローヴィンさんにも可愛がられてますよ。」

  「あの親方に?そうか!そうか!じゃ、こっちにきてくれ!」

 さすが、鍛冶師ギルドの長!一気にギムリさんの警戒が解けたぞ。

 彼に案内され、作業場のわきの打ち合わせスペースに移動。

 作業場には、人族、獣人族、ドワーフ。多くの人種の姿が見られる。職人同士というのもあるのか、良い職場のようだ。こういう環境を作りたいものだわ。

 

 「それで、どんな注文だい?旦那ぁ?」

 ”どん”

 うん?そりゃ、酒樽じゃん。まだ出すなよ!アホ!

 「まずは、出会いを祝して乾杯だ!」

  「「「!」」」

 あれ?ふえた?分身の術か?ギムリさんの背後にいつの間にかに樽人間ドワーフが二人!もしかして中の人?

  

 「お若いの…今は…仕事中だ…」

 お!仕事中?断るか?

  「が、手が空いてるでのぉ!乾杯だ!」

 だよなぁ…

  「「「「おう!」」」

 何処からかさらに2人のドワーフが合流、同じチームか、人族も混ざる。もちろん酒盛りになった。

 ”がきびきき””ぎぎぎぃ”

  「久し振りに火鳥くったよ。ありがとな兄ちゃん」

 ここじゃ、炙れないからソーセージは無いか。

  「おっちゃん、これうまいな!」

  「うぅん?坊主は酒はまだ早いぞ。」

  「うんジュースだよ。」

 雹や、ニコたちも思い思いに楽しんでるようだ。

  「ミッツさんいつもこうなんですか?」

 と、なみなみと注がれたジョッキを片手に不思議そうなアツミ君。

 「ああ。ドワーフ族が居るとなぁ。トワ君が暴走する。まぁ、趣味みたいなものと思ってくれ。アツミ君付き合って無理して飲むことないぞ。奴らは底なしだ。」

  「はぁあ?」

 一回り。杯が回ったところで、

 

 「で、旦那どんなのを造るんだ?」

 「その前に、大工にもドワーフがいるんですね?」

  「ワシらは、手先は器用だからな。内装に彫刻したり、特殊なもの作ったりってのは得意だ。貴族って言葉が出たからワシに振ったんだろ。」

 「なるほど。私が欲しいのは、”貴族の移動家屋”の構造の”鶏舎”です。」

  「…なんじゃそりゃ?」

 「草やら、虫がいなくなったら…移動とか?普段は据え置いて必要な時に車輪を嵌めて移動。任意の場所に据え付けって感じです。大きさは、大型の荷馬車2台分くらいの長さで。」

  「…けったいな注文じゃな。」

  「なんだ?お鶏様の移動宿かぁ?」

 もう一人のドワーフが言う。ぷぷぷ。言い得て妙だわ…

 「…内装は鶏舎…敷き藁だから平らか?ふむ、空気の通りも考えないといかんな。いや、いっそのことスノコもいいか?」

 紙を出してかきかき。

 「床面と壁のこの辺りに敷き藁を排出できる隙間を…」

  「ふむ、此処は、こうして…」

 「いいですね…塗装は…」

 …宴会のさなか設計と5台の鶏舎、車輪一台分を発注して組合をでる。流石プロ。話が速いわ。

 二週間くらいで出来るそうだ…早いな。

 

 …。


 「さて、次はどこに行こうか。って、アツミ君平気?なんなら、戻ってもいいよ。」

  「ふぅ。少々飲みすぎました。皆さんお強いですねぇ。」

 「まぁ、いつものことだし。なぁ?おっさん。」

 お主のせいだ!

  「父さん、孤児院はいかない?」

 とは、雹だ。

 「待たせたな、やっと受け入れられそうだ。」

  「そう…」

 待ったもんなぁ。時間があれば、世話しに行ってることも知ってるよ。父ちゃんは。

 「今から寄って、打ち合わせして今晩良ければやっちゃおうか?」

  「うん。」

  「やっちゃう?ミッツさん?何事でしょうか?」

 この中で事情の知らないのはアツミ君だけだものなぁ。そりゃ、不穏にも聞こえるわな。

 「孤児院大脱出計画!」

  「な、なんです?それ。」

 「まぁ、追々ね。」

 孤児院に向かって歩き出す。

  

 「人、少ないね~父ちゃん。」

 ニコの言う通り、通りはガラガラ。商店も店じまいしてるところも。食堂なんかは、『夜、○○の鐘から営業』なんて看板も出ている。

 「領主様の独演を観に行ったんだろ?良い娯楽だな。」

  「この行いが、吉と出るか凶と出るか…ミッツさんの率直な考えが聞きたいですね。」

 「そんなに変わらんだろう。子息は何歳?…そう、25~6歳?領主に成れれば良いね。普通なら廃爵、取り潰しだろうさ、王の手腕も試されるね。このまま領主にするようなら…駄目だね。よっぽどの人物なら別だけど。」

  「厳しいですね。」

 「25まで街の運営、宿臣?を普通に思ってるようなら駄目だな。そう治らないさ。酷なようだが、領主自身が建て直さないとね。

 蔓延ってた宿臣も消え、折角、真っ新になるんだ、此処は新しい首脳部だろう?普通は。これ以上良い条件はないさ。領地無しの”有能”な貴族だって沢山いるんだろう?ちゃんとした前線の街づくりができる人物の任命だね。…後は…そうだな、王家の…次代の派閥争い?そういうのある?」

  「ええ、今時点で王子が3人いますからね。」

 「ここの家は何処派か知らんけど…王の腹の内の候補の派閥の駒にする可能性もあるね。」

  「う~ん。無事継承出来たら…王派?」

 「さぁどうだろうねぇ。」


 …。


  ”こんこん”

 孤児院に到着。

 「こんにちは」

  「あら、いらっしゃい。ミッツさん!どうぞ!」

  「おっちゃんだ!」「トワ兄~」

 うん?知らない子もちらほら。驚いたのか部屋の隅に。獣人族の子供だけではなく人族の子も。

 「また増えましたね…」

  「ええ…今でも…それと…このご夫婦と女性も孤児院の不当解雇で…ここに相談にきました。」

 そこには猫獣人40~50くらいの夫婦と、熊耳のお嬢さん、うさ耳のお嬢さん、タレ耳のお嬢さんがいた。

 「獣人の職員も。ですか?」

  「ええ…解雇した孤児院も苦渋の選択でしょう…。うちは助かっていますが…」

 「なるほど…」

  「お世話になっていて…こんなことを言うのも何ですが…。出来ましたら、うちの職員にしたいと考えています…」

 何となく…解かるんだよなぁ…一応”鑑定”…

 「彼らに、例の件は話してます?」

  「いいえ…ミッツ様の許可が出てからと…私とリリーだけです。」

 「解りました。…プラック夫妻?御夫婦じゃないですよね?此処からご退場願えますか?内密の話がありますので。」

  「わ、私どもにも、お慈悲を。ここを追い出されたら…」

  「なぜでしょう。私どもに問題でも…」

 白々しい…

 「いいですそういうの…。解ってます。動くな!ここからは力づくになりますよ。追い出されても隣の大きな教会で働けるのでしょう?」

 ざざっ!と、トワ君、雹が前に出る。もちろん、武器に手を掛けて。真火は、おいらと、アツミ君の護衛に付くようだ。

  「み?ミッツ様?…ま、まさか?」

 信じていたのだろう。このシスターにこんな顔をさせるだけで”罪”だわな…。

 「はぁ?あなた達、そんなに暇なんですか?隣の芝生は青いとは言いますが…。節操のない。バカでしょ。この場を…虐げられた同族の孤児を見ても何も感じないとは。」

  「…な、何のことでしょう?」

 「で、何を調べていたので?大口寄付者?この教会の資産?」

  「…」

 「さぁ、今なら許しますよ。…ったく、くだらない。出ていきなさい。自分たちが何をしてるのか。良く考えることだね。」

  「…」

  「…ふぅ。いくよ。ほら。上手く行ったと思ってたんだけどねぇ。旦那どこでお気付きに?」

 と、猫人族の女が自供を始める。

 「さてね。で、調べ物は?何かわかったかい?」

  「全然さね。そこの豹人の子が何度か来たぐらいで。」

 「彼が一番の出資者だろうさ。小遣い出して、兄弟たちにお土産買って、遊んであげてるんだ。…これ以上無いだろうに。孤児院て、そのようなものだろ?そんな子の小遣いも欲しいのかね?ゼクス様は?」

  「…まったくだよ。浅ましいこった。」

  「おい!」

  「そうだろうさ。良くなったっていったって毛の生えた程度だろうに。食事だって質素なものさ。お偉いさんの一食分で何人の子が救われることやら。」

  「お、おい!…行くぞ。」

  「はいはい。お騒がせだね。」


 …。

 

 「すみません…」

 「なにも、謝ること無いですよ。シスター。まさか!ですもの。子供たちの中に居なければいいのですが…」

  「ミッツさん。教会の話は聞いてましたが…。なんて浅ましいんでしょうか、スパイまで入れます?普通!特殊技能持ちの人件費2人分って…アホですか?」

 アツミ君も呆れ顔…いや、怒りだな。

 「アホですね。完全に。いったい何がしたいのやら…。ちと子どもの様子観てくるわ。万が一隷属されてたら…可哀そうだしな。」 

 「俺もいくか。で、おっさん見分けるコツってあるの?」

 「う~ん何となく?隷属なら鑑定で分かると思うけど。さっきのは敵認定みたいな?人生経験か!」

 「ふ~ん、おれも試してみるか?」

 流すな!若造!


 「どれどれ…”鑑定”…クソ!お~い、雹、真火!」

 トワ君の端正な顔が歪む。

 クソ!が!早速かい!予感が的中してしまったようだ。

 「この子とこの子とこの子…違う部屋でお菓子でも食べさせておいて。」

  「…わかった。トワ兄」

 「で、おっさんの方はどうよ?」

 犬耳っ子…成人ギリギリなんだろうな。

 「うん。お嬢ちゃんこっちきてくれるかな?」”ビクッ”

  「…」

 「大丈夫だよ。泣かないでいいよ。こっちおいで。ちょい、部屋かりますよ~」

  「わ、私も立ち会います。あまり、ひ、酷いことは…」

 「ええ。酷いことなんかしませんよ。シスターもご一緒に。」

 

 「君の名前は?」

  「…ナティ」

 「そう。君はどうしたい?」

  「…」

 震えちゃって…

  「ミッツさん?」

 「ここに居たいか…もとの場所に帰るか…」

  「…」

 はぁ…やるせないなぁ…さっきの大人の獣人族のように己の”意志”って事もありえる…。

 「…何も無し…ね…厳しいようだが君のいる場所はない。ここの子供たちに危険が及ぶ可能性があるからね。」

  「…はい。」

 ふぅ…。

  「ミッツ様…この子にも何か…何か、事情が…ねぇ?」

 解ります…でも、皆を危険に遭わせるわけには…。

  「た、助けて…」

 ん?

  「助けてください…妹を…助けて…お願い。」

 「…」

  「お願いしま…す…おじ…さん…私も助けてよ…妹を…」

 おいおいマジかよ。人質とって…子供使ってまで為る事かよ。撫でり。

 「よし!わかった!おいで。もう泣かないで。他にもいるの?」

 そっと抱き寄せる…可哀そうに…屑の”大人”達のために…。

  「…5人…妹以外に…ここに来たのは、お金のある所を探す…お金持ちの人を探す…子供を…」

 「ほんとに?ばかじゃん。そんなこと。」

  「連れ出す…」

 「今なんて?」

  「子供を…連れてこいと…」

 「はぁ?何のために?」

  「ひ!」

 っと、この子が悪いわけじゃない…

  「わ、解からないよぉ…」撫でり

 「そうか。よしよし。ごめんね。シスター、ここはお願い。あっちの様子を見てくるね。」

  「はい…もう、大丈夫よ…ナティ…。」


 「こっちはどうかな?」

 「おっさん待ってた!魔力くれ!さっさと解呪するぞ!」

 「おう!」

 「さぁ、おいで。今、呪いを解いてあげる。解呪!」

 ぴっかぁ!

 「もう、だいじょうぶだよ。皆のところいってドーナッツ…燻製食おう!」

  「「「わーい!」」

 「次、頼むトワ君」

 「さっきの子か?」

 「ああ」

 …。

本日もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ