木工もドワーフか!さ、さすがだ…(トワ氏談) そうか?
いらっしゃいませ~
…食堂で飯を沢山食べて、大工組合に。
「こんにちは。大人数でも大丈夫?」
「いらっしゃいませ。ええ。こちらへ。」
「鶏舎や厩が得意な人、貴族の”移動式家屋”の得意な人に、話を聞いて欲しいのですが…」
「…う~ん…移動馬車と?鶏舎?…貴族?ギムリさん、いる~?」
そりゃ、悩むよなぁ。相反するようなものだわ。良く考えると。
『おう!なんだぁ!』
奥の作業場らしきところから、ずんぐりむっくり…。
まだ若い感じのトワ君の英雄が姿を見せる!
「ど、ドワーフ?」
発作が…君は…
「…兄ちゃん、ドワーフじゃ駄目かい?」
じろり。
「いえいえ。まったく問題ありません。この子、特にドワーフ好きで…グローヴィンさんにも可愛がられてますよ。」
「あの親方に?そうか!そうか!じゃ、こっちにきてくれ!」
さすが、鍛冶師ギルドの長!一気にギムリさんの警戒が解けたぞ。
彼に案内され、作業場のわきの打ち合わせスペースに移動。
作業場には、人族、獣人族、ドワーフ。多くの人種の姿が見られる。職人同士というのもあるのか、良い職場のようだ。こういう環境を作りたいものだわ。
「それで、どんな注文だい?旦那ぁ?」
”どん”
うん?そりゃ、酒樽じゃん。まだ出すなよ!アホ!
「まずは、出会いを祝して乾杯だ!」
「「「!」」」
あれ?ふえた?分身の術か?ギムリさんの背後にいつの間にかに樽人間が二人!もしかして中の人?
「お若いの…今は…仕事中だ…」
お!仕事中?断るか?
「が、手が空いてるでのぉ!乾杯だ!」
だよなぁ…
「「「「おう!」」」
何処からかさらに2人のドワーフが合流、同じチームか、人族も混ざる。もちろん酒盛りになった。
”がきびきき””ぎぎぎぃ”
「久し振りに火鳥くったよ。ありがとな兄ちゃん」
ここじゃ、炙れないからソーセージは無いか。
「おっちゃん、これうまいな!」
「うぅん?坊主は酒はまだ早いぞ。」
「うんジュースだよ。」
雹や、ニコたちも思い思いに楽しんでるようだ。
「ミッツさんいつもこうなんですか?」
と、なみなみと注がれたジョッキを片手に不思議そうなアツミ君。
「ああ。ドワーフ族が居るとなぁ。トワ君が暴走する。まぁ、趣味みたいなものと思ってくれ。アツミ君付き合って無理して飲むことないぞ。奴らは底なしだ。」
「はぁあ?」
一回り。杯が回ったところで、
「で、旦那どんなのを造るんだ?」
「その前に、大工にもドワーフがいるんですね?」
「ワシらは、手先は器用だからな。内装に彫刻したり、特殊なもの作ったりってのは得意だ。貴族って言葉が出たからワシに振ったんだろ。」
「なるほど。私が欲しいのは、”貴族の移動家屋”の構造の”鶏舎”です。」
「…なんじゃそりゃ?」
「草やら、虫がいなくなったら…移動とか?普段は据え置いて必要な時に車輪を嵌めて移動。任意の場所に据え付けって感じです。大きさは、大型の荷馬車2台分くらいの長さで。」
「…けったいな注文じゃな。」
「なんだ?お鶏様の移動宿かぁ?」
もう一人のドワーフが言う。ぷぷぷ。言い得て妙だわ…
「…内装は鶏舎…敷き藁だから平らか?ふむ、空気の通りも考えないといかんな。いや、いっそのことスノコもいいか?」
紙を出してかきかき。
「床面と壁のこの辺りに敷き藁を排出できる隙間を…」
「ふむ、此処は、こうして…」
「いいですね…塗装は…」
…宴会のさなか設計と5台の鶏舎、車輪一台分を発注して組合をでる。流石プロ。話が速いわ。
二週間くらいで出来るそうだ…早いな。
…。
「さて、次はどこに行こうか。って、アツミ君平気?なんなら、戻ってもいいよ。」
「ふぅ。少々飲みすぎました。皆さんお強いですねぇ。」
「まぁ、いつものことだし。なぁ?おっさん。」
お主のせいだ!
「父さん、孤児院はいかない?」
とは、雹だ。
「待たせたな、やっと受け入れられそうだ。」
「そう…」
待ったもんなぁ。時間があれば、世話しに行ってることも知ってるよ。父ちゃんは。
「今から寄って、打ち合わせして今晩良ければやっちゃおうか?」
「うん。」
「やっちゃう?ミッツさん?何事でしょうか?」
この中で事情の知らないのはアツミ君だけだものなぁ。そりゃ、不穏にも聞こえるわな。
「孤児院大脱出計画!」
「な、なんです?それ。」
「まぁ、追々ね。」
孤児院に向かって歩き出す。
「人、少ないね~父ちゃん。」
ニコの言う通り、通りはガラガラ。商店も店じまいしてるところも。食堂なんかは、『夜、○○の鐘から営業』なんて看板も出ている。
「領主様の独演を観に行ったんだろ?良い娯楽だな。」
「この行いが、吉と出るか凶と出るか…ミッツさんの率直な考えが聞きたいですね。」
「そんなに変わらんだろう。子息は何歳?…そう、25~6歳?領主に成れれば良いね。普通なら廃爵、取り潰しだろうさ、王の手腕も試されるね。このまま領主にするようなら…駄目だね。よっぽどの人物なら別だけど。」
「厳しいですね。」
「25まで街の運営、宿臣?を普通に思ってるようなら駄目だな。そう治らないさ。酷なようだが、領主自身が建て直さないとね。
蔓延ってた宿臣も消え、折角、真っ新になるんだ、此処は新しい首脳部だろう?普通は。これ以上良い条件はないさ。領地無しの”有能”な貴族だって沢山いるんだろう?ちゃんとした前線の街づくりができる人物の任命だね。…後は…そうだな、王家の…次代の派閥争い?そういうのある?」
「ええ、今時点で王子が3人いますからね。」
「ここの家は何処派か知らんけど…王の腹の内の候補の派閥の駒にする可能性もあるね。」
「う~ん。無事継承出来たら…王派?」
「さぁどうだろうねぇ。」
…。
”こんこん”
孤児院に到着。
「こんにちは」
「あら、いらっしゃい。ミッツさん!どうぞ!」
「おっちゃんだ!」「トワ兄~」
うん?知らない子もちらほら。驚いたのか部屋の隅に。獣人族の子供だけではなく人族の子も。
「また増えましたね…」
「ええ…今でも…それと…このご夫婦と女性も孤児院の不当解雇で…ここに相談にきました。」
そこには猫獣人40~50くらいの夫婦と、熊耳のお嬢さん、うさ耳のお嬢さん、タレ耳のお嬢さんがいた。
「獣人の職員も。ですか?」
「ええ…解雇した孤児院も苦渋の選択でしょう…。うちは助かっていますが…」
「なるほど…」
「お世話になっていて…こんなことを言うのも何ですが…。出来ましたら、うちの職員にしたいと考えています…」
何となく…解かるんだよなぁ…一応”鑑定”…
「彼らに、例の件は話してます?」
「いいえ…ミッツ様の許可が出てからと…私とリリーだけです。」
「解りました。…プラック夫妻?御夫婦じゃないですよね?此処からご退場願えますか?内密の話がありますので。」
「わ、私どもにも、お慈悲を。ここを追い出されたら…」
「なぜでしょう。私どもに問題でも…」
白々しい…
「いいですそういうの…。解ってます。動くな!ここからは力づくになりますよ。追い出されても隣の大きな教会で働けるのでしょう?」
ざざっ!と、トワ君、雹が前に出る。もちろん、武器に手を掛けて。真火は、おいらと、アツミ君の護衛に付くようだ。
「み?ミッツ様?…ま、まさか?」
信じていたのだろう。このシスターにこんな顔をさせるだけで”罪”だわな…。
「はぁ?あなた達、そんなに暇なんですか?隣の芝生は青いとは言いますが…。節操のない。バカでしょ。この場を…虐げられた同族の孤児を見ても何も感じないとは。」
「…な、何のことでしょう?」
「で、何を調べていたので?大口寄付者?この教会の資産?」
「…」
「さぁ、今なら許しますよ。…ったく、くだらない。出ていきなさい。自分たちが何をしてるのか。良く考えることだね。」
「…」
「…ふぅ。いくよ。ほら。上手く行ったと思ってたんだけどねぇ。旦那どこでお気付きに?」
と、猫人族の女が自供を始める。
「さてね。で、調べ物は?何かわかったかい?」
「全然さね。そこの豹人の子が何度か来たぐらいで。」
「彼が一番の出資者だろうさ。小遣い出して、兄弟たちにお土産買って、遊んであげてるんだ。…これ以上無いだろうに。孤児院て、そのようなものだろ?そんな子の小遣いも欲しいのかね?ゼクス様は?」
「…まったくだよ。浅ましいこった。」
「おい!」
「そうだろうさ。良くなったっていったって毛の生えた程度だろうに。食事だって質素なものさ。お偉いさんの一食分で何人の子が救われることやら。」
「お、おい!…行くぞ。」
「はいはい。お騒がせだね。」
…。
「すみません…」
「なにも、謝ること無いですよ。シスター。まさか!ですもの。子供たちの中に居なければいいのですが…」
「ミッツさん。教会の話は聞いてましたが…。なんて浅ましいんでしょうか、スパイまで入れます?普通!特殊技能持ちの人件費2人分って…アホですか?」
アツミ君も呆れ顔…いや、怒りだな。
「アホですね。完全に。いったい何がしたいのやら…。ちと子どもの様子観てくるわ。万が一隷属されてたら…可哀そうだしな。」
「俺もいくか。で、おっさん見分けるコツってあるの?」
「う~ん何となく?隷属なら鑑定で分かると思うけど。さっきのは敵認定みたいな?人生経験か!」
「ふ~ん、おれも試してみるか?」
流すな!若造!
「どれどれ…”鑑定”…クソ!お~い、雹、真火!」
トワ君の端正な顔が歪む。
クソ!が!早速かい!予感が的中してしまったようだ。
「この子とこの子とこの子…違う部屋でお菓子でも食べさせておいて。」
「…わかった。トワ兄」
「で、おっさんの方はどうよ?」
犬耳っ子…成人ギリギリなんだろうな。
「うん。お嬢ちゃんこっちきてくれるかな?」”ビクッ”
「…」
「大丈夫だよ。泣かないでいいよ。こっちおいで。ちょい、部屋かりますよ~」
「わ、私も立ち会います。あまり、ひ、酷いことは…」
「ええ。酷いことなんかしませんよ。シスターもご一緒に。」
「君の名前は?」
「…ナティ」
「そう。君はどうしたい?」
「…」
震えちゃって…
「ミッツさん?」
「ここに居たいか…もとの場所に帰るか…」
「…」
はぁ…やるせないなぁ…さっきの大人の獣人族のように己の”意志”って事もありえる…。
「…何も無し…ね…厳しいようだが君のいる場所はない。ここの子供たちに危険が及ぶ可能性があるからね。」
「…はい。」
ふぅ…。
「ミッツ様…この子にも何か…何か、事情が…ねぇ?」
解ります…でも、皆を危険に遭わせるわけには…。
「た、助けて…」
ん?
「助けてください…妹を…助けて…お願い。」
「…」
「お願いしま…す…おじ…さん…私も助けてよ…妹を…」
おいおいマジかよ。人質とって…子供使ってまで為る事かよ。撫でり。
「よし!わかった!おいで。もう泣かないで。他にもいるの?」
そっと抱き寄せる…可哀そうに…屑の”大人”達のために…。
「…5人…妹以外に…ここに来たのは、お金のある所を探す…お金持ちの人を探す…子供を…」
「ほんとに?ばかじゃん。そんなこと。」
「連れ出す…」
「今なんて?」
「子供を…連れてこいと…」
「はぁ?何のために?」
「ひ!」
っと、この子が悪いわけじゃない…
「わ、解からないよぉ…」撫でり
「そうか。よしよし。ごめんね。シスター、ここはお願い。あっちの様子を見てくるね。」
「はい…もう、大丈夫よ…ナティ…。」
「こっちはどうかな?」
「おっさん待ってた!魔力くれ!さっさと解呪するぞ!」
「おう!」
「さぁ、おいで。今、呪いを解いてあげる。解呪!」
ぴっかぁ!
「もう、だいじょうぶだよ。皆のところいってドーナッツ…燻製食おう!」
「「「わーい!」」
「次、頼むトワ君」
「さっきの子か?」
「ああ」
…。
本日もお付き合いいただきありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。




