聖十字の輝き
いらっしゃいませ~
「じゃぁ、’ちょこ’、’ここあ’いる?」
すぅっと現れる。家妖精たち。
「「はい」」
「うぉう!」
びっくりスルガさん。
「ほう……彼女たちが家妖精様……」
冷静に分析中のアツミ君。
「そんなに時間はかからないと思うけど……ここを頼む」
「「おまかせ!」」
びしり! と、敬礼?
「……明るくなったのは良いけど……。セツナっちか……」
余計な事ばかり? 教えてからに!
「なによ?」
「いえ、なんでもございません。行こうか?」
「雹呼んでくんな」
「よろしく」
……
「寝てるとこ悪いね」
「起きてたよ。大丈夫」
「ん?」
「こいつも連れていきたい。俺の…相棒、義弟にしたい」
そこには、あのチーター君。
「二人で組む……ということだね」
「うん。将来……もちろん、父さんについてくよ?」
「ああ、期待してるよ。で、君の名は?」
「……本当の名は無い」
「よし! ……涙…… 「弱ちいわ。却下! そうね……真火ね!」 ……ルイが……ねえ? ……今日から君は真火だ。おいらの息子になってくれるかな?」
「……良いの?」
「雹の弟はおいらの息子だ。よろしくな真火」
「うん。名前ありがとう。がんばるよ。俺」
「まぁ、自由に生きろ。手伝うよ」
「うん」
勢いは大事だな!
「ちょい大人数だな……まぁ、人海戦術だからいいね」
……夜の路地
……この時間だと誰もいないな。真っ暗だし。でも、月明かり明るいわぁ。二個あるしなぁ。
「トワ君によるとこの辺りなんだけど……どう?」
「先に石櫃を調べませんか?」
「いいよ。先に行こう」
……
「ここだ……」
案内されたのは、石櫃? 円墳みたいな、直径、5mくらいの石の建造物だ。
「鑑定!」
……”石” ”石” ”石田” ”石” ”石” ”いしし~…なんちゃって!” ”石” ”石” ”ここ!” ……神様……暇なん? ……誰だよ……石田って。おいらの友人には居ないぞ? ……いえ、こんな時間まで見守ってくださってありがとうございます!
そっと片膝を突き、胸の前で手を合わす。ふっと体が光る。撫でられた? ……神よ
「おっさん……またか?」
「だ、旦那?」
「ふ~ん本当だったのね。神気を感じたわ。随分と、気に入られてるのね。おじさま」
「……神気? 旦那?」
「神気! セツナ様、まさか? 神?」
「ええ。ここらの教会のじゃない、別の神様。おじさまを見守ってるのよ。なぜかわかんないけど……ノリ?」
「ノリって……」
「ここだそうだ。どれどれ。”ぼっこ!” とれた……」
「あれま」
「ん? 後ろに……把手?」
引張ってみる。古いのだろうが、軽い。
”ぐごごごごごおおぉ”
「お? アツミ君! 当たりだ! ……ちなみにビンゴってある?」
石のズレる音と共に真っ暗な口を開ける。
「え? ええ、勇者様が伝えた遊びにありますよ。お祭りでビンゴ大会もあります」
「おっけ! 改めて……。アツミ君! ビンゴ! ……良し入るぞ!」
「おっさん……何の儀式だよ……」
「方角はこっちだな……おっさんパルス!」
バル〇? 崩壊してまうぞ? なんて!
「おいらは音波発生機械かい!」
「魔力パルスな」
「ふん! (……なんとなく?) うん、こっちだな」
「ここの先なんだけど……何?」
「この先は……確か……噴水広場? の下?」
「建物からだったよな? あれ? ずれた?」
「回り込むかもだから、もう少し進んでみよう……」
……
「う~ん。」
首をかしげるトワ君。
……先に行ったが、だんだん気配が遠のくとの事。噴水広場下まで戻ってきた。
「やっぱりこの先が濃いな……」
「壁だぞ? そもそもここは……逃走経路? ……としたら、先に領主館かぁ? 最近使われた形跡が無いのは救いだな」
「みんなで調べよう!」
”こんこんこん”
……特段変わったこと無いな
……すると……
「面倒ね……反対側にも通路や、入り口があるかもしれない。斬る!」
「……まかせた!」
「離れててね」
”ふぉおおおおお”
セツナっちの気合に合せて、空気が彼女の方に集まる。すげえ。
「”一閃”!」
”きーーーーーーーーーん!” くぅ、耳がぁ! ……先に言えよぉ~~~
「あらぁ、ごめんなさ~い」
「ここからここ、ここまで斬れてるからどかして」
「壁だけを……」
「剣先入ってるんだから……。当然でしょ? 服、紙だけでも斬れるわよ?」
「……さぁ! どかそう!」
……
「あった……」
その部屋には巨大なクリスタル柱が鎮座していた。
「どう? 召喚系?」
「そんな感じだな……でも、魔法陣無いな」
トワ君の言う通り、魔法陣はひとつも無し。近年……いや、かなりの期間、人の入った痕跡はない。
「お! 良さげな剣みっけ! 魔剣だなこりゃ。もう一本みっけ!」
……よかったね。トワ君はもう、クリスタル柱に関心が無くなったようだ。
「……大漁だね。このクリスタルは、スッカラカンって感じだな? 無色透明……”こんこん” 魔力も特には感じないな……”収納”……はいった! ゲットだぜ!」
「ここは全くといいほど使用感がないな……旦那ぁ、こういうのは遺跡っていうのかい?」
「そうだなぁ。どれほど前からあるのかわからんが……」
「おっさんこっち! すげ……」
「どうしたの?」
皆でトワ君の呼ぶ隣の部屋へ……
「「「「すげー」」」」
そこには金銀財宝。宝飾品、少ないが武具らしきものも。……しかも予備? クリスタル柱が2本あった。
「こ、これは……また……」
「領主に知られなくてよかったかもな……人変わるわ……これ」
「設置当時のまま、使われることなく残っていたのでしょうか? 財貨類は……奴隷の購入資金なんでしょうか?」
「なるほど……胸くそ金貨だな……よぉし! おいら達で使っちゃおう♡」
「おっさん……まぁ、もらうけど?」
「この金貨も聖十字……間違いないかと」
「ふふん! 私これだけで良いわ♡」
どでかいダイヤを頭上に捧げ持つセツナっち。で、デカ! セツナっちの頭と変わらんぞ? さすが異世界……あ! ”収納”に! ……パクった。
「……セツナっち。一番高価だぞ。多分。……いいけどさ」
既に彼女の収納の中……誰も手を出せない領域……
”かた!” ……”がた! がたがたがたがた!” “きききん!”
うん? 何事? 金貨の入った箱やら、金貨が震えている?
ポルターガイスト?
<小娘ぇ~! 返せぇ~! ……貴様たち……ワシのぉ……財宝……を! 何者……じゃぁ! ここの財宝は、全て、ワシの物じゃぁあ~!>
部屋の隅……人骨? 無数の白い欠片。侵入したのか? 閉じ込められたのか? まさか、生贄?
お化け? この世界、居るもんなぁ。ゴースト……
「成仏する?」
<でてけぇ~! 殺す! ころ ”フッ、キーン!” そふぃいいいぃぃあいあぁぁぁーーーー!>
絶叫を残し、ふっと消える幽鬼……
「つまらぬものを斬ってしまった……」
「セツナっち……」
問答無用……かよ。
「だってぇ、殺すって言ったじゃん! 敵よ敵。あとダイヤはもう私の物よ!」
「……まぁあね。……とりあえず全部”収納”して。帰って山分けだ!」
財宝やらクリスタル柱を”収納”。その後も辺りを調べたが変わったところも、他に入り口も無かった……”未使用”説も理解はできるが……
「財宝多すぎるよな……」
「さっきの奴、大司教やら教皇で好き勝手してたとか?」
「なんかそっちの方がしっくりくるな。換金しづらいのもあったし。ダイヤとか」
「私のよ?」
「取らないよ……」
「命がけできなさいな!」
「……もう」
だべりながら、壁を戻している。何時か使える時もあろうて。石櫃を戻して帰路に就く。
「大漁! 大漁!」
「山分けはちょい先で良い? 古い物らしいから調べてみたいし。珍しい金属とか?」
「私も立ち会っても?」
「もちろん。目録も作りたいね。手伝ってくれ。アツミ君」
「私は貰ったからいいわ、後は勝手に分けて」
「……偽物かもしれんぞ?」
「大丈夫。”鑑定”もしたし」
「一応、おいらもしてみる?」
「……そうね。……加護鑑定だもんね」
そっとだす。セツナっち。取らないって……
「鑑定! ……なになに……
・聖十字<ダイアモンド> かつての教国の象徴……先の動乱で喪失。表向きは聖王国に引き継がれたことになっている。ちなみに、聖王国の物は偽物。ガラス細工。魔力を込めると光り輝く。
……だって?」
「! せ、聖十字! これが!」
「アツミ君?」
「聖十字教国の象徴、いまの聖王国の象徴でもあるんですよ? ぷぷっ。大司教はガラスに誓いをたててるのか?」
「まぁ偶像崇拝。なんでもいいんだろ」
「はい。本物のね」
ふっ!”収納”。
「お嬢、献上すれば国くらいもらえるぞ?」
「い・や・よ。あんなクソ教会。滅べばいいわ。それに、国が欲しくなったら自分で切り取るわよ」
「……洒落にならんな」
ごもっとも……
家に到着。ワインと、軽いツマミをだす。
「思わず良い成果だったよ。みんなご苦労様!」
「ええ」
ほくほくのセツナっち。
「……ダイヤは取られちゃったけど……。スルガさんたちには埋めあわせ 「旦那、気にしないでくれ。もともとそっちのネタだし。街の脅威が一つ無くなったんだ。それにまだ命は惜しい……」 ……」
おぅ……
「ええ。学術的に貴重なものも多くありそうですし。燃えます! 本当にここは天国だ! セツナ様、目録の時は見せてくださいね」
「……なんかごめん。で、クリスタルについてもここの維持管理に使用するのは決定。今日の収穫はアツミ君と、……立候補いる?……おいらで目録に起こすよ。分配はそのあとね。夜遅くにお疲れ様、軽く飲んでゆっくり休んでくれ」
”当たり”ワインをふるまう。
「旨いな! これ!」
「ええ……いくらするのか……」
”がきごきがきごきりごきごきり!”
「……雹と真火はいいけどさ。姉貴はやめとけよ……ただでさえ品が ”がこん” 痛って!」
「うるさいわね! めちゃ美味しいのよこれ。齧れない軟弱者共め!」
「トワ兄も食べる? 小さく裂いてあげようか?」
「トワ……兄……よろしくお願いします」
「おお! よろしくな弟! 雹……要らない……それ……」
「よばれてるよ。旦那」
「そうそう、スルガ氏、明日から早朝鍛錬と希望者への手ほどき任せてもいい?」
「ああ、それしか役に立ちそうもない……5年もすればライ達にも敵わんな」
「あれは強くなるよ……最近骨が太くなってきた……でかくなるぞ……あいつら」
「ああ、狼人族は単体でも強いが、連携が秀逸だ。しかも双子だろ……嫌だ、嫌だ」
「そこは鍛えがいのある。だろ?」
「まぁな」
「アツミ君は勉強の教師役お願いできる? セツナっちの補助みたいな?」
「ええ。お任せを。空いた時間に研究をしても?」
「何の研究?」
「先の悪魔と教会の歴史とか……」
「禁書! だな!」
「……では、このダンジョン内での考察とか…… 「秘書! だわな。」 ……今回の目録の研究は? 「黙示録? じゃね?」 ……なかなか金になりませんね」
「まぁ、”今”は駄目でも、後々の人類への遺産にはなるな」
「まぁ当分はニコ君と言葉遊びですね。彼、年齢以上に生意気ですから、いじめがいある」
「ははははは、だろう? まぁお手柔らかに。そうそう。家どうする、しばらくはここで良いけど……家建てるぞ?」
「飯とか楽だからここでも良いけど……家族の団欒邪魔するのはなぁ。お願いするか。飯はできれば混ぜてほしい。飯屋無いだろ?」
「かまわんよ。なぁ」
「ああ。で、アツミ君とで一軒か? それとも2軒か?」
「当面は一軒でいいよな?」
「ええ。一部屋あれば文句ないです。あと呼び捨てで結構ですよ。みなさん」
「ねえ。おじさまぁ。これに魔力込めてみてよ。お・ね・が・い」
ダイヤを抱えてシナるセツナっち……”ぞっぞぞ……”背筋が凍る!
「……なによ?」
「……込めさせていただきます! 精一杯行かせていただきます! 充填! 充填!」
……
「け、結構入るぞ……これ!」
「おっさんムリすんなよ!」
「ああ、クリスタルの上位かもしれないな!」
「譲らないわよ?」
「わかってるよ! 充填!」
徐々にダイヤ自身が光を放つ! 七色の光の帯が乱舞する……
「うわぁあ……こ、これが真なる聖十字? ……すばらしい」
「ありがとう! おじさま! 綺麗ーー!!! 大きくなったらおっぱい触らせたげるね!」
「……期待してるよ……」
「なんで残念そうなのよ!」
ぷりぷりしてるセツナっちは放置。……もう遅いし、寝ましょうか。
本日もお付き合いありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。




