ギンビス降臨。
いらっしゃいませぇ~
「第一回、アヌヴィアト対策会議を開きます!」
”パチパチパチパチ……”
ミッツ殿の音頭で、会議が始まった……のだが、拍手要るか?
「だ、旦那ぁ?」
「スルガ君! 慌てる乞食は貰いが少ないぞ! 落ち着いて」
「良い言葉ね。なるほど。蘊蓄があるわぁ」
とマシュー。おいおい。それどころではなかろう!
「元の世界のね。よし! まず条件! いってみよ~トワ君もセツナっちもどんどん意見をね」
「了解~」
「はいはい。トワ! 茶!」
「はぁ? 仕方ねぇなぁ」
大丈夫か……?
……
で、協議の結果、以下の条件が議題でまとまった。……のだが……
1、クリスタルの所有権は勇者側に。後、この街の別の場所にもう一個ある。そこの調査権と回収権。
……もう一か所? 回収してどうするのだ? (スルガ視点)
2、生贄にされた子供たちの送還の儀式。
これは今のとこ”勇者”トワにしかできないので、トワ個人に税金無しの金貨300。お供えとして食料や飲料を金貨50枚分を用意。
ミッツ殿曰く『苦しめたのだから……還るときくらいはね。誠意をみせろ!』 と。
参考までにリッチなど、怨霊の集合体になる可能性あり。と、追記される。
……リッチ。悪魔より面倒だ。多くの町が呑まれ、『死の軍団』となり、さらに躯を求めて膨らみ広がる……。悪魔との二体同時もありえるのか? (ス)
3、悪魔退治があれば別途請求。
……まぁ、当然だな。それなりの事だわな (ス)
4、ギンビス子爵への聴取。賠償請求。エリクサー、一本分。払わない場合は同じ目に合わせる。抵抗ご勝手に。
……こいつは……。一番の懸案条件になるな……(ス)
5、承認後3日以内にヤザンを見つけたら身柄は頂く。
……身柄は欲しいが……領主の判断だな。(ス)
「あ、あと、城内を獣人族が入れるようにしてね。雹も戦力だ。おいらの護衛に必要だ。こんなものかぁ。この条件に一切の交渉はしない。と。以上の事に納得できれば動くよ」
と、締められる。
「……4が問題だな」
思わず口に出る。貴族問題だ……。なにせ、”王国”の臣だものなぁ。
「そう? 不干渉ってことなんだけど。もちろんいきなりは制裁しないよ。聴取してから」
「分かった。これで持っていく」
「そうそう、領主とは直接交渉しないからね、来ても入れないよ? スルガ隊長特別価格って書いておく?」
「……胡散臭いからいい」
「あ! 私も、特に用ないから、町で情報収集するわ。戻らないってロランに言っておいて。最後にすり合わせしようと」
「マシューさん不味くない?」
「大丈夫よ、街で情報収集、人の手配の方が役に立つわ」
「出頭命令でしょうに」
「一回出したからいいわよ。領主様とは会ってないけど。忙しいのでしょ」
「配置は……おいらとトワ君と雹かな?」
「なら、私はニコと北門にいくわ。ヤザンってのが通ればヤッてくるわ。街出たら真っ二つだわね」
「……ほどほどに……セツナっち。」
「そこは止めろよ! 旦那!」
「何か? スルガさん? アナタが止めてみる?」
くぅ……怖ぇえええ……
「……ほ、ほどほどに……お嬢」
「じゃ、いってくるわね~」
「まだだよ?」
「そっちとは別件~こっちは報復ね。家の子斬っておいて……さよなら? はぁ。地獄にもれなく送ってあげるわ。じゃあねぇ~。ニコぉ~~~~お姉ちゃんとお出かけよぉ~~~」
「じゃ、そういうことで。スルガ隊長……」
「だ、旦那……」
「あら、私を止めるのは自由よ?」
止められるか!
「……じゃぁ、領主の所にいってくる」
「まぁ、ぼちぼちね。こっちはどっちでもいいし。クリスタルも町、滅亡してから回収できるし?」
「……旦那ぁ~」
「冗談、がんばってねぇ~」
……全く冗談に聞こえないぞ!旦那!
……
「スルガが戻ったと伝えてくれ」
ふう。第一段階は何とかクリアだな。あとは領主と財務か?
子爵云々が頭の痛いところだ
「スルガ隊長、急ぎ御前へ」
「うむ。案内頼む」
案内に従い領主様の執務室へ。
そこには領主、ロラン……
誰? 文官風の50~60歳の男がいた。教会関係者? まさかな。
「ただいま戻りました……」
誰だ? うん? ……? あ……
「すまぬな……休憩も取らずに…してどうであった?」
「……そちらの方は? 今回の件は内密では?」
ロランが頭を振る……
「私は、財務担当方のハスヤという。」
……思い出した。普段は領主以上の贅を凝らした派手な格好をしている小物……。財務担当? こいつがマシューの言う処の”横流し”等の首魁か。ハスヤ? どこかで……
「ササーラ様? まさか? なるべく少人数で……」
「やましいことでも?」
何なのだ? この男は? やましい事? 貴様だろうが!
「やましいことなどあるか! ……本当に? ……よろしいので? サーラサ様?」
「……かまわぬ」
「では、先方からの条件は、 「ちょっと待て!」 ……はい? 何でしょう。ハスヤ殿?」
「条件だと。この町の住人だろう。御前に連れてきたまえ!」
は? ……な、んだと? ばっと、ロランを見る。目を伏せたまま……
そして、……ササーラ様を……うん? 妙に落ち着いている? なぜ?
「領主様……例の件も明かしているのですか?」
「例の件? 放浪”勇者”の事だろう。聞いておる!」
「それでその言動……本気か!」
「何を今更! 御前に連れて来たまえ」
「……領主様これは、どういう……私には荷が重すぎます」
「俺の言でもか?」
…何があったんだ? よりによって……まとまるものも、まとまらぬではないか!
「領主様……どうされたか? 少々時間を頂いても? 混乱して……休憩もなく動いてたもので……」
「何を言っているのだ! この緊急時に!」
キャンキャンと! 耳障りな腰巾着め!
「緊急? 一大事? そんなこと貴様に言われなくとも解っているわ! 貴様の言動が問題なのだ! 貴様が行けば良いだろうが! 俺がどれだけ苦労したか! 失礼する! やってられるか!」
「貴様ぁ! 平民の分際でぇ! 更迭するぞ!」
「どうぞご勝手に!」
「私も失礼します」
「ロラン? その方……?」
「全く話になりませんな! 良いではないですか。サーラサ様」
貴様がだ!
「……我らの力及ばないようにございます。王都に戻ります。……何を言っても無駄なようだ。スルガ行こうか」
「ああ。領主様。失礼します」
「ま、まて、その方ら」
「御前失礼します……領主様。あまり甘言に溺れぬよう。耳障りが良いでしょうが。では」
……。
「どうなってる! ロラン!」
「俺もまったく知らなかった。……ハースヤ=ギンビス、あのギンビス子爵家の当主だ。たぶん領主が例の件の事の重大さを教えたのだろう。どうも、前領主からの腹心だったようだ……食事のために席を外し、戻ってきたら、領主の傍らにあの男がいた」
「はぁ? あ、ギンビス子爵家! 例の貴族、ハセルの案件のか! なるほど……領主も保留と言ってたのがこれか! しゃしゃり出て来たのは自分の保身のためか?」
「恐らくな。領主も助けたかったんだろうさ。あの男を」
「しかし……領主も”勇者”の危険性くらいわかってるだろうに……」
「実感がないのであろうさ。聞くだけだし。それに若いのだろう? 恫喝すればどうにでもなると思ってるのだろう……。危機感の欠落。いいようにギンビスの佞言に絡めとられたようだ」
「……そんなことのために……民を危険に晒すのか?」
「……打てる手は打ったよ。後は領主殿の仕事だろう?」
「あ、諦めろと?」
「お前ひとりで何ができる? こんな様じゃぁ勇者も動けまい」
「ミッツ殿は俺になら力を貸してくれると……マシューにも……」
情けない……どのみち、頼らねば何も出来ぬ……か。
「で、お前はどうする?」
「どうするとは?」
「今後だよ」
「ロラン、お前は?」
「この町が危険だと分かってるんだ。母さん連れて王都にいくさ」
「そうか……」
「で、お前だよ。スルガ。お前のことだ……この町、出るんだろう?」
「……仕事はやめる。そうだなぁ。また冒険者でもするかなぁ。元々~天涯孤独だしなぁ」
「一緒に来るか? 教官とかもあるぞ?」
「いいな。……でも、まずは詫びにいってくらぁ」
「……すまんな」
「しょうがないさ……あんな伏兵がいたとは」
ふははは……何やってんだ俺は。
……
いつもの酒場の、いつもの席。かわいいウエイトレスのお尻を肴にエールを一杯。たゆんと揺れる魅惑の果実でもう一杯。と。
ふぅ。覚悟を決めて……いくか。
まずは、屯所だな。
「隊長! どこ行ってたんですか! 領主様より出頭命令がきていますよ!」
「わ? 飲んでるんです?」
ふん! 知るか!
「南門衛兵隊長か……世話になったな」
「た、隊長?」
ふぅ……。うん!
「皆! 聞いてくれ! ……俺は只今をもって隊長をやめる。詳しいことは言えぬが、俺の力が及ばず……」
「あの例の子爵でしょ? 隊長?」
「なぜ?」
「伝令が言ってましたよ。キーキーうるさかったって」
「ああ、領主も奴についた。俺のやれることは……無い」
「短気だからなぁ」
「というわけで、だれか、この腕章と剣を返上してきてくれ。もう、あんな処、二度と行きたくねぇ!」
「……隊長、俺が」
「しょうがないですねぇ」
「ああ、任せる! 皆! 世話になったな! これからは、お前らの世話にならないように真面目に生きるよ。はははははは……」
はぁ……。
「「「隊長……」」」
屯所わきの宿舎で荷物の整理……宿舎だって明け渡さんとな。まさかこの歳で職を失うとは……
冒険者……かぁ。毎日、体は動かしていた……鈍ってはない……と思いたいがな。ふぅ。
荷物、少ねぇ……。着替えくらいだしなぁ。洗面用具……こんなもんか? まぁ、独身だしなぁ。装備も返還してと……。ナイフと金と……バッグ一個かよ……寂しい……。
「世話になった! 残ってる物は適当に使ってくれ。じゃあな!」
「全く!」
「ん? どうしたお前?」
「お前ではありません。貴方には孤児院から救い出してくれた恩があります」
「で?」
「ついていきますよ。もちろん」
「……かえって、迷惑だが?」
「いっそのこと、2人でミッツさんとこで雇ってもらいましょう」
「は! なにいってんだお前!」
「お前ではありません。アツミです」
……ふぅ。
「今から、詫び入れに行くが……。ついてくるか?」
「ええ。もちろん」
「よろしくなアツミ」
「こちらこそスルガさん」
まぁ、いいか。息子みたいなもんだしな……息子かぁ。
「なにニタニタしてるんです? 気持ち悪いですよ」
「なんでもない……」
可愛くない……こいつ……
本日もお付き合いありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。




