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真相 Ⅳ スルガ

いらっしゃいませ~

 「んな! なに! 服毒自殺! キャラルがか! 貴様がついていながら!」

 キャラル……人懐っこい笑顔が思い浮かぶ……なにがお前を追い込んだんだ? キャラルよ……

 「すまん。」

 「ゆるせ、俺も居たし、帯剣しておったしな。」

 「……で、状況は?」

 

 どうにもキャラルは教会の関係者だったようだ。今の地位も教会の推挙か何かだろう。多くの貴族も関与してるだろうし。何よりこの国の国教だ。多少の無理も利くだろう。おまけに背後には聖王国だ。

 

 中央の隊は一応は監禁。事情を聴かれているだろうが……恐らく口を割るまい。彼らもまた、教会の関係者か、信心深い者たちなのだろう。

 貴族街のど真ん中への奴隷の搬入やらも彼らの協力なしでは出来まいからな。

 

 そして気になる言葉……狂信者……か。

 教会の為には死をも厭わない……。キャラルのように……

 毒……か。一応、注意くらいしておくか……俺ら邪魔だろうからなぁ

 もっとも、相手も逃げの一手だろうが……

 「無いとは思うが……皆、毒には注意しろよ」

 

 ……

 

 こうして領主の館を辞し、ミッツ殿の屋敷へと……来たのだが……

 『御用の方はここを押してからご用件をどうぞ!』 ……という看板と、赤い丸いものがある。髑髏のマーク? さわって良いのだろうか……

 

 ここは、以前【家妖精の家】と言われていた謎の場所だ。今の主は……ミッツ殿。勇者様御一行だ。

 <ぽちっとな!>

 ……ぽ、ぽち? なんだ? ……丸い赤い髑髏を押し込んたら謎の呪文が! だ、誰かいるのか! この壁の向こうに! だ、大丈夫か? そ、そうだ、用件、用件……。

 

 「み、ミッツ殿に面会をお願いしたいのだが……俺はスルガだ」

 ”ぎぃい”

 

 門が開いた? 誰も居ないのに。その時、頭上から

 『どうぞ~』

 何とも気の抜けた声……ミッツ殿だ。

 「邪魔する」

 ……

 

 ここは……なんだ? 入った途端、母屋が現れた? 綺麗な木々の庭?

  

 「「あ! 隊長さんだぁ!」」

 「おう、ライ、カイ元気か?」

 ミッツ殿の養子の狼人族の双子だ。

  「「うん。腹減った!」」

 ? 良くわからんが……

 「旦那……父ちゃんは?」

  「こちらです。スルガ隊長」

 「お、雹、すまないが案内を」

 広い庭、大きな家……旦那ぁ~すごすぎるよ……

 

 「こんにちは、隊長なんぞ問題でも?」

 食堂になるんだろう。大きなテーブルとたくさんの椅子。小さい子用のも散在してる。対面に旦那と雹とニコか?

 「時間もらってすまねぇ。旦那。折り入ってお願いがあるんだ」

 「珍しく真剣ですね……ニコはみんなの所へ」

  「……わかった、おいらにはまだ早いと?」

 「ああ、そんな気がする。時期が来れば話すよ。トワ兄に来るように伝えて」

  「うん。セツナ姉は?」

 「う~ん……いたらね」

  「おっけー」

 「ビルック悪いお茶淹れて」

  「分かった。お茶淹れるね」

 「ああ、すまないな」

 

 「何よ! 用って?」

 「おっさ~ん来たぞ。? スルガ隊長? どしたの?」

 ……お嬢もかぁ

 

 「集まってもらってすまない。なにやら問題が起きたようだ。必死のスルガ隊長の顔もそうそう見られるものじゃない」

 「旦那、皆さん集まってもらってすまねぇ。大いに迷惑かけてるが……それ以上の……俺じゃ理解の及ばないものが出たんだ。聞いちゃくれないか」

 「どぞ」

 「例のヤザンの家の地下で大きな黄色いクリスタル柱と魔法陣……そして……」

 「大量の死体……だね」

 「!」

 なぜわかった……

 「ほら、この前、マシューさんの取り調べで出ただろう? 悪魔召喚だな。雹、この街内の話は無かったの?」

  「うん。奴隷の調達と輸送。あの国まで」

 「そうか……で、隊長どうぞ。話の続きを」

 「情報が少なすぎて……同僚もあちら側で……服毒死。もう……頭の中がぐちゃぐちゃでよぉ。解かんねえんだよぉ」

 「落ち着いて。で、教会関係者はいなかったの?」

 教会……枢機卿……取り巻き共

 「いた! し、しかし、内通者……が、逃がした」

 「その屋敷の持ち主も関与は濃厚?」

 「それが、二十年か前に教会の連中が訪ねて来て居座っていたようだ。家の者も隠し階段自体その時に知ったと」

 「やはり、裏で暗躍してるのは教会か……」

 「おっさんどう思う?」

 「この街とあの国の同時発生? 意味がない……いや、この国を生贄にするため? あの国が力を示すため? それにしては教会の旨味がない……な」

 旦那が思案に入った。

 「だめだこりゃ。良くわからんわ。で、隊長はまとまったかい? 俺たちの情報もこんなとこだ。早く帰って対処しないと。下手すりゃ悪魔出てくるぞ?」

 「な! そ、そんな。悪魔が……」

 「ああ、たぶん悪魔召喚陣、しかも、どれだけかは知らんが、少なくとも二十年。生贄も捧げられてんだろ? もう呼ばれてる可能性はある」

 ……

 「……こ、この街のために、手を貸してはくれまいか? ”勇者”トワ?」

 「ええぇ! 嫌だけど?」

 えええ~~~~! トワ?

 「ああ、乗り気ではないなぁ。貴族関連の問題も何ら進展してないし。それに」

 旦那!

 「だ、旦那?」

 「教会と領主の肉親のしでかしたことだろう。自業自得。出てきてここまで来たら退治はするけど……スルガ隊長には悪いけど、おいら達には関係ないね」

 「そこをなんとか、街が…… 「はっきり言ってあげないと。勝手に滅びればってね。多くの命をただただ、自分の勝手で踏みにじってきたんだもの。自分の番になったら、『助けて!』 は無いわ。しかも自分らで招いて……滑稽ね。ねぇ、おじさま。」 ……そ、その通りだよ! だが皆が皆そうじゃ、っつ!」

 殺気! くぅ、た、立ってられん、”ずん”膝が落ちる?

 「何よその目、おじさまの少ない友人だから警告してんのよ。さもなきゃ今頃あの世よ? 一個、抉って差し上げましょうか?」

 う、動けない……怖い、怖い? 直ぐに出ていきたい!……くそぉ! 震えが止まらん!

 「セツナっち、ステイ! 殺気、殺気。それに、抉っちゃダメ」

 「甘いわよ、おじさま。らしいいっちゃらしいけど」

 「という訳でお引き取りください。こっちも今、色々忙しくって。予定パンパンなんですよ。トワ君もそろそろ出発?」

 「ああ」

 「この街が……人々の 「貴族街だろ。かえって都合いいじゃん。”屑”が減るし。繁華街まで下りてきたら斬ってやるよ?」 と、トワ……」

 「ついでに、ギンビスってのが居たら斬っちまおう!」

 

 駄目だ……ここまでとは……人族の敵……。いや、こっちが都合よく考えてるだけだ。この国、世界に何も関りが無いんだから……

 ”ぴんぽ~ん”

 ……ん?

 

 『マシューよぉ、スルガ隊長まだ説得中? 無駄だから行くわよ~』

 「こんにちわ~マシューさん。お茶飲んでく?」

 『いいわね! 入れてくれるの屋敷に』

 「どうぞ~。雹が迎えにあがります。勝手に花とか取らんでねぇ~」

 『とらないわよ! 私をなんだと思ってるのよ! ミッツさん!』

 な、なんだ、この緊急時に……のんびり茶など

 「何よ? アナタはさっさと帰ればいいでしょうに」

 くっ。

 

 「いやぁー参ったわよ。商業ギルドよ私、なんで呼ばれなきゃいけないのよ。頭来ちゃうわ!」

 「それだけ重要人物ってことですよ」

 「はいはい。”こくり”……! ……うおお! 美味しいわね! このお茶!」

 「でしょ! エルザんとこの最高級茶葉をトワが、”勇者パワー”で淹れたものよ」

 「……なによ……その妖しい力は!」

 「おじさまのこだわり知ってるでしょ?」

 「ええ」

 ……こんな時に茶の話なぞ。

 「修行の成果だそうよ。結界魔法でお茶淹れるの。アホでしょ?」

 「……アホね」

 「じゃぁ飲むな!」

 「まぁまぁ、トワ君。焼き菓子もあるぞ」

 「いただきま~す!」

 

 ……ふぅ……助力は得られぬ……か。ここに居ても仕方なし。

 ……戻るか。

 「でさぁ、セツナ。……助けてよ~。私の事。私の力じゃもう……限界」

 「いいわよ。で、どうしたいの? あんた?」

 へ?

 「ちょ、ちょっと待て、なんで……俺じゃ、俺じゃ、力不足なのか! 旦那!」

 「力不足って、貴方の事だからこの街を! 領主を! 人々の生活を! とか言ったんでしょ」

 「な、何が悪い!!!」

 「アホね。彼らにとっちゃそんなのは屁でもないわよ?」

 「……屁って。」

 

 「まぁあね」

 「あんたの助けなら、あんた自身が頼めば……ねぇミッツさん?」

 ぱちりと、片眼を瞑るマシュー……

 「恥ずかしいこと言わせないでよ。まぁ、スルガ隊長自身の頼みなら聞かないこともないよ」

 はいぃ?

 「だ、旦那ぁ、助けてくれよぉ~」

 「任せろ! 国? 領主? そんなのはお断りだけどね」

 「旦那ぁああああぁ」

 「鼻水、鼻水、隊長!」

 なんだよぉ~! なんだよぉおおおぅ。


今日もお付き合いありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。

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