第53話 荒れ狂う人々と黒い心の話
俺達は騎士に囲まれてしまった。
壁も破壊しようとするとしたが、特殊な魔法でコーティングされて破壊ができる
可能性があるとしたら、フェレシアなのだが・・・
「人数多すぎです・・・」
フェレシアの攻撃で周りを巻き込んでしまい死人が出てしまう可能性がある。
出来るだけ、犯罪者にはなりたくない
しかし、相手は完全に殺しにきている
その証拠に目が殺気に満ちていた、部屋の周りを見てみると先ほどの芳香剤が匂う
その芳香剤は嗅いではいけないような気がした、俺はすぐにマスクした。
「皆、この匂いを嗅いじゃ駄目だ!!」
「わ、わかりました!!」
そう言って、フェレシアとアイリスはマスクをするが、肝心のファフニーはマスクを持っていなかった。
ファフニーはそのまま煙を吸ってしまい、眼の光が徐々に失われていく。
その瞬間、ファフニーの身体が青い炎に包まれる、次第に炎は大きくなっていく
そして、炎から羽ばたくように出てきたのは、竜化したファフニーだった。
ファフニーの眼は何時もの青い目ではなく、赤く殺意に満ちていた。
その目は言うでもなく俺達に向けてのものだった
そして、大地を震わせる咆哮を放つ
ガルウアアアアアアア!!!
その咆哮を聞いた、周りの人達は興奮する
盾を叩く音、俺達を罵倒する声、そんな暴力的な言葉と音が俺達にプレッシャーを与える。
完全にペースはあっちへと持っていかれている。
すると、どこからコツコツと何処から音が聞こえる
音は・・・上だった。
その音を聞いた途端、いつの間にか周りの人たちが静かになる
音は次第に大きくなり、俺達の前にその姿を現す。
「良くぞ、来てくれた、お主らが来てくれると信じていたぞ・・・フフ」
その凛とした顔立ち、紫の髪、赤い瞳
現れたのはスカラ女王の本人だった。
その一人の騎士が大きな声でいう
「麗しの花嫁の登場だ!!」
周りの人たちは言葉に反応する
スカラ女王!!スカラ女王!!スカラ女王!!
コールは大きくなる、だが、スカラ女王が片手を上げると周りは再び静まる。
「わざわざ、親玉本人が来てくれるなんて、仕事熱心だな」
「ハハ!招かざる来客とて、来客には変わりないさ。
そんな来客にはちゃんと持て成さないと駄目だろう?なぁ、クロスギよ?」
スカラ女王は俺の名前を呼んだ
俺の名前を一度も教えてないのに、何故知っているんだ?
そんなスカラ女王は上から俺達を見下ろすように話す
「何故、一度もあったことないのにお主の名前を知っているか気になっているようだな?
まぁ、この国に元々勇者が来る予定だったのが不慮の事故で一人いなくなったと聞いてな、その特徴と一致しただけの話よ
ここに今フィルネル王国に可愛い勇者様が来ているのよ、その人から色々教えてもらったわ」
フィルネル王国の勇者?
まさか・・・俺のクラスが来ているのか!?
「まぁ、来ているのは一人だけどね、でも今頃は・・・フフ」
「クソッ・・・!!」
一体だれなんだ!可愛い勇者?
佐野か?それとも美空なのか?
どちらにせよ、戻らなければならない・・・!
俺は再び会場に戻ろうとするが、騎士たちが行く手を阻む
舌打ちをして、殺気を飛ばすが効果が無かった
「無駄よ、貴方の殺気ぐらい無効化できるわ、それに簡単に通すとでも?
馬鹿ねぇ、私が来客に対しておもてなしが終わってないのに帰すわけじゃないの」
「このアマ・・・!」
アイリスは後ろから話す。
「どうする?ヨウイチ・・・」
「待ってろ・・・今考えている・・・その間、時間を稼いでくれ
俺も考えながら戦う、人は殺すな、いいな?」
「わかった・・・」
「わかりました!」
正直、人との戦闘は実際に初めてだ、なんせ訓練とは違って相手は殺しに来ているのだから。
未だに、人を殺す恐怖は知らない黒杉は手が震える。
自分の力で誤って殺してしまったらどうする?
その恐怖に俺は背中の冷や汗が流れる。
自分が一度殺されかけたから分かる、
人が変わる、全てが変わってしまう
ふと板野の不気味に笑う姿を思い出す
きっと、彼もその時点で頭のネジが取れてしまい狂気に落ちているだろう、じゃなければあんな醜い顔なんてできないのだから
黒杉は今じゃ強大な力を持つようになった、だからこそ殺すのは簡単だった
しかし、殺してしまえは人としての道に外れてしまうのではないか、人を殺せば黒杉も板野みたいにあのような顔になってしまうのか?
なら、相手が魔物だと思えば?
それなら罪悪感なんてない、なんせ相手は魔物なんだから、俺は魔物に殺されかけたと思えば
これは正当防衛、相手は魔物だ・・・、魔物なんだ
黒杉の眼が鋭くなる、口角は自然に上がってしまう
無意識であの時の"ヤツ"と同じようになってしまうことを知らずに
魔物!魔物!魔物ッ!!
黒杉の奥から何やら黒いドロドロした物が包み込むように浸食される感覚があった
自分の手に持った黒く光るクレナを見つめる。
未だに手が震える
そうだ・・・やれる、俺ならッ!
黒杉がクレナを構え、人に向って振りぬこうした時だった。
「ヨウイチ・・・」
「アイリス?」
そんな震える手をアイリスが握った。
アイリスはその綺麗な紅い目で俺を見つめる、その目を無意識で見つめ返す
不思議と彼女の眼を見ていると落ちつく
彼女の柔らかい声が俺に響く
「大丈夫、何があっても・・・ヨウイチから離れないよ?」
何故、この状況で言われたのかが分からなかった
でも、黒いドロドロしていた物がッスと消えていくのが分かる
「大丈夫、どんなことあっても一緒にだから」
俺はアイリスのその言葉を聞いて、我に返る
小さな手で俺の手を優しく撫でる。
アイリスがいなければ、手に持ったクレナで人を・・・
俺は小さく深呼吸する。
「それにヨウイチはそのナイフで私の呪縛する鎖を壊して救ってくれた、ヨウイチのナイフは誰かを救ってくれるナイフ、だから大丈夫」
馬鹿だな、またアイリスに救われてしまった。
そうだよな、俺はいつも通りでいいんだよな
黒杉の不気味な笑顔はいつのまにか、柔らかい顔になっていた。
「あぁ、すまないな、少し取り乱しただけだ。
「ん・・・」
俺はスカラ女王に向ってナイフを向ける
「すまんな、時間を取ってしまった」
「ハハッ!せっかく面白い物が見れると思ったのだが・・・」
その瞬間、スカラから膨大の魔力が放出される
スカラ女王の表情は氷のように冷たく無表情だった。
魔力は周りを包み込み、周りの人たちは更に興奮する。
「つまらんな、私は準備があるからここで先に失礼するよ、皆の者任せたぞ」
そう言って、何処かへ去ってしまった。
後ろから、ラグエイの声が聞こえる
「さぁ、始めるとするか、というかそのマスクで思い出した、おめぇ・・・あの時の」
「おっと、やっと気づいてくれたか、いつ気づいてくれるのか待っていたが随分と遅いじゃないか」
「ふん・・・、あまり調子に乗るなよ!さぁ取り掛かれ!!」
その瞬間、周りの人たちは雄たけびを上げて一斉に襲い掛かる。
「さぁ、アイリス、フェレシア行こうか」
「うん・・・」
「わ、私もがんばりますよ!!」
俺達は武器を構えた。




