13.水鏡夕月
リオくんのお友達が居なくなるとまた私たちのおしゃべりが始まった。
宴会の席は無礼講だってことでリオくんは2人きりの時と同じような口調で私たちに接してくれている。
「理央さんが高校生の時ってどんな感じだったんですか?」
奈々がリオくんに尋ねる。それって私も興味ある。
「普通の高校生だと思うよ、別に王子さまとも呼ばれていなかったしね」
私たちだって普通の高校生なのよ。
曜子ちゃんは特殊かもしれないけど。
「学校で友達とくだらないことをたくさん話して笑ったりしてたし」
私と奈々だって、とりとめもない話が楽しくていつも一緒に話してるわ。
「家に帰ったら弟と遊んだりしてね」
リオくんと弟の真央さんはすごく仲がいいのよね。
「後は好きだった女の子をデートに誘ったこともあったかな」
っえ、それって・・・・。
「その女の子とどうなったの?」
口が勝手に動いて言葉をしゃべる。
「内緒だよ。若かりし頃の思い出だからね」
そう言ってリオくんはビールと一緒にその話しも喉の中に押し込んだ。
「夕月のお兄さんってどんな人なの?」
次のターゲットは私になった。
「ちょっと年が離れてるけど頼れるお兄さんって感じかな」
いつも私を一番に考えてくれる兄。それがとっても嬉しい。
「気さくで話しやすい人だよ。水鏡の家に入ったときに最初に声をかけてくれたからね」
あの頃の私たちって全然お話してなかった。
今になって後悔している。
「夕月とは話はあまりしてなかったの?」
「うん、最初はお互いにどうやって接して良いかわからなくてね」
親友になろうと言ってくれた気持ちは嬉しかった。
でも、本当にどうやって話していいかわからなかった。お互いに同じ部屋にいて一言も会話しない日だって何日もあってそれがイヤになった時だってある。
「でも、いまはラヴラヴ?」
変なところで爆弾を投下する曜子ちゃん。
「ラヴラヴではないかな、仲の良い兄妹、親友、そんな感じにはなれたかな」
そう言って微笑むリオくん。
あたりが真っ暗になり始めた頃には持ってきた飲み物も無くなってきていた。
「さて、そろそろ帰ろうか」
ビールをたくさん飲んで真っ赤になってるリオくんが言った。
私はもちろん、リオくんの提案に従う。
「奈々ちゃんと曜子ちゃんは帰りはどうするの?」
リオくんが尋ねる。リオくんはすでに酒を飲んでるから車で送ることは出来ない。
「お迎えの人を呼ぶ」
「あたしは歩いて帰るかな」
リオくんが少し考えている、真っ暗になってから歩いて帰るのは危険だから。
「それなら奈々は泊まっていったら?もう真っ暗だし危ないよ」
「うん、奈々ちゃんそうしなよ。女の子の一人歩きは危ないから」
今度は奈々が考える。そして返事をした。
「なら、一晩お世話になりますね」
「うん、いいよ」
「それならヨウコも泊まっていく」
携帯電話をパタンと閉じて曜子ちゃんが言った。
「来客用の布団もあるし、狭いかもしれないけど3人で2つの布団で寝たらいいよ。それとも1人は俺の部屋に来る?」
ちょっと困る事をリオくんが言った。
「もちろん、冗談だけどね」
やっぱり、冗談なのね。