シャンパンの香り
第1章
シャンパンの香り
その日は、私の親友と言えるほど
気の合う恵美子といつもと変わらぬ
ガールズトークをエスプレッソの香りに
包まれながら楽しんでいた。
良く、愛敬があると言われる私だが、
親友と呼べる友達は数少ない。
いつからだろうか…❔
傷つかない生き方なんてないのに
自分を偽るようになった。
人は誰でも自分が大事だ。
だけど、自分より誰かを大切にする人生を選択する人もいる…
世間は多数決で良し悪しが決まると思う。
沢山の人々が正しいと言えば、それが世の中では正しいことになるのだ。
一部の少数派は、偽善者扱いされる。
楽に呼吸をして生きるため、常識と言う
仮面をかぶるようになった。
私の仮面は、笑う事だ…
本音は言わない…
辛くても泣かない…
笑うことで、仮面をかぶっている。
恵美子とは同い年で
高校が同じ…
だけど親友になったのは、大人になってからだ…
恵美子と話すのは,子供の話と恋愛話…
2人が仲良くなったのは、お互いシングルマザーになり、お互いに共感したからだろう…
話が恵美子の婚活話へと変わり
恵美子が夢中に話しているのを
私は一つフィルターをかけたように
恵美子の声を聞いていた。
恵美子の、パワーは
私を刺激する。
恋愛に前向きな彼女は
私の後ろ向きな心に
残るくすぶる火種を起こすようだ。
時には彼女が羨ましく
時には自分とは無縁な人に感じる。
そんな気持ちを
恵美子は知らず話続けている時、
会話を遮るように
携帯の着信を知らせる音が響いた。
『もしもし❓』
電話の向こうから
もう一人の親友からの
久しぶりのお誘い…
『今、後輩と試食会兼ねてご飯しているけど、来る❓』
電話越しの親友は、異性の親友だ…
前に女子会で男性との親友は成り立たないとチープな意見交換したことがあったけど、
人間性な魅力と異性の魅力が一致するとは
私は思わない。
ただ女として生まれ、男としてうまれ、
それだけのことだ。
『どこ❔』
私は恵美子も誘い、親友の道端と合流
することにした。
飲食店に勤める道端の味覚には間違いがない。美味しい物を食したい時は、道端との食事は至福の時間だ。
道端が指定してきたお店は
道端らしいワインとパスタを
嗜むお店。
何度も迷い、やっと見つけ
私達はかなり遅れてお店に到着した。
お店の入り口をくぐると
道端と、まだ幼さが残る
1人の男性と共に先に、ワインを
楽しんでいた。
『わかりずらかった❔』
道端が話しかけながらも
私は、その時は空腹が
先立っていた。
道端達が
カウンター席からテーブルに移動し
四人で席に着いた。
一息ついたところで、
道端が、指定した
お勧めのシャンパンで
乾杯することになった。
グラスが奏でる音と、
共に、シャンパンが立ち昇る香りに
少し素直な気持ちになった。