平和な1日(3)
「くっそーーお前のせいで昼飯食えなかったじゃねえかよ。」
「俺らのせいにするなって話だよな。シャフレ。」
「何故僕を犯人の一人に入れようとしてるんだ。君だけだろ。」
そんな話をしながら実習訓練が行われる円形のグラウンド。みんなからは闘技場と呼ばれているところに走っていく。
「だめだ、腹に何もない状態で走るのはきつい。」
「諦めるな、あと少しなんだ、ここで諦めてしまったら今までの苦労は全て水の泡だぞ。」
「その理由を作った張本人が何を言っているんだ。というかお前がさっさと捕まってたらこんなことにはならなかったんだよ!」
さっき夕陽と別れたあと、ティトラを追ってきた先生と合流。そしてなぜか俺までティトラと一緒に逃走。先生をまいたのは実習訓練が始まる5分前だった。
「そんなひどい。友達だと思っていたのに・・・・。」
「今そんなことしてる場合じゃないだろう。ほらあと2分だぞ。」
シャフレの言うとおりだ。このままではマジで遅れてしまう。
「たしかに、やべえな。水野的にはだけど。」
ティトラがそういう。
「まて、おい、まさか俺を見捨てるっていうのか・・・・」
「シャフレは普通に身体能力強化すればいいし、俺は飛んでいったらいい。」
「なあ、誰のせいだとおもってるんだ?ここで見捨てるっていう選択肢をお前は取るっていうのか?」
「お前も俺のこと見捨てただろう。まあどうしてもって言うなら助けてやれないことはないけど・・・・まあ友達だからな。」
「ティトラ・・・・・・。」
「じゃあとりあえず凍って。」
ん?なんでだ?普通に運んでくれたら・・・まあいいか。せっかく俺のためにしてくれるんだ。
俺の周りがどんどん冷たくなっていく。いやそれどころじゃない、どんな生物も生きていくことはできない温度、絶対零度になる。
「はい、凍らしたぞ、でなにすんの?」
「よしOK。電気は通るな。あとは・・・・」
俺の体が空に浮かび上がる。
「おい、まて、何をするつもりだ。」
「良かったな、遅れないで済むぞ。」
そのまま猛烈な勢いで闘技場へと打ち出された。
「クソ野郎!!!!!」
どんどん闘技場が迫っていくにつれスピードが早くなっていく。
「ちょっとまて!!マジで死ぬ死ぬしぬぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
そのまま闘技場の地面に激突・・・・・・
「落ち着けって。お前だったらこの速さで激突したって死なない死なない。」
急激にスピードが落ち、ほとんど顔と地面がくっつくんじゃないかっていうところで止まる。
横を見るとティトラが足からゆっくり着地している。
「俺は力属性じゃないんだぞ。体はマジで普通だからな。」
そう言うと同時に体の浮遊感が消える。すなわち地面とキスすることになる。
「それをいったら俺も体は弱いぞ。」
「お前の場合はほんとうに《体》は、だろうが。」
俺は周りの絶対零度の空間を消した。と同時にすごいスピードでシャフレが走ってきた。
「ほんと早いな、その移動法。僕にもできないのだろうか?」
「黒焦げになってもいいんだったらできるそ。なんなら今試してみるか?」
ティトラの周囲に青白い光が飛び散る。
「いや遠慮しとくよ。」
そう言うとシャフレは自分のクラスの列に並ぶ。
「じゃあまた放課後に会おう。」
「じゃあな。」
「ああ、ばいばい。」
そして俺はティトラと一緒に別の列に並んだ。
「あ、ティトラさん。やっと来たんですか。遅れちゃうのかと心配でしたよ。」
「ごめんね、水野が滅茶苦茶どんくさくてさ。」
その時チャイムが鳴った。
「ちょっと待てや、なんで俺のせいで遅れてたことになってるんだよ。」
俺がそう言うとティトラが意味がわからないと言うような顔をする。
「実際俺がいなかったら遅れてるところだったじゃねえか。」
「確かにそうだけど・・・・・」
「まったくお義兄様、ティトラさんに何難癖つけてんですか。感謝するならまだしも非難するなんて。私、あなたをそんな子に育てた覚えありません。」
「夕陽、いつからお前は俺の育て親になってんだ?というか難癖じゃないから、マジでこいつのせいで遅れそうになったから。」
「と、水野容疑者は混乱した様子で容疑を否認しており、今度精神鑑定が行われる模様です。」
「なんでそんだけで犯罪者扱いされなきゃいけないって精神鑑定!!?狂ってるの?ねぇ俺狂ってるって言ってんの!!?」
「もおぅ、うるさいですねお義兄様。その口閉じさせますよ。」
突然俺の唇のあたりの温度が急激に上がり始める。慌てて温度の上昇を抑える。
「ちょっとまて!おまえまじで俺の口を焼き切ろうとしただろ。」
「お義兄様なら、たとえ全身が焼けただれたところであまり今と変わりがないじゃないですか。」
「おい、いま俺を思いっきり馬鹿にしたよな。言外に馬鹿にしたよな。」
その時、俺らの前の方から声がした。
「ほら、もう授業は始まったのよ。みんな静かに。特にそこ。」
見ると先生が俺らの方を指差している。
「ほらお義兄様がうるさいから注意されちゃったじゃないですか。」
「なんで俺が声を出すことになったと思ってるんだ。」
「いいから黙りなさい。」
俺らが小声で話していると、先生が大声を出す。
「じゃあ、実習訓練を始めます。今日はというか今日もなんですけど、皆さんに何をしてもらうかというと、トーナメント形式で戦ってもらいます。」
「先生またですかー。」
「もう飽きました。」
「別のことしましょうよ。」
それと同時に周囲の子からブーイングがはいる。まあ周囲といっても10人ぐらいしかいないが。
「じゃあほかに何があるって言うんですか。あなたたちが力属性だったら色々練習方法ありますけど、エレメントでしょう。」
急に先生が逆ギレし始める。
「私だってなんか他の事したいですよ。じゃあみんなでなんか考えてみてくださいよ。」
その言葉に周囲の子は黙る。と思ったが横からすっと手が上がった。
「どうしたんですかティトラくん。一応言っときますけど昼寝とかおやつの時間とか帰宅とかはダメですからね、っていうかまだティトラくんとの話は終わっていませんよ。」
「鬼ごっことかどうでしょう。」
「へっ?」
先生が固まった。鬼ごっこ?あの鬼ごっこか?
「どうしたんです?鬼ごっこダメですか?」
ティトラが重ねて言う。
「いや、ダメじゃないんだけど・・・みんな鬼ごっこする?」
「いいですよ。」
「トーナメントよりかましですし。」
「意外と楽しいかもしれません。」
周囲も賛成する。
「夕陽さんはどうかしら?」
先生がどこか希望をかけて聞く。でも無駄だ。夕陽はティトラの言うことなら、
「是非やりましょう。」
基本的に全肯定だ。
「あら、そう?まあ夕陽さんが言うのなら鬼ごっこやりましょうか。」
そうして鬼ごっこが始まった。
そういやまだ説明していなかったかもしれない。
この世界には魔法が存在する。
ああ、魔法っていってもよくあるなんか中二病臭い言葉を詠唱して、どこにあるのかもわからない魔力を使って火の玉ドーンとかいう魔法は存在しない。
じゃあどんな魔法が存在するのか。
多分みんなが考えているよりももっと簡単に使える。まず詠唱をする必要はない。
というか一言も喋る必要はない。
そして魔力も必要ない。
というか何も必要ない。
ただ念じたらいい。
まあ実際には魔力もあるっちゃあるのだが、少し説明が難しいのであとで話す。
ただやっぱりそんな万能な物は存在しないわけで。結構重要な欠点がある。
ではどんな欠点があるのか、それはたった一つの属性しか使えないということだろう。
人は生まれた時からただひとつ適性のある魔法属性があり、その魔法しか使えない。これに例外はない。
ではどんな属性があるか。
最もポピュラーなのは力属性。というかほとんどの人がこれ。
大体人口の98パーセントがこの属性。
魔法の特性は身体能力の上昇。
それだけ。
ほかに能力はない。まあそれでも結構強いんだがそれだけだ。
そして人口の約0.9パーセントを占めるのが念動属性。
魔法の特性は読んで字のごとく遠くのものを念じて動かす。この二つがとてもポピュラーな属性だ。
ここまで書いたらわかると思うが、この二つの属性だけで人口の99.9パーセントを占めている。だから実際火の玉ドーンができる人はとても少ない。
ではそのとても少ない自然を操ることができる人、通称エレメントというがその人たちは人口の約0.08パーセントしかいない。
ちなみに操るといってもすべての自然が操れるんじゃなくてたった一つの属性、炎なら炎、風なら風といったような感じのものしか操れない。
そしてエレメントと言われる属性は炎、風、雷、土、氷の5つある。
まあその他上位エレメントと言われる光、闇とかレア属性とかあるけれど、そんな話をしたって今のところ意味はないので割愛しておく。
とここまで話してやっということができるのだが、魔力の話だ。
魔力の量は使える量には関係ない。関係あるのはその魔力の量による起こせる現象の規模である。
力属性なら魔力の量によって身体能力の強化率が変わる。
エレメントは起こせる事象の規模が変わるのではなく、その事象を起こせる範囲が変わる。
どんなように変化するのか、それはおいおい記していくとしてだ。
「なんで俺まで鬼ごっこの鬼になってるの?」
「そうですよ。なんで俺が鬼なんですか!」
「いやお前は言いだしっぺだろうが。でもなんで俺まで巻き込んでんだ。」
結局鬼ごっこをすることになった俺たちは誰が鬼になるかといことになった。
「当然鬼はティトラくんよね。」
アントン先生が言う。
「ちょっと待ってください。まさかおれが一人で鬼をやれとか言うんじゃないでしょうね。」
「確かにそれもそうね。じゃああと一人誰にやってもらおう・・・」
やばい・・・絶対に目をあわせるわけにはいか・・・・
「水野君でお願いします。」
「何言ってんだお前は!!!!!」
という事で鬼になってしまった俺たちは
「えーじゃあ10秒数えるんでみんな逃げてくださーい。」
「その前にルール説明ルール説明。」
「じゅうー、きゅー・・・」
「ガン無視かよ!!!」
そうやってティトラが数を数えてる間にどんどん人が消えていく。
「いや、お前らも待てや!」
「なーな、ろーく、」
くそ、全員まったく言うことを聞かねえ・・・・
「ごー、43210」
「ああ、もう終わったか・・・ってはやーーーーーーーーーーー。」
「さー捕まえよぉー。」
「思いっきり、お前ズルしてるよな。」
いきなりこの鬼ごっこグタグタだな。
「小さいことは気にしない。さあ早く凍るんだ。」
「なあ、なんで凍らなきゃいけないんだ、明らかに俺を弾にする気満々じゃねえかよ。」
「そのほうが早く終わるし。お前も早く終わりたいだろう。」
「それもそうか・・・・。」
今回の鬼ごっこは俗に言うケイドロみたいなものである。
鬼の勝利条件は制限時間内に全員を捕まえること。
逆に人間の勝利条件は誰かひとりでもいいから制限時間まで捕まらないこと。
あと捕まえられた人はまだ捕まってない人にタッチしてもらえばまた逃げれる。
「じゃあ、はい凍らせたぞ。」
「ええと、じゃあ今からどこにいるか探してみる。」
うん?どうやって探すんだ?
「おーあんなところにいるのか・・・ってみんな変なところにいくな・・・。」
俺の体が浮遊感に包まれる。
「ほーらいってこーい。」
そして俺は空へ飛んでいった・・・・・え、空?
「なんで鬼ごっこなのに空に向かってんの!!!!!」
しかしもうティトラには聞こえないらしく、帰ってきた言葉は
「そっちは任せたー。」
という言葉。え、じゃあ空に人いるの・・・・・・
よく見るとなんか小さな点が3つぐらい見える。と思ったらすぐに近づいてきて普通に見えてきた。
「げ、まさかここで見つかるとは・・・・って早!!!!」
そのまま一人に突進していく。まずは一人!そのままタッチしようと手を伸ばす・・・ん・・?タッチ?
そして俺はその一人を通り越していった。
「うーわ、つかまった。おれ一番最初じゃね。」
いや、君タッチしてないからね。といかあのスピードでタッチできないからね。したら手もげるからね。
まあでもあと二人。このままいったら二人共捕まえれる。
「あれ?あのミノムシみたいな姿は・・・お義兄様?」
「え?夕陽の兄ちゃん?って鬼じゃなかった?」
って飛んでるの夕陽かよ!というかお前は俺をなんだと思ってるんだ!
「誰がミノムシだミノムシ!」
少しずつスピードが下がっていっている。うん、このスピードだったら手がもげることはないだろう。
「はい、捕まえた。」
よしこれで夕陽は捕まえることができた・・・・
「エスナガード!」
と思ったらその隣にいた女の子が俺に向かってきた。
「え?」
「やばっ!!」
急いで俺は絶対零度を解く。そしてその女の子を抱き止めた。
「あっ・・えっ・・・」
「お前は鬼か!!!!危うく人殺しなるところだったぞ!!!!」
「今のところ鬼はお義兄様ですよぉ。じゃあ私はこれで。」
そう言うと夕陽はどこかに飛んでいく。
「あっ!まて!」
急いで行こうとするが俺自身に空を翔ける能力は無い。すぐに見えなくなってしまった。
「ああ・・もう・・。」
しょうがない諦めるしかないか。あれ?なんか忘れてるような
「は・・はな・・・・」
そういや・・女の子抱きしめたまんまだったぁぁぁ!!!
「ごめんごめん。」
俺は急いで離す。とりあえず相手が混乱しないように相手が興奮しないようにゆっくり話そう。
「俺の従姉妹がすまん。あいつもいつもはそんなに悪い奴じゃ・・・」
ん?いや待てよ、そんなに悪いやつじゃないのか?今までの行動からするに普通に悪い奴じゃないか?
「あ、あのぉ・・・」
「いやごめん。やっぱあいつ悪い奴だ。あいつとは縁切ったほうがいいよ。」
「そ、そんなことより、おちてるけど大丈夫なんです?」
「え?」
そういえばここは空。俺は空を翔ける能力などない。結論落ちる。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
いま思ったらさっきの子が上の方にいるなと思ったんだよ!!
「落ちるーーーーーー」
ああ、俺の人生もここまでか。さよなら今世、こんにちは来世。だんだん地面が近づいて・・・・来ない?
「大丈夫です。私が風で浮かしてるので。」
さっきの女の子が上から降りてくる。
「夕陽ちゃんのお兄さんですよね。」
「まあそうっちゃそうだけど・・・従姉妹だからね。そこは間違わないでね。」
「分かりました。お兄さん。うーん、夕陽ちゃんから聞いてたのと結構違う。」
こいつ、話聞かねえ・・・・・やっぱ類は友を呼ぶっていうのか・・・
「あのさぁ、夕陽からどのように俺のこと聞いてたんだ?」
そう俺が聞くと少しビクッとして
「聞きたいですか?」
聞いてきた。
「いやいいです。まあ俺はその夕陽がいったような人じゃないと思うからこれからよろしくね・・・えっと。」
やべぇ名前きいてねぇ。
「エスナ。2年B組嘉宮エスナです。」
夕陽と一緒のクラスか・・・
「じゃあ夕陽と一緒のクラスなんだ。」
「はい、そうですよ。お兄さんは3年生ですよね。」
「いや、2年A組だよ。」
「え!?」
エスナが驚いた顔をする。
「いや、だって、ずっとお兄さんお兄さんって・・・・」
「生まれたのが俺のほうが1ヶ月ぐらい早いんだよ。」
「うそー・・・」
「嘘じゃない嘘じゃない。」
なんだ、この子話を聞かない子じゃなかったのか。
急にエスナがしゃがみ始める。
「恥ずかしい・・・・。」
「気にするなって、夕陽が悪いんだから。」
それでもしゃがんだまま向こうを向いたままだ。
「ほんとにすみませんでした。紅さん。」
「水野でいいよ。」
「いや、とても下の名前で呼ぶわけには・・・・」
「俺もエスナって呼ぶし。そっちも水野って呼んでよ。」
「うん・・・・分かった。これからよろしくね、水野君。」
そこでやっとエスナは立ち上がった。
「まあ、じゃあとりあえず降りようか。こんなところにいてもただ怖いだけだし。」
さっきから足が地面に無い感覚を味わっているとなんかずっと落ち続けているような感覚になるんだよね。
「私も捕まっちゃいましたしね。早く降りましょう。」
俺はその捕まえたという言葉でエスナを抱きしめたことを思い出す。あの柔らかい体。夕陽とは比べ物にならねぇ。え、夕陽も女の子だって?あれはおんなじゃねぇ人の皮かぶったなんかだ、なんか。
そのままお互い色々な話をしながら降りていく。
「エスナさんは風属性?」
風属性、魔法特性風を操ること。だが風属性の特徴として魔力の量が少なかったとしても強さは変わらないということがある。
「はい、見ての通りです。水野さんは?」
なぜかというと例え半径1メートル内しか風を操れなかったとしても、その風を圧縮したら自然の摂理に従ってまた1メートル圏内に空気が入ってくる。
この繰り返しで物凄い量の風を操っている事と変わらないかららしい。
「夕陽から聞いてなかった?氷属性だよ。」
氷属性の不憫さはほかのすべてのエレメントが出てきてから話そう。多分この悲しさがみんなにも分かってくれるはずだ
「そうなんですか、夕陽ちゃんから聞いたときには兄属性とかなんとか言ってましたけど。」
なにその属性、俺も初耳なんだけど。
「あ、そろそろ地面です。」
エスナがそう言うので見てみると、ティトラがこっちに向かって手をふってんのが見えた。
「おーい、何してんだよ。早く降りてこーい。」
そして檻の中には大体10人ぐらい収容されている・・・・ってはや!!!!
「水野が捕まえたので多分全員になるはず。」
そのまま地面に降り立つ。やっぱ地面最高!もう二度と空なんか行くものか!
「ええと・・・私はこの中に入ってればいいんですか?」
エスナが俺に聞いてくる。
「うん、そうだよ。」
「なぁ、夕陽ちゃんはどこにいったの?お前が捕まえてるはずだろう?」
と同時にティトラも俺にきいてくる。
「ああ、確かにいたけれど捕まえそびれたんだよね。ごめん。」
その時、ティトラの顔色が変わった。
「ということはまだどこかにいるっていうことか?」
ティトラの周りに青い光が飛び散り始める。
「まぁ、確かにそういうことになるが・・・見つけたのか?」
「ああ、今南東の方向から物凄いスピードでこっちに向かってきている!!!」
そう言いながらその方向に顔を向けるティトラ。俺もその方向に顔を向け・・・
「違う!!それは北西だ!!!」
「じゃあなんでお前はこっち向いたんだよ!!!」
しょうがないからティトラと逆の方向を向く。すると小さな点がだんだん大きくなっていくのが見える。
「おい、どうするんだティトラ」
未だ俺と反対方向を向いているティトラに聞く。
「凍るんだ。もうそれしか手はない。」
「それ、最終手段!!!!もっとほかの方法あるだろうが!!!」
「俺だってこんな手段は取りたくない。ほかに手があるならそうしてる。」
「自分でいけやーーー!!!!!というかいい加減こっち向け!!!!」
「よし、準備は整ったようだな。いくんだ水野。」
「整ってねぇ!!!!やる気もねぇ!!!!おい、待て、今やったら痺れる痺れる!!!」
青い光、いやもうここまで来たら普通に書こう。雷が俺に向かってくる。
というかもう向かってきていた。
「ギャバばばばばばばばばばばばばばば!!!!!!」
慌てて絶対零度にする。すると俺の体が浮遊感に包まれる。
「よし水野逝けぇ!!!!」
そして俺は打ち出された。
そう。ティトラは雷属性。別名万能属性。
魔法特性はその名前のとおり雷を操れたり、生み出したりする能力だが、他の属性と比べてやれることがめちゃくちゃ多い。
まあ雷を生み出すのは普通として、磁場を作ってものを浮かしたり飛ばしたりすることも、自分の体に電気を流して全く予備動作なしで動くことも出来る。
エレメントの中で力属性とまともに肉弾戦やって勝てそうなのは雷属性ぐらいというぐらいなんでもできる。だから万能
そして俺は夕陽と対面する。
「またお義兄様ですか。残念ながらあなたに私は捕まえれれませんよ。」
「|ほんはの、はっへひはいほはかははい。《そんなのやってみないとわからない》」
だめだぁ、痺れて声が出ない。
そのまま夕陽がどんどん近づいてくる。俺は痺れた手を懸命に伸ばす。
「かかりましたね、お義兄様!!!!」
突如夕陽の横から炎が躍り出て爆発を起こす。
「はひ!!!!」
それの影響で夕陽の体は横にずれる。そう俺の手の届かないところまで。
しかしまだ終わっていなかった。
「詰めが甘いよ、夕陽ちゃん!!」
後ろからそんな声が聞こえたかと思うと横にありえないGがかかった。
やばい、気が遠く・・・・・・
どん
そして俺は夕陽にぶつかった。俺らはそのままのスピードで地面に叩きつけられる。
「いったった・・・・もうお義兄様ぶつかる時はちゃんとぶつかるよと言ってからぶつかってください。」
「げほ、げほっげほ、」
だめだ、あたった時の衝撃が大きすぎて言葉がしゃべれない。
「今度から気をつけてくださいね。」
なんか物凄い理不尽なことまた言われてる気がするが今は何も考えることができない。ってなんか重い
「ん?お義兄様、大丈夫ですか?ナメクジのような顔がもはや蛆虫のような顔になってますよ。」
いったいどれくらいの顔の変化があるのだろうか。というかやっぱ重い。腹の上になんか乗ってるような気がする。いや気がするじゃない絶対誰か乗ってる。
「夕陽、どいてくれ、重い。」
ちゃんと見てみると、やっぱり夕陽が俺の上にいる。というかあの状態で夕陽以外上に乗る奴はいないだろう。
「私は重くないです。」
しかし夕陽に動く気配はない。重いと言われたことに腹が立ったのだろうか。
「わかった、わかった。お前は重くない、重くないからどいてくれ。」
「重くないなら退く必要はないのでは?」
依然として夕陽は動かない。なぜだ!
「分かりました、お義兄様がどうしてもと言うのであれば、どきましょう。ただし、私のことをお義姉さまと呼んでくれたらの話ですが。」
またかよ!どんなけお義姉さまって呼ばれたいんだよ!まあいいかそれでどいてくれるならさっさと言おう。
「わかったよ。お義姉さま俺の体からどいていただけないでしょうか?これでいいのか?」
「え・・・・。」
「ほら言ったぞ、早くどけ。」
「う、うん・・・。」
体の上の違和感がなくなる。なんか妙に聞き分けがよくて調子抜けした。
やっぱり根はいいやつかもしれない。
「ちなみにお義兄様、もう一度いってもらうことは・・。」
「あほか、言う訳無いだろう。」
「え~~いいじゃないですか、お義兄様。」
前言撤回、やっぱ駄目だこいつ。
で、今まで読んだら分かるようにこいつが炎属性。魔法特性は炎を操ること。
しかし炎属性最大の特徴は魔力量に対しての現象を操れる範囲、通称レンジというがそれがとても広いということだ。
ここら辺が氷属性が不憫に思われるところなのだが、同じ魔力でのレンジの広がり方は、炎>雷>風>>土>>>>>>>>>>>氷と言うような順序になっている。だから炎は少ない魔力でもでとても広い範囲を操れるのだ。
ただ、弱点もあるっちゃある。
炎属性が上昇させれる温度は1秒間に1000度。だから温度が上がるスピードが遅いというところぐらいだ。
それも元から炎を作っておけばいきなり10000度だって可能だし、後ろから炎を出してその推進力で移動することもできるし、あんまり困らない。
「という事でティトラ、夕陽捕まえたぞ。もうこれでほかに捕まっていないやついないんじゃないの?」
相変わらず俺がいった方向と逆方向を向いているティトラに話しかける。
「いや、まだだ。まだ一人いる。」
だがティトラから帰ってきた言葉は思わぬものだった。慌てて牢屋の中に入っている人の数を数える。1,2,3・・・ちゃんといるぞ。
「いや、ちゃんと学内エレメントと同じ数だけいるぞ。」
「いや、違うそいつは生徒じゃないんだ・・・・いまだ!!!」
はぁ?生徒じゃない?どういうことだ?
突然牢屋の中の地面が割れる、と同時にティトラの体がぶれる。
「はっはっはっ誰も先生が鬼ごっこをやらないとは誰も言っていなぁぁぁぁぁ・・・・」
「しってますよ先生。だから捕まえに来ました。」
下から顔を出している先生とティトラの顔があう。
「・・・・・・見逃してくれない?」
「わざわざ自分から牢屋に入りにきた囚人を逃がす警察官もいないでしょう?」
こうして鬼ごっこは鬼の勝利で幕を閉じたのであった。
あっ、氷属性と土属性の説明忘れてた。また後で話そう。
今回は設定の説明だったので面白くなかったかもしれません。そろそろ説明は終わると思うのでよろしくお願いします。