3 帰り道って、こんなに遠かったっけ…
「で、どっちに曲がるの?七條くん」
正門を出ると、真っ正面、右、左、と道が別れている。
「マジで帰れ…俺はお前と違って目立ちたがりじゃねえんだよ」
目が死んでる七條は、表情をなくしていた。
「んー、こっち?」と左を指す七宮。
「ちげえよ。こっちだし」と右を指す七條。
「ふーん。じゃ、行こっか!」
そこで七條は気づいた。七宮に乗せられたと。
(しまったああ!!何教えてんだよ俺!)
「ん?どうしたの七條くん」
ニヤけている七宮。道を聞きだすのに成功したので調子に乗っているのが分かる。
「うるせえよ!!お前ほんと帰れ!!」
「何言ってんの七條くん!私もこっち方向だよ!」
「はあ!?嘘つけ!」
「なんで?だってこの前、駅まで一緒だったじゃん」
そこで七條は思い出した。
この前、入学式の遅刻の罰として翌日学園に来た帰り道、七宮と駅まで一緒だった事を。最悪だと思った事を。
「そうじゃん!!一緒じゃん!って、道聞き出す必要ないだろうが!!」
ツッコむ七條。
「今の状態でも聞き出せるか実験してみた!」
「くそおお!!さっさと駅行くぞこのどS!!」
「言われなくても行くよこの恥ずかしがり!」
そして2人は駅へ向かった。
駅は「梨原学園前駅」という、これまた広大な施設である。
よく観光などで訪れることが多いため、土産屋が充実しており、デパ地下なんかもある。
地元民はよくここで買い物をしている。
なので、どんな時間帯であろうと、この駅は混み合っている。迷子だって多い。
そんな七條は迷わず改札まで行き、定期で通った。七宮も改札を通る。
「じゃ、今度こそじゃあな!」
嫌味を込めて言う七條。
「何言ってんの七條くん!まだこれからじゃないか!」
笑顔で返す七宮。
「…嫌だ!帰れ!!つかお前も定期だろ!行ける訳ないから帰れええ」
「定期じゃないよー?ほら!チャージできまーす!」
七宮はカードを見せびらかす。確かに定期ではなかった。
七條は怒りがMAXになった。
「なんで定期にしないんだよ…そっちのが安いだろ…?」
「んー、お母さんが自分で管理しろって言うからなんとなく」
「なんだソレ!!定期でもいいだろ!!」
『3番線に列車が到着します。黄色い線から…』
七條を抑えるようにアナウンスが入った。
「電車来ちゃったじゃん!ほら早くしろ!」
七條は走った。
そう言われた七宮は一瞬驚いた。
「…うん」
七宮も走る。
「変な奴だなあ〜」
七條みたいな奴、いるわけない☆