日常
ココから本編!!
カーテンの隙間から漏れた光が忌々しい朝を告げる。
毎度毎度やってくる朝が嫌で嫌でたまらなかった。
楽しい夢の時間から無理やり退屈な現実の世界に引き戻される。
いや夢が楽しいだなんて感じたことは無い。だが現実よりは幾分かマシだってくらいの話だ。
もっと遅くまで寝ていたい。せめて12時くらいまで。
男はそう思いベッド脇にある時計に目を移す。
時計の針を確認し、落胆する。
13時。
通りで腹が減るわけだ。
男はベッドから出るとひとまずシャワールームへと向かった。
毎朝の日課だが、今日に限ってはずいぶんと遅い。
だが昼間に浴びるシャワーと言うものも案外心地いいものだった。
寝ぼけていた頭が回転をし始めるのが分かる。
だが憂鬱なのは変わらない。
濡れた身体をバスタオルで拭きながら今日するべきことを頭の中で整理してみる。
遅い朝食を食べる。
残念ながら今日することは他に無さそうだ。アイツが催促さえしてこなければ。
男は自分の存在意義の無さに嫌気がさした。
とはいえネガティブなことばかり考えて入られない。
男はシャワールームから出て、着替えを終える。
とりあえず朝食にしよう。腹に何か入れれば、やることも出来るだろう。
キッチンの冷蔵庫からいくつか冷凍食品を取り出す。
ラザニアにチーズパスタそれにコーンドッグ。
1人で食べるには少々多いが、気にすることは無い。どうせ昼食も兼ねてる。
それらを大き目の電子レンジにまとめて放り込みスイッチを押す。
温まればそれでいい。味なんて二の次。腹に入ればどうせみんな一緒。
温まるのにはしばらく時間がかかりそうだ。
何も考えずただ阿呆みたいに電子レンジを眺めるのもいいが、流石にそれは気が引けた。
男は仕方なくキッチンの小さなテレビの電源を点ける。
チャンネルを回しニュース番組をテレビに映す。
カチッとしたスーツを着た男性が昼のニュースを熱心に語っている。
政治がどうこう、事故がどうこう、殺人がどうこう……。
男にとってそのどれもいまいちピンとこなかった。
ただただイタズラに情報が押し寄せてくる。
どうやらテレビを点けたのは失敗だったようだ。
やはり何も考えずに電子レンジを眺めていた方が性に合っている。
真っ赤なそれを眺め続ける。
このままずっと眺めていれば、全ての悩みが消え去るのかもしれない。
このままじっとしていれば、全ての答えが出るのかもしれない。
そんなことすら考えてしまう。いや、もしかすると本当に……
だがそんな考えをかき消す様に電子音が終わりを告げる。
電子レンジが調理を終えたようだ。
男はキッチンミトンをし、料理の入った器を取り出していく。
改めて考えてみるとさっきのことはあまりにもばかばかしかった。
よもや電子レンジで悟りを開くなどこの世界の誰もが想像できないだろう。
そう思うとなんだか笑えて来る。
1つ悩みが消えたような妙な清々しさすら感じていた。
朝食を食べるのにはこれぐらいのきもちがちょうど良いのかもしれない。
さぁ食べよう。料理を口元に運ぶ。
そんな矢先、ドアベルが鳴り響いた。