第一話 威圧感が半端無いです
タッタラ~♪
「ここが東京か・・・でけ~」
何十階建てもあるようなビルや街を行き交う人の多さに空は思わず本音をこぼしていた。
黒髪黒目、平凡な顔の作りに身長も年相応といった所だろうか、真新しい制服を着ている。
彼は現在十五歳だ。
「高校ってどっち方面だっけな?案内板でもあればいいんだが・・・」
東京のレンガ街をキャリーバックを持ったままうろうろし始めてからおよそ二十分後警官の人に道を尋ねてようやく通学路にのることができた。
「東京ってホンと迷いそうだな」
愚痴をだらだらと洩らしながらキャリーバックを軽々と持ち上げて階段を上る。
そのひ弱そうな腕にどこにそんな力があるのかと問いたいほどだ。
少し歩くと空は同じ制服を着た集団を前方に見つけた。
だがその集団は傍目から見てもある意味で異常だ。
「(男女比一対五とかすげぇな)」
背が高い少年を五人の少女達が囲んでいる。正直言ってどこぞのハーレムだと口にしそうな雰囲気をかもし出していた。
しかもその全員が美少女ときた。中央に立つ少年は困ったような笑いを浮かべている。男なら誰しも憧れるとは限らないがやはり羨ましいというものか。
「(それにしても・・・威圧感を感じるな)」
空はどこかその集団から威圧感という様な物を感じ取っていた。しかもそれをどこか抑えている様な感じすらする。特に中央を歩く少年の威圧感は異常なほどだった。
空の腕に鳥肌が浮かぶ。前世で人とは関わらなかった為か威圧感などそういうものに空は極端に弱い。
空がその集団を追い越すとき不意に少女達の真ん中を歩いている少年と目が合った。
その目付きはどこか観察しているようである。
だがすれ違いの際の一瞬で気付けというのも酷であったか、空は気配は察したものの威圧感に押しつぶされそうになっていたのでその視線にこめられる意味には気付かず一刻も早く威圧感から逃れようと足早に追い越していった。
学園のすぐ近くまで来ると同じように登校する生徒たちが目立ってきた。
そして空は察する。
「(まさか・・・いや否定する材料もないが・・・)」
登校する生徒たちは一人だったり二人だったりとしたがその全員が一様に威圧感を持っていた。
「(いや、まさかね・・・)」
空の頭の中で様々な予測が成り立っては折れ、そしてまた成り立っていく。
空の顔は平常心を体現したかのように穏やかだったが心の中では極寒の中に放り込まれた子供のように震え、腕には大量の鳥肌が消せずに恐怖を表す。
「(まさかみんな俺と同じ転生者だなんて・・・ないよね?)」
もしもそうだった場合この威圧感に毎日耐えていけるのかと自問・・・即答で不可能。
「(誰か・・・俺を助けてくれ!)」
少年の名は篠神空。前世をシノン=ソラとして生きた少年である。
「誰か・・・誰か俺をこの重圧から救ってくれ~!」
篠神空
前世の名はシノン=ソラ。前世で人と関わらなかった為か人が出す威圧感や重圧感に極度に弱い。実家は田舎のおじいちゃんおばあちゃんばかりの所だったので耐性が無くても生きていけたが・・・