第3話 未希のものがたり エスコンの庭で
伸子の次女、未希。
幼稚園の先生をしながら、六歳の娘・凛を育てている。
学生時代は東京で幼児教育を学び、教員免許も取得した。
卒業後は北海道に戻り、実家の近く・江別で家庭を築いた。
行事が続き、長旅から戻った母の顔を、なかなか見に行けずにいた。
休日の今日、未希は北広島へ向かった。
母・伸子が暮らす街には、二年前にできた球場――エスコンフィールドがある。
未希は娘の凛を夫の実家に預け、エスコンフィールドで紙芝居の読み聞かせをする予定だった。
エスコンフィールドは札幌ドームに次ぐ広さを誇る。
試合がない日でも、芝生を歩いたり、子どもたちが遊んだりする人でにぎわう。
よちよち歩きの子が転んでも泣かずに立ち上がる姿に、周りの人も思わず笑顔になる。
未希の紙芝居は二度目の公演。
リピーターの子どもも見に来ていた。
「ここは、地下のお水を増やすために大切な場所なんだよ。
雨が降ると、お水が地面にしみこんで、地下水が増えるんだ」
シマエナガちゃんが、博士のように説明する。
「へえ、へえ、へえ! しまえなが博士、すごいこと知ってるね!
公園が地下水を増やすお手伝いをしてるんだね!」
キュンタも目を輝かせて応える。
紙芝居の世界に、子どもたちがぐっと引き込まれる。
未希の周りには、親子が集まり、その姿を見守る人もいた。
ジャンパー姿の親たちの後ろに、義母・春江が凛と手をつないで立っているのを未希は見つけた。
紙芝居が終わると、温かい拍手が起きる。
満足そうな未希の顔を見た凛が、そっとささやいた。
「はるえちゃん、本番はこれからだよ」




