表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/103

子爵令嬢の相談の解決

ブックマーク、評価、誤字報告 ありがとうございます。

「忘れていました。まだ他の可能性があります。お時間は大丈夫ですか。今一度ソファーにおかけください」


「はい?」


 レスリー嬢と侍女は怪訝な顔をしつつも元の位置に戻る。

 テーブルの上に『魔法収納袋』から水晶布団に乗せた『水晶球』と『古いコインをペンダントトップにしたネックレス』を出す。


「こちらの『水晶球』は知っている人物や場所などを見ることが出来る『魔法古物』です。覗き込んでいただきますと私が今見ているものがそちらからも見えます」


 二人が『水晶球』に顔を寄せ中を覗き込むと、そこはここの近くの市場の景色で人々が行きかい、商いをしている様子が伺える。


「まぁ、人々が本当に映って‥‥」


「これは今現在の市場の様子です。今日は紫イチゴの新鮮なものが入っているようですね」


 そこから人の目線の高さで通りを移動し通りをいくつか抜けると、うちの店の外観が現れる。その窓に近寄り建物の中を覗こうとしたとき、レスリー嬢が『水晶球』から目を離し徐に後ろを振り返った。レスリー嬢は吃驚する侍女の横の窓をじっと観察している。

『水晶球』には室内からこちらをじっと見つめるレスリー嬢が移っており、侍女は窓と『水晶球』を交互に見て首を傾げている。レスリー嬢は私に向き直って言った。


「これだったのですね。視線の正体は」


「はい。確定ではないですが、その可能性は高いかと。お嬢様はどうやら感知系の能力が人より高いようです。通常は『水晶球』で見られていても解る方はいらっしゃいません」


「?? ではどうして最初から教えて下さらなかったのでしょうか」


「お嬢様は先ほどまで別の何者かから『水晶球』で覗かれていました」


「「‥‥‥」」


 さっきまで覗かれていたという事は今まで視線を感じた時も同様に覗かれたいたことに思いが及んだのだろう二人の顔色が悪くなる。部屋で寛いで知るとき以外の着替えやお風呂や諸々の時も‥‥。


 顔色を青くして絶句した二人に入口の『ドアベル』を指し示す。


「あちらの『ドアベル』は魔法の掛かっている人物や掛けられている人物が入ってきたときに判別する『魔法古物』になっております。通常は「カランッ」という短い音が鳴りますが魔法を感知すると「カラララランッ」と長い音が鳴ります」


 二人の視線が『ドアベル』に注がれる。


「ですので、ご入店の段階で何かしらの魔法がお二人もしくはどちらかに掛かっていることは解っておりました。そしてこちらの『モノクル』は魔力を可視化してみることができます。通常は『魔法古物』かそうでないかの判別に使っているのですが、その人物に魔法が掛かっていても判別することができます。お話を聞くとお嬢様に魔法が掛かっている可能性が高かった為,こちらを使用したところお嬢様に何かしらの魔法が掛かっていることが解りました。何者かがこちらの様子を伺っている可能性が高かった為、同意を得ずに『魔法古物』で確認してしまったこと陳謝いたします」


「‥‥お気になさらないでください。それで今はその何者かは?」


「はい、先ほど一度お帰りになろうとしたときに魔力の反応は消えました。お嬢様の発言から『透明を見破る杖』の話をしていて『水晶球』のことに触れなかったので安心したのかと思います。『水晶球』の中には映像だけでなく声も聞けるものもありますので何者かが覗いている間は下手なことを言えませんでした」


 今は覗かれていないと聞き、顔色は悪いままだが少しほっとした様子を見せる。


「それで‥‥一旦『ワンド』の話を‥…」


 トレイに乗せた『古いコインをペンダントトップにしたネックレス』の方をレスリー嬢の方へ押し出す。


「そしてこちらが『水晶球』などの探知系の魔法を妨害する『護符:アミュレット』になります」


 レスリー嬢の前の『ネックレス』を指し示した後、『水晶球』を再び指差し視線を向けて貰う。


「『水晶球』の奥をよく見てください」


『水晶球』は店の外の通りから窓の中の、屈んだ侍女とソファーに座って『水晶球』を覗き込むレスリー嬢の後ろ姿を映し出している。その二人の視線の先にはテーブルの上の『水晶球』があるが、その先のソファーには誰も座っていない。


 レスリー嬢は『水晶球』の中の空席のソファーと目の前の私を見比べて、目を瞬いている。

 私はブラウスの中から机の上にある『護符:アミュレット』と似たようなネックレスを出し一旦外し『水晶球』の中を指差す。

 そこには二人の後ろ姿と『水晶球』の向かいにソファーに座った私がいる。


「まぁ」


 再び、ネックレスを付ければ、『水晶球』の中の私は消える。

 貴族令嬢としてはちょっと問題だがレスリー嬢の小さな口がまあるく開かれている。侍女から視覚になっているから怒られることもないだろう。その侍女の口も開いているし。

 よくよく見れば私の座っているソファーに一人分の沈み込みがあるがパッと見た目には誰も居ないようにしか見えない。


「このようにこの『護符:アミュレット』を身に付けていれば『水晶球』で覗かれることも音を拾われることもありません。ですので覗き見している者から見たら来店してからずっとお嬢様は誰も居ないところへ独り言をお話ししているように見えていたことでしょう。会話もお嬢様の発言だけが聞こえていたことになります」


「そうなのですね。魔法の品というのは凄いものですね」


「そうです。そしてその覗き見している者が魔法使いであれば『護符:アミュレット』というものの存在も知っているはずですので、こちらが付けている事にも気が付いている事でしょう。とりあえずどうぞ、付けてみてください」


 侍女がスッと動きトレイの『護符:アミュレット』を手に取ると、じっと観察してから後ろ髪を上げたレスリー嬢の後に回り装着した。

 途端、『水晶球』の中ではソファーセットには誰も座っておらず、侍女だけ立っているのが映し出されている。


「こちらは当面、肌身離さず身に付けていた方がよろしいかと思います」


「ありがとうございます。本当に」


 レスリー嬢は胸の前のペンダントトップを握り締める。


「ところで『水晶球』は魔力の操作が難しくしっかりと魔法の勉強をしていないと使えないものなのです。はっきり申しますと魔法使いでないと。お心当たりはございますか?」


「‥‥婚約者が初級の魔法使いです‥‥‥」


「そうですか。急に『水晶球』でお嬢様の姿が見られなくなった時に、ここまでお嬢様に固執している人物がどういう行動に出るか分かりません。十分な対策が必要かと思いますが逆に決定的な犯罪の証拠を掴めるチャンスでもあります」


「‥‥なるほど、『水晶球』で見ているだけでは誰がそれをやっているかが解らないのですね」


「そうです。自供なり何なり決定的な証拠を突き付けられないと言い逃れされてしまう事があります。ですので‥‥‥」


 その後、想定されるいくつかの対応策を伝授しレスリー嬢と侍女は熱心に聞き入っていた。

 また、いくつかの『魔法古物』を追加で貸し出し、次期子爵夫人にも詳細の説明を一筆認めておいた。


『水晶球』は犯罪に使われる可能性がある登録が必要な『魔法古物』に含まれることもあり二人の帰宅後、魔法公安委員会へ『魔法古物』が犯罪に使われている可能性がある旨、連絡を入れる。これは『魔法古物商』としての義務である。もちろんその旨、レスリー嬢には許可を得た。

 もし件の婚約者様の家が『水晶球』を所持してちゃんと魔法公安委員会に登録しており、子息が勝手に使っていた場合は家は『魔法古物』の管理責任を問われる。登録していない場合は今はまだ登録猶予期間なので厳罰は無いかもしれないがそれなりの罰金等が科せられることだろう。




 後日、レスリー嬢からお礼の手紙が届いた。

 あの翌日には婚約者から面会の要請があり子爵家で会い、何か『魔法古物』を持っていないか問いただされ『護符:アミュレット』を見せたところそれは『呪いの品』だから外した方が良いと言われたそうだ。怪しい『魔法古物商』に騙されているんだとか言ったそうだが、その段階でなんで『魔法古物商』に行ったこと知っているんだって話になる。

 レスリー嬢が拒否するとローブの下に隠した『ワンド』で何か呪文を唱えたらしい、しかし対策として『呪文返しの指輪:スペルターニングリング』をしていたレスリー嬢には効かず、効果は使用者の婚約者に現れた。

 すなわち、レスリー嬢に『魅了:チャーム』されたのである。想定されていたパターンの2番である。

 そこからは侍従として潜入していた魔法公安委員会の役人の前で、レスリー嬢に問われるまま自分の悪行を洗いざらい自白した。

 家の宝物庫から勝手に『水晶球』を持ち出し空いた時間があればレスリー嬢を覗いていたそうだ。

 その告白の場には証人として魔法公安委員会の役人から始まって子爵夫妻、次期子爵夫妻、婚約者の侍従さらには法的に最も信頼のおける公証人も同席していたのだが、レスリー嬢が誰か他の男に取られてしまうのではないか? 今どこで何をしているのか? 好きな食べ物は無いか? 本当にレスリー嬢が好きで溜まらないという事を熱弁したらしい。

 途中でレスリー嬢はとても続けられない気持ちになったが、兄嫁と侍女に励まされ最後まで婚約者の罪を問い続けたそうである。


 その後、婚約者は魔法公安委員会に拘束され現在も留置されているそうだ。婚約者の家には魔法公安委員会の手入れが入り、証拠品として『水晶球』が押収された。幸い? 登録が完了していたので厳罰には処せられないだろうがそれなりの罰が下るはずである。

 今は、隣国の賓客が来ていることもあり、事件は表面化することもなく相手の有責による婚約解消の条件を詰めている最中らしい。


 今は兄嫁と子爵領の別荘でゆっくりと過ごしているそうで、急ぎで旅立ってしまったため直接お礼を言えないことを謝罪する一文と、領地で麦畑を眺め牛や羊に囲まれ楽しく過ごしている事と、気持ちが落ち着いて王都に戻った時には改めて礼を言いに来たいという丁寧な手紙だった。




 その後、子爵家に呼ばれ『護符:アミュレット』は金貨30枚で購入して貰った。


挿絵(By みてみん)




次回は明日、18:00頃に更新いたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ