買取価格報告と祝勝会
ブックマーク、評価、誤字報告 ありがとうございます。
開始時間になりジョナサン以外が集まっている。ジョナサンは遅れるか、もしかしたら来られないかもという事だ。
全員集まれないのは残念だが色んな所に引っ張りだこなのだろう。
「では、今回の『幻燐竜ダンジョン』の戦利品の買取価格の報告を始める」
ダブスが開会の宣言を唱えるが、まだ大きなテーブルの上には各自のソフトドリンクしか載っていない。なぜならば呑み始めてしまえば報告会の体を成さなくなってしまうからだ。
カレンが冒険者ギルドで貰って各人の名前を入れたリストを机の上に広げウェンディ、グレイサンド、チャドが覗き込む。
「ふーーん、ギルドも随分と色を付けてくれているようね」
「今後の『幻燐竜の鱗』の事もあるからのー」
「ふんふん」
ウェンディ、グレイサンド、チャドがそれぞれの感想を述べる。
一通り三人が目を通したところで、ダブスが話を続ける。
「見て貰った通り、冒険者ギルドでの査定金額は金貨3,127枚と銀貨3枚、それ以外に魔法塔へ売却した『アイアンゴーレム』などが金貨78枚、メリッサへ売却した『幻燐竜の鱗』1枚が金貨150枚で合計で金貨3,355枚と銀貨3枚になる。なお、『幻燐竜の鱗』については暫定価格になっていて冒険者ギルドでの査定金額が決まった段階で価格の調整を入れることになっている」
三人は静かに聞いて頷いている。私とカレンはソフトドリンクを傾ける。
「そして必要経費はメリッサが提供してくれた『精神抵抗』ポーション7本の金貨3枚と銀貨5枚、『解呪杖:キャンセレーションロッド』の金貨500枚になる。いつも通り食事代・宿代・馬車代・その他諸経費はパーティ資金から出すので今回の計算には入れていない」
今回、私は臨時メンバーとして参加しているので本当なら、食事代なども自分の分は計算して負担すべきところだが、事前にそれは免除することで話が来ているのでありがたく奢られておく。
カレンが新しい紙を机の上に出す。
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戦利品
冒険者ギルド査定:金貨3,127枚、銀貨3枚
魔法塔へ売却:78枚
『メリッサ・スー魔法古物店』へ売却:金貨150枚
*(『幻燐竜の鱗』Sクラス一枚:暫定価格)
合計:金貨3,355枚、銀貨3枚
必要経費
『精神抵抗』のポーション 7本 金貨3枚 銀貨5枚
『解呪杖:キャンセレーションロッド』 金貨500枚
合計:金貨503枚 銀貨5枚
*別計算で『メリッサ・スー魔法古物店』へ支払い
差引
金貨2,851枚 銀貨8枚
一人当たり 金貨407枚 銀貨4枚
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「という事で今回の収支を纏めたのがこちらだ。儲けは合計で金貨2,851枚と銀貨8枚、一人当たり金貨407枚と銀貨4枚になる」
「なかなかね」
「これにまだ『幻燐竜の鱗』があるんじゃからな」
「ふんふん」
「そして各自の明細がこちらになる」
カレンが全員に各自の明細を渡してゆく。
カレンが無口に書類を渡して秘書のような出来る女ムーブをしているのが何か怖い。
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ダブス
『治癒:ヒーリングポーション』 金貨5枚
『オグルパワーガントレット』 金貨120枚
『バスタードソード+2』 金貨36枚
合計:金貨161枚分
+金貨246枚 銀貨4枚
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カレン
『盾:シールドスクロール』 金貨2枚、銀貨3枚
『眠り:スリープスクロール』 金貨2枚、銀貨5枚
『透明:インビジビリティリング』 金貨30枚
スペルブックA 金貨83枚
スペルブックB 金貨107枚
合計:金貨224枚 銀貨8枚分
+金貨182枚 銀貨6枚
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チャド
『治癒:ヒーリングポーション』 金貨5枚
『プレートメール+1』 金貨60枚
『シールド+3』 金貨100枚
『ソード+3』 金貨100枚
『防御のメダル:ディフェンスメダル』 金貨15枚
『耐火:ファイヤーレジストリング』 金貨25枚
合計:金貨305枚分
+金貨102枚 銀貨4枚
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ウェンディ
『チェインメール+1』 金貨40枚
『ダガー+2』 金貨24枚
『防護:プロテクションリング』 金貨20枚
合計:金貨84枚分
+金貨323枚 銀貨4枚
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グレイサンド
『空中浮揚:レビテーションポーション』 金貨3枚、銀貨5枚
『千里眼:クレアボイヤンスポーション』 金貨2枚、銀貨7枚
『動物支配:アニマルコントロールポーション』 金貨2枚、銀貨3枚
『ダガー リターニング+2』 金貨36枚
『駿足の靴:スピードブーツ』 金貨50枚
『馴致の口輪:トレーニングマズル』 金貨36枚
合計:金貨130枚 銀貨5枚分
+金貨276枚 銀貨9枚
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ジョナサン
『メイス+1』 金貨7枚
合計:金貨7枚分
+金貨400枚 銀貨4枚
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メリッサ
『スピア+1』 金貨8枚
『火球の杖:ファイアーボールワンド(魔力補充タイプ)』 金貨30枚
書籍20冊 金貨100枚
ミノタウロスの戦斧 金貨2枚
合計:金貨140枚分
+金貨267枚 銀貨4枚
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三人が自分の明細を見ながらふむふむと頷き、他人の物を覗き始め雑談が始まる。
なお、宝石は私が買い取らせていただき、現金化した。
ダブスは品数が三点と少ないが『オグルパワーガントレット』と『バスタードソード+2』という攻撃力の大幅強化が出来たので大満足である。
カレンは『透明:インビジビリティリング』以外は『スクロール』と『スペルブック』だけだが『スペルブック』には未習得の呪文があり、いくつか『書き写す』ことが出来るし、習得済みのものは『スクロール』と同じように使用できるので大満足である。
チャドは品数も多く高価なものが多いので現金収入が少ないが、『プレートメール+1』及び『シールド+3』で防御力が格段に上がったので大満足である。
ウェンディは品数も少なくこれといった強力な品も貰っていないが、元々物欲的なものも少なくどうも人間社会の観察の為に森を出てきた風がある。しかし『防護:プロテクションリング』のデザインは気に入っているようで満足である。
グレイサンドは品数は多いがそれほど強力なものはない。しかし帰り道でも『ダガー リターニング+2』と『駿足の靴:スピードブーツ』の訓練に余念がなく、休憩時には馬車を引く馬さんに『馴致の口輪:トレーニングマズル』を素早く取りつける訓練までしていた。大満足である。
ジョナサンは‥‥、基本神官が欲しがる魔法の品は少ない。武器防具は暗黙のルールで戦士が優先であるし、剣の類は人を傷つけることの象徴的な武器なので神殿も使用を忌避している為、そもそも使える武器の種類が少ない。魔法使いは『スクロール』などが出ることが多いが、神官用の『スクロール』が見つかることは少ない。かといってスカウトの様に調査やトリッキーな動きをすることもないので結果、現金が多くなる。神殿に納めるのに都合が良いから満足であろう‥‥。
私メリッサは書籍20冊が手に入ったので大満足である。
「一旦雑談はここまでにしよう。各自、帰り道で話し合った希望の通りに分けられているはずだ。‥‥‥問題ないな。これに冒険者ギルドに預けてある『幻燐竜の鱗』67枚がある。こちらについては先日説明した通り、『幻燐竜ダンジョン』の調査が終わり査定金額が出るまで時間が掛かる。もともと長期的に売却した方が良いという事はメリッサから説明して貰っていた通りなのでギルドの報告待ちとなる。ジョナサンにも手紙で知らせて了承を貰っている。みんなも問題ないな‥‥‥、後はパーティ資金の積み立てだが、取り決め通り儲けの金貨407枚の約3割、金貨120枚を各自の儲けからギルドのパーティ口座に入れてもらう。チャドだけ今回の現金収入が金貨102枚では足が出るので、ギルドの個人口座から補填してもらう事になる」
ダブスが全員を見渡して話すのに全員が所々相槌を打ちながら静かに聞き、最後の個人の確認にもチャドが大きく頷く。
冒険者ギルドには口座を作り現金や貴重品を預けることが出来る。また、いざという時にはそれを指定した人物に遺産として渡してくれるサービスもある。冒険者も人それぞれで、私の見た感じでは半分以上は宵越しの金は持たないタイプだが、2、3割は堅実に貯蓄したりするタイプに見え、そんな人達向けのサービスである。
そしてある程度パーティメンバーが固定されるとパーティ資金という口座を作り運用が始まる。
冒険中に飯屋で昼飯を食う度にいちいち清算していたのでは手間が掛かる。なので一定の金額をパーティ資金としてプールし、管理者がそこから食事代・宿代・馬車代・その他諸経費を纏めて支払ってゆくのである。大体、儲けの1~3割位に決めることが多いが、割合が少ないと個人の取り分は多くなるが何かあった時に追加徴収されたりするのであまり良いことは無い。
また、高額になる毒や呪い、石化の解除などはパーティ資金から支払う取り決めのパーティも多いのでその場合、ある程度纏まった資金がプールされていないといけない。
過去にチャドが石化した時にすぐ解除できたのは資金が十分あったためで、資金の無いパーティだったら下手をしたらそのまま放置されていたかもしれない。
まぁ、各パーティでの取り決めであり、特段冒険者ギルドが取りまとめている訳ではないので何割積み立てるかはパーティ次第である。
なお、通常冒険で使用する程度の金額の引き出しは管理者個人で出来るが、大きな金額や全額の引き出しなどになるとパーティ全員の同席か委任状が必要になるので、管理者がパーティ資金の持ち逃げなどは出来ない仕組みになっている。
一人石化していたりするとその者の同意は得られないが、口座の管理特約でギルドが認めれば出金できるようにはなっている。
とりあえずチャドの不足分の調整はギルドの口座で行う事になる。
「では、後は『メリッサ・スー魔法古物店』で鑑定書発行を発行して貰うだけだな」
「そうですね。帰りの道中である程度は作業済みですので、後は来歴の確認等と申請書の清書ぐらいですから、何もなければ明後日くらいには申請して一週間くらいで鑑定書の発行まで行けると思います」
戦利品は鑑定し登録するものはそれが終わるまで、基本的に使用することができないのでまだ私が預かって店の『保管庫』に置いてある。
少し前からカレンが店員さんに声を掛け、飲み物と食べ物を運ばせているので良い匂いが部屋に漂ってきている。
「では、これで話は終わりだ。今回の冒険も大変だったが‥‥」
「乾杯!」
ダブスの締めの言葉を遮ってカレンの大きな声と皆がグラスを合わせる音が部屋に響いた。
次回は明日、18:00頃に更新いたします。
戦利品や必要経費の計算で途中調整して無いのに7人で銀貨一枚までぴったり割れて吃驚しました。




