戦利品の売却と返却、上級冒険者の苦労とゲン担ぎ
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デヴィッドさんに売却する物を記入したリストを返す。
「やはり、売却品は少ないですね。十分な現金収入もあったわけですから当然ですね」
「まぁ、こっちとしちゃあミノタウロスやキメラなんかで十分、儲けさせて貰っているから良いがな」
ギルド長のショーンがリストを覗き込みながら言ってくる。
さて今回、我々が売却するものが少ない事が解っていたにもかかわらず、戦利品をギルドに査定してもらって買取金額を出してもらった理由は何か?
『ポーション』は薬屋ギルドへ、『スクロール』は魔法塔へ、『武器・防具』などは武器ギルドへ、それ以外の『魔法古物』は『魔法古物商』へ冒険者がそれぞれ売りに行くことは可能である。ギルド規定の第三条「素材・戦利品の売却先の自由」にも記載されている。
それをしないのは手間が掛かることと買い叩かれることを防ぐためである。それぞれの品物の相場を逐一把握していない限り、一冒険者が個別に売りに行ったって買い叩かれるのが落ちであり、冒険者ギルドはそこを代行してくれるからこそ冒険者は信頼して戦利品を預けるのである。
そして、冒険者ギルドで一括して買取金額を査定して貰ったことに寄り、分け前の分配の根拠ともなる。
例えば『幻燐竜の鱗』はもともと、ある程度は「メリッサ・スー魔法古物店」で買取しようと思っていたが、私がA-クラスを金貨8枚で買います。と言ってもそれが正しいかカレンたちには解らない。だからギルドで査定してもらって金貨10枚と行って貰えれば適正価格が解る。一旦査定に出すことに寄り買取金額の裏を取ることができるのである。
また、各冒険者が薬屋ギルドや魔法塔、武器ギルドなどと個別に売却交渉をして結果を持ち帰ってくる方法だと誰が何処でくすねても解らない。
なので魔法塔で『アイアンゴーレム』などを買い取って貰った時も一人ではなく、私とカレン二人が交渉に行っている。まぁ、二人で口裏を合わせたら誤魔化すことは可能だが‥‥そこは信用して貰うしかない。
今回、多くの品を査定して貰ったのに売却するのは『魔法古物』5点、その他の武器防具だけである。冒険者ギルドの手間だけ掛かっているように見えるが、それ以外にもキメラやミノタウロスなどの解体した魔物素材があるし、ギルドの年会費も別途払っているので冒険者ギルドに損はない。
とはいってもなるべく、そうなるべく冒険者ギルドに買取りをして貰うことにはしている。
「では戦利品及び魔物素材の売却品リストはこちらになります」
エリカが新しいお茶を入れてくれている間にデヴィッドさんが纏めたリストを机の上に置いた。
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魔法使い用スクロール『魅了:チャームパーソン』 金貨3枚
『スケールメール +2 ドワーフサイズ』 金貨60枚
『シールド +1』 金貨10枚
『ソード+1』 金貨10枚
『バスタードソード+1』 金貨12枚
諸々の武器、防具など19点 金貨10枚
大コウモリ52匹 金貨6枚
大ムカデ13匹 金貨8枚
キメラ 金貨60枚
ミノタウロス 金貨45枚
戦士の石像と核 各10個 金貨20枚
素材の輸送と護衛任務 金貨5枚
*「キメラのライオンの鬣、ドラゴンの髭」、「ミノタウロスの皮」の一部を除く
合計:金貨249枚
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素材の輸送費と護衛任務は『幻燐竜ダンジョン』の近くの村から王都まで素材は私の『魔法収納袋』で運んでいる。仮にそのすべてを荷馬車で運ぶ場合3,4台は荷馬車が必要になっただろう。それから帰都のエリカとデヴィッドさんの護衛をしていた分である。
*の素材はウェンディがリュートの素材にしたいと貰い受けた分である。
カレンとダブスと三人でリストを確認し頷きあう。
「これで構わない」
ダブスの返事にエリカが用意していた売買書類を代表してダブスが記入をしてゆく。ダブスとデヴィッドさんが手続きを進める中、残りの人間は世間話をしている。
「ゲイルさんたち王宮で一体、何してるの?」
「何度か手紙が来ているが、着飾らされてお茶会や夜会に出ているらしいぞ」
「ゲイルさんは確か元王国騎士でしたね。中々異色の冒険者ですけど、あと神官のジェフリーさんは大丈夫として、他の方たちは行儀作法は大丈夫なのでしょうか?」
「ゲイルとジェフリーで何とかフォローしているみたいだが、基本的には珍獣扱いでマナーにはうるさく言われてはいないらしい」
「うえーーー、やだやだ。私は何があっても王宮なんか行かないからね。いざという時はメリッサ、よろしく」
カレンが体勢を低くして上目遣いで見てくるが、それには答えない。私も王宮には余り行きたくない理由がある。先日、ちょっとお邪魔したがあれは王宮の端っこの方でほぼ知り合いもいないところなのでギリギリセーフである。
「真面目に王宮からの呼び出しはその内掛かる可能性は高いな」
「うわーーー、本気で次の仕事、早めに決めよ。エリカ、良い仕事ない?」
「現在、上級に近いパーティに合う仕事は無いですね。依頼料の安い隊商の護衛とかならありますが」
「うーーーーん、念のため後で見せて」
それから近頃の噂話とかも聞いておく。
そんなこんなで売買手続きを終え、金貨が入った小袋を受け取りギルド長とは別れの挨拶をして会議室を後にする。
『幻燐竜の鱗』の査定をよろしくとカレンが最後まで言っていた。
一階に降りるまでにエリカに聞いたところ新人魔法使いさんは無事仲間を集めて日々、依頼を受けているらしい。よかったよかった。
一階の受付でいくつかの依頼情報をカレンとダブスが真剣にエリカから聞き、受けるかどうかは保留という事にする。飲食スペースでは数人がまだ盛り上がっていて「一緒に飲みましょうよ」と声を掛けられたが挨拶だけして奥の倉庫に向かう。
買取窓口は冒険者ギルドの建物に隣接している倉庫で別棟になっている。ここでは魔物素材であまり大きくなく、汚くなく、臭くなく、血塗れではないものを扱っている。薬草や鉱石、討伐対象の一部を提出する時などがこちらの窓口だ。今回は村で解体まで済ませて木箱やガラス瓶などに納まっていたのでこちらで全て提出できた。
そして東西南北の各大門の内側にもギルドの買取窓口の建物がある。何故かと言えば解体されておらず大きかったり、時間が経って臭かったり、汚かったり、血塗れだったりするものを荷馬車で引いて来たときなどの対応窓口である。
そんなもの街中を通って行ったら騒ぎである。
まぁ、門の近くの住民たちはもう慣れたものらしいが。
という事でギルド奥の倉庫で売却しなかった戦利品を、デヴィッドさんが窓口担当に指示し、エリカがリストでチェックしながら出してもらい『魔法収納袋』に納めてゆく。
無事受け取った後は二人と別れたが、正午の四の鐘までは時間がある。
しかし午後は別件があるので三人で冒険者ギルドの近くのジェシカおばさんの店でランチを済ます。
角ニシンの塩漬け、白ジャガイモのポトフに大麦パンのセットにエールをお腹に納め舌鼓を打ちつつ、今日の夕刻から戦利品の買取価格報告と祝勝会?を行うとカレンが言っているので、午後の予定が押した場合は遅れる旨を伝えておく。
なお、ジェシカおばさんにはダンジョンの深層で料理は美味しく頂いたことをカレンと私から伝えたところ、「まさかそんなところで食べられるなんて!びっくりよ!」と驚いていた。
その後、それを聞いていた冒険者の中からゲン担ぎでダンジョンに行く前の景気づけにジェシカおばさんの食堂で「青草牛のビーフシチュー」を、帰ってきた祝いに「エメラルド・トラウトの塩釜焼き」を食べる風習が生まれる事になった。
次回は明日、18:00頃に更新いたします。




