ギルド回りと花きギルド打ち合わせ
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魔法小物ギルドの区画を後にして宝飾品ギルドに顔を出す。
区画の中では三人ほどの商人が頭をくっつけて何か話し込んでおり、近づくと話を止めてこちらを胡乱な目で見ている。
「こんにちは」と挨拶をしつつ奥に声を掛ければ見知った宝飾品ギルドの事務員さんが手招きしてくるので奥に進む。
魔法古物商と宝飾品ギルドとは持ちつ持たれつの関係である。
貴族家から宝飾品の商人に『魔法古物』の宝飾品の注文が入れば直接もしくは宝飾品ギルド経由で間接的に「魔法古物店」に照会があることがある。該当の商品があれば業者間で売買することもあるし、商談に同伴し『魔法古物』の専門的な説明し手数料を貰うこともある。はたまた他の貴族に知られないようにこっそり『魔法古物』を売却しようという時なども同伴し買取査定をすることもある。
要は宝飾品の商人の専門外である『魔法古物』の宝飾品の宝飾以外の価値の査定や機能や使い方の説明はやはり専門家に任せた方が良いという事である。
単価の高い物でもあるので「目利き」が出来る者が必要となる。
という事で宝飾品ギルドの事務員さんとも顔見知りであり今、お茶を頂いている。
やはり貴族や大商人を相手にしているだけあって魔法工房のお茶より質が良く添えられたメレンゲ菓子も高級品である。
「久しぶりだね。メリッサ嬢。店が長期閉まっていて、みんな心配していたよ」
「それはご心配をおかけしました。少し仕入れの為に出かけていまして」
「ほー、仕入れね。どちらまで」
「ちょっと遠方だったんです‥‥」
宝飾品ギルド界隈には私が冒険者をやっていることは広まっていない。まぁ、この事務員さんには知られていそうだが。
わざわざ広めるつもりはないので細かいことはお茶を濁しつつ先ほど魔法工房ギルドで話したことを掻い摘んで話し、一時的な混乱はあるだろうが中長期的には安定するだろうから右往左往しないで宝飾品ギルドとしてはどっしり構えるように話しておく。
こちらが情報を渡した後はこちらが受け取る番である。
宝飾品ギルドに来た理由はここが一番貴族と繋がりがあるからである。
という事でこのところの貴族界隈の情報を頂いたわけだが、ほぼ王子様王女様の話題である。到着が遅れたことによる宝飾品界隈への影響はほぼなく、服飾業界では納品がぎりぎりだったドレスや礼服の製作が間に合った一部で歓喜の声が上がったらしい。
個別の貴族家の噂話もいくつか聞いたがスティアーズ子爵家のものは無かった。ランドン侯爵家の警備が増強され、出入り業者の出入り検査は厳格化されたらしい。
そして延期されていた王子様王女様の歓迎晩餐会が明日開かれることとなったようである。
その後は木工ギルドに顔を出した。
ここは『オルゴール』や『保存箱』、『保冷箱』の筐体を作ってもらっており試験品の打合せ時にはよくお邪魔したものである。
挨拶と世間話をした後はすぐ横の材木ギルドを紹介してもらう。
材木ギルドとは今までお付き合いがない。
何種類もの短めの角材がサンプルとして置いてある区画で初めてのご挨拶と前からやってみたいと思っていたことを思い出し、用途とサイズを知らせて丸太を注文しておく。
その後の世間話の中でスティアーズ子爵領のことを聞いてみたが変わった情報は無かった。
なお、筏師ギルドは王都にはなくスティアーズ子爵領にあるそうだ。
その後は付き合いのある鍛冶屋、ブリキ職人、時計職人、陶工ギルドなどを回って挨拶と情報のやり取りをしてゆく。
なんやかやで花きギルドとの打ち合わせ時間になったのでそちらに向かうと、ケイティさんとお父さんがいらっしゃったので合流する。
先日の切羽詰まった顔はもうしていないが、まだまだ問題があるのだろうキリっとした顔をしており挨拶を交わした。
会議室を取ってあるという事でギルドホールの大きな階段を上がって三階に移動すると、10人が囲めるほどの長机が会議室の真ん中に置かれており、私たちは下座の方に腰を下ろす。ほどなく6人ほどの花きギルドの関係者が入室し、顔を知らない人は紹介をされ、それぞれ挨拶を交わす。気のせいではなく皆さん顔色はあまりよくない。
会議室にいる合計9人のメンバーは花きギルドのギルド長、副ギルド長、切り花責任者、仲卸業者の代表、販売業者の代表、配送業者の代表、仲卸業者のケイティのお父さん、ケイティ、私になる。
「まず、メリッサ嬢には花きギルドを代表しお礼申し上げる。この度のご協力、本当に助かった。また、ケイティもよく紹介してくれた」
ギルド長の言葉に私とケイティさんが軽く頭を下げる。
「たまたまお隣でお困りでしたのでお手をお貸ししただけですし、すでに商売として契約しているわけですから余りお気になさらないでください」
「そう言ってもらえると助かる。では今後の流れについて相談させてもらおう。歓迎晩餐会の日時が明日に決定し‥‥‥」
そこからは在庫の戻す場所と時間の細かい打ち合わせが進んだが、途中一つ問題が発生した。
「で、一部を王宮庭園局の温室に直接納める事はできるだろうか?」
販売業者代表の男性から質問に私はちょっと答えに窮した。
「‥‥私の方の対応は可能です。しかし王宮の敷地内に『魔法古物』を持ち込むには事前に申請し許可を得る必要がありますし、私個人の身元確認もされます」
「その許可というのはどれ位の期間掛かるものなのかな?」
「通常は二週間から一月ですね」
「「「「「「「‥‥‥」」」」」」」
そこから10分ほど代替え案とか諸々専門的な意見のぶつかり合いがあったがどうやら王宮への納品ができないとすべてが破綻する感じらしい。
「‥‥仕方ありません。余り使いたくは無かったですが伝手を頼ってみます」
私以外の全員の目がこちらを見ているが気にせず『魔法収納袋』から高級な便箋と『ガラスペン』を取り出し、一筆認める。
『魔法ランプ』で赤いシーリングワックスを溶かし、封筒の封じ目に垂らすと私の印章の「ユリの花」の『シーリングスタンプ』を押し少し待つ。
「これを王宮に届けてください」
「‥‥解った。おい」
ギルド長が指示すると副ギルド長が急ぎ部屋を出てトレーを持って帰ってきた。その手には手袋がされている。そして封筒を恭しくトレーに移すとまた急ぎ部屋を出て行った。
「では、王宮の『魔法古物』持ち込みの許可は出る前提で話は進めてください。身元確認も大丈夫です。ただし正規の申請自体は行っておいた方が良いですので、花きギルドの方で申請手続きはお願いいたします」
「‥‥解った。おい」
切り花責任者が急ぎ部屋を出て行った。
この後、細かい納品スケジュールの確認と正式な契約書の締結をして仕舞いになった。
とっくに七の鐘は鳴り終わっておりお腹が空いてきた。
帰り道にケイティさんのお父さんが食事に誘ってくださったのでご相伴に預かった。
ギルドホールの周りには高級な食事処があるのでその一つに入ったがどうやら予約されていたようですんなりと席に案内された。きっとビジネス使用で行きつけの店なのだろう。
仕切りやたれ布で人目を避け半個室になったテーブル席はゆったりとした造りで寛げそうである。どこからかピアノの音が静かに流れてきて会話が漏れるのも防いでくれているようだ。
ハーブとワインで味付けされたクリスタル・パーチの煮込み、ジンジャーと胡椒を効かせた鹿肉のロースト、ドライフルーツとスパイス風味の角キジのパイ、リンゴと白ニンジンのフリッターなどをスパイス・ワインで頂きご機嫌である。
ケイティさんのお父さんも持て成しに慣れているようで話が旨く聞き上手である。ついこちらも話が弾んで今回の冒険譚などを話してしまった。
「オーガの牙」を差し上げたらこちらも大変喜んでもらえた。
ケイティさんは横で渋い顔をしていたが気のせいだろう。
『幻影鉢』の在庫を聞いたところ一つあるという事なので、これから値が上がってレア物になるので売らずに取っておくように言っておく。
ただし研究がうまくいけば数年でバブルは崩壊するので売り時が大切とも。
「売らずにずっと取っておくわ」
次回は明日、18:00頃に更新いたします。




