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捜査協力と商業ギルド紹介

ブックマーク、評価、誤字報告 ありがとうございます。

「お二人はそれでいいんですか?」


互いの顔を見やる衛士二人、互いの表情を確認しマシューが口を開く。


「いや、目の前で逃げられて、このままじゃ腹の虫が治まりません」


「うちの店としても販売したものが犯罪に使われたとなると黙っていられません。捜査に協力させていただきます。まず、購入者の「ラリー・スティアーズ」と身元証明者の「スティアーズ子爵家」についてですが‥‥」


スティアーズ子爵家、王国の北東に領地を持つ子爵家で森林地帯ということもあり主産業は木材とその加工品及び狩猟による皮革と加工肉の製造業だ。現当主は四十前で二男二女、王都の復旧工事の木材需要で潤っており領地運営は順調である。長男は領地で当主代行を務めており、次男は学院に入っている。


「販売時に次男のラリー様と侍従が来店しており、枝打ちなどの高所作業のための購入という事で事前の問い合わせ等もあり、若いご子息に売買契約の経験を積ませるためでしょう、経験豊富な侍従も付いており不審な点もなくスムーズなお取引でした。紋章院での印章の照会もしていますので証明書も本物で間違いありません」


こちらの持っている情報を共有し、今後の対応を検討する。


「では、我々は一度戻って魔法公安委員会に報告を上げます。ベイトマン卿なら速やかに動いてくれると思いますが、貴族相手だと多少時間が掛かりそうです」


「では、その時間で情報収集などどうでしょう? スティアーズ子爵領からはモケルム川が王都まで流れてきています。子爵領の木材は筏を組んでモケルム川を下ってきて、王都上流の城壁外のプラムクリークで貯木されて、その後で加工されると聞いています。そこにいる筏衆なら子爵領の領民でしょうから何か子爵領の話を聞けるかもしれません」


「解りました。では我々は公安へ報告後はそちらに行ってみます。貴族関係はベイトマン卿が動いてくれると思いますので後は‥‥」


「では、私は後で商業ギルドに顔を出して見ます。どうせ夕方には顔を出す用事があったので、そうですね、明日以降はどんな動きになるか今は見通せないので私への連絡は子供たちにお願いします。こちらからは詰め所に連絡しますので」


と言って裏窓の方に顔を向ける。

あっ、そうだお土産。『魔法収納袋』から「オーガの牙」を二つ出して机の上に置く。


「これ、お土産です」


二人がまじまじと「オーガの牙」に目を落とす。


「いや、本当だったんですね。ダブスさんたちのパーティにメリッサさんが加わっていたって、店のお休みと期間が被っていたんでそうじゃないかとは思っていたんです。王子様たちの件で霞んでしまっていますけど、界隈では話が広まっていますよ。なんでも帰り道の町々でドラゴンブレスのイリュージョンショーを行って大盛況だったって」


私の動きがピタッと止まる。


「‥‥そんなに話題に?」


「ええ、酒場でも吟遊詩人が歌い始めていて人気らしいですよ。なぁ?ヴィクター」


「ああ、私たちは時間が取れなくて行けていないけど、一息ついたら是非聴きに行きます」


吟遊詩人のアーレイには私の出番は無くすか目立たなくするよう頼んであるので余り私の事が広まることはないだろう‥‥たぶん。

「オーガの牙」を手に取ってお礼を言いながら光に翳して喜んでいる二人を見て、やっぱり「男の子」にはこの手の物が鉄板だと再確認した。


また、川で見つかった死体の話は担当が違うという事で詳しい話は聞けなかったが、捜査継続中という事らしい。


その後、二人を見送っているところで花屋の店先のケイティさんの顔がこちらを向いて「はっ」となり、伝言を忘れていたことを謝られたが、バタバタしていたので仕方ないと言っておいた。

ついでに夕刻の花きギルドの打ち合わせは出先から向かうことを告げておく。


二人が帰った後は貴族年鑑でスティアーズ子爵家及び寄親、その寄子あたりの知識を確認しておく。

それから『保管庫』の『空間拡張』したスペースで訓練用人形に向けて、捕獲用武器の練習をしておく。

良い時間になったので子供たちにクッキーを渡し商業ギルドにいることを告げて、お昼ご飯を食べるついでにそのまま外出することにする。


商店などが多い西街区に向かいながら新規のランチのお店を物色していると、嗅ぎ慣れないスパイシーな匂いが漂ってくる。

匂いの元を覗いてみると米を肉汁とシナモンとクローブで炊き込んだピラフとクミンとコショウの香ばしい匂いがする焼き串とサラダのワンプレート料理の店が新しくできていた。

迷わず込み合い始めた店内に入り注文をして、待っている時間に周りの人々の話に耳を傾ける。一部ダブスたちの話もあったが、多くは王子様王女様の馬列を見学した、もしくは見学した者からの又聞きした話だった。

不審者や死体があった話はみんなの意識にはない。


ゆっくりランチを済ませた後は商業ギルドに向かう。

一口に商業ギルドと言っても内容はいくつもの専業のギルドの集まりである。織物、絹、宝石、装飾品、香辛料、小麦、塩、乾物、加工肉、花きなど細部にわたっており、染物、金細工、革細工、鍛冶屋、石工、木工などの工業製品の作製や飲食店、床屋、代筆屋、辻馬車などの各種サービス業も商業ギルドが纏め上げている。

ギルドの役割としてまず相互扶助がある。同じギルドのメンバーが病気になったり、亡くなったりした際に家族を支援する仕組みだ。

更に徒弟制度で親方の家に住み込み、技術を学ぶ仕組みもある。

次に秘密保持である。希少な技術やノウハウを外部に漏らしてはいけない。薄く精巧なガラス製品の製造技術などがこれにあたる。下手したら国の指示で家族関係者ともども離島や山奥に隔離されることもある。

後はその街での市場の独占である。ギルド員以外の者がその街で商売することが禁じられる。逆らえば訴えられて処罰される。

他には品質管理がある。同業者間で商品の重さ、素材、製法、サービス内容などをチェックし、「粗悪品」が出回らないようにする。

最後に価格調整である。組合員同士での「安売り競争」を禁じ、全体での適正な利益を確保する。


以上のようにギルドは単なる同業者組合ではなく、人々の生活と人生に根差したものとなっている。

基本都市ごとのギルドであるが、各都市のギルドが横の連携を取っているギルドもある。各種商人のギルドや冒険者ギルドなどがそうである。

なお、小さな町村にはギルドは存在せず近隣のギルドのある大きな街などの所属となる。


そんな中で『魔法古物商』は王都でも10店舗ほどしか存在せず、兼業の者も多いので専業ギルドとしては機能しておらず、商業ギルドという大きな括りの中に専業ギルドとは別枠に所属する特殊なグループになっている。


という事で商業ギルドのギルドホール前に来ている。

冒険者ギルドも威風堂々な五階建てであるが、商業ギルドはそれより大きい規模で灰色の花崗岩がどっしりとした重厚な印象を与えている。


開け放たれた大きな扉を様々な格好の人々が出入りしており活気が感じられる。入ったホールは広く二階までの吹き抜けで、壁に大きく取られた窓からは陽光が十分に入っており、ホールを行きかう人々を照らしている。


ホールを囲うように前面が開けた区画が1階と2階にいくつも配置され、その一つ一つが各専業ギルドの事務局になっている。中には簡易商談スペースと各種陳列棚、奥にパーテーションで仕切って応接セットがあるような配置のところが多い。

普段付き合いがあるのは魔法小物・大物を作っている魔法工房ギルドであるが、こちらはギルド所属の魔法使いが木工、鍛冶屋、革細工、金細工などの工房とその時々必要な技能を持っているギルドに協力を仰いでいる格好だ。

『密閉』と『除湿』の効果で乾物の保存期間を延ばす『保存缶』や『保存箱』、『保冷』の効果で生鮮物の保存期間を延ばす『保冷キューブ』や『保冷庫』、『保温』の効果で飲み物の温度を保つ『ティーポット』や『魔法瓶』、『幻影』の効果で花や妖精が舞うように見える『オルゴール』などなど売り上げが伸びているそうである

その魔法小物・大物のとりまとめは商業ギルド本体が行っており、商品企画と技術提供をしている私にはギルドから毎月ロイヤリティの明細が送られてくるので売れていることは知っている。


とりあえず今回は魔法工房ギルドから顔を出して見る。


挿絵(By みてみん)



次回は明日、18:00頃に更新いたします。

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