表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

59/74

石像の謎と新作ケーキ

ブックマーク、評価、誤字報告 ありがとうございます。


なんか、前回から試しで画像を入れてみています。

 石像5体の番だ。

 こちらは棺が並んだところから少し離れた場所に纏めて五体並べた。


 二人の戦士の一人目は大剣を上段に振り上げ、二人目は盾と片手剣を構えて、走って行くポーズで床に転がった姿勢である。ちょっと哀れではあるが立たせるとバランスが悪いので床に転がったままの姿勢で横たえられている。

 魔法使いとスカウト、神官は立ったままのポーズである。

 ちょっとシュールな美術館の彫刻の間の様にも見える。


 彼らは幻燐竜ダンジョン地下四階の最奥の部屋でバジリスクに石化させられていた。

 ダブスたちは前回のアタック時にもその部屋は通っているが、その時は別の魔物と遭遇して討伐し、石像は見ていないそうである。ダブスたちが再アタックするまでの期間は約2か月であったので普通に考えれば、その2か月間にバジリスクが新しくその部屋に現れ、その後に彼らがバジリスクに挑み犠牲になったことになる。

 しかしここで不思議なことがある。

 帰りの旅程中にジョナサンが彼らのうちの神官に何となく見覚えがあると言っていたのである。再度、『魔法収納袋』から出して見て貰ったが、明確な記憶ではないが小さい頃に神殿で修業しているときに世話になったような‥‥。


 という事で高位神官さんに意見を聞いてみた。


「これはベンジャミンですね。神殿に在籍し冒険者活動をしていて10年ほど前に行方不明になっております。‥‥10年前の当時のままに見えますな」


「あぁ、ベンさん、偶に隠れてお菓子をくれた‥‥」


 と、ジョナサンが口を手で押さえた。

 高位神官は優しい目でジョナサンを見てから続けた。


「ベンジャミンに親類は居なかったはずです。確か行方不明になって一年後に冒険者ギルドに預けていた金品の引き渡しがあったような?こちらで記録を当ってみましょう」


「お願いします。こちらでも確認してみます。神殿から魔法塔への石化解除依頼は掛けられますか?ちょっとおかしい所があるのでまずは詳細を調べてからお願いしたいのですが」


「おかしなところですか?それはどんなところが?」


「彼らがダンジョンへ入った当時の記録が見当たらないのです。ここ30年分の記録は現地の村で全て確認いたしました。念のため王都でも確認しましたが、彼ら五人組のパーティの記録は該当なしです。もちろん、ギルドに話を通さずダンジョンに潜る冒険者はいますが、万が一の時の救出などのためにほとんどの冒険者はしっかり申請して記録を残します。その申請をしていないとなれば何かしらの理由があるかと」


「わかりました。石化解除の依頼については神殿上層部の判断になるかと思いますので、判断が出ましたらご連絡いたします」


 この後、安置されたご遺体については神殿から王都の各教区や近隣の街や町、村の教会に連絡が行き、安息日のお祈りの会にて司祭から参列者に知らされる。

 心当たりのあるものは司祭に申し出て詳細を確認することになる。

 基本的に教会に属さない者はいないのでこの方法でほぼ国民全員に知らせることができる。

 合わせて冒険者ギルドでも過去の記録と照らし合わせて該当者がいないかの調査が行われる。

 なお、この教会の教区リストが大体の人口を把握するのと、税徴収のための基本資料になっている。




 ご遺体と石像の引き渡しも終わり、こうなるともう私の手からは離れているのでやることもないのだが‥‥。


「あの、実は今日の午後に魔法塔に行く予定がありまして‥‥、その魔法使いさんの身元調査もしますか?」


「メリッサさん、ご協力感謝します。私は一旦冒険者ギルドに戻って報告をして、魔法塔への訪問の連絡をいたします。馬車を回しますのでメリッサさんはお店でお待ちいただけますか」


 私は魔法使いの石像だけもう一度『魔法収納袋』に収めなおした。




 神殿から辻馬車を拾い一人で帰った私は近場で昼食をすまし、そのまま隣の花屋さんに顔を出す。丁度お客さんが居ない時だったのでお茶を出され一服する。

 改めて昨日のお礼をされたが、結局花きギルドとは保管料を頂く契約を結んで、ちゃんとした仕事になっているのでお礼はいいと言っておく。

 私が居ないうちに花きギルドから連絡が来ていたという事で、明日の夕方の打ち合わせが決まった。

 昨日はバタバタしていてそんな暇もなかったのでお土産を渡す。

 ケイティさんにキメラのドラゴン頭の鱗で作った耳飾りと、旦那さんには「オーガの牙」を渡した。耳飾りは帰り道の旅程でグレイサンドに細工してもらったものだ。

 旦那さんが「ホブゴブリンの牙」を貰った子供と同じ顔をしている。


 店に戻ってから、エリカと約束もしてしまったので今日のもう一つの用事も済ませてしまおう。

 裏窓から子供たちにカレンのところへの伝言を頼んでおく。

 カレンには近日中に魔法塔に行く話はしてあるし、今日は流石に定宿で休んでいるだろうから捕まるだろう。



 時間的に半端なので店は「CLOSE」のまま、カレンの到着を待つ。

 ブラックゼリーの「ルナ」と「ステラ」のガラス瓶を出して、二匹の様子を観察する。

 ここ一週間飼育しているうちに愛着が湧いてしまった。皆が寝静まった夜に一人、様子を見ているとこちらが見ていることが解るようでウゾウゾと蠢き、餌をくれと自己主張してくるのである。

「ルナ」は木片や布などをあげた時に動きがよくなり、「ステラ」は骨や肉片を喜ぶ、今日はこれから魔法塔に行って二匹とも受け渡さなければいけない。

 これが最後となる餌をやって、嬉しそうに「ジューーッ」と溶かしているのを眺める。


 カランッと店の入り口のドアベルの音がしてカレンが入ってきた。


「何してんの?」


 カウンター上の黒い物体の入った二本のガラス瓶を、愛しそうに眺めているのを目撃されてしまった。


「お別れの晩餐です」


「なに言ってんの? 夜な夜な一人で眺めているだけじゃ満足できなくなったの?」


「‥‥なぜ、知っているんですか?」


「いや、寝返りうったら、宿の部屋の薄暗いランプの光で、ガラス瓶をうっとり眺める同室の人間を見たときの気持ちわかる?」


「‥すみませんでした」


「まぁ、いいわ。まだエリカが来るまで時間はあるのでしょ。美味しい紅茶を入れてくれる」


 カレンはケーキボックスを掲げながら言った。




「例の新店の新作よ。ユリ根のホワイト・モンブラン」


「ユリ根のムース、蒸したユリ根と生クリームの相性が良いですね。栗のモンブランよりも軽やかで、口の中でスッと溶けるような質感です」


「私はこのユリ根のコンフィが好きね。噛むたびにユリ根特有の「ホクッ」とした食感と、百合の香りが楽しめるわ。それにこのアールグレイの柑橘系の香りが合うわね」


「ケーキ屋さんも流行りに乗ろうと頑張っているみたいですね。ユリ根のケーキなんて」


「そういえばギルドで聞いたけど、昨晩はお花屋さんの手伝いで大変だったみたいね」


「ええ、まぁ」


「まぁ、刈り取った後のユリの球根が沢山あるんでしょうから、有効活用しなくちゃね」


「カレン、通常のユリの根っこは苦かったり、毒があったりして食用にはできませんよ。ゆり根は食用に品種改良されたものです」


「え、そうなの?」


「はい、元々の花の種類から違って‥‥‥」




 久しぶりにゆっくりおしゃべりをしつつ、何杯かの紅茶のお代わりをしたところで辻馬車が店の前に止まった。


 カランッと店の入り口のドアベルの音がしてエリカが入ってきて言った。


「新作のケーキよ。ユリ根のホワイト・モンブラン、魔法塔から帰ったら食べましょう」


挿絵(By みてみん)


次回は明日、18:00頃に更新いたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ユリ根のモンブラン?と思いながら読んでたら、最後にめちゃくちゃ美味しそうな写真が出てきた。 私は登場人物は勝手に想像したい派なのですが、物についてはイメージがつかみやすくて挿し絵?は嬉しいです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ